第77話 ダブルストーナメント 決勝 前編
「ダブルストーナメント決勝戦! 『美女と教授』VS『スターダスト』
レディ ファイト!」
「よろしくお願いします」
挨拶をした後、四人でじゃんけんをして順番を決める。
私が一番に勝ったので、先攻を取る。
順番的には私→マヤヤさん→雄太→店長さんの流れだ。
最初は確実に、丁寧に。主力であるエーヘルシトと、スペルを使うために最低二キャラは手元に置いておきたいソルシアのキャラクターを仲間にする。
手札にフォルティオスが来ているから、チャンスを見て早めに出そう。
次のターンはマヤヤさん。マヤヤさんのデッキは……
(「あれ? いつものだ」)
いつも使っている緑赤のデッキ。
(『加奈子も、シエロもいるね。ダブルス用にデッキを組んだわけではなさそうだ』)
(「そうなんだ」)
フォルティオスの囁きに、私は感心しつつも納得する。
正統派の力で小細工なんか踏みつぶしてきたのだろう。
加奈子さんとシエロさんは仲が悪いけれど、実は相性がかなりいい。
加奈子さんの能力は、自分よりパワーの低いキャラクターからのバトルダメージを受けないこと。そしてシエロさんの能力は、キャラクターのパワーカードを捨て札させるもの。
パワーカードを強制的に捨て札させるスペルや技を使われた時、支払うパワーカードが無いと、対象のキャラクターは捨て札されてしまう。
加奈子さんの攻撃にガード宣言したキャラクターに、シエロさんが特殊能力でパワーを捨て札させれば、加奈子さんはノーダメージで敵を潰せる。
私が使っているマッシドアローみたいなカードもあるし、緑はパワーカードコントロールも得意だし。
かなりシビアな計算とコントロールが要求されるだろう。
流石に一ターン目なので、まだ大きな動きは無いけれど。
キャラクターを二体仲間にして終了。
雄太も同じだ。丁寧にキャラクターを場に出し、仲間にしていく。
店長さんのデッキも、いつもと同じソルシアメインのほぼ単色。少しアイコン合わせやキャラクターを増やすためにエーヘルシトのカードも入っているけれど、青特化と言っていい。
気を付けよう。いつマッシドアローや巨大スペルが飛んできても大丈夫なように。
とはいえ、一ターン目には何もできない。
キャラクターを仲間にして終了だ。
次の私のターン。
アグレッシブで出たキャラクターをコンタクトして仲間を増やし、フォルティオスを出す。
「ほう、早いね」
「でも、あんまり早く出しすぎると狙われることもあるから気を付けて」
先攻二ターン目で出てこられるフォルティオスは、実際、本当にチートだと思う。
でも、あんまり時間をかけてお二人が仲間を増やし、スペルを撃てる環境を作ってしまうと、パワーカードの計算がタイトになる。
せっかく先攻したのだから、とにかく突っ走る!
補給用のキャラクターを仲間にしつつ、フォルティオスに二枚のパワーカードを与えて私のターンは終了。
これでマッシドアロー二連発でも、とりあえず生存できるはず。
あとは雄太が早めに一色さんを出してくれれば……。
次はマヤヤさんのターン。
「さて、時間をかけると面倒なことになるから、先手必勝、だよね」
ニコリと頬に浮かんだ笑みに、心臓が音を立てる。
二ターン目に何を?
「まずはキャラクターをコンタクト! 緑のファクター確保します。
そんでもって行くよ! 二コスト『魔界転生!』 雄太君のドローキャラクターに!」
「はあ? 『魔界転生』? 雄太のキャラクターに?」
『魔界転生』はマヤヤさんがよく使うパンプアップカードだ。
対象のキャラクターの攻撃力と耐久力を、支払ったコスト分上げるもの。
なんで? と思ったけれど、雄太の顔から血の気が引いた。
「……ありません」
まだ場にキャラが揃っていない状態。カウンタースペルがあっても使えなかっただろう雄太は、キャラクターからパワーカードを二枚捨て札にする。
そうか。
『魔界転生』は、攻撃力を上げた分だけ精神力を下げる効果を持つ。
バトルフェイズだけのことだけれど、精神力と同じ数しかパワーカードを保持できない設定上、精神力2のキャラクターが精神力0になったら、パワーカードを捨て札にしないといけないということ。
エグッ!
パンプアップカードにこんな使い道があるなんて。
「ここでそのドローキャラを横取りできればカッコいいんだけど、流石にそこまではカードが揃ってないんだよね。という訳であとはメイン終了!」
キャラクターを増やし、パワーを与えてターンを終える。
雄太が悔しさに歯噛みしているのが解った。
コストが足りなくなったので、このターン、もし何もされていなかったら出せていたかもしれない一色澄香さんを、場に出すことはできなくなった。
代わりに補給能力に長けたメイドさんをコンタクトして、天華とネクサスの仲間を順調に増やして終了。
二ターン目ラスト。店長さんのターン。
順調に、軽コンタクトカードも使ってキャラクターを増やしていく。
もしかしたらシエロさん降臨もあり得たかもしれないけれど、今は急がず、場を整えることを優先したようだ。
ああ、ここでマッシドアローがあったら、コンタクト阻害とかできたのに!
「ターンエンド。どうぞ」
店長さんの場には青のキャラクターが四体揃っている。コンタクトも二体。
パワーカードもそこそこ。
どんなスペルでも使える可能性が出てきた。
次は私の番。
息を吐きつつドローする。マッシドアローが来た。
遅いって。
いや、これは大事なキーカード。チャンスはこれからも回ってくる。
軽コンタクトカードで味方を増やした後、
「店長さんに向かってフォルティオス、アタック宣言します」
「キャラクターで受けるよ」
この時点でフォルティオスの攻撃力は2000を超えている。
本体、つまりデッキで受けると、攻撃力100に対して一枚、デッキを捲ってダメージ判定をしないといけない。
ここはキャラを削っても止めるべきだと判断したのだろう。
続けて攻撃を仕掛け、店長さんのキャラクターをさらに一体削る。
これで店長さんの青ファクターは二。
少し大きなスペルの使用やシエロさんの降臨には手間がかかるけれど、まだできることは多い。
でも、フォルティオスのパワーを完全に0にすることはできない。
その瞬間にマッシドアローが飛んできたり、マヤヤさんのパワーコントロールが炸裂する可能性もあるからだ。
メインを終えてフォルティオスにカードを与え、ターンエンド。
「うーん、まだ待ちたいところなんだけれど、放っておくと次のターンに一色ちゃんが出てきそうだからねえ」
そう言うと、マヤヤさんは勢力エリアのキャラクターを軽コンタクトカードで仲間にし、ファクターを増やす。そして、
「鬼姫 加奈ちゃん、こ~りん!」
味方のキャラクターをコンタクト。主力である加奈子さんを降臨させた。
……だめだ。元となるキャラクターにパワーカードがまだ二枚刺さっているから、マッシドアローじゃ落としきれない。
他のファクターを焼こうにも、ちゃんとマヤヤさんはそれを考慮して多めのファクターを用意している。
加奈子さんの降臨は防げない。
「それから『ラヴァーズキス』で、指定キャラクターのパワーカード2枚を手札に戻すよ」
指定されたキャラクターは、また雄太のドローキャラ。
今の雄太の場は赤キャラ二体、白キャラ三体。パワーカードは白キャラに二人に二枚と一枚、赤キャラに一枚。
二枚のパワーを手札に戻されてしまうと、またコスト三の一色さんが場に出せなくなる。
「させない! 『魔切り術』!」
「はい、こっちも『魔切り術』!」
二ファクター0コストでスペルをカウンターできる新弾の目玉カード『魔切り術』は、その有効性から一枚で二千円以上する高額カードだ。
雄太も二枚しか用意できなかったと言っていた。
でも、マヤヤさんなら当然入手しているし、複数枚入れているよね。
ここで雄太のパワーカードを取られると、次のターン、またパワー足りず一色さんが出せなくなる。
ここは勝負どころか……。
「『マッシドアロー』マヤヤさんの赤ファクターに!」
緑、ファンタズマのファクターは多めに用意していても、今はまだ三ターン目。
サブ色である赤のキャラクターはギリギリだ。
二ファクターのうち片方を潰せれば、『魔切り術』は不発になるはず。
でも、
「レスポンス『マッシドアロー』を美空ちゃんの青ファクターに」
「え?」
油断している隙に、死角から一撃。
店長さんのスペルが飛んできた。
私の青のキャラクター。二体のうち一体はコストの支払いでパワーを失っていたから、焼かれてしまい『マッシドアロー』は不発。
結果、マヤヤさんの『魔切り術』で雄太の『魔切り術』が返され、『ラヴァーズキス』が発動。
雄太のドローキャラが持っていたパワーカード二枚が手札に戻る。
スペルとスペルの応酬は、最終的にマヤヤさんたちの勝利に終わった。
悔しい、悔しいんだけど……。
「なんか、凄いね」
「ああ。これがトップレベルの戦いなんだ」
少し嬉しくなった。
今までの手加減された指導試合じゃない。
本気で、本当の真剣勝負だ。
「美空。今のでいい。俺は、お前を信じる。だから、お前も俺を信じてくれ」
「うん。やってみる!」
試合はまだ序盤。
勝負はまだまだ、これからだ!




