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『魅惑の輝石! 給料三ヶ月分の指輪のオーダーデザイン・無料お見積もり! 宝石のクルーズ』

シルバー製品はすぐに黒くなっちゃうのが悲しい


 駅前商店街唯一の宝飾品店『クルーズ』より提供いただいたパワーアップアイテムは『シルバーアクセサリー作成キット』(50g)である。


 シルバーアクセサリーの作り方にも色々あるらしいのだが、店長の「渡部 博士」さん(ひろしさん:あだ名はハカセ)から、中でも一人でも手軽に作れてしまう『銀粘土』をお勧めしていただいた。


「粘土に銀が練り込んでありまして、形を決めてコンロで焼くと、中の銀だけが作った形通りに残るんです、やってみると凄く楽しいですよこれ」


 見た目はただの粘土なのだが、実はなかなかの優れものなのである!


 ちなみにこれは売り物ではなく、デザイナーの方がデザインを試すのに利用されているとのこと。

 使用後は鋳溶かして---硬くなるので彫金などの練習にも---リサイクルされる、お得なアイテムなのだ!


「あ、そういえば『鉢かづき姫』といえば最後は金銀財宝がでてきたということですし、こんな和風の唐草模様をイメージした指輪……いや、腕輪の方がヒーロースーツに映えてよろしいのでは!? もちろんオーダーデザインもお受け致しますので、ヒーローショーにより一層の輝きを添えたい場合なども是非ご一報下さい!」


 とは店長の「渡部 博士」さんのお言葉。


 だが、残念なことにお店の商品はどれもステキ過ぎて、ヒーロー”ハチカヅキン”の激しい戦いに巻き込むわけにはいかない!「ま、また機会がございましたら!」と丁重にお断りし、今回は『銀粘土』の使用法のレクチャーとデザインのお手伝いをお願いすることとなった。


(いずれは本物の金銀財宝で飾られた『ヒーロー”ハチカヅキン”(アルティメットフォーム!)』になってみたいものだ……)


 暫くしてヒーロー”ハチカヅキン”は、『銀粘土』を『宝石のクルーズ』の秘密アイテム『唐草文様の型1・2』と『ヘラ各種』をなんとかかんとかに使いこなし、『中央に三連お椀が彫り込まれた唐草文様ブレスレット』の原型を作り上げ、タッパーに詰めて、カセットコンロのある『スーパー億万』駐車場特設ステージへ向かうのであった。


『魅惑の輝石! 給料三ヶ月分の指輪のオーダーデザイン・無料お見積もり! 宝石のクルーズ』の金色に輝くステッカーを腕に巻きつけたヒーロー”ハチカヅキン”は、

「へー指輪(給料三ヶ月分)のデザインを決められるの?」「うちの人がデザインを選んだら大変なことになるわね……」「一緒に選べば良いんじゃない?」「ええ、一緒に選べば良かったわ…」「ああ……」「い、今からでも遅くないのでは!?」

など、道行くお嬢様との楽しい歓談をはさみながら、駅前商店街を闊歩するのだ!



「グッハッハッハッハ! 本日の花男くん(フレンチブルドッグ 8才 ♂)の身代金は2890円だ! 一円たりともまからんが、消費税分は引いてやっても良いぞ? うむ、悪の組織には税金が掛からんのでな! ああ? 「税金が掛からないのなら、資産運用をお願いしてみたい」だと!? ウウム…いや、しかしそれはどうなんであろうか、考えたこともなかったのでな…あ、”犬公方ツナー”は資産運用についてどう思う? 何か意見はないか!?」


「え、資産運用……ですか!? ええ……。あ、できれば犬の繁殖、ドッグブリーダーなんかをしてみたいですねえ。でもこれ資産運用なんでしょうか…?」


 今日もコタツに備え付けられた黒電話で商店主の「福本さん」に、身代金交渉を引き伸ばされ続けている怪人”犬王モノー”(イヌオウモノー)達である。


 そんな彼女らを尻目に、ステージ脇で置いてあったカセットコンロに金網をセット、その上に『中央に三連お椀が彫り込まれた唐草文様ブレスレット』をそっと置いて、焼き上げようの鉄のカバーを被せたヒーロー”ハチカヅキン”は、「上手くいきますように!」と祈りを込めてコンロのスイッチをひねると、火力を『強』にして10分こんがりと焼き上げるのだ!


 そんな事をしていると、ステージ中央のコタツでは話が佳境に入っているようである。


「よし、いっそのことうちの戦闘員A・Bを増やそう! 戦力増強に繋がるし、増え過ぎれば売ってしまえば良いのだ! え? 「増えても買い取りたくない」だと!? ああ、「可愛くないから」か……ま、まあ、ああ見えて愛嬌はあるんだぞあいつらも!? だが…うん。強いてどちらかと言えば、可愛いとは言い難くはあるな…ウウム」


「困った話ですねえ。……あ、”犬王モノー”さま! ステージの端に、いつの間にやらヒーロー”ハチカヅキン”が!?」


 焼きあがったシルバーブレスレットをそっと冷やしていたヒーロー”ハチカヅキン”は、遂に怪人達に発見されてしまったのである!


 花男くんのリードをスタッフに渡し、先方との電話を丁寧に切り上げた怪人”犬王モノー”は、よっこらせと立ち上がって戦闘態勢を整えヒーロー”ハチカヅキン”と向かい合い気勢を上げるのだ!


「オオッ! やっと来たかヒーロー”ハチカヅキン”! ここで会ったが100年目、残念なことに頓挫してしまった組織の資産運用計画に成り代わって、この怪人”犬王モノー”が貴様を退治してくれるわっ!!」


「なんと、ちゃんと資産運用なんて考えていたのか怪人”犬王モノー”! 悪の組織とはいえ立派な心構え、だその計画は、このヒーロー”ハチカヅキン”に勝ってからにしてもらおうか! トウッ!」


「グッフッフ、言われずとも、貴様を倒したあとでジックリと計画を練り直してくれるわ! ゆくぞっ! せいやあっ!」


 戦いが始まるやいなや、素早くコタツを押してステージ奥へ片付ける怪人”犬公方ツナー”。

 その背中に隠れてヒーロー”ハチカヅキン”へ迫る怪人”犬王モノー”は、どこからか取り出した犬の餌入れを象った杖『犬王スティック』を大げさにふりあげて、大上段で殴り掛かる!


 ヒーロー”ハチカヅキン”はこれを頭上で交差させた両腕で「ガッシッ」と受け止めるが、怪人”犬王モノー”の尋常ではない力によって、徐々に押し込まれてゆき、遂に床に膝を付いてしまうのだ!


危うし、ヒーロー”ハチカヅキン”!!


「グハハハハハッ! どうした、ヒーロー”ハチカヅキン”? 今日はパワーアップアイテムの姿が見えぬようだが…。ククク。まさか人質の花男くんの近くで力を蓄えた我々相手に、素手のままで立ち向かえるとでも思っていたのか!? クックックックック!」


「フッフッフッフ。最近は負けがこんでいましたが、いかにヒーロー”ハチカヅキン”とはいえ、パワーアップアイテムもない状態では…フフフ、飛んで火にいる……アレですよ?」


 怪人”犬公方ツナー”まで珍しくカッコイイ感じのセリフを決め、ヒーロー”ハチカヅキン”の背後へ回り込み、怪しげな構えからパンチを繰り出そうと気勢を上げる!


「ガッハッハ! これで終わりだヒーロー”ハチカヅキン”! やれっ! ”犬公方ツナー”! ヒーロー”ハチカヅキン”を挟み撃ちにしてくれるわ!!」


「喰らえヒーロー”ハチカヅキン”! 『怪人”犬公方ツナー”正拳突き!』 とやあーーっ!」


ヒーロー”ハチカヅキン”危機一髪!


「くっ、ここでやられるわけにはいかない!! パワーでは負けてしまっているが、技を使えば……この窮地を乗り越えられるっ!! デリャアッ!!!」


 気合一閃、ヒーロー”ハチカヅキン”は、背後から怪人”犬公方ツナー”が勢い良く突っ込んでくるのと同時に、怪人”犬王モノー”の『犬王スティック』の力を左に受け流し、その場から素早く飛び退いたのだ!


「グワアアアア!」「げはああああ!?」


 真ん中にいたヒーロー”ハチカヅキン”が居なくなったため、前後で激突した”犬王モノー”と”犬公方ツナー”は無様にステージ上に転がった!


 その隙に、危機を脱したヒーロー”ハチカヅキン”はステージ端まで撤退し、十分に熱の取れた『中央に三連お椀が彫り込まれた唐草文様ブレスレット』、いや、『ご当地ヒーロー”ハチカヅキン”シルバーブレス!』を手に取ると、気合とともにその右手に装着する!!


シルバァアアアブレス、セットアップゥウウウ!


 ヒーロー”ハチカヅキン”が、新アイテムシルバーブレスをセットアップする時に流れる音声が左右両方のスピーアーからステレオ音声で鳴り響いた!


 珍しいことに、ステージのライトアップが赤や黄色などの派手な光線をバンバン使いヒーロー”ハチカヅキン”を盛り上げている!


 ワァアアアアアアッ!! 


 観客席も珍しいイルミネーションの乱舞に興奮気味だ!


 一方その頃、こんがらがっていた怪人達もようやく立ち直り、光あふれるヒーロー”ハチカヅキン”の勇姿を眩しげに見つめているのだった。


「ヌオオオオ!? ムムウ! パワーアップアイテムを手にされてしまったか!? しかし二対一の劣勢は覆せんぞヒーロー”ハチカヅキン”! いくぞ”犬公方ツナー”、プランB!! てやぁっ!」


「え、プランB? あっ、ああ、はい、行きますよヒーロー”ハチカヅキン”! プランB!! とうやー!」


 プランB。

 「困ったときは各自勝手に行動すること。頑張れ」と事前に決めていた怪人”犬王モノー”の作戦である。


 怪人2体はタイミングを合わせ、しかしてんでバラバラにヒーロー”ハチカヅキン”に攻撃を仕掛ける!


 本当にバラバラな分対処しづらい気がするぞヒーロー”ハチカヅキン”!


 怪人”犬王モノー”が二匹目のドジョウを狙い、先ほどと同じく大上段から振り下ろした『犬王スティック』を、ヒーロー”ハチカヅキン”はなんと『シルバーブレス』煌めく右手一本で『グワシッ!』と掴み止め、そのままの勢いで怪人”犬王モノー”を振り回し、ステージの端でスタッフを人質にしようとしていた怪人”犬公方ツナー”に投げつけるのだ!


「「ギャワアアアアアアアアアアアアアア!?!?」」


 2体の怪人はそのままステージの端へと転がり落ち、姿は闇へと消えていったのだ!


 戦いは終わったのだ。



「今日はとても危ないところだったが、新アイテム『ご当地ヒーロー”ハチカヅキン”シルバーブレス』のおかげで、なんとか助かったぞ! 『魅惑の輝石! 給料三ヶ月分の指輪のオーダーデザイン・無料お見積もり! 宝石のクルーズ』さんの尽力で出来上がったこのアイテムの素晴らしさ! ここだけの話、大まかなデザイン以外は全部お手伝いしてもらったのは秘密だ!! こんなオーダーデザインにとても強い店員さんのいる『宝石のクルーズ』では、皆様の夢の”世界でたった1つの宝飾品”を何時でもお待ちしているぞ! 良い子の皆は、大きくなってお嫁さんに指輪をプレゼントするとき、ぜひ相談してみよう! ヒーロー”ハチカヅキン”はまだお相手が…ゴニョゴニョだけど、皆はきっと大丈夫だ! ヒーロー”ハチカヅキン”もまだ諦めてはいないぞ!」

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