表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャドウ 〜影と共に〜  作者: 赤茶猿マン
影と傀儡師一族
6/20

初めての経験。

理不尽んな親に、理不尽な説教をされてしまう主人公。気を取直して学校へと向かうのだが…



 あれからシャドウに、ボクが粗相した後始末をしてもらい、学校へ行く支度に取りかかる。部屋に戻った際に、凄く寝相が悪い妹が、何でもかんでも放り出していた事は見ていない事にする。更に付け加えて言うならば、こんな状態の妹を起こすと、学校に行く前に重傷を負う事になり兼ねない。


「いってきます…。」返ってくるのない挨拶を、廊下の先にある母の部屋に向けて発し、いつもの様に登校する。


 別段気にする事でも無いのだろうが、ボクが物心ついた時から、この近所には子供が一人もいなかった。なので朝の登下校中に、同じ小学生は勿論の事、中学生、高校生さえも見かける事は無い。大人ばかりの町内である故に、『子供会』などと言うものが存在しない。


お陰で、昨日学校を休んだ事を気にせず登校出来る。とは言うものの、学校に着いても話しかけてくる友達らしき人間はいないのだが、ズル休みしたのではないか?などと思われている気がして、休んだ後のこういう日が、一番気が重くなるのだ。


 学校が近付くにつれて、段々と子供の姿が目につく様になる。心なしか、同じ小学校に通う周りの生徒達の目が、忌み嫌っている様な、避けている様な、そんな印象を受ける。いつもはボクの事なんて誰も見ていないのに、今日はその視線のせいで、何だか胸騒ぎがする。


教室に入るとその理由が明らかになった。黒板に書かれた文字、絵、それらはあの夜の事を表していた。


『平塚英之はバ・ケ・モ・ノ。超能力を使って人を殺しかけたバケモノだ!注意しろ!』


と、そんな文字と、下手な絵でその様子が描かれていた。まさかコレを皆んな信じている訳じゃないよね?などという甘い考えが頭を()ぎった。


この学校の生徒達は流されやすく、烏合(うごう)(しゅう)になりやすい。そうしていないと自分が惨めな学校生活を送る事になるからなのだが、これはあの須藤がそうしていると言っても過言では無い。


この学校と言う世界では、勉強がくら出来ても凄いとは言われない。そんな学校もあるのかもしれないが、少なくともこの学校でそれは無いのだ。力が強く、運動神経が良くて、ケンカが強い。そんな須藤みたいなヤツが凄いと思われてしまう。まぁ全員がそうとは言わないが、ボクが見えている範囲ではそうだ。


大半がそう思う中、ボクの様に陰でイジメられて泣き寝入りしている生徒もいる。現に今、只でさえ悲惨な学校生活が、更に脅かされているのがその証拠だ。あの夜の事を知っているのは須藤達だけなのだから。


 取り敢えずボクは、黒板に書かれているそれらを消す事にして取りかかる。このままにしておくと、ボクの名前がある事から、先生までもがボクに攻撃してくるのだ。そう、言葉での大人の暴力だ。威圧する様な言葉で、上から抑えつける様なあの視線。同じ子供のソレより遥かに怖い。


「平塚君…、気にすんな。オレも手伝うから…。」


黒板を綺麗にしていたボクの横に並んで、同じ様にして綺麗にしてくれる男子が現れ、ボクに小声でそう伝えてきた。入学してから一度も話した事も無い男子だった。


 〜 昼休み 〜


「あ、やっぱり名前…、覚えてくれていないんだね。オレも平塚君と同じでさ…、他の生徒と話した事…あんま無いんだよね。」


「そう…なんだ。あの…、朝は、ありがとう。ボクは平塚英之。あまりボクに関わらない方がいいよ。」


 学校の敷地の隅にあるちょっとした林の中。ここは校長先生が自分の趣味で作った場所だと言う噂だ。その林の中で、珍しい事が起きていた。ボクと学校で話す同年代が現れるなんて、夢にも思っていなかった。もう予想はついていると思うが、相手は、朝の黒板消しを手伝ってくれた男子だ。


「アハハ、知ってるよ。あ、名前をって事だよ。関わらないでくれって…、もう遅いし。それにさ、須藤達にこれ以上どうイジメられるって言うのさ?それより、オレ『向井裕太(ゆうた)』よろしくね。」


そう言いながら握手を求めてくる向井君。須藤達にイジメにあっている生徒と話すのは初めてで、少し戸惑いつつも、ボクは向井君が差し出した手をシッカリと握り、「よろしく」と短く返した。これが小学校、いや人生初の友達が出来た瞬間だった。


「ところで平塚くん、悪く取らないでくれるとありがたいけど、あの噂、オレも少し気になる。本当なん?」


「あ〜、まぁ、実際にはボクにも何が起きたか分からないんだよね…。」


初めての友達に嘘をついて、胸の奥がチクリと痛んだが、本当の事を話して引かれるのが怖かったのだ。それに、こんな事話しても信じてもらえる保証は無い。


初めての友達に初めての嘘、そして初めて感じた痛み。悪い事をしてしまっているのに、ボクはその事を嬉しく思ってしまった。何故なら、友達が出来たからだ。友達がいないと、嘘をつくことも、口ゲンカは勿論、仲直りすら出来ない。


だからと言って向井君と口ゲンカしたい訳じゃない。今だって、ちゃんと罪悪感はボクの心の中にある。その証拠に、先程から出現していたシャドウが、向井君に何度も頭を下げている光景が目に映っている。ボクの感情を読み取っているのだろうけど、なんか笑ってしまう。


 それからお互いの家庭の事や、趣味、将来の夢なんかを話して過ごしていたが、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた後、向井君が不安そうな顔つきになり、ボクにこう話しかけてきた。


「今日…、放課後に、またアイツらに呼び出されているんだ…。平塚君は大丈夫?」


「そ、そうなんだ…。ボクは多分…、塾の帰り道の公園で…かな…。」


先程までの楽しい雰囲気が、その会話で吹き飛んでしまっていた。恐らく向井君もなのだろうが、現実に無理矢理引き戻された気分になったからだと思う。


「ま、まぁさ…、いつもの事だしね。ごめん平塚君。せっかく楽しく話せたのに…、こんな雰囲気悪くしちゃって…。」


「う、うん。ボクも…、似た様なもんだから。放課後って…、どこに呼び出されたの?」


「え?あ、あぁ…。グラウンド脇の用具室…なんだけどね。オレはいつもあそこなんだ…。」


「あ、なんかボクの方こそごめん…。その…、そんな事言いたくなかったよね。ごめん。」


「う…、うん、いいんだ…。そ、それより教室戻らないとだね。掃除…しないと。」


向井君のその言葉で、ボク達は急いで教室に戻った。掃除をサボると、更に放課後に居残って、職員室の掃除をさせられてしまうからだ。先生の監視下で掃除なんて、母の説教と同じくらい嫌だからね。



 〜 放課後 〜


 ホームルームの後のチャイムの音で、教室中の椅子がガタガタと音を立てる。今日の学校での授業が、全て終わり、これから生徒は帰宅するという合図でもある。それと同時に、ごく一部の生徒には、恐怖の時間の始まりである事を、知らしめる事にもなる。


殆どの生徒が教室から出て行った後も、向井君は着席したまま、机に視線を落としてうな垂れていた。塾から自宅へ帰る時の、ボクと同じ雰囲気を纏っているのが分かる。


 ボクはある決意をしていた。昼休みが終わり、掃除の後の授業の時から、向井君を助けるという事をだ。彼がボクに須藤達の話しをしたのは、きっと助けて欲しいと思っているからだと判断した。そして、ボクはシャドウを使って彼を助ける。という決断をしたのだ。


「向井君、ボク…、一緒に行くよ。二人で抵抗すれば何とかなるよ。せっかくお友達になれたんだから、助け合わないとね。行こう。」


ボクにもう迷いは無かった。そのボクを見てか、向井君が驚いた表情を見せてはいるが、顔を上げてくれていた。


「あ、あの…、平塚君…。あ、いや…。うん、何でもない。あ、ありがとう。」


向井君は何かを言いかけた様子だったが、素直にボクを受け入れてくれた。ボクは彼との信頼を勝ち取った気分になった。イジメられているという、実に情けない事なのだろうが、そのお陰でボクは本当の友達が出来たと、心からそう思った。


そして、勇猛果敢なゲームの戦士の如き気持ちを携えて、ボクが先頭に立ち、『用具室』へと向かった。


「たのもーー我こそはー!!」と名乗りを上げて乗り込む感じで、『用具室』のドアを開け中に入る。その瞬間、ボクは頭上から何かを被せられた事を理解した。先程までの勢いとは裏腹に、その場で無様に足掻くボク。そして、聞き覚えのある声が聞こえてきた。須藤の声だ。


「よ〜し、向井!よくやった。これから一ヶ月はお前をターゲットから外してやる!分かったら帰れ!」


そう言った須藤の言葉で、ボクは向井君の表情を確かめようと視線を移したが、既に彼がグラウンドを走って行く後ろ姿が見えただけだった。


初めての友達に、初めて裏切りを受けた事を知った時、ボクは既に須藤達のサンドバックと化していた。

初めての友達に有頂天だった主人公だが、まさかの裏切り行為に…。主人公の心がどうなるのか、この先それが心配される。


こんにちは猿です。猿は昔よく飲み歩いて遊んでいましたが、必ず自分からケンカをふっかけておいて、猿にそれを擦りつけて逃げる友達がいました。それでも猿の大切な友達だと信じて、毎回頑張って猿パンチで応戦していました(笑)まぁ、ボコボコにされるんですが…アハハ…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ