王女の盤面
夜明け前。
漆黒の残滓が世界の端へと引き絞られていく、最も深い闇の時間だった。
「スーラ・タワー」の巨大な入口に、三人の影が音もなく立っていた。
ロドはすでに硝子の面具を深く被り、機体の把手に無骨な両手を置いたまま、表情を隠して遠い空を見つめていた。
エリルは自らの首元に下がるペンダントに細い指先で一度だけ触れ、その温もりを確かめるようにしてから、静かに手を離した。
カイは、静止するタワーの白い壁をじっと見つめていた。そこに刻まれた幾何学的な古い紋様が、いつもより深く、静かに明滅しながら脈打っている。
不思議なほど、胸の奥はひどく落ち着いていた。
この先に待つ世界の深淵、女王の盤面。本来なら恐怖で狂いそうになるはずの境地なのに、今の彼の内側は凪いだ水面のように静かだった。
まるで、自分がこの世に生を受けたあの遠い漁村の夜から、ずっと前からここへ来るつもりで生きてきたかのような、奇妙な必然性すら感じていた。
「カイさん」
背後から、不意に少年の声が響いた。ルウだった。
彼は廊下の奥から、白い息を吐きながら小走りでこちらへと駆けてきていた。
「……気をつけて」
「ああ」
「ちゃんと、帰ってきてください。絶対に」
カイは少しの間、自らの行く末を盤面と天秤にかけるように考えてから、力強く頷いた。
「帰ってくる」
カイは機体に乗り込む直前、一度だけ本能的に上を見上げた。
タワーの上層、アルカの部屋の窓。
厚いカーテンが数センチだけ、細い隙間を開けているのが見えた。
その暗い隙間の向こう側に、小さなアルカのシルエットが真っ直ぐに立っていた。
視線が、虚空で真っ向から交わった。
アルカは何も言わなかった。何かを叫び、懇願することもなかった。
ただ、一度だけ、深い信頼を込めるように静かに頷いた。
カイもまた、短く首を縦に振ってそれに応じた。
機体が、ついに地響きを立てて走り出した。
まだ誰も目覚めない夜明けの静まり返った路地を、結晶の放つ蒼白い光が滑るようにして切り裂いていく。
街の境界線を完全に抜け出すまでの間、車内の受信機からは、何度も不気味な雑音の切れ端が流れていた。
『――また昨夜――未明――原因不明の――集団での――』
『――これまで、優しかった人が、突然狂ったように暴れだし――』
まだ暗い市場の前を猛然と通り過ぎた時、カイの目は捉えていた。
そこには、確かにたくさんの人間がいた。けれど、誰一人として言葉を発する者がおらず、市場は死んだように静まり返っていた。誰もが買い物をやめ、同じ方向を――最果ての白い光が昇る方角を、操り人形のようにじっと向いて立ち尽くしている。
エリルがそれを見て、隣で小さく息を呑んだ。
「……線が、全部。世界中のすべての因縁の線が……同じ方向へ、無理やり引っ張られてる」
目指すべき場所は、ここから遥か遠い。けれど、二人の盤面師の目には、そのすべての線が収束していく中心地がありありと視えていた。
やがて、人の営む街の気配が完全に遠ざかった。
タイヤの踏みしめる音が、均一な石畳から湿った土の道へと変わる。周囲に黒い樹木の影が増え、遮るもののない空が圧倒的な広さで広がっていった。
流れ込んでくる風の匂いが、劇的に変わる。
それは、乾いた古い石の匂いだった。カイがこのタワーへ初めてロドに連れてこられた、あの運命の夜と、全く同じ匂いだった。
あの孤独な夜から、自分はずいぶん遠いところまで歩いて来たのだと、カイは胸の奥で静かに思った。
ロドが、激しく機体を制動させ、止めた。
そこは、世界の終わりを予感させるほどに広大な空間だった。
見渡す限りの草原の端に、神話の時代から取り残されたかのような、白く巨大な遺構が延々と続いている。
中ほどでへし折れた巨大な石柱、びっしりと青苔の生い茂った巨大な礎石の群れ。
それらは完全に壊れ、朽ち果てているはずなのに、その空間だけがあまりにも異質で、空気が張り詰めていた。
ずっと前から、この世界の始まりの時から、ここで何かが自分たちを静かに待っていたかのような、圧倒的な静けさが五感を支配する。
エリルが、ゆっくりと助手席の扉を開けて降りた。
古代の遺構へ向かって、震える足を一歩、踏み出す。そして、何かの境界線を越えたように足を止めた。
「……ここだ。ここが、入り口」
ロドが機体の中から、静かに二人を見つめた。
「ここから先は」
その声は、驚くほど低く、静かだった。
「タワーの執行官である俺には、どうしても入れない領域だ」
カイはロドを振り返り、その硝子の面具を見つめた。
「……外を頼む」
「ああ」
「女王の変異に呼応して、やつら(汚染者)がここに集まってくるかもしれない。だが、そこから先は一歩も通さない。俺がここで、すべてを止める」
エリルがロドを見た。
「ロドさん……」
「行け」ロドは前を向いたまま、固い声で言い放った。「早ければ早いほどいい」
二人は頷き、背を向けて遺構の奥深くへと足を踏み入れた。
足元で、青々とした草を踏みしめる音がする。脆くなった古代の石が、靴底の重みで小さく鳴いた。
だが、中心部へと近づくにつれて、彼らを取り巻く世界の物理法則が、少しずつ、確実に変質していった。
色彩が急速に薄くなり、世界がモノクロームへと近づいていく。風の音も、自らの足音さえも遠ざかり、草の青臭い匂いすら完全に消滅した。
これは――もっと、古い。人間が生まれるよりも遥か昔の、もっと、静かな。剥き出しの「世界の理」そのものだった。
気づいた時には、彼らはすでに現実の世界にはいなかった。
無数の、何千、何万という目も眩むような「光の線」が、全方位に向けてどこまでも交差する絶対的な空間。
天井もない。床もない。上下左右の概念すら消失し、ただ純粋な「因縁の線」だけが網の目のように世界を構築している。
エリルが、その圧倒的な光景に美しく息を止めた。カイもまた、その場に釘付けになった。
見覚えのある線が、その中にいくつもあった。
あの大盤宮で命を散らした、先生の悲しい線。タワーの執行官として泥をすすり続けた、ロドの強固な線。あの雨の日に出会った、名もなき少女の儚い線。
そして――エリルという少女の持つ純白の線が。ずっと、ずっと昔の、世界の始まりの時から、自分自身の持つ漆黒の線と、複雑に、美しく絡み合っていた。
喉の奥で、熱い何かが一気に詰まったような感覚があった。
ずっと、最初から知っていた気がした。この魂の、あまりにも狂おしい絡まり方を。
「……これが」
カイは掠れた声を、空間に向けて絞り出した。
「すべての、因縁なのか」
「……うん」
エリルは涙を堪えるように静かに言った。「全部、ここにある。世界のすべてが」
エリルは覚悟を決め、その無数の光の線の中へと、自らの意識を鋭く滑り込ませて読み始めた。
カイは彼女を信じ、沈黙の中で黙ってその背中を待った。
「……見える」
やがて、エリルが呟いた。その瞳が、世界の核心を捉える。
「クリスタルが、女王の底で、何を求めているか……その答えが、読めるわ」
「教えてくれ」
「真ん中へ行って、カイ」
エリルは振り返り、まっすぐにカイの目を見つめた。
「あとは、あなたが届ければいいの。その最果てへ」
「何を、届ければいい」
「あなた自身を」
カイは少しの間、その言葉の重みを噛み締めるように間を置いた。
「……それだけか」
「それだけ」
エリルは切なく、だが揺るぎない確信を込めて頷いた。
「でもね、それが……この世界を救う、全部の答えだと思う」
――怨憎会苦、求不得苦、愛別離苦、五蘊盛苦。
世界を構築していた最初の「四つの苦しみ」の駒は、気づけば彼らの目の前から静かに消滅していた。拍子抜けするほどにあっさりと、それは霧散した。
最初の四つは、大盤宮での先生の時と全く同じだった。
アルカがその首のペンダントから放つ、世界の因果を映し出す鏡の光。それが歪みの裂け目の座標へと正確に届けば、世界の綻びはそれだけで音を立てて崩れ去り、満たされていった。
しかし。
残りの四つの駒は、決定的に違っていた。
――生、老、病、死。
四つの巨大な概念の駒が、盤面の四隅へと激しく散る。
その地響きを立てるような質量を持った動きを見ただけで、カイの全身に戦慄が走った。もう、感覚で分かってしまった。さっきまでの、個人の歪みが産んだ駒とは、次元が全く違う。
これは、近づいて力任せに壊せるような、そんな生易しい構造のバグではない。見た瞬間に、網膜を通じて骨の奥底まで、その圧倒的な「絶望」の質量が分かってしまった。
突如、四つのうちの一つが、すっと後方へと大きく退いた。
『死』の概念が、静かに後ろへ引く。
代わりに、残りの三つの駒が、磁石のように猛烈な速度で寄り集まった。
『生』と、『老』と、『病』が、互いのルールを噛み合わせるようにして、奇怪な三角形の陣形を組む。
その瞬間、巨大な盤面の中央が、血のように禍々しく赤く揺れた。
「散れ!!」
背後から、アルカの鋭い悲鳴のような声が飛んだ。
カイ、エリル、アルカの三人が、本能的な衝動のままに異なる方角へと身体を弾かれ、跳ぶ。
次の瞬間、視界のすべてを焼き尽くすような、悍ましい劫火が空間を走った。
それは一直線の炎などではなかった。
盤面そのものが、底からドロドロに焼けるみたいに、圧倒的な熱量が空間の隅々へと一気に広がっていく。
カイの頬の皮膚を、超高温に焼けた空気が容赦なく掠め、焦げた匂いが立ち込める。
もし、アルカの声から一瞬でも反応が遅れていたら、その肉体は消し炭にすら残らず、そこで終わっていた。
その熱い火が完全に消え去る前に、四つの概念はもう、目まぐるしく次の陣形へと散っていた。
今度は、『老』が後方へと退く。
代わりに、『病』と、『死』と、『生』の三つが中心へと鋭く寄る。
地が、不気味に光った。
見たこともない青白い光の筋が、稲妻のように足元を激しく走り抜ける。
一拍の遅れ。直後、空間全体を震わせるほどの超高電圧の電流が、地表から天井に向けて垂直に激しく跳ね上がった。
「跳んで!!」
エリルの悲痛な叫び声と、カイの肉体が上空へと跳躍した動きは、完全に同時だった。
彼らがつい先ほどまで踏みつけていた場所を、容赦のない破壊の光が完全に引き裂き、空間を粉砕していく。
着地と同時に、駒はまた四隅へと散る。
間髪入れず、今度は『病』の概念が退いた。
中心に、『死』と、『生』と beauties である『老』が急速に寄る。
今度は、どこからともなく白い、不気味な物質が盤面の底を這うようにして溢れ出してきた。
それは、水だった。
けれど、ただの水ではない。彼らの生命力を吸い上げ、足場だけを完璧に奪い去るための、薄い膜のような、底冷えのする意思を持った水だった。
勢いよく着地し、踏み込んだカイの足が、その薄い水の膜に絡め取られて激しく滑る。
「くっ……!」
カイは体勢を急激に崩しかけ、そのまま絶望の淵へと滑り落ちそうになる。
その危機に、アルカが不可視の構造の何かに小さな手を突っ込み、自らの身体の肉を軋ませながら、無理やりその崩壊の連鎖を止めた。
四つの普遍的な苦しみが揃うと、この世界には、どこにも逃げ場がなかった。
火が、すべてを焼き尽くすために来る。
電流が、すべてを粉砕するために来る。
水が、すべての足場を奪うために来る。
死に物狂いで避ける。けれど、これまでの方法では、どうしてもその駒を消すことができない。
「エリル!!」
カイは滑る足場を踏み締め、叫んだ。
「読んでる……必死に、この因縁を読んでるわ!」
エリルは奥歯を血が出るほどに食いしばり、その美しい瞳を限界まで見開いていた。
「でも……入れない! 個人の歪みじゃないから、どこへ救いの駒を打てばいいのか、その座標が、まだどうしても見えてこない……!」
絶望の連鎖の中、またしても四つの概念が四隅へと散った。
今度は。
『生』の概念が、静かに後方へと退いた。
代わりに、『老』と、『病』と、『死』の三つが、おぞましい密度で中央へと寄り集まる。
カイは次の猛攻に備え、全身の筋肉を極限まで硬直させて身構えた。
火が来るか。電流が来るか。それとも、あのすべてを呑み込む水が来るのか。
――だが。
何も、物理的な現象は来なかった。
空間を焼き尽くす火も。肉体を裂く電流も。足場を奪う水も。何も現れない。
その代わり。
形のない、圧倒的な「声」だけが、空間のすべてを埋め尽くすようにして押し寄せてきた。
それは、物理的な武器ではなかった。
視覚的な形も、一切持っていなかった。
人間が、この世に生を受けてから、絶対に避けることのできない――老いることの、病むことの、そして死んでいくことの。
その生命が抱える根源的な「苦しみ」そのものが、巨大な濁流となって、彼らの脳内へと直接流れ込んできたのだ。
「あ、あああ……っ!!」
両手で耳をどれほど強く塞いでも、全く意味がなかった。
それは鼓膜を震わせる音などではなかった。
もっと、生命の奥底へ。魂の、最も柔らかい胸の奥へと、直接届き、内側から精神を破壊していく絶望の波動。
エリルが耐えかねて、その場に激しく膝をついた。
アルカの小さな手のひらが、かつてないほどにガタガタと、恐怖に震えた。
カイもまた、前に進めようとした足が、鉛を流し込まれたようにピタリと止まる。
呼吸が、急激に浅くなっていく。
ただそこに立っているだけで、自らの魂の本質が、ガリガリと無慈悲に削り取られていくのが分かった。
やがて、世界を呪うような悍ましい叫びが、嘘のようにピタリと止んだ。
概念の駒が、また四隅へと散る。
死が退けば、火が来る。
老が退けば、電流が来る。
病が退けば、水が来る。
世界は、その地獄のようなループをただ機械的に繰り返していた。
それは、ただ無秩序に暴れているわけではない。
四つのうち、明確に「一つが引き」、残りの「三つが組み合わさる」ことで、この世界を滅ぼす絶対的な破壊の現象へと昇華されているのだ。
けれど、消せない。
その絶対的なルールの前に、彼らは消せないまま、ただ確実に、一歩ずつ死へと削られていく。
「アルカ! 何か、何か突破口はないのか!」
「……まだ、まだ完全には分からない!」
アルカは血を吐くような思いで、その巨大な盤面を睨みつけていた。
その瞳だけが、絶望の濁流の中で、何か一筋の、奇妙な構造の違和感を狂ったように追い続けている。
そして、またしても『生』の概念が後方へと退いた。
中心に、『老』と、『病』と beauties である『死』が寄る。
あの、魂を削り取る根源的な「叫び」が、空間に押し寄せてきた。
二度目だった。
老いることの、病むことの、死ぬことの、圧倒的な絶望。
――その時だった。
激しい叫びの渦中、膝をついていたエリルが、弾かれたように顔を上げた。
「……生が」
その瞳が、驚愕に美しく見開かれる。
「あの、おぞましい叫びの中に……『生(生きること)』の駒だけが、いない!」
カイの脳裏に、電流のような直感が走った。
叫びに、あの駒は加わっていない。いや――
加われないのだ。
「また、外れてる……! 一度目の叫びの時も、そして、今の二度目の時も!」
エリルは地面に膝をつき、激しい熱に耐えながら、狂おしく叫んだ。
「あの絶望の叫びの時だけ……『生』の駒だけが、どうしてもあの三つの地獄の中に入れないのよ!」
不意に叫びが止み、世界の底に、一瞬だけの完全な静寂が落ちた。
アルカが、その真意を悟ったように、低く、震える声で言った。
「――そういうこと、か」
「老いることも、病むことも、死ぬことも……女王のシステムは、すべてを『絶望』の同義語に変えて、完全に否定することができる」
「でもね、この世界に『生きること』、存在することそのものだけは……絶対に違う」
光の海の遠く、四隅の遥か彼方で、『生』の駒が、たった一つだけで寂しく、だが厳かに浮いているのが見えた。
「女王がどれほどこの世界の終わりを、末法を望んだとしても」
「この世界に何かが『存在している』というその厳然たる事実だけは、彼女の絶望のシステムをもってしても、完全には否定しきれない」
「だから……そこだけ、女王のシステムが、どう処理していいか戸惑って拒絶を起こしているのよ」
四つの駒が、またしても激しく散る。
火が来る。それを死に物狂いで散って避ける。
電流が来る。泥を這うようにして上空へ跳ぶ。
水が来る。消えかける意識を繋ぎ止め、必死に踏みとどまる。
「つまりね」
アルカは、前を見据えたまま力強く言葉を紡いだ。
「女王は……この世界に『生きること』の輝きだけは、どうしても壊せなかったのよ!」
――壊せなかった。
その、あまりにも美しく、力強い言葉の響きが、カイの薄れゆく胸の奥深くへと、決定的な錨となって深く、深く沈んでいく。
また、あの魂を削る叫びが来る前の、ほんの一瞬の、奇妙な静寂の間。
カイは、自らの、無数の傷が刻まれた空っぽの手のひらを見つめた。
あの大盤宮の崩壊の最中、自分の右手を掴んで息絶えた、あの「先生」の最後の声が、ふと、脳裏に鮮烈に浮かび上がった。
それは、小難しいルールの言葉ではなかった。
ただの、生々しい、泥臭い人間の感触だった。
最後に、自らの命のすべてを託すようにして、強く、強く握り返された、あの手のひらの温もりの記憶。
『泥の中の宝石を信じなさい』
四つの駒が、激しく散る。
そして、システムが拒絶を起こし、世界の底で『生』の駒が、またしても、たった一つだけで孤立して浮かび上がった。
「今よ!!」
エリルの、魂を揺さぶるような鋭い叫び声が響く。
だが、その声が空間に到達するよりも遥か先に、カイの足は、すでに爆発的な速度で前へと動いていた。
カイは、真っ直ぐに走った。
空間を焼き尽くす火の座標でもない。肉体を裂く電流の座標でもない。すべてを呑み込む水の座標でもない。
あの、絶望の叫びの外側に、たった一つだけで、戸惑いながら孤立して浮いている、あの『生』の駒の元へと。
それは、女王のシステムを攻撃するためではなかった。
彼女の盤面の弱点を突いて、論理的に打ち負かすためでもなかった。
ただ。
この理不尽な世界の中で、女王がどれほど呪っても、どうしても、決して「壊せなかったもの」のすぐ隣に。
一人の人間として、ただ真っ直ぐに、その足で立つために。
カイの伸ばした右手が、美しく孤立する『生』の光へと、迷いなく届き、触れた。




