『高菜・からし菜・春菊・ミョウガ! マグロ・ブリ・シマアジなど盛りだくさん! 迎旬料理 八宝』
お酒は二十歳になってから!
飲み処『迎旬料理 八宝』
「いらっしゃいませね~。って、あらご当地ヒーローの”ハチカヅキン”さんじゃないですか。まあ近くで見ると立派な筋肉がきわだちますねえ。あ、お席は奥にとってありますのでどうぞ!」
女将の「斎藤 千帆さん」(年齢:お嬢さん)に筋肉を褒められて、ボディビルドが趣味のご当地ヒーロー”ハチカヅキン”は「ふふふ、ヒーローは身体が資本ですから!」と、とても嬉しそうに笑顔で答えるのであった!
和風で小洒落た作りの店内は、狭いながらも小奇麗で---店を作るとき最も腐心したのが「汚れない建材選び」だったとのことで徹底している---よくある飲み屋のようにテーブルがベタベタしてたりもせず、なにかいっそ清々しい雰囲気である。
「女将さん、とりあえず生…いや、任務中なので生オレンジジュースを一つ……。え? 季節の高菜の味噌漬けをご用意いただいて? しかも幻の酒『穂谷』---お隣の『枚方市』”最後の地酒”である---まで!? いや、これは参りましたなー! ゴクリ」
怪人”犬王モノー”(イヌオウモノー)との対戦を控えて飲むのはマズい、そう考えオレンジジュースに切り替えたヒーロー”ハチカヅキン”であったが、女将の「斎藤 千帆さん」の温かい心遣いには逆らいきれず、戦闘前だと言うのに高菜の味噌漬けをサカナに幻の酒『穂谷』をたしなんでしまうのだ!
「……へぇ~、ヒーローって怪人と戦うだけじゃないんですねえ。子供達のためにクリスマスツリーを作ったり、道路を清掃したり、火の用心を回ったり……この駅前商店街のために本当に有難うございますね」
「いやあ、このご当地ヒーロー”ハチカヅキン”にかかれば、なにほどのことでもありません!(笑顔) あ、これは申し訳ない、ではまたいただきまして… ゴクゴクリ」
『ご当地ヒーロー”ハチカヅキン”』の活動をお話ししながら、残りの高菜の味噌漬けをぱくつくヒーロー”ハチカヅキン”、それに耳を傾ける女将の「斎藤 千帆さん」はニッコリと朗らかな笑みを浮かべながら、楽しいトークの途中で空になったコップに『穂谷』を注いでくれるのである。
飲み処『迎旬料理 八宝』は、清潔な店内とステキな女将が売りなのだ!
……そんなこんなで楽しい時間を過ごしたヒーロー”ハチカヅキン”は、「おみやげに」と持たされた幻の酒『穂谷』とタッパー入りの『高菜の味噌漬け』をたずさえ、『高菜・からし菜・春菊・ミョウガ! マグロ・ブリ・シマアジなど盛りだくさん! 迎旬料理 八宝』と書かれた細長いステッカーを額に巻いて、宿敵の怪人”犬王モノー”が待つ『スーパー億万』駐車場特設ステージまで、良い気分の千鳥足で駅前商店街を徘徊するのだ!
「ドーモスミマセン」「大丈夫ですか?」「ハイ! ア、ドーモスミマセン」「ガシャン!(『花屋ふらわぁ』の看板)」「ハイ、スミマセンスミマセン」
ヒーロー”ハチカヅキン”は看板や花壇や道行く人とのランデブーしながらも、なんとか『スーパー億万』駐車場特設ステージに辿り着くと、コタツの中で花男くん(フレンチブルドッグ 8才 ♂)の身代金を要求している怪人”犬王モノー”(イヌオウモノー)の背後に忍び寄り、「”犬王モノー”! 後ろ後ろー!」との客席からの声に「シーッ!」と静粛をお願いしながら、湯呑みに幻の酒『穂谷』をドボドボ注ぎ、『高菜の味噌漬け』と割り箸をその横にそっとセットする!
オチャウケニイカガデスカー!
お茶受けに高菜の味噌漬けという、昭和風情タップリすぎる光景がコタツの上に展開されたような音がした。
「オオッ! いつの間にやらお茶セットが出来上がっているではないか。”犬公方ツナー”か戦闘員Aか…実家が農家だと言ってたから戦闘員Aか? しかもお茶まで入れ直しているとは気が利いている、いずれ部下が増えた暁には、戦闘員Aの下に一人付けてやらんとな。戦闘員Bはもう少し……悪の組織に脳筋系の部下は必須なんだが…ウウム」
怪人”犬王モノー”は悪の組織運営に少し悩みつつ、背後で飲みすぎて倒れ伏したヒーロー”ハチカヅキン”に気づかぬまま、高菜の味噌漬けをモグモグするのである。
「フゥウウム!? これは見事な浸かり具合。まるで楽しい時間を演出してくれるやり手の女将がいる小料理屋で出されてもおかしくない一品! そして味噌でしょっぱくなった口の中に、隣にセットされた湯呑み一杯のお茶を豪快にシューーーート!!!! ブッホォオオオオオオオオオオオッ ッゴッホゴッホゲッホ いや ゴッホ 酒!? オッホッ ウン、酒か!? いや、まさか日の高いうちから湯呑みに酒がいっぱいとは思わなかったぞ戦闘員A! ウム、気は利いているんだが、ちょっと先に一言頼むぞ…… ゴクリゴクリ プハァッ! ムシャムシャ 美味い!」
お茶だと思ってた所にまさかの酒、その衝撃にむせ返りながらも、怪人ならではの立ち直りの速さを見せた怪人”犬王モノー”は、「ハッハッハ!」と上機嫌で高菜をつまみながら酒をがぶ飲みするのだ!
その膝の上から、なにかに気付いた花男くんがするりと抜け出し、怪人”犬王モノー”の背後に酒瓶を抱えて丸まっているヒーロー”ハチカヅキン”を発見する。
フン、フンフン ペロペロペロ フッゴフゴ
「グ、グムゥ…むにゃむにゃ ゴロン」
花男くんが、嗅いだり舐めたり鼻で突付いたりしていると、ヒーロー”ハチカヅキン”が抱きかかえていた酒瓶が転がり落ち、怪人”犬王モノー”の隣まで転がっていったのだ。
「ム、こんな所に酒瓶が…なにっ!? これは隣の枚方市最後の地酒『穂谷』か!? 道理で何か親近感のある味だと思った。いや、この寒さには丁度いい、もう一杯……ゴクリ 更にもう一杯ぐらいいかな? ゴクゴクリ プハーッ」
高菜が美味い! 酒が美味い! 寒さも相まって、暖を取るには丁度いい酒と肴が止まらない!
その背後ではヒーロー”ハチカヅキン”がピクリともせず、花男くんを抱きかかえて---花男くんはとても暖かい---眠り続けている。
「ヒーロー”ハチカヅキン”はー遅いなぁー。ゴクゴク ヒック なにかいいことありそうな~♪ かねのなる~まっちぃ~♪ ふれあいの~もと~♪ っと、花男く~んは、どこいったかな~?」
フゴォ…フゴォ…
某『円広志』氏作詞作曲の駅前商店街のテーマソングまで口ずさみ始めた怪人”犬王モノー”が、いつの間にか消えた花男くんの気配を追い求め辺りを見回せば、背後でグンニャリと飲み潰れているヒーロー”ハチカヅキン”と、一緒になって眠り込む花男くんを発見するのである!
「……!? グ、グワッッハッハッハ! やったぞー! も、もはやなにもしない内にご当地ヒーロー”ハチカヅキン”を倒してしまっているではないか! わらしはもしかしたら神なのかもしれん!! ばんざーーーいばんざーーい! ゴックリ ゴックリ ハァー。 ヒーロー”ハチカヅキン”もたーしてしまったし、たかなもたべちゃったし…もうわたしがせかいいちだなわはははは うー スヤァ……」
勝利の余韻とともに、そのまま仰向けに倒れた怪人”犬王モノー”はヒーロー”ハチカヅキン”にもたれ掛かり、その隙間に花男くんを「フゴォ…」と挟み込んだまま眠りについてしまった。
戦い---飲み会---は終わったのだ。
ナレーション
「飲み処『高菜・からし菜・春菊・ミョウガ! マグロ・ブリ・シマアジなど盛りだくさん! 迎旬料理 八宝』では、季節の野菜を使った旬の料理と、酒の肴がおすすめです! 清潔にとっても気を配った綺麗で明るい店内では、料理自慢の女将「斎藤 千帆さん」とのふれ合いトークが楽しめてしまい、ご当地ヒーロー”ハチカヅキン”も飲みすぎてしまったようです! でもそんな時も、皆の声援があれば大丈夫! さあ良い子のみんなー! ヒーロー”ハチカヅキン”に大きな声援を送ってあげてー!」
「「「わあああぁああ! ヒーロー”ハチカヅキン”がんばれえぇええ!!」」」
声援がヒーロー”ハチカヅキン”や怪人”犬王モノー”を直撃する……が、二人共ピクリとも動かないのだ!
会場は静まり返ったのである。
ナレーション
「……えー。ゴホンッ。で、では、今日来てくれた良い子の皆には、特製花男くんステッカーを差し上げまーす! お酒は二十歳になってから、美味しい料理とお酒があっても、皆は飲み過ぎに注意しようねー! お姉さんとの約束だよ-!」
その後、ヒーロー”ハチカヅキン”と怪人”犬王モノー”には暖かい毛布が掛けられ、花男くんは寝ぼけたままスタッフの手によりお家へ運ばれていった。
スタッフの戦いも、終わったのだ。
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