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第16話:魔法発動編2 土魔法 練習開始

2026年8月


魔法の習得に向けて、色々と下準備が揃ってきた。

となれば、次に決めるべきは『どこで最初の発動テストを行うか』だ。

これについては、ダンジョン内一択だと思う。


私が読み漁ってきたラノベの知識でも、『魔法はダンジョン内限定』であるとか、

あるいは『ダンジョン内の方が成功率が飛躍的に高い』、といった設定が非常に多いからだ。


協会からの監視の目がひとまず無くなった(あるいは護衛という名目で遠巻きになった?)としても、流石に第二層のひらけた草原エリアで怪しい儀式をしていれば、他の探索者に見られるリスクがある。


とすれば、第一層の入り組んだ洞窟内か。


あそこなら、普段は誰も来ないような奥まったスライムスポットの跡地がいくつもある。


……いや、待てよ。洞窟の内部は基本、強固な『岩盤』だ。


いきなり岩石の分子構造に干渉するのは、初心者にはいささかハードルが高そうである。やはり最初は、柔らかい草原の土から始めるべきだろう。


第二層の草原エリアで、大きな岩の影などに隠れられそうな、死角になる実験場を探すのが良さそうだ。


私は、第二層草原エリアの大きな岩で、さっそく魔法の練習をはじめることにした。


先ずは、確認だ。

1.魔石を舐め続けたことによる、私の体内の魔力の蓄積状況。

  ーーヨシ!

 (※ただし現実には、今の蓄積量で初期魔法の要求魔力を満たせるのかは全くの不明)。


2.魔力の体内循環。

  ーーヨシ!

 (※ただし現実には、これが正しい循環なのかは全くの不明)。


3.具体的な発動のイメージ。

  ーーダメ!

  ……そういえば、イメージトレーニングを全く練習していないことに気がついた。


「いや、場所をどこにするか悩むより、まずはイメージトレーニングが先だろう」


この日は、魔法の練習を諦め、とぼとぼと帰宅した。


私は自宅のリビングで、自分の手際の悪さに小さく頭を振った。

完全に順番を間違えている。


現役時代から、細部に気を取られて全体がおろそかになる悪い癖があったが、隠居してからも大して変わっていないらしい。


まずは自宅のソファに座り、目を閉じてイメージトレーニングを開始する。

思い浮かべるのは、黒い土だ。


手のひらにふんわりと乗るくらい、分量にしてざっと200グラム。

その黒系の土の組成を、脳内に描写していく。


炭素系の有機物、ケイ素系、鉄系の無機物。

それらの微細な粒子が複雑に混ざり合って構成されている。


そのバラバラの粒子を、目に見えない力で外側から『ぎゅっ』と均等に押し固め、

綺麗な球状の土団子へと成形していくイメージを構築する。


この段階では、まだ体内の魔力は込めない。

あくまで脳内のシミュレーション、純粋なイメージだけの反復練習だ。


だが、やはり実物が目の前にないと、どうにもイメージの解像度が上がりにくい。

そこで私は、日中に第二層の草原エリアへ行った際、周囲に人がいない隙を見計らって、実際に足元の土を手ですくい上げて観察することにした。


土の色をじっと見つめ、その色合いから大まかな含有成分を化学的に推定する。

さらにその物理的な形態ーー粒子はどれくらい細かいか、あるいは粒状に凝集しているかを確認する。


そして、最後に、それを手の中で『ぎゅっ』と押し固めて球状にするイメージを、

ダンジョンの片隅でひたすら、泥臭く練習し続けた。


そんなイメトレを始めて1週間ほどが経った頃。

ようやく、頭の中でパッと鮮明にそのイメージを思い描けるようになった。

(つづく)


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