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シャドウ 〜影と共に〜  作者: 赤茶猿マン
影と傀儡師一族
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『黒い何か』

ヘタレ主人公の心の叫び、自身に自信を持てなくては、ずっと何も変わらないと思うのだが…



 午後八時ちょうど。行きたくも無い塾での、やりたくもない勉強の時間がやっと終わった。今を生きる若いボクには、親の言う将来の事が全く見えない。故に、今考えるべきなのか?と嘆きにも似た悲痛の叫びを日々上げているのだが、誰も気付いてくれない。


《陰謀だ、これはボクを洗脳して、言いなり人間にする為の親の策略だ。ボクに自由な未来は無いのか!》


 皮肉な事に、ボク以外の家族、母、父、兄、妹、それぞれ『出来る人間』である。父は大きな病院の医者で、母はそこの婦長、兄は父の跡を継ごうと、現在医学の勉強をしに海外に留学中、妹は小学四年生だが、既に中学一年辺りで習う『五科目』を難なくこなすレベルだそうだ。


 ボクはそんな家族のいる家も、実は大嫌いだ。顔を見る度に説教をする両親、たまに電話をよこす兄でさえ、声を聞くなり勉強はどうだ?しっかりしろ!などと、親と変わらない事をクドクド説いてくる。


しかし、妹だけはボクを気遣ってくれて、いつも優しい言葉をかけてくれている。兄としては情けない限りだが、今のところその妹の存在が、辛うじてボクを家に引き留めてくれている。


 そして、ボクの悩みのタネは家だけでは無い。今日もまたアイツらが、この塾帰りのボクを待っているはずだ。アイツらというのは、一応ボクのクラスメイトで、決して仲が良いわけでは無い。


そいつの名前は『須藤健一』。父親が建設業の社長で、「実は裏の顔を持っているみたいだ」と、子供であるボク達の間でさえ噂になっていた。それを考えると、その息子である『須藤健一』に逆らえば、後でどんな事をされるか分かったモノじゃ無い。


 『塾が終わったらいつものトコに来い。』そう須藤に言われ続けてもう一年が経つ。用事はボクを殴る事。お金を奪う事。好きな女の子まで須藤に奪われた。とは言うものの、告白する勇気も無く、須藤が先に告白しただけの事なのだが。


 もう気付いて頂けただろうか?そう、ボクは何の取り柄も無い究極のヘタレなのだ。強いて言えば、泣き疲れて眠った時に見る夢の中でだけは強く、殴られる事は無い。まぁ、強いのは友達なのだが。残念ながら、そんな強い友達は現実にはいないし、そもそも、その『友達』と呼べる存在がいない。


 自宅近くの薄暗い公園。そこを横切って帰らなければならないのだが、まさにソコこそが須藤が言った『いつものトコ』なのだ。


 公園の敷地に入ると、中央にある水飲み場に四、五人の影が見えた。大人の影ではないと直ぐに分かる。ボクの姿はまだ向こうには見えていないはずだ。気づかれない様にコッソリと公園の外周の薄暗い部分を進む。


「おい、お前…、もしかしてオレ達から逃げようとしてたのか…よっ!」


背後からそう声がしたので振り向くと、言い終わるとほぼ同時に、ボクの顔面に激痛が走った。無様に地面に転がるボクは、顔を上げて片目だけで、激痛の原因を作ったそいつを見る。やっぱり須藤だった。


毎度の事ながら、気付かれていたんだと後悔する。真っ直ぐに中央に向かっていれば、お金を取られるだけで済んだかもしれないのにと。


「なんだよその目は!いつもお前が悪いんだよな?オレ達友達だろ〜?な?ちょっと腹減ったんだよね〜。でもお金無くてさ〜。貸してくれるよ…なっ!!」


「ぐぅぅっ…。」今度は腹部に激痛が走る。まるで落ちている空き缶を蹴ったかの様に、コイツはボクの痛みなんて気にしていない。そう思える程笑っているのが視界に映る。が、しかし、勇気が無いヘタレなボクは、想像でしかコイツに反撃出来ない。


「ほら、こっち来いよ!おい、皆んな、お仕置きの時間が来たぞ!コイツ臭いから洗ってやろうぜ!」


まだ激痛に悶えるボクを、須藤は容赦なくズルズルと引きずりながら、中央の水飲み場へと向かう 。そこにいる須藤の仲間が、無様なボクを見て大笑いしていた。


「おい、コイツ洗うから脱がせろよ。ヒヒヒッ!早くやれ!」


須藤のその言葉で、仲間のうち一人がボクに手を伸ばし、服を剥ぎ取ろうとする。


《クソっ、なんでボクがこんな目に、止めろよ!ボクに触るなよっ!》


そう心の中で叫んだ時、ボクの足元から何かが、黒い何かがニュ〜ッという感じで、ボクと、ボクに手を出していたヤツの間に割り込む様にして現れ、ヤツを軽く突き飛ばした。


 ユラユラと揺れて見えるその黒い何かは、突き飛ばされひっくり返ったそいつの足に、黒い一部を巻きつかせるなりスーッと持ち上げて、そのまま公園の端っこまで投げ飛ばしてしまった。


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!バケモノだー!!」


その場にいたボク以外の全員がそう叫び、公園から一目散に逃げて行った。一方、ヘタレのボクはと言うと、腰が本当に抜けて動く事が出来ずにいた。しかも、叫ぶ声さえ発する事が出来なかったのだ。


 ユラユラする黒い何かは、公園の端まで須藤達を追いかけていったが、そこから先に行く様子が無く、少しそこで止まった後、ゆっくりこちらに戻って来た。


《あ、あ、あ、…。今度はボクの番なのか?…。何でボクがこんな目に…。》


 別に幽霊なんか信じてる訳でも無かったが、目の前のコレは間違いなく現実に存在している。そして、今正にその幽霊じみた何かに、ボクは襲われようとしているのだ。この心の中の恐怖の叫び声は、近隣の住人に叫び声として届ける事も出来ない。


やがて目の前に到達したその何かは、ボクの方へその一部を細くして近付けてきた。いよいよだと思い、ボクは何かを我慢する時の様に、強く瞼を閉じて耐える。


《へっ?…あれ…。どどどどどど、どう言う事なんだ!?》


 覚悟して目を閉じていたボクは、フワッと身体が浮く感覚に襲われ、先程までの恐怖も忘れて思わず目を開けてしまった。


そして視界に飛び込んできたのは、黒い何かの一部が二本あり、その細く突き出た二本でボクを抱き上げている黒い何か。そして、自宅の方へと音も無く進んでいる事が理解出来た。


 人型でも無ければ、動物の形もしていない、本で読んだ事がある幽霊とはまた違い、ゲームで見るシャドウゴーストというモンスターに似ていた。しかし、実際にはそんなゲームじみたモノでは無い。目も口も鼻も無く、あのゲームの中のアニメっぽい姿では無い。ただただ不気味さを感じさせる黒い何かだ。


 しかし、不思議と恐怖、危機感と言った感情は湧き上がらない。不気味な事以外は、何も感じられない自分自身に少し驚いていた。


だってそうだろう?世界一かもしれない程のヘタレなボクだぞ?この状況に恐怖を感じないなんておかしい。


 色々な事が頭の中でグチャグチャになりながらも、答えを出そうと必死に考えていた時、自宅玄関の灯りが見えるところまで運ばれてきた事に気付いた。


《おいおい、ボクの自宅で何を!?まだ死にたくないよ…。》


 ドサッ! 「っつ!イテテ…テ。何だよいきなり!」


 後少しで自宅の前というところで、いきなり地面に落下するボクは、不気味ささえも忘れて、在ろう事か黒い何かに向かって文句を言えてしまった。マズイと思ったが、そこにいたはずの、あの黒い何かは見当たらず、ボクのその声だけが、自宅玄関前にぶつけられた。


《い、いない…。どういう事だ?》


「ちょ、ちょっとお兄ちゃん!?大きな声なんか出してどうしたの!?」


 さっきのボクの叫びを聞きつけた妹が、玄関のドアを勢いよく開け、腰が抜けて動けないままのボクの側に駆け寄って来た。そして、腰が抜けて動けない事を伝えると、健気にもおんぶした様な状態で、ボクの身体を引きずりながら自宅へと運んでくれた。


《い、妹よ…、地味に引きずられて…、大事なところが痛いのだが…。うぅぅ…。》


まだまだお子ちゃまな妹には、ボクのこの痛みなど理解出来る訳が無い。玄関の階段を上がる度に、悶絶して短い悲鳴が出てしまう。それが聞こえてはいるのだろうが、そんな事お構い無しに、小さな可愛らしい妹はボクを天国へと誘ってくれた。チーン…。

前言撤回!何やらヘタレ主人公に変化の兆し!?というか、助っ人か!?これからに期待大!

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