↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
25/40

第25話:支部長再び(中編)

2026年10月


翌日、おじさんは第二層の草原エリアへと入行し、さっそく実験を開始した。


あらかじめ棒の先に各色の布を取り付けておき、遭遇した普通の角うさぎの眼前で振ってみた。


期待に反して角うさぎたちは、どの色にも全く反応を示さなかった。


(……やはり普通の個体では駄目か、あるいは色彩による誘引そのものが的外れなのか)


実験を進めるには金色角うさぎを呼ぶしかないが、あの素早さでは出現しても途中で逃げられてしまう可能性が高い。


そこで、おじさんは前日にデータを取ったばかりの土壁の魔法を応用することにした。


あらかじめ、周囲に他の探索者がいない岩陰を選び、10m四方の囲いをレベル1の土壁で作る。


今回は魔獣を閉じ込めるだけが目的のため、高さを2mに上げ、厚みを5cmほどに薄くした格子状の構造にした。これなら一度の魔力補給で十分に構築できる。


この閉鎖空間の中に犬笛で一度に60匹ほどの普通の角うさぎを集めて眠らせ、一気に狩る。


そうすれば、『逃げ場のない壁の中に金色角うさぎを強制的に出現させられるのではないか』という考えだ。


出現してから壁を作ったのでは生成速度が間に合わないため、事前に囲いを作った。


この手順を4回ほど繰り返したところで、ついに囲いの中にあの眩い金色の毛並みが出現した。


(……囲いの外ではなくて良かった! 狙い通りだな)


おじさんはすかさず、用意していた布の棒を金色の眼前で振ってみた。

しかし、結果は空振りであった。

金色角うさぎも色布には視線すら向けない。


思惑が外れたおじさんは実験を打ち切り、ポリカーボネート製の盾とサバイバルナイフを構えて実戦へと切り替えた。


盾を構え、金色角うさぎとジリジリとにらみ合う。

その時、おじさんは金色角うさぎの挙動に奇妙な違和感を覚えた。


よく観察してみると、奴の視線はおじさんではなく、構えている盾やサバイバルナイフの表面に向いている。


正確には、ダンジョンの光を反射してキラキラと輝く金属光沢を、執拗に追っているのだ。


(……まさか、カラスのように光り物が好きなのか?)


そう気づいた瞬間、無情にも時間切れとなり、金色角うさぎは霧のように掻き消えてしまった。


おじさんはその日の実験を終えて帰宅した。


せっかく作った10m四方の囲いは、他の探索者に見つからないよう、すべて元の土へと還しておいた。


形を消すだけでも相応の魔力を消費したが、秘密を守るためには仕方ない。


自宅のリビングで1人、反省会を開く。

もし仮説通りあの魔獣が光の反射に執着するなら、『ミラーボール』でも転がしておくべきかと思いつく。


だが、すぐにさらに現実的な代替案へと行き着いた。

家庭用の『アルミホイル』だ。


あえて少しクシャクシャにして乱反射を強くしたアルミホイルを、網の中央に結びつけてみたらどうだろうか。


翌日、おじさんはホームセンターへと向かい、少し網目の粗い丈夫な網と、1本の突っ張り棒(長さ1m)を購入した。


さっそく自宅で工作を始める。

1m四方の網の一辺に突っ張り棒を通し、しっかりと固定する。

これで、1人でも網をピンと広げた状態で保持できるようになる。


その中央に、一度丸めてから引き伸ばしたアルミホイルを粘着テープで貼り付けた。


アルミホイルは衝撃で破れる使い捨てになるため、予備の1巻きと粘着テープが必要だ。


取り外した網とその他一式をリュックサックに詰め、おじさんは再びダンジョンへと向かった。


草原エリアに到着後、おじさんは昨日と同じ手順を踏んだ。

角うさぎの魔石で魔力を補充しながら10m四方の囲いを作り、犬笛で角うさぎを集めて眠らせ、狩る。


そして数回繰り返したのち、再び金色角うさぎがお出ましになった。

おじさんは自作したアルミホイル付きの網を広げ、奴の眼前でゆさゆさと揺らしてみた。


効果は劇的であった。


金色角うさぎは狂ったようにアルミホイルの輝きへと目掛け、直線的な猛突進を仕向けてきたのだ。


ガサリと小気味よい音がして、突っ張り棒を仕込んだ網が見事にその小さな体を絡め取る。


身動きの取れなくなった黄金の毛並みに向け、おじさんは用意しておいたさすまた君を突き出した。


網越しに一突きで仕留める。


「……随分と、あっけなく狩れてしまったな」


1ヶ月間、あれほどベテラン探索者を悩ませていた希少種が、ホームセンターの資材とアルミホイルだけで、信じられないほど簡単に狩れてしまった。


これほど明確に光の反射に自ら突っ込んでくる性質があるのなら、次回から10m四方の囲いを作る必要すらない。

網を構えて待つだけでいい。


これなら、自分以外のどんな探索者であっても容易に狩ることができるはずだ。


おじさんは静かに息を吐き、囲いをすべて土へと戻してダンジョンを後にした。


(……このまま2、3日おきに私が金色角うさぎを独占して狩り続けるのも、周囲の目を引いてしまってよろしくないか)


(……1本1000万円、月に10本狩れたなら。1ヶ月で1億円、税引き後で月給8000万円か。ふむ、おそろしい)


おじさんは1週間ほど平穏に過ごして時期を見計らったのち、協会支部長への面会を求めることにした。


(つづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。