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挿入・??? 彼方の記憶
ドクンと、心臓が跳ねた。
ドクンと、心臓が脈打った。
それは、これから生まれいづる、奇跡の胎動。
――お前は、何を望むのか。
天使は、彼に一つ、願いを言えという。
彼は、己の胸に手を当てた。すると、あの夜に消えたはずの、本来の心臓があった。けれど、そこに、彼女はいない。
ならば、そんな世界に、彼は価値など見いだせない。
であれば、彼が望む世界は、ただ一つ――。
☆
――馬鹿ね。あなたは、わたしがいない方が幸せになれるわよ、きっと。
――そうかもしれんな。だが残念ながら、俺は恋で人が変わっちまうタイプらしい。
――本当、馬鹿な男ね。でも、あなたが馬鹿なのは今に始まったことではないもの。仕方がないから、わたしが傍にいてあげる。
――ああ。傍にいろ。俺たちは、一人では弱いから。




