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第2部 間奏曲 第12.6項
結月は、静かに目を閉じた。
怖い先輩に足がすくんでしまった時。
拓海先輩に、救われた。
それから、何も聞かずに。 何も言わずに。 ただ、寄り添ってきた。
それが、拓海先輩の距離感であり、 私にとっても、心地よい距離だった。
踏み込まない。 暴かない。 無理に触れない。
そうやって、呼吸を合わせてきたはずだった。
――でも。 拓海先輩の、一番やわらかくて破れやすい部分を、知ってしまった。
知らなかった頃には、戻れない。
それでも。 「今、息が出来てる」 そう言い切ったモモの声を、思い出す。
苦しそうだったけれど、嘘じゃなかった。
だから。
私は、傷じゃなくて。
今、息をしている拓海先輩を、信じたい。




