第21話:魔法発動編7 分かったこと
2026年10月
ラノベの方法で、魔力総量を上げることができるのかを確認するため、約1ヶ月を費やした。
おじさんはリビングのテーブルにノートを開き、この20日間の実働で得られたデータと成果について、冷静に総括を始めることにした。
まず、この特訓における前提条件と日課を整理する。
以前のスライム狩りと同じく、人目を避けるために朝の5時と夜の23時の2回、ダンジョンの第二層へ入った。
現在の戦闘技術と、通販で購入した犬笛を用いれば、角うさぎもイノシシモドキもその気になれば2時間ほどで70〜80匹は確実に狩ることができる。
1日平均で約150匹。これを実働20日間、淡々と継続した。
1ヶ月前の開始時点において、おじさんの魔力総量値は『角うさぎの魔石55個分』であった。
この魔力量は、200gの土から直径4.0cmの土団子を作った場合1個作れるが、2個目は途中で魔力切れになる。
しかしこれでは、魔力総量の増加を判定しずらい。土の量を減らし50gの土から直径2.5cmの土団子を作ることにした。これで、魔力満タンの状態では7個作れ、8個目で魔力切れになる。
ここからが本番の解析である。
おじさんは魔力酔いを起こすまで魔石から魔力を吸い上げ、満タンになったら50gの土を掴んで限界まで錬金術を稼働させた。そして、魔力が枯渇したら再び魔石で急速補給を行うという作業を繰り返した。
この上限突破の作業を、1ヶ月で正確に24サイクル実施した。
結果として、おじさんの魔力総量には驚くべき変化が起きていた。
24回目となる最後のサイクルにおいて、おじさんの身体が魔力酔いを起こすまでに必要とした角うさぎの魔石の数は、実数で『169個』に達していたのだ。
初期の55個から、1ヶ月で169個。
電卓を叩いて1サイクルごとの伸び率を計算してみると、1回につき約5%ずつ、複利計算のように最大容量が増加している計算になる。
「1ヶ月で、魔力総量が約3倍、か……」
ノートの数値を見つめながら、おじさんはほくそ笑んだ。
この3倍という数値が、この世界の基準において多いのか少ないのかは、比較対象となるデータが存在しないためまだ分からない。
だが、感覚的に、1ヶ月の訓練でこれだけの向上が見込める人間の肉体という仕組みは、なかなかに優秀な設計をされているのではないかと思う。
手元に残された物理的な成果として、直径2.5cmの土団子の数は、実に327個に及んでいた。
今や1回の満タン状態で、一度に23個作れるだけの魔力総量が備わっているのだ。
これならば、初期の目的であった落とし穴や防壁の作製といった、土魔法の真似事のような実用的な干渉も視野に入ってきた。
しかし、2.5cmの土団子23個程度では、幅1m、厚さ10cmの土壁を作った場合、体積的には高さ2cmくらいにしかならない。
(……やれやれ、何か効率的なアプローチを考えないと、このままでは無理そうだな)
1ヶ月で最大容量を3倍にできたというのは大きな成果だが、実用上はまだまだ先が長そうであった。
(つづく)




