5 認知の儀
「ヴァンも8歳。そろそろ認知の儀ですね。」
12歳までに戸籍を確認する儀式。それが認知の儀である。
「認知の儀をしないとどうなるのですか?」
「家督を継ぐことができなくなります。他にもいろいろ良くないことがありますが、認知の儀をしなくて良いことは、何一つありませんよ。」
戸籍の登録違反は多大な追徴金の発生し、他にもペナルティがあるのは知っている。通常16歳で成人となるが、両親が死亡した場合に12歳で成人する特例があるため、8歳から12歳の時に行うように定められている。子の死亡による税金逃れや、養子縁組などによる戸籍の変更漏れがないことを確認する意味もあるのだろう。
「家督か。だるいな・・・。」
家督はどうでも良いというか、どちらかと言うと相続しないほうが良い。でも。でもだ。生きていく上での良くない事は少ない方が良いに決まっている。自分一人堕ちるのはもちろん、家が没落するのも困るのである。贅沢な生活をしているとは思わないが、とりあえず今は大きな不自由はない。
「ハリー・・・。」
ハリーが亡くなって父が気落ちしていたのは知っている。もっとも有望と思っていた息子が亡くなったのだ。無理もない。父母だけではなく使用人や領民もだ。ハリーは活発な性格で面倒見が良く、いつも領地の小さい子供達を引き連れて遊んでいた。みんなハリーをよく知っていたし好かれていた。いつもぽつんと一人で過ごす自分とは真逆の立ち位置だ。
「ヴァン様はよくわからないところがある。悪い子ではないのだけど・・・」
自分の評価はもっぱらこんな感じだ。最近は少しだけ扱いが変わってきたと感じる。明るく積極性のあったハリーの変わりを求められている。
「ポールがもっとしっかりしてくれていたらな。」
自分のことを棚に上げて思う。
それでも最近はポールも大きく変化しつつあると周囲は思っているようだ。要領は良い。ただし積極性や主体性が自分並みに無い。
長男だからだと思うが、父母や使用人からの用向きは自分に向けられる。ポールに言っても聞いているのか不安になるという。だけど、ヴァンの言うことはよく聞く。特に一緒にやるような振り方をすると効果てき面なのだ。そして兄以上の成果を上げることが多くある。自分にやる気がないので面目丸つぶれとは思わない。兄として慕われているのは悪い気分ではないのだけど。
「旦那様、ヴァン様の認知の儀はいつにしましょう。近いうちに行いますか?」
「そうだな。そんなに急ぐ必要はない。ポールも一緒に済ませておこうか。ヴァン10歳、ポール8歳の時でどうだ。」
間にハリーがいたのでポールとは2歳近く離れている。ポールの認知の儀も一緒に行うのはどうかという話になり、自分の認知の儀はしばらく行わないことになった。
「2年後か。それまでにポールが変わってくれたらな。」




