押し掛けて失踪。
前回とんでもない暴走をした主人公に、美影が提案したのは、ベッドを共にする!?というものだったが、主人公はまだ小学生なんだよ?大丈夫なのか!?
「という事で、これからよろしくお願いしますね…。その…、私…決めましたわ。今日から花嫁修行頑張ります!」
部屋に入るなり、そう言ってせっせと自分の着替えや、その他生活用品を片付け始める美雪。
「はい?…、み、美雪…さん?なぜここに…?」
そんなボクの疑問の言葉を無視しているかのように、黙々と片付ける美雪。これはあれだろうか?昼間のシャドウがやらかした件の嫌がらせとか?だろうか。そう考えているところに、勢いよくドアを開けて乱入してきた美影先生。今日から一緒に寝るとか言っていたが、本当にそうしなくてはならないのだろうか?
「ちょっと!あんたが何で英之と一緒の部屋なのよ!あんたは妹さんの部屋のはずよ!?」
「お姉ちゃんこそ、何でなの?大体生徒と先生って立場を考えるとおかしいでしょ!」
美雪のその言葉に一瞬怯んだ様子を見せる美影先生だったが、負けじと声を張り上げて返していた。
「せ、先生なのは学校でだけよ!あんたこそ、同じ生徒でしょうが!先生の言うことを聞きなさいよ!」
「あら?先生は学校でだけなのよね?だったら今は先生じゃないから、従う必要はないのよね?」
美雪も負けてない。というか、美影先生は、先生だけに勉強は出来るのだろうが、言っている事が凄く子供じみていて、何だか親近感がわいてくる。
「ちょ、ちょっと待ってよ二人とも!ボクはどっちも困るんだけど?」
「「うるさい!!あんたは黙ってなさい!!」」
ちょっと落ち着かせようと声をかけただけなのだが、二人同時に怒鳴りつけてきた。何もこんな時に息を合わせて怒鳴らなくてもいいではないか。ボクからすれば二人とも居候で、この部屋の主はボクなんだが。
「ちょっと!!うるさすぎて迷惑なんですけど!!これ以上騒ぐなら外でテント生活してもらう事になるけど、それでいいのならご自由に騒ぎなさい!」
その怒鳴り声に、皆んな静まり返る。騒いでいないのだが、ボクが一番ビビってしまったのではないだろうか?こういう時の妹の怖さを、ボクはこれまでに何度も経験しているからだ。
そうだ、この騒ぎに一括入れておさめたのは、廊下突き当たりの部屋にいた妹、みぃちゃんだった。先生達姉妹も、流石に野宿になるのは嫌なのか、二人とも目を泳がせながら無関係を装っているように見えた。
《いやいや、すっかりバレてると思うんだけど…。》
「だいたい、私とお兄ちゃんの部屋の間の部屋が空いてるんだから、二人ともそこに寝るといいでしょ?しかも姉妹なんだから。ほ、ほら…、お兄ちゃんだって迷惑してるわよ…。」
《そ、そうだ!それだ!ナイスだみぃちゃん!!さすがボクの保護者的存在。頭の良い妹でよかった。》
「あら〜?たしか…美優さんだったかしら?あなた…嫉妬してたりするの?」
「な、何を言ってるんですか!わ、私はただ…お兄ちゃんが…その…困って…。」
どうしたと言うのか、黙っている美影先生とは裏腹に、妹を挑発するような口調で攻め出す美雪。その美雪の言葉に、少し戸惑っている様子で答える妹。その様子を見てか、美雪がニヤニヤした顔をしながら口を開いた。
「ふ〜ん…、あなたのお兄さん、困ってないと思うけど?だって、今日の昼休みに…、ねぇ?平塚くん?」
《な、何を言い出すんだ美雪ー!!アレか!?アレのことか!?》
「あー!!っと、その…、みぃちゃん?騒がしくしてごめんね〜…アハハ…。部屋はちゃんとしてもらうから、心配しなくても大丈夫だよ〜。さ、ささ、みぃちゃんは勉強に戻ってよ。」
美雪がその先を言う前にと、咄嗟に大声を出してごまかしてみたが、妹はそんなボクを見て、余計に不審に感じているような、そんな顔をしていた。
《こういうの苦手なんだよね…、嘘がつけない体質っていうか…はぁ。》
「ま、まぁいいわ。お兄ちゃんが困っていないって言うのなら、私には関係ないだろうしね…。」
そう言い残して自室へと帰る妹だったが、去り際に凄く悲しそうな顔を見せたのを、ボクは見逃さなかった。妹がボクを心配してくれてした事だったのに、ちょっと失敗したかもしれない。と反省しながら、後で謝っておく事に決めた。
その妹が去ってからも、無言の睨み合いをしながら、設楽姉妹は自分達の荷物をちゃっちゃと片していく。
《はぁ、なんだか面倒な事になってきたなぁ。シャドウの事でも頭が痛いのに、更に家庭環境にまで問題が増えるとは…。まぁ、元はと言えばボクのせいなんだろうけどね…。あ…!》
「美影さん、そういえば、この前話したコソ泥みたいな男が言っていた話…、返事を聞きに来るって言ってましたが…、まだ来てないんですよね。ボクもすっかり忘れてましたが…。」
「ん?…あぁ、あの男なら私と一緒に追放されたぞ。なんだ?何の返事だったのだ?」
「え?言いませんでしたっけ?あいつらの元に来いと言われてたのですが、その返事を一週間後に聞きに来るって言っていたのに来なかったんです。まぁ、ボクも今思い出したのですが。」
「ふはは!そうか、お前もあいつと同じレベルだな。まぁ、あいつが追放された理由は私とは全く違うが、今のリーダーが出した命令じゃないだろうから大丈夫だ。」
そう言えば、今のリーダーがボクの事を危険な存在だと言って、組織の連中をたぶらかしてると、美影先生から聞いてたんだった。それに反対したから追放されたとも。とうことは、あの命令は前のリーダーが出したものだったのだろう。
という事は、美雪も美影先生の巻き添えで追放って事になるのだろうか?と考えても仕方のない事だが、興味本位で聞くのも気が引ける。特に今は聞く必要もなさそうだ。
「おっと、平塚。昼間のシャドウの暴走の事なんだが、あれは憎悪や怒りで起きた事では無く、お前の色情がそうさせたって事だ。まぁ、エロい事考えたか、そういう刺激があったかだ。まだ早いとは思うんだが、シャドウを制御するには、お前に免疫が必要だと思ったんだよ。だから一緒に暮らす過程で、女というものに少しでも慣れてもらおうかとな。まぁ、早いとは思うが。」
「へぇ、という事は、お姉ちゃんの説でいくと、平塚君が私に欲情した…という事になるけど、そうなの?」
「い、いや、その、なんだろ…。ま、まぁあ…ボクも男の子だからして…。」
真面目に答えるボクを見て二人が吹き出す。どこかおかしかったのだろうか?
「うふふ、あなたらしい答えね。ごめんなさいね、アレは私がわざとそうした事なのよ。その可能性があるかもしれないと思ってね。男の子の暴走ってやつね。」
年齢に相応しくないその美雪の言葉に、思わずボクが口走る。
「まるで大人のような口調だよね美雪さん。」
「あら?私こう見えてもあなたより歳はうんと上よ?…、何?お姉ちゃんったら何も話してないの?」
それは冗談で返した言葉だと思ったのだが、話しをふられた美影先生の様子が、その話しが冗談ではないと語ってくれていた。いつになく真剣な顔をして、美雪に言葉を返す美影先生。
「美雪…、まだそれは英之には早過ぎる。今は英之自身の事に集中してもらいたいんだ。…英之、いずれ私達の事は話す。約束する。だから、今は自分の事だけに集中してくれ。美雪も…、この話は今後するな。時が来たら私がするから。」
「う、うん…、ごめん…お姉ちゃん。」
いつもの軽い感じの美影先生とは明らかに違うと分かるような重い口調だった。美雪もそれが分かっているのだろう。それ以上口を開く事はしなかった。まぁ、姉妹なんだからボクよりは察していたはずだ。
この日、これ以上会話する事もなく、ボクはベッドで、設楽姉妹は部屋のテントで、それぞれ夜を過ごした。夜中に二人の声が聞こえた気がしたが、美影先生のイビキが聞こえていたので気のせいだろう。
次の日の朝、いつもの訓練の時間に起きたのだが、部屋のテントに二人の姿は無かった。家中探してみたのだが、どこにもいなかった。空になったテントをしばらく見つめていたが、朝日が昇り始めたので、登校の支度を整え、いつも通りに日が昇る前に学校へと急いだ。
そして、全員が席につく時間になり、クラスの副担任が現れ、美影先生と美雪が風邪で休みだと告げた。それからしばらく、設楽姉妹は学校はもちろんのこと、ボクの家にも帰ってはこなかった。
姉妹が行方をくらましてから十日目の朝、いつものように影に身を隠しながら登校している時、公園の植え込みの中に、血だらけで倒れている美影さんを見つける事になった。
押し掛けてきたと思ったら、何も言わずいなくなった姉妹。そして十日後、傷付き倒れて美影を見つける主人公。姉妹にいったい何が起きたというのか!!




