第四の装備――《セラフィム・ギア》、降臨
それは、空から来た。
遺跡ダンジョン最深層。
本来なら天井など存在しないはずの空間で、突如として光が満ちた。
「……え?」
『警告。上空、未確認高密度魔力反応』
マリーが顔を上げた瞬間、視界が白に焼かれた。
「まぶしっ!?」
『視覚センサー一時停止。いや、これは……』
光は羽根の形を取っていた。
幾重にも重なる、純白の光翼。
金属と魔法が融合した、神話的なシルエット。
――降臨。
そこに立っていたのは、一人の青年だった。
白銀の鎧、背中には六枚の光の翼。
足は地面に触れていない。
「我は選ばれし守護者」
声までやたら澄んでいる。
「第四世代知能兵装――
《インテリジェンス・セラフィム・ギア》」
『……来たか』
「来ちゃったわね……」
マリーが目を細める。
いや、細めても無理だった。
「ちょっと、何この光量!?」
『聖属性魔力、最大展開中だ』
「常時なの!?」
青年は優雅に微笑んだ。
「闇を祓うには、光が必要だろう?」
「限度がある!」
次の瞬間、彼は消えた。
――否、上にいた。
『高速上昇、三次元機動!』
空中を縦横無尽に駆ける。
翼が羽ばたくたび、光が炸裂する。
「うわっ、影すらできない!」
『影を消すことで、敵の隠蔽を封じる設計だ』
「味方の視界も消えてる!」
そこへ、聞き慣れた重い足音。
セリアと《インテリジェンス・フルプレート》が現れた。
『……目が潰れる』
「同感よ」
さらに。
「おやおや……これはまた、実に尊い」
バタフライ仮面の男、ルシアンが壁にもたれて拍手していた。
「美しい! 完璧な“見せ装備”だ!」
『黙れ変態』
三者三様の反応をよそに、セラフィム・ギアは高らかに宣言した。
「我は最強。
地上戦、空中戦、対魔王、対神格――
すべてを想定している」
『出力……測定不能』
「でも」
マリーは涙目で言った。
「本人、見えてる?」
青年は一瞬、沈黙した。
「……聖光が強すぎて、正直、前が」
『やはり』
「設計上の欠陥だ」
「欠陥で済ませないで!」
彼はゆっくりと降下した。
いや、降下というより迷子だった。
「壁……どこだ?」
「右! もっと右!」
『違う、左だ』
「ああっ、まぶしっ!」
――激突。
光が爆発し、全員が目を覆う。
沈黙。
「……最強なのは分かったわ」
マリーが言う。
「でもこれ、単独行動専用でしょ」
『同意する』
『協調性ゼロだ』
ルシアンが肩をすくめる。
「いやぁ、最高だ。
神々しさと実用性の乖離。芸術だね」
『君は黙っていろ』
セラフィム・ギアは、少しだけ俯いた。
「……我は、間違っているのか?」
その問いに、マリーは剣を担ぎ、笑った。
「強すぎるのも考えものってだけよ」
『制限すれば、良い装備だ』
『光量を十分の一にするだけでな』
「十分の一……?」
青年は目を輝かせた。
いや、さらに光った。
「なるほど! 調整だな!」
「ちょっと待って、今以上は――」
世界が白に染まった。
こうして、
最強だが眩しすぎる天使装備が加わり、
マリーの冒険はついに――
「ねえ……普通の装備って、もう出てこないの?」
『可能性は低い』
『極めて低い』
平穏とは程遠い方向へ、
光り輝きながら突き進むのだった。




