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シャドウ 〜影と共に〜  作者: 赤茶猿マン
影と傀儡師一族
7/20

大人の事情と再来。

裏切りを経験した主人公だったが、肝心のお助けしてくれた人物も…



 放課後の職員室には、意外にもまだ先生方が残っていた。担任の椅子に座らされて待つボクを、他の先生がチラチラと見ているのが分かった。大抵は職員室に呼ばれる生徒なんて、悪い事をして叱られるモノだと相場は決まっている。はず。


あの『用具室』の一件の最中に、ボクの担任がタイミング良く来てくれて、その結果、先ずは須藤達が奥の指導室に入れられて、先生と何か話している様子だ。ボクの順番はその後。なのでここにこうして待ってる。という訳だ。


あちこち怪我しているので、先に保健室に行きたいモノだが、前回も似たような事があった時、ボクはこうなるのが嫌で逃げて帰ったのだ。その事を踏まえてか、先生からは、「話しが終わった後で」と言われてしまった。


今回は先生も目撃したので、ボクが叱られる事は無いはずだ。そんな事を考えている時、指導室のドアが開き、須藤達がそのまま職員室から出て行ってしまった。そして、先生がボクに手招きして、こっちに来いと言っているのが見える。ボクはそれに従い行ってみる。


「その…、平塚。お前も大した事は無さそうだから、今日はこれで帰っていいぞ。すまんな。」


《ちょ、それだけか!?須藤達にちゃんと注意してくれたのかな?》


何となく察しはついているのだが、それでも今後の学校生活の改善に期待を持ってしまう。しかし、先生はボクの顔をまともに見ようとしない。いつもと同じだ。


 須藤は先生達にいつもこう言っている。「オレ達に構うとどうなるか、オヤジが教えてくれるらしいから、知りたいならオレを怒ってもいいんだぜ?クビだろうけどな。」と、小学生の言葉とは思えない様な言い様だ。明らかに脅迫である。


しかし先生達も、須藤のオヤジさんが怖いのか、誰もそれに逆らおうとしない。その為、須藤の言いなり状態になっているのである。今回の事も間違いなく須藤にそう言われたのだろう。先生の様な大人がどうする事も出来ない事を、ボクがどうこう出来るとは思えない。諦めて先生の言う通りに帰る事にする。


 きっと大半の人間が反対の事を思うのだろうが、ボクはシャドウを使って、仕返し、成敗などという事は考えていない。勿論、イジメられて悔しかったり、憎しみに似た感情が湧き上がらない訳では無い。


しかし、それ以上に思うのは、大人になり、結婚して、自分の子供が出来た時、その子供に自分の事をどう伝えるのだろう?と、ボクは変わっているのかもしれないが、須藤達の未来で産まれる、子供達の事が心配になる。


その子供達が、ボクの様な悲しい思いをしないようにと、切に願っている。だからこそだ、シャドウをけしかけて、須藤達を逆にイジメるのは簡単な事だが、そのせいで心が荒み、将来産まれるであろう須藤達の子供に影響を及ぼす様な、そんな悲しい事があってはならないのだ。


とまぁ、図書室の本で得た考え方なのだが、そう考えていないと、今の自分が惨めで、きっと耐え抜く事が出来ないと思ったからだ。心配、というと何だか偽善者みたいだが、一番近い言い方だと『哀れに思う』って言葉が近い。上から目線でのその考え方で、心だけは須藤達より優位に。というところだ。


 帰り仕度を整えると、ボクは自宅への帰路についたが、途中の駄菓子屋の前で、向井君がしゃがみこんでいるのが見えた。正直なところ、あんな事をされて、彼とどう接していのか分からなかった。今は顔も見たくないというのが本音だ。


ボクはその駄菓子屋のかなり手前から脇道に入り、向井君を避けるコースで自宅へと急いだ。その間中ずっと、あの時走り去って行く向井君の後ろ姿が思い出されて、その事があってから初めての涙が溢れた。殴られても蹴られても、涙だけは流さなかった。なのに、これだけは勝手に流れてきて、袖口で拭っても拭っても溢れて止まらない。


 家に入るなり自室にこもったボクは、この日の夜は食欲が無く、そのままベッドで声を殺して泣いてしまった。本当の意味での、『心が折れた』という事を初めて知った。向井君は、自分の代わりになる生贄を探していて、ボクが須藤達の標的だという事を知り、そしてボクを自分の代わりに差し出した。という事なのだろう。そうとしか考えられない。


《もう…、友達なんていらない。諦めよう。こんな思いをすると知っていれば、向井君と話したりしなかったのに…。》


「お兄ちゃん…、何があったのかは知らないけど、下にご飯用意したままにしてあるから、少しでも食べてね。…、私、もう寝るからね。おやすみ…、お兄ちゃん。」


ドア越しに、心配そうな様子の妹が声をかけてきた。返事を返せずに黙っていると、足音が廊下の向こうに消えて行くのが分かった。今は誰とも話す気分では無かった。そして、眠れずにそのまま何時間か過ぎた。


「キャッ!」 妹の部屋から短い悲鳴が聞こえた。ボクは慌てて起き上がり、部屋の電気を点け、シャドウを繰り出すと、壁をすり抜けさせ妹の部屋へと向かわせた。少し遅れてシャドウの視界が頭に流れ込んできた。隣は兄貴の部屋だが、今は海外なのでここにはいない。


兄貴の部屋を通り越して、妹の部屋へ突入した時、シャドウが兄貴の部屋へと勢いよく戻った。いや、何者かに押し戻された感じが伺える。シャドウは人間が干渉したり、その姿が見えたりはしないはずなのだが?そう考えている時、ボクの部屋のドアが、ギイッっと音を立てて静かに開く。


「おっと、今度は不意打ち無しだぜ…、へぇ〜、やはりお前、影使い…カゲクリだったか。まぁ、オレのコレも似た様なもんだけど、お前のは…、変わってるな?」


ドアの向こうから声をかけてきたのは、昨夜のコソ泥、そう、脱走したコソ泥だった。シャドウを戻して捕らえようと思ったのだが、ヤツは妹を盾にして話しかけてきている様子だ。廊下がヤケに真っ暗で良く見えないのは気のせいだろうか。


「どうでもいいけど、妹を離せよ。なんだよヘソクリって。」


「う…、いやいや…。人の話しはちゃんと聞こうよ…。カゲクリだよ。カ・ゲ・ク・リ!」


「わ、分かってるよ…、わ、わざとだ!」


「あ、そう…。あ、いやいやそんな事はどうでもいいんだ。お前に伝言がある。我らのリーダーからの伝言だ。『我らの元に来い』だそうだ。ちゃんと伝えたからな!ったく…、伝言伝えるだけで苦労したぜ。」


そう言って脱走コソ泥は、その場から消える様にいなくなってしまった。そして、ドサリ!と音を立てて、妹が廊下に倒れこんだ。気絶したのかと思っていたが、寝息をかいていたので、どうやら眠ったままの様子だ。部屋まで運ぼうと妹を抱え上げた時、視界の端にチラリと足元に何かが見えた気がして視線をやる。


「……、あんた…、何してんのさ?」


「へ?……、いや、ほら…、まるで煙の様に消えたみたいで…、カッコよかっただろ?…な〜んて…ハハハ…。」


そこにいたのは、先程突然消えたと思っていたコソ泥だった。コソコソしゃがんで隠れているつもりだったらしい。コイツはもしかして、ボクより情けないヤツなのかもしれない。そう思った。


「あ、何だよその目!?オレだってやる時はやる男だ!そ、それに、今は…その…。ハラが減っているだけだ。『グゥゥ〜〜ゥッ』」


「はぁ…。なんか情けないっすね。妹寝かせてくるんで、ちょっと待っててよ。」


何だか悪い人間には見えず、逆に心配してしまう程に情けない感じがして、コソ泥にそう言って待ってもらう事にした。意外にも素直に部屋の前で待つコソ泥。ついてくる様に促すと、これまた素直についてくる。


「これ、どうぞ。ボクは食欲ないんで。」


妹が先程言っていた、そのままにしてあった夜ご飯を、情けないコソ泥に提供した。


「ところで、さっき言ってたカゲクリって…、何なの?」


「ンガっ?ガァ、ガゲグギゲギュウゴガ…。」


「いや…、何言ってるのか分からないんですけど…。」


食べながら喋るのはやめてほしいモノだ。お陰で顔にオカズが飛んできた。汚い事このうえない。

理不尽な事で溢れている世の中。その一角を垣間見た主人公は、人の汚さに目を背けようとしていた。そこへまた、あの脱走コソ泥がやってきて、伝言とやらを伝えてきた。がチンプンカンプンの主人公。ちょっとお茶目なコソ泥に、自分の夕飯を与え、その真意を聞こうとすのだが…。


こんにちは猿です!今日は特にコメントありません。泥棒…した事ないので。あぁ、お腹空いてどうしようも無い時は、庭の草をむしって、掃除をする中年を装い、こっそり食べたりしています!ウソです。

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