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覚醒

 アレンとゼットはそれぞれ、悪魔に向かっていく。

 アレンは刀で悪魔に切りつけるが、悪魔は鎌で受け止め、アレンに向けて蹴りを放つ。


 「それは、わかっているよ」


 アレンは寸前のところで、後ろに飛びかわす。


 しかし、悪魔はそのまま突進して鎌をふるってくる。

 アレンはそれを刀で受け止めるが、相手の攻撃は止まらない。

 前後左右に溜めなしで強烈な一撃が次々と襲ってくる。

 キンッキンッキンッキンッ!


 それをなんと防ぎ、タイミングを見て、相手の一撃にこちらの力を込めた一撃をぶつける。その反動を利用して、後ろに大きく下がる。

 

 「くっ、隙がまったく見当たらない。大抵は、攻撃の瞬間に一瞬隙ができるはずなのに、この目をもってしても、まったくみえない」


 この目は相手の行動を先読みすることができる、これに気付いたのは、僕を奴隷の身分から救ってくれた人だ。僕は物心ついたときには親はおらず、暗い倉庫内で働かされていた。だけど、それは当たりまえなんだとおもってた。周りの人たちも顔を顰めながら働いているのをみて育ってきたから。それがおかしいなんて思わなかった。


 唯一、楽しいと思ったのは、週に1回行われる、腕力大会だ。そこで働いている人達が大人も子供も交じって、どちらが強いのかを競い合いう。今にしても思えば、あれは奴隷たちのストレス発散のためだったんだろうけど。初めてその大会に参加した時、大人たちは薄暗い笑みを浮かべていた。僕の一回戦の相手は、一回りほど歳がはなれた子だった。


自身満々な顔をして、僕を殴りつけてきたけど、そんな攻撃に当たるわけない。だって、僕にはそこにくるってわかっていたから。その後も攻撃を回避し続け、相手が体力を切れたところで、顎に一発カウンターを入れると相手は気絶してしまった。


 そのあとも、周りから強い強いといわれている男たちを全員後して優勝してしまった。でも、最初はみんな手加減してくれてるのかと思った。だって、わざわざ僕にここに攻撃しますよって教えてくれるんだから。でも、それから数年たち僕は偉い人にお金で買われ奴隷の身分から解放された。


 その人から、これは僕が生まれ持った能力なんだと、教えてもらうことができた。それからは、刀の扱い方や、そのほかの魔法などを必死に学んでいった。そして、そこそこ物事を考えられる歳ごろになった時に、その人に教えてもらった。僕の目には黒龍の力が宿っていると、学園に入り、力の使い方を学びなさいと。

 

 だけど、僕にとってはそんなものよりも、奴隷とそうでない人たちの差がわからなかった。ここでは、みんなが幸せそうにくらしている。でも、奴隷という身分の人はいつも厳しい顔をしていた。だから、学園に入り、僕は偉い人になり、この国を変えたいと思った。だけど、今思えば、僕は自分の力と向き合うのが怖かっただけなんだ。


 この国を変えたいと思う気持ちは本物だけど、だけれど、それなら、その気持ちは逃避であってはならない。


 追い詰められた状況で僕はそんな昔のことを思い出していた。

 ベイン君と戦っているときも、僕の目は行動を先読みできるとか言ってたけど、黒龍の力があるとは言わなかった。つまり、無意識に僕は僕自身と向き合うことを拒絶していたんだ。なんだか、笑っちゃうな。


 ガキンッ!

 大きな音がしたほうを見ると、ゼットが悪魔と激しくやりあっていた。


 「おらおらおらおら」


 ゼットの右拳が飛ぶも鎌にはじかれる、だが、すぐさま左の拳が飛ぶ、それを横スライドでかわしすが、右足の蹴りが待っていたかのように、放たれる。しかし、それも後ろにスライドされてよけられ、空振りした瞬間を狙って、鎌を一閃する。それに対して、ゼットは体を無理やり捻り、左足のけりを刃の下に合わせることで相殺する。


 「おい、こいつら相当やるぞ」


 ゼットが冷や汗をかきながら、舌なめずりをし、僕に話しかけてきた。

 

 「ええ、どうやら一筋縄ではいかないようです」

  

 慌てて思考を切って、現状を分析する。

 僕は覚悟を決めてゼットに提案する


 「1対1では不利だ、だから、2対1の状況を作り出そう」

 「2対1だ?どうやるんだよ、俺らどっちかが、相手に背を向けた瞬間を黙ってみてるほど甘い相手じゃねぞ」


 ゼットもアレンも悪魔をにらみ付けながら、動きに即対応できるように、視線をはずさない。

 どちらも、相手の出方を探りあい、場は硬直状態になっていた。

 

 「簡単だよ、ゼットさんが悪魔に突っ込んで、一人を誘い、上下で挟み込むようにするんだ、ゼットさんは普通に戦ってくれればいい、すきをみて、僕が斬撃を飛ばして援護するから」


  「おいおい、それじゃお前は両方の悪魔の動きを見ながら戦うってことじゃねえか、そんな余裕をあいつらが見せてくれるとは思えねえ。このまま、近くで戦ってたほうがお互いサポートもできるんじゃないか」


 ゼットは疑いのまなざしで僕を見る。

 僕は自分の力と向き合うことに決めた。この力はそんな程度楽にこなせてしまう。


 「僕の目には、黒龍の力が宿っているんだ。この力を使えば、相手の行動を完璧に読むことができる。問題ないよ」


 アレンは鋭い視線をゼットに向ける。


 「っへ、そこまで自信たっぷりに言われちゃ、信じるしかねえな。だが、俺らも分断されることになる。俺からの援護は期待できないからな」

 「うん、僕の支援があるんだ、ゼットさんは速攻で倒してくれるでしょ」


 アレンとゼットが視線を合わせる、ゼットがアレンの頭を小突くと、悪魔に突っ込んでいった。

 僕はしずかに、右目に手を添える。


 「黒龍、僕に力を貸してくれ」


 右目から魔力があふれてくるのを感じ取る

 自然と僕は口から言葉を吐いていた。



 「龍眼開放」


 アレンの右目に集まった魔力が、網膜を多い、真っ黒に染まった。


 「おらあああああああああああ」


 突進してくるゼットに対して、悪魔が鎌を構えるが、素通りする。そこで一人が追ってくるを確認し、ゼットは反転し構える。

 

 「俺は魔法には頼りたくねえんだけど、そうは言ってられないみたいだな」


 深く息を吸って、目を瞑ると、ゼットの全身がうすい魔力でおおわれる。空から降ってくる水滴がゼットの体にぶつかった瞬間、真っ二つにきれいに両断された。左拳をひいて、左足を地面から離し、右足で強く踏ん張る。地面は靴状にへこみ、そのまま地面を蹴ると爆発したように、一瞬でトップスピードを出し、悪魔に突っ込む。

 突進してくるゼットに向けて、鎌の一撃が迫るが、右拳で刃を受け止める。

 ギィン!


 「今の俺の拳は何物をも通さないぜ!」


 そのまま、鎌をはじき返し、逆に無防備になった悪魔に向けて、左拳をうちこむ。咄嗟に右にスライドしてかわすが、それを読んでいたかのように、ゼットは右足を軸にして左足で渾身の回し蹴りを繰り出す。


 「これで終わりだ」


 全体重を乗せた最大威力の技だ。

 それに対して、悪魔は鎌を体の前に入れ防ぐ。


 「やべっ」


 これで吹き飛ばせると思っていたが、予想以上に悪魔の力が強く、耐えられてしまう。


 「どんだけ、力あんだよ」


 態勢をくずしたゼットに向けて鎌が迫ってくる。

 このままじゃ避けられねえ。ゼットは魔力を一か所に集めて、威力を軽減させようとした。だが、その鎌がぶつかる前に、後ろからくる衝撃波に悪魔の体が真っ二つになった。

 

 アレンはずっと、ゼットの動きを見ながら戦っていた。

 ゼットが悪魔に突っ込んでから、すぐにアレンは切り込みにかかる。予備動作がなく、一撃の一撃の間が小さい悪魔に対して近接戦を挑むのは、ゼットのようなタイプじゃなければ、とても長くは戦えない。

しかし、今の僕なら相手の、行動が手に取るようにわかる。


 刀を振り下ろすも、鎌で防がれるが、それもわかっていたかのように、下がる。今まで待ちの態勢だった悪魔が追撃をしかけてくる。


 「それを待っていたよ。だけどね、僕が一番得意なのは攻めじゃなくて、守りのほうなんだ。」


 もともとアレンは、自分から攻めていくタイプではない。先読みの目を使って、相手の攻撃をぎりぎりでかわし、一瞬の隙をつくタイプだ。勢いよく鎌を横からふるってくるのを、黒龍の目で予測し、鎌の一閃がきた瞬間に体を低くしてかわす、髪の毛の先が切られる。

 体を落としながらも、刀を素早く鞘に戻し、かわし切ったところで、勢いよく引き抜く。


 「抜刀!」


 横一線にきれいな扇を描くも、悪魔は大きくアレンを追い越すようにジャンプする。しかし、それこそが狙い。一時的にアレンとゼットで1体の悪魔を挟み込む状況が完成する。魔力を込めた一撃はかわされても、斬撃がもう一体の悪魔に向かう。ゼットにとどめをさそうとしているところに、後ろから両断した。


 斬撃を交わしたほうの悪魔は上空で鎌を構え、一回転するようにアレンに切りかかる。

 だが、その動きはすでに分かっている。視線を向けずに、刀を後ろに回し、防ぐ、

 そして、着地地点へ刀をそのまま、上から斜め下に向けて振り下ろした。

 2体の悪魔を倒した僕はベイン君のほうがどうなったのかと視線を向けた瞬間だった。


「きゃあああ」

 メイリさんの叫び声と、ベイン君に悪魔の鎌が振り下ろされた。


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