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残響のプレリュード  作者: erg
前日譚

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34/82

前日譚0.5

 モモが高校に入学した春。


 南高吹奏楽部の部室は、いつもより少しだけ騒がしかった。

 新入生の部活見学に備えて、楽器の調整やパートの確認で、部員たちが慌ただしく動いている。

 その中で、モモは顧問の前に立っていた。


「立花さんの希望はトランペット?」


「はい!小3から7年間続けているので、高校でもトランペットです!」


 即答だった。迷いなんて、最初からない。

 けれど顧問は、少しだけ困ったように笑った。


「見ての通り部員が多くてね、空いてるトランペットが今、無いんだよ」


 一瞬だけ、言葉が詰まる。


「自分で用意できないなら、工業から借りることもできるけど」


 その一言で、モモの表情がぱっと明るくなる。


「ほんとですか?自分で借りに行ってもいいですか?」


 食い気味だった。

 顧問は少しだけ目を細める。


「大丈夫?いつも男子が行くけど、男子でも怖がってるよ」


「大丈夫です。実は幼馴染がいるんです」


「ほう。それなら大丈夫か。向こうの先生に連絡しておくから、明日にでも行ってきていいよ」


 -------------------


「というわけで、明日行くからね!拓海!」


「わかった。校内で迷子になるなよ」


 --------------------


 重厚な鉄扉


(......なんか、無愛想な部室だな)


 コンコン「......おじゃましま~す」


「だれだ?」


(ヒィ~)


 男の低い声に、肩がびくっと跳ねる。


「南高か、話は聞いてる」


「あ、あの、たくみ...長谷川さんはいますか?」


 一瞬、間があった。


「長谷川?」


 その名前に、何人かが顔を見合わせる。


「……ああ、あいつなら」


 誰かが、奥の方に視線をやる。


「今、奥のスタジオだな」


「スタジオ……?」


 聞き慣れない言葉に、モモは小さく首を傾げる。


 事務室の奥のほうを軽く顎で示して、


「あの奥。あいつ、いつもあそこだ」

 

「行っていいですか?」


「ああ、勝手に行け」


 その部屋は3畳ほどの広さで、扉のガラス窓から基礎打ちをやってる拓海が見えた。

 素早くその部屋に入ると、


「ちょっと!こわいんだけど!」


「お、来たか」


「なんでこんな怖いところにいられるのっ?」


「そんなに怖いか?」


「少なくとも女子にとってはねっ!」


 --------------------


 モモの声は小部屋の外まで聞こえていて、


「俺たち、こわいのか?」


 しょんぼり。


「だから、女子部員が入ってこないのか?」


「もし入ることがあったら、やさし~く、やさし~く。だぞ」


「わかった。やさし~く。だな」


 --------------------


 楽器庫にて


「ねぇたくみ、こっちは?」


「それはもっと古いよ。今見せたのが一番新しいやつ」


「ん~、吹いてみたけど、変な振動があるんだよね」


「だめか。モモのお父さんに聞いてみようか」


「なにを?」


「モモにトランペット買ってあげてって」


「ほんと?私が自分で言うより、聞いてもらえるかも」


 遠目にギャラリってる男子ども


「たくみって言ってるぞ」


「モモって呼んでる」


「幼馴染らしい」


「お父さんとか、許嫁か?」


「あんなかわいい子がいつもそばに?」


「う、うらやましくなんて、ないぞ」


 --------------------

 南高にて、顧問に報告。


「結局、工業のトランペットは良いのが無くて、親に相談したら、買ってもらえることになりました」


「そうか。よかったな」


「新しい楽器が届くまでは、幼馴染から借りることになってます」


「ところで、怖くなかったか?」


「? 幼馴染がいたんで、大丈夫でしたよ」

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