番外編3-3
「せっかく集まったんだから、ちょっと遊んで行こ」
モモの一声で、流れは自然に決まった。
「モモたちの用事はいいのか?」
拓海が少し不思議そうに聞く。
「特に用事は無くて、街ブラだよ」
結月はあっさり言う。
(用事もないのに、街に出る……?)
拓海には、その感覚がいまひとつ分からない。
目的がなければ、出かけない。必要がなければ、動かない。
でも、三人はそれを当たり前のように受け入れている。
ゲームセンターに入ると、太鼓の達人の前で拓海が足を止めた。
「……これ、久しぶりだな」
バチを持つと、迷いがない。画面が流れ、リズムが走り、手首が跳ねる。
コンボは切れない。力まない。
音楽に乗る、というより、音楽を“制御している”。
「……すご」
ルナがいない分、結月は遠慮なく見入っていた。
モモは、どこか懐かしそうに笑う。
(やっぱり、この人、音から逃げられないんだ)
演奏が終わると、周りの見知らぬ客が軽く拍手した。
拓海は、少し照れたように頭をかく。
「まあ、昔やってたから」
その直後。
「ねぇ、結月ちゃん」
のぞみの声。
さっきと同じ呼び方。
同じ導入。
結月は、自然に振り向いた。
「なあに?」
のぞみは、拓海を一度だけ見る。
太鼓から離れて、少し所在なさげに立っている兄。
それから、結月に向き直る。
「おにいちゃんのこと、お願いね」
声に、冗談はない。
からかいもない。
真っ直ぐで、逃げ場のない言い方。
結月は、一瞬だけ言葉に詰まる。
(……あ)
これは、確認じゃない。
忠告でもない。
――託されている。
結月は、ゆっくりとうなずいた。
「……うん」
それだけ。
でも、腹の奥が静かに固まる感覚があった。
「大丈夫だよ」
付け足すように言うと、のぞみは、ようやく少しだけ安心した顔をした。
「なら、いい」
拓海は、二人のやり取りを横目で見ていたが、やっぱり意味は分からない。
「なに?」
「別にー」
のぞみは、そっぽを向く。
モモは、全部分かっている顔で、小さく息を吐いた。
(……この人、もう、守られる側じゃないんだ)
結月は、拓海の横に並ぶ。
肩が触れそうな距離。
拓海は、無意識にもう一歩だけ近づいた。
それを、のぞみはちゃんと見ていた。




