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Reincarnation Memories  作者: 斗真


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4/6

レナ

待っていられる場所

その日の朝、レナはいつもより早く訓練場へ来ていた。


早いというより、ほとんど夜明け前だった。


空はまだ薄暗く、シェイン王国の城壁の向こうに朝日が顔を出し始めたばかり。


訓練場には誰もいない。


鳥の声すら、まだ少ない。


その静かな砂地を、レナは一人で走っていた。


一周。


二周。


三周。


走る速度は次第に上がり、足音の間隔が短くなっていく。


風が髪を揺らす。


砂が後ろへ舞う。


いつものレナなら、走りながら大声を出す。


誰かがいれば競争を持ちかける。


レナ自身も、静かに走るのは好きではない。


けれど今日は、誰も起こさないように口を閉じていた。


四周目。


曲がり角へ入る直前、レナは急に足を止めた。


靴底が砂を削る。


体が前へ流れる。


両腕を広げ、何とか倒れずに踏みとどまる。


「よし!」


小さく拳を握る。


以前なら、そのまま曲がっていた。


あるいは壁にぶつかっていた。


今は止まれた。


イリスとの試合で覚えた。


走るだけでは届かない相手がいる。


だから止まる。


見る。


待つ。


そして、もう一度走る。


「今のは、かなりよかったぞ」


背後から声がした。


レナは飛び上がるように振り向いた。


「トーマ!」


訓練場の入口に、トーマが立っていた。


片手には水の入った瓶。


もう片方には、朝食用らしい小さな包みを持っている。


「いつからいた!?」


「四周目の途中くらい」


「三周目から見てほしかった!」


「どうして?」


「三周目の方が速かったからだ!」


トーマは少し笑った。


「でも、止まれたのは四周目だろ」


「そうだ!」


レナは胸を張る。


「ちゃんと見てたか?」


「見てた。綺麗に止まった」


その一言で、レナの顔が一気に明るくなる。


「ほんとか!」


「ああ」


「かなりよかったか?」


「かなり」


「すごかったか?」


「すごかった」


「もう一回言ってくれ!」


トーマは目を瞬かせた。


「すごかった」


レナは満足そうに何度も頷く。


「よし!」


トーマはレナの近くまで歩いてくる。


「褒められるの、好きなんだな」


「好きだぞ!」


レナは一切隠さず答えた。


「褒められたら、もっとできる気がする!」


「単純だな」


「分かりやすいと言ってくれ!」


「分かりやすい」


「それも褒め言葉だな!」


たぶん違う。


そう言おうとしたが、嬉しそうなのでトーマは黙っておいた。


レナはトーマの持っている包みを見る。


「それは朝ごはんか?」


「ああ」


「二人分あるのか?」


「一人分」


「そうか……」


レナの肩があからさまに落ちる。


トーマは包みを開いた。


中には焼いたパンが二つ入っている。


「一人分だけど、二つある」


レナの顔が再び明るくなる。


「一つくれるのか!」


「食べる?」


「食べる!」


二人は訓練場の端にある長椅子へ座った。


まだ朝露が残っていたため、トーマが布を敷く。


レナはパンを受け取ると、すぐに大きくかじった。


「うまい!」


「走った直後にそんなに食べて平気か?」


「走ったから食べるんだ!」


理屈になっているような、なっていないような答えだった。


トーマもパンを食べる。


しばらくは、二人とも無言だった。


レナは食べるのが早い。


トーマが半分を食べ終える頃には、もう最後の一口を飲み込んでいた。


そして、トーマのパンを見る。


視線があまりにも分かりやすい。


「まだ食べる?」


「いらないぞ!」


そう言いながら、目はパンから離れない。


「半分食べる?」


「トーマが足りなくなる!」


「俺はそんなに走ってないから」


「じゃあ、少しだけ!」


トーマがパンを半分にちぎる。


大きい方をレナへ差し出した。


レナは受け取ろうとして、止まる。


「そっち、大きくないか?」


「気のせい」


「私でも分かるぞ」


「走った分」


レナは少し迷ってから受け取った。


「ありがとう!」


その声は、朝の訓練場によく響いた。


──


食べ終わった後も、レナはすぐには走り出さなかった。


長椅子に座り、足を前後に揺らしている。


トーマは少し意外だった。


「もう走らないのか?」


「走るぞ」


「今は?」


「待ってる」


「何を?」


「トーマが食べ終わるのを」


トーマは自分の手元を見る。


残りはあと少し。


「先に走ってていいぞ」


「一緒に来たから、一緒に終わる」


「俺は途中から来ただけだけど」


「でも今は一緒だ!」


レナは当然のように言った。


その言葉に、トーマは少しだけ笑う。


「レナは待てるようになったんだな」


レナは得意げに胸を張る。


「訓練したからな!」


だが、その後に少しだけ声が落ちた。


「……前よりは」


トーマは気づいた。


その表情が、ほんの一瞬だけ曇ったことに。


「待つの、嫌いなのか?」


「苦手だ!」


いつもの勢いで答える。


けれど、すぐに視線を逸らした。


「止まるのも、待つのも、何かしてないと落ち着かない」


「走っていれば落ち着く?」


「うん」


レナは自分の足を見る。


「走ってる間は、前に進んでるって分かるからな」


「止まると?」


レナはしばらく答えなかった。


代わりに靴の先で砂を小さく蹴る。


「置いていかれそうになる」


その声は、普段のレナとは違っていた。


小さく。


弱く。


誰かに聞かれるのを怖がっているようだった。


トーマは何も言わず、続きを待った。


レナはトーマの顔を一度だけ見る。


笑われないと分かると、ゆっくり話し始めた。


「昔、まだ今の隊に入る前にな」


レナは両手を膝の上で握る。


「待ってろって言われたことがある」


「誰に?」


「一緒にいた人たち」


名前は言わなかった。


家族だったのか。


仲間だったのか。


それとも、幼いレナを保護していた誰かなのか。


トーマは無理に聞かなかった。


「危ないから、ここで待ってろって」


レナは続ける。


「私は待ったぞ。ちゃんと言われた通りに」


「うん」


「すごく長く待った」


声が少し掠れる。


「でも、誰も戻ってこなかった」


朝の風が、訓練場を通り抜ける。


いつもなら気持ちいいはずの風が、今は少し冷たく感じられた。


「だから、待つのは嫌いだ」


レナは笑おうとする。


しかし、いつものようには笑えない。


「待ってると、また誰も戻ってこない気がする」


トーマは自分の胸が少し痛むのを感じた。


レナは忠実だ。


命令されれば待つ。


どれだけ走りたくても、必要なら止まる。


それは彼女の長所だと思っていた。


だが、その忠実さの奥に、こんな記憶があるとは知らなかった。


「それで、いつも先に走るのか?」


レナは頷く。


「先に行けば、誰かがいなくなる前に追いつける」


「誰かが帰ってこないなら、自分から迎えに行く?」


「そうだ!」


少しだけ、いつもの声が戻る。


「待ってるだけなら何もできない。でも走れば、探せる。助けられるかもしれない」


レナは足を強く握る。


「だから、速くなりたい」


ただ勝つためではない。


誰より先に敵へ届くためだけでもない。


誰かがいなくなる前に追いつくため。


帰ってこない誰かを、自分から迎えに行くため。


レナの速さは、寂しさから生まれたものでもあった。


「トーマも」


レナが言う。


「すぐ一人でどこか行きそうになる」


「そうかな」


「なるぞ!」


即答だった。


「地下のこと考えてる時も、剣のこと考えてる時も、目が遠くなる」


ユナにも同じようなことを言われた。


近くにいるのに、いないように見える。


自分は思っている以上に、皆を不安にさせているらしい。


「トーマがいなくなったら、私は追いかける」


レナはトーマを見る。


「すぐに追いつく」


迷いのない瞳。


まるで、それだけは絶対に譲らないと決めているようだった。


「剣に乗っ取られても?」


「追いつく」


「攻撃するかもしれない」


「避ける!」


「レナは避けるの得意じゃないだろ」


「じゃあ当たりながら追いつく!」


「それは危ない」


「でも行く!」


レナは拳を握る。


「トーマがトーマじゃなくなりそうなら、先に追いついて止める」


「止められる?」


「分からない!」


潔い答えだった。


「でも、名前を呼ぶ!」


レナは笑う。


今度は少しだけ、いつもの笑顔に近い。


「トーマー! 戻れー! って、すごく大きい声で呼ぶ!」


「聞こえそうだな」


「絶対聞こえるぞ!」


「地下でも?」


「地下でも!」


「夢の中でも?」


「もっと大声で呼ぶ!」


トーマは笑った。


レナの声なら、本当に届く気がした。


忘却の剣の声に飲まれても。


黒い羽根に囲まれても。


遠くから響くレナの声は、きっと分かりやすい。


「レナ」


「何だ?」


「ありがとう」


「まだ何もしてないぞ?」


「追いかけるって言ってくれた」


「当たり前だ!」


「でも、無茶はするな」


「トーマに言われたくない!」


トーマは言葉に詰まる。


レナは勝ち誇ったように笑った。


「今のは私の勝ちだな!」


「何の勝負だ?」


「言い返す勝負!」


「いつ始まった?」


「今!」


理不尽だった。


だが、レナがいつもの調子へ戻ったことに、トーマは少し安心した。


──


朝食を終えた後、二人は軽い訓練を始めた。


走るのはレナ。


トーマは合図を出す。


「行け!」


レナが走る。


訓練場の端まで一気に加速。


「止まれ!」


レナが足を踏ん張る。


砂が舞う。


完全には止まりきれず、数歩前へ滑る。


「戻れ!」


レナは反転し、トーマのところまで走って戻る。


「どうだ!」


「さっきより止まれた」


「すごいか?」


「すごい」


「もう一回!」


何度も繰り返す。


行く。


止まる。


戻る。


最初の頃より、レナの動きは確実に変わっていた。


ただ速いだけではない。


合図を聞く。


状況を見る。


自分の勢いを制御する。


待つ。


そして、必要な時に走る。


十回目。


トーマが手を上げる。


「止まれ!」


レナは急停止した。


今度は、ほとんど滑らなかった。


トーマから数歩離れた位置。


そこで、じっと待つ。


「戻れ」


合図が出る。


レナは勢いよく戻ってきた。


そのままトーマの目前で止まる。


「できた!」


「ああ」


「完璧だったか?」


「かなり」


「完璧ではないのか?」


「最後、俺にぶつかりそうだった」


「ぶつからなかったから完璧だ!」


「そういうことにしておく」


レナは嬉しそうに笑う。


だが、トーマはふと思いついた。


「今度は、少し長く待ってみるか」


レナの笑顔が、ほんの少しだけ固まる。


「長く?」


「ああ。俺が合図するまで、そこにいる」


「どのくらい?」


「決めない」


レナはすぐには返事をしなかった。


待つ。


終わる時間が分からない。


戻れと言われる保証もない。


ただ立っている。


それは、レナが苦手としているものそのものだった。


トーマは無理にさせるつもりはなかった。


「嫌ならやめよう」


「やる」


レナは答えた。


「訓練だからな!」


いつもの声。


だが、足には少し力が入っていた。


レナは訓練場の端へ走る。


トーマが手を上げる。


「止まれ!」


レナが止まる。


そして、待つ。


トーマは合図を出さない。


一分。


二分。


レナは最初、胸を張っていた。


やがて、少しずつ落ち着かなくなる。


足を動かしたくなる。


トーマがいることを確認するために、何度もこちらを見る。


トーマはその場から動かない。


見える位置にいる。


それでもレナの顔には、少しずつ不安が浮かんだ。


「トーマ!」


レナが遠くから叫ぶ。


「いる!」


トーマは答える。


レナの肩が少し下がる。


さらに待つ。


「トーマ!」


「いる!」


また答える。


そのやり取りが何度か続いた。


「トーマ!」


「いる!」


「ちゃんといるな!」


「いる!」


レナは自分に言い聞かせるように頷く。


また少し待つ。


やがて、トーマは手を上げた。


「戻れ!」


レナが走った。


今までで一番速かった。


砂を大きく蹴り、一直線にトーマへ向かってくる。


止まる練習をしていたはずなのに、最後はほとんど止まらなかった。


トーマの胸へ、そのまま飛び込む。


「うわっ」


勢いを受け止めきれず、トーマは数歩後ろへ下がった。


レナは両腕でトーマの体を掴んでいた。


抱きついている。


「レナ?」


「戻ったぞ!」


顔を胸元へ押しつけたまま叫ぶ。


「ちゃんと戻った!」


「うん」


「トーマもいた!」


「ああ」


「いなくならなかった!」


その声を聞いて、トーマは気づいた。


これはただの訓練ではなかった。


レナにとっては、過去の記憶をやり直すことだった。


待てと言われた場所。


誰も戻らなかった時間。


その続きを、今ここで変えようとしていた。


今回は、呼べば返事がある。


待っていれば、戻れと言われる。


走って帰れば、そこに誰かがいる。


トーマはレナの頭へ手を置いた。


髪を軽く撫でる。


レナの体が固まった。


「よく待てた」


トーマは言った。


「すごかった」


レナは動かない。


返事もしない。


トーマは少し心配になる。


「レナ?」


「もう一回」


胸元から、小さな声が聞こえた。


「何を?」


「今の」


「よく待てた?」


「その後!」


「すごかった?」


「それも!」


「頭を撫でたこと?」


レナは無言で頷いた。


トーマはもう一度、レナの頭を撫でた。


今度は少しゆっくり。


レナは目を閉じる。


普段の元気な姿からは想像できないほど、静かな顔だった。


褒められると嬉しい。


それは隠していない。


だが、頭を撫でられるのが好きなことは、どうやら隠していたらしい。


「好きなのか?」


「何が?」


「頭を撫でられるの」


レナは目を開けた。


「好きじゃないぞ!」


そう言いながら、トーマの手から離れない。


「じゃあ、やめる?」


手を離そうとすると、レナが両手でトーマの腕を掴んだ。


「まだ!」


「好きなんじゃないか」


「違う!」


「じゃあ何だ?」


レナはしばらく考えた。


難しいことを考える時の顔。


眉間に皺を寄せ、唇を尖らせる。


「……褒められた確認だ!」


「確認?」


「ちゃんと褒められたって、頭で分かる!」


トーマは少し笑った。


「分かった」


「笑うな!」


「悪い」


「もう一回!」


トーマはまた頭を撫でる。


レナは嬉しそうに目を細めた。


その姿は、普段の戦乙女というより、褒められた子どものようだった。


だが、トーマは何も言わない。


今は、ただ褒める。


待てたこと。


止まれたこと。


そして、ちゃんと戻ってきたことを。


「レナ」


「何だ?」


「俺も、待てるようにする」


レナが顔を上げる。


「トーマも?」


「ああ。誰かに待っててと言われたら、勝手に一人で行かない」


「本当か?」


「できる限り」


レナの眉が寄る。


「できる限りは怪しいぞ」


「絶対とは言えない」


「じゃあ、行く時は私を呼べ!」


「レナを?」


「一緒に走る!」


「危険な場所でも?」


「危険なら、もっと速く走る!」


それは解決になっていない。


だが、レナらしかった。


「分かった。必要な時は呼ぶ」


「必要じゃなくても呼んでいいぞ!」


「どうして?」


「一緒にいた方が楽しいからだ!」


真っ直ぐな言葉だった。


レナはトーマへの好意を、難しく考えない。


一緒に走りたい。


一緒に食べたい。


呼ばれたら嬉しい。


褒められたらもっと嬉しい。


トーマがいなくなるのは嫌だ。


だから追いかける。


それが恋なのか。


仲間としての強い愛着なのか。


レナ自身には、まだ分からない。


ただ、トーマに名前を呼ばれると、どこへでも走っていける。


彼が自分を見ていると、いつもより速くなれる。


そして、頭を撫でられると。


胸の奥が、走った後よりずっと熱くなる。


それだけだった。


──


訓練を終え、二人は城へ戻ることにした。


レナはトーマの隣を歩く。


走らない。


歩く。


歩幅はトーマに合わせていた。


「走らなくていいのか?」


トーマが聞く。


「今日は歩く訓練だ!」


「今決めた?」


「今決めた!」


「そうか」


二人は並んで進む。


途中、レナは何度か前へ走り出しそうになった。


そのたびに、少し止まる。


トーマが追いつくのを待つ。


「待てたな」


トーマが言う。


「褒めるか?」


「偉い」


「頭も?」


「城の前でやると誰かに見られるぞ」


レナは周囲を見る。


まだ朝が早く、人は少ない。


「今なら大丈夫だ!」


「本当に好きなんじゃないか」


「確認だ!」


トーマは苦笑しながら、またレナの頭を撫でた。


その瞬間。


城の窓が開く。


「何をしているのですか」


ロイドの声だった。


レナが固まる。


二階の窓から、眼鏡をかけたロイドが二人を見下ろしている。


その隣にはユナ。


少し後ろにはノア。


さらに別の窓から、ミアまで顔を出していた。


「レナ、頭撫でられてるぞ!」


ミアが叫ぶ。


レナの顔が真っ赤になる。


「違う!」


「何が違うの?」


ユナが冷静に聞く。


「褒められた確認だ!」


ノアが小さく笑う。


「レナさん、嬉しそう」


「嬉しくない!」


レナはトーマの手から離れる。


だが、数歩離れた後、少しだけ振り返った。


「……あとで、もう一回な」


小声だった。


しかし、ロイドには聞こえていた。


「聞こえていますよ」


「ロイドは耳がよすぎる!」


レナは叫びながら城へ駆け込んだ。


結局、最後は走っていた。


トーマはその背中を見て笑う。


「止まる訓練は、まだ必要だな」


窓からロイドが言う。


「あなたもです」


「俺も?」


「人を無自覚に甘やかすのを止める訓練です」


トーマには意味が分からなかった。

トーマの記録帳


レナ。

速く走る人。

誰かがいなくなる前に追いつくため、走り続けている。

待つのは苦手。

でも今日は、俺が呼ぶまで待てた。

呼んだら、今までで一番速く戻ってきた。

レナは、誰かを追いかけるだけではない。

待っている人のところへ戻ってくることもできる。


少し間を空けて、さらに続いていた。


褒めると、とても喜ぶ。

頭を撫でられるのも好きらしい。


翌朝、その一文には大きな字で訂正が入っていた。


好きじゃない!

褒められた確認だ!


その下に、ユナの細い字が追加されていた。


撫でるのをやめた時、腕を掴んでいた。好きだと思う。


さらにミアの字。


私も今度撫でてもらう!


ノアの丸い字。


レナさんは、撫でられている時すごく静かだった。


ロイドの整った字。


訓練記録としては不要な情報です。

ただし、レナの精神安定に有効な可能性があるため削除は保留します。


最後に、レナの大きな字がページいっぱいに書かれていた。


みんな勝手に書くなー!


その日の夕方。


トーマが訓練場へ行くと、レナは入口で待っていた。


今度は不安そうな顔をしていない。


トーマが来ると分かっていたから。


「遅いぞ!」


「悪い」


「ちゃんと待ってた!」


「うん」


「すごいか?」


「すごい」


レナは頭を少しだけ前へ出す。


「確認は?」


トーマは笑って、その頭を撫でた。


レナも笑った。


待つ場所に、帰ってくる人がいる。


それを知ったレナは。


もう、止まっている間も一人ではなかった。

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