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シャドウ 〜影と共に〜  作者: 赤茶猿マン
影と傀儡師一族
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謎の訪問者。

主人公の恐怖の感情を読み取り、即座に行動に出たシャドウ。やはり男は不審人物であったが、去り際に意味不明な事を口走って…



 シャドウに持ち上げられて成す術無くぶら下がるコソ泥。コイツは自分の正体をそう白状した。ボクにはシャドウが落ち上げているのがハッキリと分かるが、コソ泥には見えていないはずなので、ボクが超能力でも使って拘束していると思っているに違いない。


その証拠に、「お前はバケモノだ!」とか「念力少年許してくれ!」とか、勘違いも(はなは)だしい事を口にしている。


「大丈夫だよおじさん、警察が来たら下ろしてあげるからね。それと、ボクはカイブツじゃないよ。おじさんの方がよっぽどカイブツに近いと思うんだけどね。人の皮を被ったカイブツ…。悪い事するヤツは皆んなそうだよ…。」


ボクのその言葉に、コソ泥は何か言っている様子だが、ボクにはモゴモゴ言っている様にしか聞こえないので無視する。うるさいおじさんだと思ったボクの思考を読み取ったシャドウが、コソ泥の口を塞いでいた。


 やがてパトカーのサイレンがウチの前で鳴り止み、警察官が二階へと駆け上がり、コソ泥に手錠をかけて拘束、逮捕してくれた。その去り際に、コソ泥がこう言った。


「カゲクリよ、お前をずっと見ているぞ。もうすぐアイツが来る…。覚悟しておけ…。」


そう言ったコソ泥だが、警察官に強引に引きずられ、パトカーに押し込められ、そのまま連行されていった。そして、残った警察官に、二時間近くに渡り事情をアレコレ聞かれる事になった。


その間に、妹、母親と帰宅して、何も悪くないボクが母に叱られ、妹が慰めてくれた。母の勢いがある説教に、警察官も口をアングリと開けて驚いていたが、自分の仕事を淡々とこなして帰っていった。


 しかし、警察官も大変なのだろうが、第一発見者や、被害者というのも、中々大変なものだと感じた。今回のボクの場合、被害者になるのだが、事情をしっかりと把握する為だと理解はしているものの、制服を着た警官に根掘り葉掘り聞かれると、何だか自分が尋問を受けている錯覚にとらわれてしまった。正直疲れたと感じている。


何はともあれ、今回もシャドウのお陰で何とか大事に至らなくて済んだ。あのコソ泥が去り際に言っていた事は何だか理解出来なかったが、もう捕まったのだから心配はいらない。


「お兄ちゃんってさ…、私がいないとホント…ダメだよね…。」


事情を知ってか知らいでか、妹がボクをジトーっとした目で見ながらそう言ってくる。何かを見透かされた気分になったが、ヘタレなあの場面の事は誰にも話していないので、多分気のせいだろう。


 母は夜勤に戻ると言って、いそいそと出かけて行ってしまった。それから妹には、本当の事を言いなさい!とか何の根拠も無いウソつき兄貴のレッテルを貼られてしまう事になったが、シャドウの事なんか言えるはずもなく、コソ泥がボクがいた事に驚き、滑って転んで気絶したから縛り上げたんだ!という事にしておいた。実際に、警官にもそう言ってある。


妹はまだ納得いかない顔をしていたが、お風呂に入ると言って、「一旦保留にしておくから」と言い残し、自室へと引っ込んだ。


 今夜は何だか眠れない。昼過ぎから先ほどまで寝ていたから仕方のない事ではあるが、あのコソ泥の言った言葉の意味を考えていたからというのもある。


そんな事をボーっと考えていると、ドアが開く音がして、そこには枕を両腕に抱いた妹の姿があった。


「お、お兄ちゃんが…、その、怖いだろうと思って、私が一緒に寝てあげようと…。」


そう言った後、面倒くさいといった感じの表情を浮かべた妹は、ズカズカとベッドに近付くと、ボクを思いっ切りベッドの端に追いやり、枕を真ん中に据え、自分もそこにドーンといった感じで寝っ転がってしまった。


ボクの予想では、先ほどのコソ泥騒ぎで、ちょっと怖くなった。というところだろう。天井をジッと見つめたままの妹に、布団をかけて寝る様に促す。


「あ、ありがと。でも、寝てる時に何かしたら、そこの窓から縛り上げて吊るすんだからね!朝までそうしていたいなら、遠慮なくどうぞ。」


恥じらいながらも、何気に恐ろしい事を口にする妹だが、そこがみいちゃんらしいと言えばらしい。口ではいつも強がった事を言っているが、本当は優しくて、泣き虫で、人一倍怖がりで、でもシッカリ者でお世話焼き、頭も良くて可愛らしい。これがボクの知る妹、みぃちゃんだ。


「それからね、お兄ちゃん、私…、さっきの泥棒の男の人、見たことある気がするんだ…。」


「え…、それは最近の事なの?ボクは初めて見たよ。」


「うん…、最近ね、ピアノのお稽古の時にね…。ほら、あの教室、通りから丸見えでしょ?中の様子が。それでね、よく外の建物の陰から見ていた男の人がいてね…、それが…。」


「なるほど、さっきの男に似ていた。という事だね。」


思い出しながら話してくれていたのだろう、途中言葉に詰まりながらも話してくれるその様子からして、妹は怖い思いをしていたに違いない。そう思うと、頭を撫でてあげたい程に愛おしく思えてならない。これからはボクが守っていかないと。


 しかし、その話から考えられるのは、ボクでは無くて妹を監視していた?という事になる気がするのだが、それが何故今夜はこの家に忍び込んで来たのだろうか?食べ物を漁っていたのは確かだが、そんな事でリスクを負ってまで、他人の家に侵入するアホは聞いた事が無い。他に何かしらの理由があったはずだ。


妹に心当たりが無いか尋ねようとしたら、よほど疲れていたのだろうか、スヤスヤと寝息を立てて眠ってしまっていた。寝顔だけ見ていると、とても気が強い事を口にする女の子には見えない。ボクも習って目を閉じて寝る事にした。


 翌朝、母の大きな声で目が覚めた。どうやらボクを起こしてくれる声ではなかった様子だ。珍しく妹はまだ寝ていたので、起こさない様に気を付けながらベッドから出る。そして、声がしているリビングへと向かった。


「だから!何でそうなっちゃうんですか!またウチに来たらどう責任取るおつもりなんですか!いえいえ、そうじゃなくて、ここに警官を待機させなさいって言っているの!万が一って事があるでしょ!」


どうやら電話で怒鳴っている様子だが、相手は警官かな?と思える様な内容だ。母を横目に冷蔵庫へと向かう。


「ちょっと!英之!!こっちいらっしゃい!」


まだ電話途中の母にそう言われて、ボクは素直に母の座るソファーまで戻った。トイレにも行きたいので、早く用事を済ませてほしいものだが、まだ電話の相手とエキサイトした話しは続いている。


それから二十分程してようやく電話を切った母。ボクを見るなりまた怒鳴りだす。本当に怒鳴る事が大好きな大人だと感じた。慣れているのでそれほど気にはならないが、漏れそうだ。


「ちょっと聞いてるの!?昨日のあの泥棒が、パトカーから逃げ出して行方不明なんだって!あなた、妹の事をしっかり守りなさいよね!分かったの!?自分の命に代えてもだって言ってんの!」


これが冗談で言っているのでは無い事は分かっている。自分の息子にこんな事を言う母親は、おそらくウチの母くらいのものだ。お前は死んでも妹だけは守れと言っている母が、更に大嫌いになっていく。


そして、散々言いたい事を言った母は、疲れた!と吐き捨てて、自室へと姿を消した。やっと解放されたと安堵したのもつかの間。足元が何故濡れている?と心の中で現実逃避を始めるボク。


小学六年生にもなって、こんな事しでかすボクは情けない事この上ない。穴があったら入りたい気分だ。

シャドウのお陰で大事に至らなかったものの、妹の話しで不安が過ぎる主人公。そして、その不安は間近に迫っている事を思わせる母からの知らせに…。


ちなみに猿は、六年生でトイレに間に合わずに、盛大にやってしまった事があります(笑

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