『ダンス、手芸、園芸教室! お茶だけの参加もどうぞ。 参加資格は65歳以上の方ならどなたでも! NPO法人 老年集いの会』
ご長寿早押しクイズに出たいです
「とぅりゃぁ~!」
『斎藤さん(91歳)』の絞りきった気合とともに投げられた怪人”犬王モノー”(イヌオウモノー)は、ステージ端でロープに跳ね返されたように戻ってくる!
そこへ『斎藤さん(91歳)』が枯れ葉のようなステップで舞い寄り、枯れ木のような逆水平チョップを叩きつけるのだ!
リキドウザンンンン!
昭和の大レスラー『力道山』の風情を感じる打撃音が、スピーカーから会場へ向けて流れ出た。
チョップを食らった怪人”犬王モノー”が悲鳴を上げて仰向けに倒れ伏す!
「グ、グオオオオ! まるで丸太を叩きつけられたような衝撃だー! 追撃を受ける前に大勢を立て直さなければ……。 って、ウワァアアアア!? さ、斎藤さん!?」
もぞもぞと立ち上がろうとして目を剥いた慌怪人”犬王モノー”の視線の先で、『NPO法人 老年集いの会』最年長『斎藤さん(91歳)』が、「初めての舞台」ということで疲労が出たのか、息を切らして膝をついてしまっている!
……だが、幸いにも大事ではないようではある。
抱え起こす怪人”犬王モノー”の耳元で『斎藤さん(91歳)』が何事か呟いている。
「フ、フゥ。 ム? ……なになに。「ワシは、『老年集いの会』四天王でも最年長。たとえワシを倒したとて、他の若い四天王が、きっとお前を倒すのだー。ふはーふはーはー!」……だと!? フハハハッ! この怪人”犬王モノー”に一太刀浴びせたのは褒めてやる。だが、他の三人も貴様ほどの腕前かどうか、まあ確かめてやろうではないか!」
そう言いながら『斎藤さん(91歳)』をスタッフにゆだねた怪人”犬王モノー”は、マントをひるがえしステージ脇に控える残り三人の刺客に「キッ」と視線を送るのだ!
本日は『NPO法人 老年集いの会』よりご提供(?)いただいた『斎藤さん(91歳)』『吉田さん(90歳)』『重村さん(87歳)』『佐藤さん(85歳)』の四名様である!!
『NPO法人』とは、「お金儲けが目的じゃない、非営利の会社・団体」のことである。
そして、駅前商店街で活動する『NPO法人 老年集いの会』は、この地域に住んでいる年齢65歳以上の方なら誰でも参加でき、コミュニケーションやダンスや手芸、園芸など、趣味を楽しむことのできる憩いの場をガッチリ作り上げていらっしゃる団体さんだ!
平均年齢はなんと70歳。
駅前商店街にほど近い『老人憩いの場 つのだ将棋会館』と双璧をなす、お年寄り御用達パワースポットなのである。
先日ヒーローショーの事をお話したところ、「うちの名物は老人しかありませんから~。一番生きの良いのをみつくろって、お出ししましょ~!」と快諾をいただき、最も生きの良い=長生きされている『斎藤さん(91歳)』『吉田さん(90歳)』『重村さん(87歳)』『佐藤さん(85歳)』の年長四人組が選抜されたのだ。
『スーパー億万』駐車場特設ステージでは、第二の刺客『吉田 玉江さん(90歳)』と怪人”犬王モノー”との熾烈な『刺繍で自分の名前縫い取り対決!』が行われている。
「昔はねぇ、どんな服でも靴下でもねぇ、穴が空いたらこうやって繕い繕いしたもんなんぇ。あらー、なんか可愛い子だねえ、よいしょ…よしよし。んー」
小癪にも少し裁縫ができる怪人”犬王モノー”だったが、流石に歴戦の『吉田さん(90歳)』相手では分が悪い。
そのため急遽膝の上で抱っこしていた花男くん(フレンチブルドッグ 8才 ♂)を、『吉田さん(90歳)』の膝の上にそっとおすそ分けしたのだ!
「グハハハハ! 悪の怪人”犬王モノー”、勝利のために容赦せんぞ! あ、駄目だよ花男くん、針を使ってるからね、暴れないようにするのだ」
「えぇ? ふれんちぶるどっぐ? そういう犬なのねぇ」
もう大分『刺繍で自分の名前縫い取り対決!』はどこかへ追いやられていた。
しかしそんなこんなやっている内、大幅に手抜きされて縫い目が少ない『犬王モノー』の名前の刺繍---縫い目が16個しかない---が先に出来上がってしまい、『吉田さん(90歳)』の敗北となった。
会場からは盛大なブーイングの嵐であった。
ちなみに『吉田さん(90歳)』の名前の針の縫い目はゆうに100を超える立派なもので、会場からは盛大な拍手を頂いていた!!
「ヨ、ヨーーーーシ! この怪人”犬王モノー”にかかれば四天王なぞおそるるに足らん! ドーンと来い! ドーンと! って…む? な、なにか一人減っておられるような気がするが…」
戦う前から不安である。恐るべし四天王。
「ふわっふわっふわっ! 『重村さん(87歳)』は、病院に行く日なのを忘れていたので帰られたわ! だがこのー四天王最後のひとり、『佐藤 永吉』は倒せんぞー!!」
ご家族の方に手を引かれ病院へ向かう『重村さん(87歳)』が、会場の端で手を振っていらっしゃる。
ご健勝をお祈りしております。
刺客を三人まで退けた怪人”犬王モノー”の前に現れたのは、最後の刺客『佐藤さん(85歳)』であった!
「フム。では勝負はなにで付ける?」
「この『佐藤 永吉』、将棋の腕前で、怪人退治をしてみせようぞー!」
「ハッハッハッハッハ! 面白い、かかってくるが良い。この怪人”犬王モノー”は将棋も多少は齧ったことがあるのだ!! なまなかな腕で勝てると思うな! ゆくぞっ!!」
……25手で怪人”犬王モノー”が負けた。
『佐藤さん(85歳)』はアマチュア3段であった。
「駒の動かし方を知っている」だけの怪人”犬王モノー”では、なんというか……アレであった。
だが一敗した怪人”犬王モノー”が、渾身の泣きでもう一戦をに申し込むと、『佐藤さん(85歳)』はニッコリと笑いオーケーしてくれたのだ!
次は15手---やぐらとかで防御を固めてもくれなくなった---で負けた!
さらに怪人”犬王モノー”が渾身の土下寝からのもう一戦、今度は詰みまで17手と奮戦したのだが……惜しくも敗北を喫してしまう怪人”犬王モノー”である!
ワーパチパチパチパチパチ!!
あまりにもスッパリ負けるので、むしろ客席は大受けである。
「ウギャアアアアア! って、ちょっと待った! いや、幾らなんでも素人に3段とかは無いんじゃないのではないか!? しかも最後の方は飛車と角を無しのハンデとか貰ったはずなのだが……なんで私は負けてるのだ!? な、納得がいかんが…負けは負け。あ。そうだ、だが私は四天王に三勝している! これは一敗と差し引いて私の勝利で良いんではないかな? な?」
さすがは悪の怪人である、引き際が非常に悪い。
「あー。じゃあワシも三勝したから、引き分けかのー?」
「エ?」
「いや待てよぉ。どうせだからのあと一回、飛車・角・金・銀落としで決着をつけるのも良いかもしれんなー!」
怪人”犬王モノー”の見事な藪蛇である。
ステージ上のコタツの上では、早くも『佐藤さん(85歳)』が二人分の駒を並べ始めており、事態はもはや一刻の猶予もない!
「ガ、ガッハッハッハッハ!! この勝負引き分け! 引き分けで良いのだ! むしろ勝ちとか負けとか、そんな細かい所に目を向けるべきではなかったのだ! よく考えてみれば、『NPO法人 老年集いの会』の恐るべきご長寿四天王がこの怪人”犬王モノー”と互角の戦いを演じたのだ、その凄まじさをたたえ、ここは私が身を引くべきであろう!! だが覚えているが良い!! この怪人”犬王モノー”が年を取れば、いずれ『老年集いの会』へ入会する時が来るのだということを!! 貴様らの敗北はその時まで取っておいてやろう! 首を洗って待っているが良い! さらばだーっ!」
周囲を煙に巻く長セリフで勝負をウヤムヤにごまかした怪人”犬王モノー”は、ご長寿四天王(一人欠席)に一礼して去っていったのである。
戦いは、終わったのだ。
「あ、忘れておったわ! 『ダンス、手芸、園芸教室! お茶だけの参加もどうぞ。 参加資格は65歳以上の方ならどなたでも! NPO法人 老年集いの会』では、駅前商店街の付近の方でなくても、どなたでもご参加オーケー!! 人数の関係もあるとのことなので、来られる前はお電話などご一報をっ! この怪人”犬王モノー”もいずれ必ず立ち寄らせてもらうぞ!! 覚えておれー!」
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