変革
ゼットとアレンが後ろの悪魔に向かっていったのを確認し、俺は目の前の2体に集中した。
「ご主人さま、1体は任せてください。私もあれから技を磨いて攻撃用の魔法も使えるようになったんですよ」
メイリが横で右手でピストルの形を作り、うつ真似をする。
本来ならば、まだメイリが対悪魔用の攻撃技を習得するには早いはずだが、イレギュラーの連続で、全体的に成長が速いな。だが、今は好都合だ。さすがに、俺だけで2体は分が悪い。
「なら、片方は任せたぞ」
そういうと、俺は両手両足に魔力を集中させる。と放電し、真っ白な電気に覆われる。
そのまま、超スピードで悪魔の懐に入り、右拳を叩きつける。受けるのはまずいと判断したのか、鎌で受けずに、スライドさせて回避する。かわされたことを察した瞬間、距離をとり、様子を見る。
間違いなく、前回より戦えてるな。速さを手に入れたおかげて、一方的に攻撃を仕掛けられる。この調子なら、問題なく倒せるはずだ。そこで、俺はメイリのほうを見た。
「くらえ、アクマバスター」
手のピストルの形にし、その先に魔力を込め飛ばすという単純な魔法だが、メイリの魔力は悪魔に限っては一撃一撃が必殺の致命傷だ。距離を詰められず、ひたすら防御を強いられる。しかし、それでも一歩ずつ距離を縮めてくる。メイリが焦って攻撃を外したところで、一気に距離をつめ、鎌をふるう。
「シールド」
メイリはシールドを展開しそれをふせぐが、一旦、防戦に回ると、一方的だ。シールドを維持するのが精いっぱいで、相手を引きはがせない。
それを見かねた俺は、横から、悪魔に殴り掛かるが、それに気づくと後方にスライドしかわされる。
今度隙ができた俺にもう一体が迫るが、メイリがシールドで防ぐ。
「助かったメイリ。だが、まだまだ危なっかしくて見てられないぞ」
「う、うん。ご主人さまが来てくれなきゃあぶなかったです」
落ち込むメイリの頭に手をのせ、励ます。
「2人で倒すぞ」
作戦を変更し、前衛の俺が2体を相手にし、メイリには後方からの支援を任せることにした。
相手が一体だけなら、前に悪魔を倒したように大技をうつ余裕もできるんだが、それにはまず一体は倒さねえと。
「サンダーアロー」
俺は3本の真っ白な矢を形成し、悪魔に飛ばすと同時に、突っ込んだ。
サンダーアローは、鎌で防がれるが、俺は2体の真ん中に入り、片方にけりを放つが、かわされる、もう1体が俺に鎌をふるってくるが、体を反転させ、電気をまとった右拳ではじき、左拳をいれる。悪魔はかわし切れずに、拳がかする。
バチンッ!と音がなり、接触した部分から、左こぶしにたまった。電気が一斉に悪魔に流れ出す。
本気で魔力を込めていたから、アレンのときの比じゃないほどの威力を発揮する。
「俺の攻撃は完全に回避しなきゃ、意味ないぜ」
俺はそのまま、もう一体の悪魔を倒すため、振り返る。
「ご主人さま、まだ倒し切れてません!」
「え?」
俺は倒したと思いきっていた悪魔が最後の力で鎌を振り下ろした。
グサッ
急に全身の力が抜け、地面に倒れる。
「ご主人さま!」
「ベイン君!」
「よくもやってくれやがったな」
3人の声がするも、意識が朦朧としていて声が遠くに聞こえる。
視界が真っ暗になり、何も認識できなくなる。ふと声が聞こえてきた。
『けけけ、お前は一人の人生を横から乗っ取って、なんとも思わないのか?』
声がするほうをみると、真っ暗な中に人のような動くものが見えた、ああ、悪魔か。
『お前はいつも心の奥底で俺が乗っとったベインはどうなったんだって思っていた』
俺の心を読んだかのように話し出す。
『だからだろう、その罪悪感で、やたらゲームではなんて繰り返して、自分に対して一歩引いた思考をしていた』
『くううう、おかしな話だよな、お前はベインを乗っ取った。そして、ベインが歩むはずだった人生をゆがめた』
ああ、そうだな。俺はずっと気にしていた。このままベインとして振舞っていいのかと、俺はベインではないのに。
『そうだろう、でもいいじゃねえか。なら今からお前は悪魔として生きろ。ベインとしてではなくな、理にかなってるだろ。お前は元々俺ら側なんだよ』
俺はベインの精神を乗っ取っているんだもんな。確かに、その通りかもしれない。
『なら、俺に向かって手を伸ばせ、そうすればすべて楽になる』
いうとおりに、手を伸ばそうとすると、俺の中から、小さな光の玉が出てきた。
その光は人の形をとった、そして、この空間を光で満たすかのように輝きだした。
『な、くそ、お前の意識は封印したはず、もう少しで、異世界の魂を乗っ取れたの……に……』
真っ暗な世界が真っ白な世界に変わった。
悪魔はいなくなり、そこには、見覚えのある人物がたっていた。
「お前は……ベインか」
ベインは微笑みながら。
『そうだよ、ごめんね、悪魔って嘘は言わないけれど本当のこともいわないから』
「何が言いたい」
『うん、君が僕をのっとたんじゃない。なぜなら、僕が君をこちらの世界に呼んだんだ』
「なぜそんなことをしたんだ」
『気づいちゃったんだ、この世界の秘密に。だから、悪魔に頼んじゃった。世界のシナリオを変えたいってね。神様が作った運命に抗いたくなってね』
「それで、お前はどうなったんだ」
『大丈夫、僕も君の中にいるから。僕は君で、君は僕なんだよ』
『だから、ありがとう。メイリは今とても幸せそうだ』
「そうか、お前は自分を殺してまでそんなにも思っていたんだな」
『君も相当いれこんでるようだけどね?』
俺の心を見透かしたように、というか、俺自身なのか。
『だから、僕をベインを受け入れてほしい。今は2重人格みたいな状況なんだ。そうすれば、君と僕は一つになれる。あとは好きに生きようよ』
ああ、俺はもう何も悩まなくていいんだな。俺はベインで、ベインは俺で。魂を融合させる。
『うん、ありがとう』
肌に水滴が落ちる感触が伝わってきて、俺は目を開けた。
頭は太ももの上にあるようだ、そして、目の前にはメイリの泣き顔があった。
「ご主人さま、死なないで」
俺はそんな彼女の頬を撫で、返事をする。
「生きてるよ」
すると、彼女は俺の首元に抱き着いてきた
「よかった、よかったあ」
「ベイン君心配したよ」
「悪魔どもは速攻ぶっ倒しておいたぞ」
ベインやゼットも俺の近くにいたみたいだ、二人とも目が赤くなっている。
なんだか、不思議な気分だ。この世界はゲームか?いや違う。この世界は現実だ。
俺は自分に素直になることにした。
「メイリ」
俺はやさしくメイリを呼ぶ。
「なに、ご主人さま」
俺に顔をうずめていたメイリは顔を上げた。
「好きだ。結婚しよう」
メイリは一瞬、固まりすぐに泣きながら笑顔でこういった。
「私も、私もご主人さまのことが好き、好きだよ。ずっと一緒にいたい」
雲がかかって暗くなっていた、空は、いつの間にか、光のカーテンを作っていた。
「ベイン君!こんなところで告白ですか」
アレンは状況がまったくわからないという感じで困惑している。
「はっ、ベインよ、奴隷と王族って立場で結婚なんてできると思ってるのか?」
ゼットがにやけながら、いじわるそうな顔をして問いかけてきた。
「そうだな、じゃあそんな制度ぶっ壊しに行くか」
俺は気楽に、なんてことないようにいった。
「ご、ご主人さま。うれしいですけど、そんな簡単にできるんですか?」
泣いたり、笑ったり、不安そうにしたり、見てて飽きないな。
メイリの手を借りて立ち上がり、俺は丘の上にある王城を指さしていう。
「この悪魔騒動、すべての黒幕はあそこにいる。そいつを倒せば、俺が次の王様だ」




