第49話:魔力庫の作製
2026年12月
30m^3へ容量の拡張を完了したインベントリーが完成した。
次なるシステム、すなわち『魔力庫』の実現性が明確に見えてきた。
これまでの課題として、現地での激しい魔力消費に対する魔力補給の問題があった。
だが、物資を格納できる亜空間が作れるのであれば、話は早い。
その亜空間の中に、純粋な魔力を貯蔵する専用の貯蔵庫が作れるはずだ。
(魔力汚染なども考えて、インベントリーと魔力庫は別々にしておこう)
おじさんは作業台でノートを開き、構成要件を整理した。
【錬金術による魔力庫作製のポイント】
1. 位置定義:インベントリーとは別に、自分のすぐ近くの空間に、魔力庫用の1m^3の亜空間を作製する。収納するのは純粋な魔力のみとする。
2. 熱力学制御:亜空間の内部では、すべての分子運動を完全に停止させる(状態維持)。
3. 力学制御:地表との遮断による重力の撤廃。
4. データリンク:内部の総魔力量を算出し、データベースに登録する。単位は分かりやすく『角うさぎの魔石何個分』の魔力量かで表示する。
収納する対象が物質から魔力に変わるだけだ。
システムの中身はインベントリーとほぼ同じである。
(質量も熱も持たない純粋な魔力エネルギーに対して、状態維持や重力撤廃の制御は不要かもしれんな)
そう思いつつも、一応つけておくことにした。
不確定要素はあらかじめ潰しておくのが鉄則だ。すでにインベントリーの作製によって、イメージは十分である。
一気に作製して問題ないだろう。
*
翌日
おじさんは川崎ダンジョンの拠点へと戻った。
さっそく魔力庫の作製に取り掛かる。
インベントリーの時に練習した鮮明なイメージ通りに構築していく。
魔力庫用の亜空間の作製、状態維持の付加、重力の撤廃の付加。
そしてデータベースに魔力量を自動計算して表示する機能を組み込んだ。
一度、同様の空間を作製したことがあるせいか、特に不具合もない。
作業は数分で完了した。
次は、性能の確認だ。
おじさんは体内の魔力循環から魔力を抽出した。
右の手のひらから角うさぎの魔石100個分ほどの魔力を放出する。それを魔力庫へ貯蔵するイメージをした。
パーセンテージで言えば、現在限の1,150個分の総容量のうち、大体1割くらいに相当する魔力量だ。
放出した魔量は霧散することなく空間へ吸い込まれた。
特に問題なく収納されたようだ。
魔力庫のデータベースを確認したところ、『角うさぎの魔石・95個相当』と表示された。
放出した感覚との間にわずかな数値の乖離がある。
(今のところ魔力の定量的な測定方法はない。この程度は十分に誤差範囲内だな)
続いて、取り出しの確認を行う。
魔力庫のデータベースから、角うさぎの魔石50個相当を選択して魔力を取り出す。
同時に、手のひらからその魔力を直接吸収した。それを体内循環の流れにのせる。
感覚的だが、拒絶反応も頭痛もない。
体内へ滑らかに魔力が補充された。
上手くいったようだ。
これで持ち運び可能な専用の魔力庫が完成した。
基本性能が実証された今、やるべきことは決まっている。ひたすら空間の容量を拡張する。
そして地下倉庫に大量にある角うさぎの魔石から魔力を取り出す。それを魔力庫の中に収納するだけだ。
(この作業自体は魔法を使うわけではない。だが、大量の魔石を握って魔力を吸収し、それを体外の魔力庫へ放出してはまた補充する手順の繰り返しになるな)
これはおじさんの肉体という容器にとっても、いい訓練になる。確実な魔力総量の上限アップにつながるはずだ。
確か、現在の地下倉庫にある角うさぎの魔石の在庫は13,500個くらいのはずだ。
さらに自動罠によって、毎日1,200個ほどの魔石が自動的に入手可能である。
(とりあえず、この在庫全部、13,500個分の魔力を、すべて新設した魔力庫に収納するか)
おじさんはまず、魔力庫の容量を10m^3に広げた。この魔力庫にいったいどれくらいの魔力が貯まるのか、内心でニヤニヤが止まらなかった。
(つづく)




