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残響のプレリュード  作者: erg
第2部

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48/82

第2部 第1項

 工業高校の出身者で、大学に進学する者は少ない。

 拓海も例にもれず、卒業後は地元の企業に就職した。


 本当は、地元を離れるつもりだった。

 小学校時代の苦い記憶を胸の奥にしまい込んだまま、吹奏楽を続けてきた。

 けれど、それも高校で終わりにするつもりだったし、実際にそうした。

 それを区切りに、知らない街へ行きたかった。

 過去に縛られない、新しい自分を見つけるために。


 ――でも、離れられない理由ができた。

 結月とルナ。拓海は別に、気が多いというわけではない。

 ただ、音楽を通して分かり合えた仲間と、これからも繋がっていたかっただけだ。


 ----------


 拓海が卒業してからも、軽音同好会は結月とルナの二人で活動を続けていた。

 拓海がいないのはやはり寂しい。

 それでも、SOUND DOCKやSTAR DROPに行けばだいたい彼がいて、そういう意味では、今でもいつでも会える存在だった。

 プラチナムーンとは別に、拓海、結月、ルナの三人で新しいユニットも立ち上げた。

 ドラムにテナーサックス、バリトンサックス。少し変わった編成で、ビッグバンドの名曲をカバーしていた。


 --------------------


 拓海の卒業前のことだ。

 ルナが入ったことで、軽音としての方向性を改めて考えるようになった。


「キーボードに、そこまでこだわらなくてもいいんじゃないか」


 そう言いながら、拓海は譜面を配った。


「ビッグバンドの曲を採譜してさ。ドラムとテナー、バリトンで演奏できるようにしてみた」


 曲名を見て、結月が目を上げる。

 ――《A列車で行こう》。


「テナーでメロディライン、バリトンで低音とリズム。どうだ、合わせてみないか」


 結月とルナは顔を見合わせた。

 二人とも、「そんな方法があるのか?」とでも言いたげな表情をしている。

 だが、プラチナムーンで拓海のアレンジを知っている結月は、うなずいた。


「やってみよう」


 スティックを構え、軽く笑う。


「いくよ。ワン、ツー、」


 スリー、フォーは、わざと言わない。

 三人はアイコンタクトだけでタイミングを合わせる。

 初見だが、思ったほど難しくはない。

 進行していくにつれ、音が噛み合い、楽しくなってくる。

 三人は三角形に位置取り、内側を向く。

 目を見合わせながら、互いの呼吸を感じ取る。

 そして、ラスト。


「やったぁ!」


「これ、楽しい!」


 拓海が満足そうに口元を緩めた。

 結月が感じていることがある。コンクールが終わって吹奏楽部を引退した拓海は、以前より口数が多くなった。笑うようになった。

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