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第1部 間奏曲 第8.3項
掲示板の前に、人が集まり始めたのは放課後のことだった。
《軽音同好会 新規設立 部員募集》
「……なんだこれ」
自動車科の三年が、腕を組んで掲示を睨む。
「長谷川と小鳥遊じゃないか。バンドやってるって噂のやつ」
「先生に呼び出されたんだろ。聞いたぞ」
「なのに同好会? 処分じゃなくて?」
誰かが鼻で笑う。
「あいつら成績いいから、先生も強く言えないんじゃないの」
「贔屓だよな、どう見ても」
声のトーンは低く、怒りというより、何かを持て余しているような色だった。
「まあ……」
その中で一人、少しだけ間を置いてから言う。
「実はよ、駅前のライブハウス。音はガチだったぞ」
「それとこれは別の話だろ」
「そうか?」
「そうだよ」
会話は、結論も出ないまま霧散した。
掲示板の前を離れながら、誰かがぼそっと言う。
「まあ、俺らには関係ないか」
それが精一杯の着地点だった。




