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革命

 俺たちは、無事悪魔を倒し、元の場所に戻ってきた。


 「なんだよこれ」


 ゼットがまるで悪夢を見ているかのように、つぶやく。

 視界の先には、大量の悪魔たちが漂っていた。


 「おそらく、ここにきていた生徒たちを、乗っ取ったんだろう」


 俺は冷静に現状を把握し、分析する。

 悪魔にやられると、同じく悪魔にされるのだ。俺の場合は、ベインが助けてくれたが、あのままだと、同じような姿になっていたはずだ。


 「つまり、僕たちが戦っていた相手はベンドラ学園の生徒かもしれなかったってこと?」

 「そんな……私たちは一体何と戦っていたというの」


 アレンとメイリは口を押さえて、必死に気持ちを抑えていた。


 「おい、ベイン!そういうことは、なんでもっと早くいわない」

 

 ゼットが俺の襟首をつかみ上げ、迫る。

 だが、俺はその腕をはらわず、睨み返した。


 「言ってどうする。乗っ取られたら最後もう元には戻らない。真実を言って、少しでも動揺していたら、俺たちもこうなっていたはずだ」


 実際は、ゲームの展開では、起こりえなかったことだから言わなかっただけだが、まあ、もう俺には関係ないことだけど。


 「そりゃあ、そうかもしれねえけどよ」

 

 ゼットは、やりきれないという感じで、俺を離す。


 「そうだよ、ゼットさん。ベイン君だって、つらい思いのはずだ。僕は責められない」

 「うん、ご主人さまは、私たちを気遣ってくれていたんだよね」


 アレンとメイリは理解を示しているようだ。


 「それで、どうすんだ。王城にいくにしても、ここの悪魔を倒さなければ話にならねえ。さっきから、俺たち注目されまくってるぜ」


 さっきまで悪魔と戦っていただけに、自然と、声が小さくなる。


 「問題ない。俺に任せてくれ」


 俺は、ベインとひとつになることで、自分の中に新たな力が芽生えたことに気が付いていた。

 ベインの魂と俺の魂が融合した結果、すさまじい進化を遂げていた。


 「ベイン君、僕はもう君を親友だと思っている。仮にここで力尽きようと、君と出会えたことに感謝する」

 

 アレンはすがすがしい顔で俺を見る。


 「私はご主人さまを信じます」


 メイリは俺に信頼の目を向けている。


 「へっ、この状況をなんとかできたなら、お前を最強と認めてやるぜ」


 ゼットは力強く拳を握り俺の背中をたたく。


 たく、俺はなんていい友人たちをもったんだ。

 思えば最初からここは現実だった。メイリもアレンもゼットもみんなキャラクターじゃなくて、人間だった。なのに、最低だな俺は。

 せめてもの償いだ。こいつらを絶対悪魔なんかにやらせはしねえ。

 ありったけの魔力を込め叫ぶ。


 「タケミカヅチ」


 突然、頭上に雷雲が表れて、真下の俺に向かって雷を落とす。

 俺はその力をすべて吸収し、体中に雷を湛えた。

 全身から、まるで、雷雲の中にいるかのように、常に強力な雷が漏れている。


 「す、すごいねベイン君」

 「かっこいいです」

 「さっさと、悪魔どもをやっちまいな」


 俺はそのまま手を上にあげる。


 「ライトニングアロー」


 すると、頭上に電気でできたまっしろな矢が大量に出現する。

 俺はそのまま、手を上から下に振り下ろす。


 一斉に、悪魔に向かって、矢が飛んでいく。

 それぞれが鎌で防ごうとするが、あざ笑うかのように、貫通し次々と消滅していき、すべてを射出し終わったころには、その場に立っているのは俺たちだけだった。


 「そんなすごい技持ってたんなら最初から使いやがれ」

 

 ゼットが俺の首に腕を回しながら、ばしばしと胸をたたいて来る。


 「これが、ベイン君の本気の力なんだね。僕の黒龍の目があっても、敵わないよ」

 

 ライバルだと思っていた存在が、遠くに行ってしまったような、そんな気持ちが伝わってくる言葉を発する。


 「悪魔だろうと、ご主人さまにかなう者はいません」


 俺の手をとり、見上げてくるメイリ。


 「じゃあいこうか。すべてを終わらせに」



 俺たちは、王城に向かった。近づけば近づくほど悪魔の数が増えていったが、今の俺達には障害にすらならなかった。

 そして、王城の正面にまでたどり着いた。


 「いよいよだね」


 アレンは手に持った刀を構えなおす。


 「まさか、こんな形で王城に足を踏み入れることになるとはな」


 ゼットが両手の拳をぶつけながら、闘争心をむき出しにする。


 「帰ってきましたね。私たちの始まりの場所」


 メイリは、自分が連れてこられた時からベインとの記憶を回想するように目を閉じる。


 「準備はいいか。目指すは、王城中心部にある、王室だ」


 俺は両手で扉を開けた。

 

 中から悪魔たちが襲ってくるのかと身構えていたが、予想外に静まり返っていた。

 玄関口はそのまま大きいホールになっていて、正面の階段を上り、目の前にある大きな扉を開いた先が王室だ。


 俺たちは、あたりを警戒しながら、最後の扉を開く。

 すると、玉座に座る化物がいた。


 「俺様の住居へようこそ。歓迎しよう」


 3メートルほどある悪魔が玉座の前で仁王立ちをしていた。

 やはり、人間の影のように、黒く実体がないかのように、薄く透けている。手には鎌を左右に持っている。

 俺は聞き覚えがある声に、違和感を覚えたがすぐに思い出す。


 「その声は、俺を乗っ取ろうとした時の悪魔がお前か」

 「その通り、残念ながら乗っ取れなかったが、まあどうでもいい。なぜなら、お前は今から俺にやられるんだからな!」

 

 猛スピードで俺たちのところへ向かってくる。


 「私に任せて!シールド」

 

 メイリが俺たちの前にたちシールドを展開し、衝突する。

 そのすきに、俺たちは悪魔を包囲するような形をとる。


 「最初から全力でいくよ!黒龍開放!」


 アレンの右目が真っ黒に変化する。


 「全力全開じゃああ」

 

 ゼットがありったけの魔力で全身を覆う。


 「タケミカズチ」


 王城の天井から、雷が貫通し俺に降り注ぐ。


 「そろそろ、限界……だよ」


 メイリのシールドが悪魔に壊される前に俺たちは動いた。

 

 「おらぁ」


 ゼットが突進し、飛び蹴りをくらわし反動で後ろに大きく飛び引いた。悪魔はよろめき、ゼットに反撃しようと、体を向かせた瞬間、アレンが後ろから飛び込んでいく。


 「よそ見するなんてずいぶん余裕あるんだね」


 悪魔の背中に向けて刀を振り下ろす。厄介そうに、右腕を後ろに回し持っていた鎌で防ぐ。

 ギインっと音がして、アレンが吹っ飛ばされる。


 「なんて力なんだ」


 左腕に持った、鎌でアレンにとどめをさそうとする。


 「私だって、いるんだよ。アクマバスター」


 メイリが両手でピストルの形をとり、両の指先でためた魔力を鎌に向かって発射する。

 それが、鎌にあたり、軌道がそれ、誰もいない地面に突き刺さる。

 その無防備になった瞬間に、俺は3人が時間をかけているうちに貯めていた魔力を放出する。


 「ライトニングアロー」


 数百の矢が空中に展開し、一斉に悪魔に向かって放たれる。

 

 「やったか!」


 ゼットが叫びながら、煙に囲まれた悪魔をにらみつけるが。

 アレンが焦燥を浮かべながら叫んだ。


 「ゼットさんよけて!」

 

 必死なアレンの声に何か感じたのか。ゼットは何も考えず、真横にジャンプした。

 すると、ゼットのいた場所に鎌が振り下ろされた。

 

 「まさか、これは瞬間移動か」

 

 ゼットは信じられないようなものを見るような目で悪魔をにらみつける。

 

 「ハハハ、俺様がその程度でやられるわけないだろ。こっからはひたすらに一方的な虐殺だ」


 ふいに、俺の後ろに気配を感じ、咄嗟に大きく横にジャンプすると、俺のいた場所に2本の鎌が突き刺さる


 「ちっ、はずれたか」

 

 すぐさま俺はメイリのそばまで駆け寄る。

 悪魔の瞬間移動に対処できるのは、俺とアレンだけなので、アレンもゼットの近くに駆け寄った。


 「ご主人さま、このままでは、やられ放題です」

 「ああ、なんて反則な技なんだ」


 どうする、どうする。くそっ、ここまで来たのに、まるで歯が立たねえ。

 こいつらを悪魔から守るって決めたのによ、情けねえ。

 俺が、俺が何とかしなくてどうする。

 考えろ考えろ考えろ考えろ。


 「ハハハハ」


 悪魔は、瞬間移動を繰り返しながらも、攻撃を続けていた。俺たちは回避に専念するしかできず、体力が徐々に削られていく。

 

 ふと、俺はアレンを見ると、左目を閉じながら、なにかを呟いているのに気づく。

 俺の視線に気づいたのかアレンは俺のほうが向いた。


 「ベイン君、君が一人で抱え込む必要はないよ。僕たちは仲間でしょ。お互いに足りないもの部分は補い合えばいい」


 アレンが苦しそうに顔をゆがめながら、内なるなにかと戦っているように胸を押さえていた。


 「それはわかっているが、お前は大丈夫なのか。もしかして……」


 黒龍の目の使い過ぎで、副作用がでたのかと思い、嫌な汗が出始めた。


 「大丈夫だよ。ようやく、封印を解くことに成功したから」


 そういい、アレンはゆっくりと左目を開いていく。


 「我にやどりし黒龍よ、お前の力をすべて解き放つ……エターナルエンド」


 アレンがそういった瞬間、まるで、時間が止まったように思考がおそくなる。

 自分を何者かに覗かれているような不気味さが全身を襲う。


 「はっ」


 だが、それも一瞬。何が起こったのかとアレンを見ると、左目が開かれ、両目が真っ黒に染まっていた。

 だが、どこか雰囲気がまがまがしい。全身が黒い魔力に覆われている。


 「ベイン、2秒後後ろに攻撃をはなて」


 アレンから抑揚のない命令口調で、指示される。

 俺はひとまず、言う通り、2秒まち、後ろにライトニングアローを放つ。

 すると、攻撃と同時に悪魔がその場に出現し当たる。


 「グアアアアア、なぜわかった」


 すぐさま、瞬間移動する。


 「ゼット横に全力」


 ゼットもアレンの様子がおかしいと思いながらも、全力で右拳を放つ。

 それと同時に、悪魔が出現。衝突する。


 「グアアアアアアア、急になんなんだお前たちは」


 さらに、姿を消す。


 「メイリ、頭上だ」


 メイリは躊躇いながらも、何もない空間に向かって、ピストルの形を作り、魔力を放つ。

 またも、同時に悪魔が出現して食らう。


 「グアアアアアアアアア」


 悪魔は瞬間移動が先読みされているのを理解し、俺たちと離れた場所へ飛びひいた。


 「くそっ、何者だお前」


 アレンに鎌を向けながら問う。


 「我は黒龍。時間を支配する者。お前その技は禁止しよう。移動時間を我の許可なくなくすことは許さない。ダークワールド」


 アレンの体から黒い波動がまるで世界を覆うように、伝播していく。


 「ふん、あとはお主らがなんとかしろ、この小僧の魔力ではここが限界だ」


 アレンから感じる圧迫感がなくなり、両目がもとに戻っていた。

 

 「ごめん、僕の魔力が底をついたみたいだ」


 地面に手をついて、一歩も動けない様子だ。


 「十分だアレン。ゼット時間を稼いでくれ、メイリは俺とアレンを守ってくれ」


 俺は2人に指示を出し、魔力をため始める。

 

 「ここまで、2人に助けられっぱなしだったからな、任せとけ」


 ゼットは悪魔に向かっていく。


 「ご主人さま、絶対に攻撃は通しません」


 メイリが俺とアレンの前にシールドを張る。

 俺は目を瞑り、静かに、イメージする。

 雷の神、タケミカズチよ。

 俺に力を貸してくれ。


 「俺様の周りをうろうろうっとうしいやつめ、もう遊びはやめだ。俺様の全力の一撃で仕留めてやる」


 ゼットの細かいステップに鬱憤が溜まった悪魔は、ゼットを無視して、両手を挙げて頭上に魔力をため始める。


 「悪魔が魔法を使うのかよ」


 膨大な魔力がたまっていく様子にゼットが焦り、無防備になった悪魔に飛び蹴りを入れるが、悪魔は意に介せずびくともしない。

 しだいに、魔力は膨れ上がり、部屋全体を覆うかのように大きくなっていく。


 「ゼットさん!私の後ろに」


 メイリは、自分の魔力をすべてシールドに注ぎ込んでいる。


 「わりい、俺の力不足で」


 ゼットは自分の不甲斐なさを恥じるように、頭を下げる。


 「いいえ、私は、ここまでゼットさんにたくさん助けられてきた。野外演習のときも、足手まといで悔しかったの。だから、今度は私がみんなを救う番」


 メイリは覚悟が籠った眼で前を見据える。

 

 「友情ごっごは、すみましたかぁ?残念ながら、これでお前らは地獄行きだ」


 魔力をため終わった悪魔が笑いながら、両手を振り下ろす。


 すると、天井まで大きく膨れ上がった、魔力が一気にメイリに向けて放たれる。

 

 「うっくっ」


 メイリはあまりの衝撃に顔をしかめるが、なんとかシールドを維持するが、次第にパズルのように端からはがれおちていく。


 「キャハハハ、終わりだ終わり。人間ごときが止められる技じゃありませーん」


 悪魔の叫び声が響き渡る。

 メイリが必死に壊れたシールドを張り替えながら、耐えるが、破壊されるペースのほうが早い。


 「くう、ごめん。もう限界……」

 「大丈夫。よく耐えてくれた」



 俺は、両腕を上にあげて、たまった魔力を開放する。


 「ライトニングドラゴン」


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン


 その瞬間、ものすごい轟音とともに、視界が真っ白に染まる。

 ドラゴンの形をした雷が、すべてを食い尽くす。


 「アアアアア、オレサマ……ガ……」


 悪魔が消滅していく間際、乗っ取られていた、父が精神を取り戻す。


 「ベイン……いい仲間を持った……な」

 

 その最後の言葉を聞き、胸が熱くなり、気づいたら涙が出ていた。

 視界が戻り、目の前にいた悪魔は消滅しており、王城は半分ほど吹き飛んでおり、小高い丘から、国全体を見下ろすことができた。

 

 「やったのか、俺たちは倒したのか」


 ゼットが信じられないものを見る目で俺を見た。


 「うん、やったんだよ、ベイン君がすべてを終わらせた」


 アレンが大の字になり、空を見上げる。


 「これで今からご主人さまは、この国の王様ですね」

 

 メイリは俺の腕を組みながら、体を寄せる。

 そんな、メイリの腕を引いて、国全体を見渡せる場所まで歩く。


 「今この瞬間、奴隷制度を撤廃する。だから、俺とメイリの関係はここでリセット」

 「え?それってどういう……」


 メイリは不安そうな顔で俺を見る。

 

 「メイリ、俺の生涯のパートナーして一生傍にいてくれないか」

 「うん、ご主人さま……では、もうないんだよね。ベイン。死ぬまで傍にいることを誓います」


 俺とメイリはお互い見つめあい。キスをした。


 山頂に沈む太陽が、ダイヤのように光り輝き、俺たちを祝福するように光の道を作り出していた。

 

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