魔族の野望
「ここなら誰にも聞かれることはないでしょう。改めてお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
部屋と呼ぶにはあまりにも広い一室でジンが少女魔王に問いかける。
「ミナ。」
未だに警戒しているのか言葉少なげにそれだけを言う。
「ミナ様ですか。いい名前ですね。聞きたいことは色々あるかとは思いますがまずは私の話を聞いてもらいます。答えられる範囲であれば質問にも答えましょう。最初に聞いておきたいのですが最後に覚えていることは何ですか?」
「白い光の中にいたらおっきな音が聞こえた。」
いまいち言葉足らずな説明だがジンはおそらく事故のことを言っているのだろうと推測すろ。
そしてそれと同時に年端も行かない目の前の少女にどう説明するか迷う。
「変に誤魔化しても意味ないと思いますのでありのまま、お話します。おそらくあなたはこことは違う世界事故にあい、死にました。そしてそのあとこちらの世界に転生されたのだと思います。転生自体は珍しい事ではありませんがその中でもあなたの魂は魔王という特別な器に注がれてしまった。ここまでは大丈夫ですか?」
「うん。」
「歴代の魔王様たちは人々を害し、魔族の地位を確固たるものにしようとしてきました。簡単に言えば魔族こそがこの世界の頂点だと言って他種族を支配下に置こうとしたのです。そしてその為かはわかりませんが歴代の魔王には強大な力が宿っていました。まだ確証はありませんがおそらくミナ様にも歴代の魔王たちと同等の力があるでしょう。」
少女魔王であるミナが寝そうな表情になっていたのでいったん話を切る。
やはり年相応なのだろう、難しい話は苦手なようだ。
ここら辺でやめてあげたいのだがここからが本番なにでやめるわけにはいかない。
「今後、ミナ様には勉強はもちろん様々なことを学んでもらいながら力をつけていただくことになると思います。おそらく他の者たちはミナ様が力をふるい、魔族を率いて戦うことを望むでしょう。」
そう、ここからが本題なのだ。
ジンはどうしても他の家臣が接触する前に魔王にこちら側の意思を伝えておきたかったのだ。
魔王が毒される前に、、、。
「ジンも、、、。ジンもそれを望むの?」
ん?
何となく少女の視線に熱っぽいものを感じた気がしたが気のせいだろう。
「いいえ、私は魔族の王、魔王としてミナ様には人族と共存の道を歩んでいただきたいと思っています。」
そう、それこそがジンをはじめとする革命派側の意見だ。
もしこの会話を他の家臣たちが聞いていたのならば乱心したと捉えられてもおかしくないレベルの内容なのでフォルグに頼み魔王を連れ出させてもらったのだ。
ヘタをすれば反逆罪で処刑されるほどの重罪、覚悟はできている。
「きょうぞん?」
「ええ、我々魔族は人族との長い闘いのせいで疲弊しきっています。私はただでさえ苦しんでいる民たちにこれ以上の負担を押し付けたくはありません。それに魔族と言えどもそのほとんどは人と変わりません。魔族と言っても多少人族よりも魔法が使える程度です。それなのに人族よりも優れているなどと思う事は傲慢だと思うのです。人族には人族にしかできないことがありますしね。」
そう、ジンは魔族のありかたについて疑問を持っているうちの一人だ。
なぜ、種族が違うからと言って争わねばならないのか。
なぜ、他種族の上に立つ必要があるのか。
なぜ、民を犠牲にしてまで支配を望むのか。
ジンには理解できなかった。
故にその考えを、古の時代の邪悪な思想を取り除きたいと思っている。
「なにがいいたいの?」
「人と魔族はお互いがお互いを恐れています。でもそれはお互いを知らないから当然だと思うのです。自分がわからないもの、理解できないものを人は恐れるんです。だからこそ我々は互いに歩み寄り、互いを知るべきなんです。人にも、魔族に心優しい人はいます。それなのに知らないからと言う理由だけでどちらか一方が殺されるなんて間違っている。」
そうだ、心があるならわかりあえるはずなんだ。
理解しようとしないだけで、きっかけさえあればきっとわかりあえるはずだ。
「このまま争いを続けても憎しみが生まれるだけです。もちろん殺された者の遺族は憎しみを捨てられないと思います。ですが争いでは憎しみは消えない。さらなる悲劇を生むだけだ。そんなの、そんなのむなしいだけだ。」
ジンはここまでを一息に言うとうつむいてしまう。
きっと彼にも割り切れない思いがあるのだろう、それでも民の為に、魔族の為に割り切り、新たな道を切り開こうというのだ。
それはきっと誰でもできることじゃない。
「よくわからない。けどきっと誰もが笑える世界が一番いいと思う。今、あなたが泣いているのならこの世界は間違っているのかもしれないね。」
少女にそう言われてジンは自分が泣いていたことに気が付く。
幼い少女とばかり思っていたけど、優しい心と気高い心を持っているのかもしれない。
この子なら、暗い闇の中にいる我々魔族を温かい光で照らしてくれるかもしれない。
そう思った。
「ねえ、お腹すいた。ごはん食べにいきたい。」
やはり、少女だ。
そんなことを言いながら立ち上がり、数歩も歩かないうちに。
こけた。
>パリ。
>バリバリ。
>ズドーーーン!!
そして、少女が転んだ瞬間地面が裂ける。
「うそ、だろ。」
どうやら少女魔王はとてつもない力を秘めているようだ。




