第78話 ダブルストーナメント決勝 中編
マヤヤさんに『ラヴァーズキス』を撃たれた後の雄太のターン。
雄太は大胆に、軽いコンタクトカードを増やしていく戦法に出た。
コストが足りないから、三コストを必要とする一色さんはまだ出せない。だから、次のターンに向けて場を整える形にしたようだ。
さっきのレスポンスの応酬で、店長さんの場に残ったパワーカードは三枚。
次のターンに何かをしたいと思うなら、ここで二枚目を持っていたとしても、マッシドアローは撃ってこないだろう、という読みだと思う。
それは正しかったようで、特に妨害はなく、雄太はキャラクターとパワーを増やすことができた。
ファクターとなるキャラクターは、白のネクサスが四体に赤の天華が二体。手札に二枚を残し、パワーは全部で五枚つけられた。
そして、次のターン。
「コンタクト シエロ・スターリーナイト」
店長さんは手持ちの全コストを使ってシエロさんを降臨させた。しかも上段まで。
かなり無茶じゃないかな、と思ったけれど、スペルだと二コスト必要なマッシドアローと同じ技を、シエロさんの上段は特殊能力として一コストで使えると思えば、十分にアリだろう。
もし、マッシドアローがもう一枚あれば、と思ったけれど、ないものねだりをしてもしょうがない。
さっきの応酬で青キャラが足りなくなっているから、どちらにしても無理だし。
補給線その他のキャラクターへのパワーは最小限。シエロさんにパワー三枚、他のキャラに二枚で店長さんのターンは終了。手札は二枚。
これで下手に動けなくなった。
パワーを二以下にした場合、その場で焼かれてしまう可能性もあるからだ。
計算は慎重に。
現在、私の場にはパワーカード三枚のフォルティオス。あと、エーヘルシトのキャラクターは三体。パワーカードはそれぞれ0枚と一枚ずつで、合計二枚。
あとはソルシアのキャラクターが一体。パワーは一枚。
手札にもいいカードが三枚来た。
マヤヤさんのパワーは、メインの鬼姫 加奈子さんに二枚。
天華のキャラクターに二枚。ファンタズマの補給用キャラクターに二枚。
先攻のおかげで、割とキャラクターにもパワーは潤沢にある方だ。
……ここで、勝負に出てもいいかもしれない。
(「フォルティオス、聞こえてる?」)
(『どうしたんだい? 美空』)
私は心の中のフォルティオスに呼びかける。
(「ここで、勝負に出ようと思うの。でも、店長さんたちが想定する最高、ううん、私達からして最悪の手札と行動をしてきたら、フォルティオスが落とされてしまう可能性もある。もう一度、呼び戻す算段はあるけれど、許してくれる?」)
(『勿論』)
微かな逡巡も、迷いもなかった。
(『ここでの戦いは、僕たちにとっては遊戯だけど、学ぶものは多い。
いつも助けられるばかりの僕が、誰かを助け、サポートできるのはとても素晴らしいことじゃないか』)
(「ありがとう」)
フォルティオスの言葉を受けて、私の体に熱が宿った。
よーし。ここで決める!
「勢力の青キャラクターをコンタクト」
青ファクター2を確保した。
「マヤヤさんに向かってフォルティオス、アタック宣言します!」
「加奈子でガード!」
加奈子さんには、自分のパワー以下のキャラクターからのダメージを受けない特殊能力がある。
相手のパワーが自分以下なら、自分より圧倒的に強い相手とのバトルでも死なないのだ。
今の加奈子さんのパワーは一、フォルティオスは二。このままなら競り勝てる。
でも、今回はダブルス。
当然、
「シエロ上段の特殊能力を三回使用。フォルティオスのパワーカード三枚を捨て札するよ」
店長さんの妨害が入る。
このままだと加奈子さんを倒せないどころか、パワーカードが捨て札にできないため、フォルティオスが捨て札にされてしまう。
「ファストスペル、『皇帝の勅命』でフォルティオスにデッキから一枚パワーを刺します! さらにレスポンスで『マッシドアロー』パワーが0のシエロさんは捨て札に!」
「それは止めるよ。『魔切り術』」
やっぱりマヤヤさんに止められたか。
ホントに息ピッタリ。それに資本力が凄い。
ハイレアカード『魔切り術』を、マヤヤさんは何枚入れてるんだろ?
雄太は一枚しか持ってないはずだから、他は別のカウンタースペルを使っているはずだけど。
『魔切り術』の対象は『マッシドアロー』だから、『皇帝の勅命』は通って、パワーカードを三枚捨て札にできたフォルティオスは死なない。
パワーは0になってしまったけれど、ここは次のターンに賭けよう。
そう思って息を吐き出した、次の瞬間だ。
「『マッシドアロー』をフォルティオスに」
「えっ?」
店長さんの冷たい声が『最悪』を宣言したのは。
残っていた最後のパワー全てを使って、店長さんはフォルティオスを落としにかかったのだ。
この可能性は一応想定していた。
でも、二枚目の『マッシドアロー』を引いているとか、それを本当に使ってくるとか、思わないもの。
雄太の方を一度見るけど、首を横に振られてしまった。
(「ごめん! フォルティオス!」)
(『大丈夫。また後で』)
静かな声と共に、フォルティオスはダメージに落ちていった。
自分の想定の甘さが悔しくなるけれど、まだ試合中だ。
泣くのも謝るのも、勝負が終わってから。
「バトルフェイズ終了。パワーを刺して終わります」
青のキャラクターと補給のキャラクターにパワーを与えて終了した。
マヤヤさんに手番が移る。
「う~ん。ここで手を緩めちゃいけないって、マヤヤのカンが言ってるんだけど、京ちゃんは全力でフォルティオスを落としてくれたし、みっちゃんの青ファクターも復活したし一枚カード握ってるし、攻撃したら焼かれる可能性もあるし、ねぇ~」
そう言ったマヤヤさんは、少し考えた後、このターンでは攻撃を避け、得意の『妖刀ムラマサ』を加奈子さんにセット。
次のターンへの準備に専念したようだった。
加奈子さんに最終的に五枚のパワーをつけて、終了。
次の雄太に一色さんを出されるのを想定してか、コンタクトしていないキャラクターへのパワーカードは少なめだ。
そして、いよいよ雄太のターン。
ようやくコスト的にもファクター的にも、どんなキャラクターであろうとコンタクトできるようになったけれど。
(「ここで一色さんを出しても、あんまり意味なさそうだなあ」)
店長さんの場にパワーカードは0。マヤヤさんの未コンタクトキャラクターについているパワーは二枚。
一色さんが出ても意味は薄そう。
(「せっかく、フォルティオスが頑張ってくれたのに」)
そんな思いが胸の中で、モヤリとなって芽生える。
でも。
「美空、フォルティオス。ありがとな」
「え?」
「お前たちのおかげで、ようやく店長達に一泡ふかせてやれる!」
そう言うと、雄太はコストを払い、宣言する。
「店長の場のシエロ・スターリーナイトを俺のスーパーアイドル 小鳥遊奏でコンタクト!」
「「「えええっ!!」」」
気が付けば。
雄太の場で、絶対無敵アイドルが満面の笑みで微笑んでいた。




