第74話 ダブルスの戦い
今回の参加チームは、総数三十組だという。
やっぱり思った以上に少ない。
そして第一回戦、私達が対戦したペアは、かなりぎこちなさが残る印象だった。
男性の方はそうでもないのだけれど、女性の方は、もしかしたらこの大会の為に『アナザーワールド』を始めたのかな? という感じがした。
そして、デッキ内容は二人とも白のネクサス。
いわゆる白単と呼ばれるものだった。
白のネクサスは超能力者の集団。とにかく軽くて速い展開が特徴だ。
そして、男性の方のデッキには『タレント』と呼ばれるアイコンが見えた。
雄太と同じキャラクターを使っているのかもしれない。
雄太もそれを感じたのか、早々に主力となるアイドル、一色澄香さんを場に出していた。
相手の男性が青ざめたのが解る。
一色澄香さんの能力は、場に出たと同時に、コンタクトしていない相手キャラクターのパワーカードを全て捨て札にしてしまうというもの。
その美しい歌声と容姿に魅了されて、戦う力を失ってしまう。という設定なのかもしれない。
しかも対象は『対戦相手の場』なので、ダブルスでは味方は守られ、相手二人の場に効果が及ぶという、ある意味悪魔のような力。
味方であるうちは心強いけれど、敵に回せばこれ以上怖い相手はいない。
一瞬で相手の場はガタガタに。
そこに私が、青のパワーカードを奪うスペルで追い打ちをかける。
スペルや特殊能力によってパワーカードを支払わなければならない状況に置かれた場合、必要なパワーカードを支払えないと、問答無用でキャラクターは捨て札されてしまう。
補給線となるキャラを消してしまえば、立て直すことも難しい。
パワーカードコントロールは緑も得意だけど、即効性を考えて最後の最後で青とのタッチに変えたのは、雄太の試行錯誤の結果だろう。
その隙にこちらがフォルティオスを出し、圧倒的なパワーで押し切った。
とりあえず一勝。
ホッとする。
「良かったね。雄太」
「ああ。でも油断するなよ。今回のタレントデッキはダブルスで効果が絶大だから、それを使ったデッキか、それに対抗できるデッキが多い筈なんだ」
デッキの流行を読み取り、それに対処するデッキを構築する。
そういう展開を『メタゲーム』というらしい。
実際、私達が二回戦で対戦した相手も、同じタレントデッキだった。
幸い今回も雄太が先に一色さんを出してくれたので、こちらが勝てた。
でも、同じバトルフィールドに同じキャラクターが二人同時に立つことができない、というルールは、実力と同じくらい運にも左右されそうな気がする。
三戦目はまったく違ったコンセプトで、手札やパワーカードをスペルで捨て札にさせ、相手の選択肢を減らす、所謂『ハンデス』と呼ばれるデッキだった。
けれど、スペルカード対策はある程度してあったし、何より速攻でフォルティオスとオクルス君が来てくれたから、パワーで押し切ることができた。
通常でも、フォルティオスのキャラクター数を参照して能力値が上がる力は強いけど、場が広がるダブルスではその効果が怖いくらい。
一度場に立てば、ちょっとやそっとじゃ潰れなくなる。
しかもバトル以外のダメージを受けないので、スペルなどでも除去し辛い。
『ぶっ壊れ性能』
そう恐れられ、とんでもない値をつけても欲しい人がいるというのが、良く解るパワーだった。
加えて、ネコちゃんが貸してくれたパートナーカードのおかげだろうか。
オクルス君も、いつも絶妙のタイミングで来てくれている。
雄太が使う一色さんがパワーを剥がし、使える力が少なくなったところをオクルス君とフォルティオスが攻めにいくと、我ながら手が付けられない強さだ。
「……ありがとうございました」
「レディMと当たったんじゃ仕方ないさ」
悔しげに涙をこらえるパートナーさんを慰める男性に、少し胸が痛んだけど、ここは勝負だからと気持ちを切り替える。
次は準決勝。
気を緩めていい場ではない。
「向こうのブロックは、当然、師匠達が勝ち上がってる。決勝にも来るだろう」
「え? じゃあ、ここで勝てばもしかしたら、世界大会行ける?
お二人とも資格持ってるよね」
予選で権利を持っている人が優勝した場合などは、次の人に順位が繰り下がる。
本選ではどうなるかは分からないけれど、もしかしたら二位が繰り上がって権利取得、ということにならないだろうか?
けれど、
「馬鹿、そんなこと考えるな」
私の甘い考えを、雄太はぴしゃりと叩き落とした。
「準決勝をまず勝たないといけないし、お情けで貰った権利なんて意味がねえ。
俺たちが実力で手に入れた権利で行ってこそ、堂々と師匠達と肩を並べて参加できるんだ!」
「うん。そうだね。ゴメン」
雄太がこの大会に賭けているのは解っている。
情けない話ではあるけれど、単独で世界大会参加の権利を取ろうとすれば、難易度は半端なく上がってしまう。
私と同列扱いは雄太にとって不満だろうけれど、何千人の中からたった一枚の切符を手に入れるのは、簡単なことではないのだ。
ボーナスステージと言われようとも、目の前、手の届くところにやってきたチャンスを逃すわけにはいかない。
それに相手は、準決勝まで勝ち上がってきた人。
油断していて勝てる相手じゃない。
「いいか? いつも通りだ。とにかく俺は可能な限り主力を先出しできるように頑張るから。お前は早くフォルティオスを出してパワーを集めろ。
大丈夫だ。男デッキのキャラクターが早々盗られることはない」
「解った。頼りにしているね」
でも、試合というのは生もので、計算や想定通りには進まない。
私達は間もなく、それを思い知らされることになる。
「コンタクト。一色澄香」
相手の場に早々に立った、トップアイドルの力によって。




