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シャドウ 〜影と共に〜  作者: 赤茶猿マン
影と傀儡師一族
10/20

感情欠落。

とうとう主人公は人を手にかけてしまったのか…?



 人を殺めてしまったかもしれない


 そんな言葉が何度も何度も頭の中を駆け巡る。


 あの後、最後まで向井君の行く末を見届ける勇気が無くて、ボクはその場を振り返る事なく逃げ出してしまった。あの高さと距離が、向井君の命を奪うには十分だとボクでも理解出来る。


どうする事も出来ないと思った時、シャドウの拘束が外れ、それと同時に、恐怖したボクは自宅へと一目散に逃げ帰ってきたわけだ。


取り返しのつかない事をしてしまったと悔やむ反面、自分のやった事を擁護するような考えも浮かんだ事が、更にボクを悩ませてしまう。


『向井君がボクを裏切ったからこうなったんだ。ボクだけが悪いわけじゃない。』

『暴力に任せ、向井君の命を奪ってしまった。これじゃ須藤達と何も変わらない。いや、須藤達は少なくとも命までは奪う事はしていない。むしろボクの方が悪魔に近い存在なのかもしれない』


といった様な考えが、頭の中でグルグルと巡っていた。


「きゃぁ!ちょっと、これ何なのよ!!ちょ、お兄ちゃん助けて!!」


奥の部屋から妹の声が聞こえ、ハッと我にかえる。帰るなりリビングのテーブルに突っ伏したままだったボクは、開け放たれたカーテンからの強い西日で、自分の影が長く伸びている事に気が付いた。シャドウがボクの意思に関係なく行動していると直ぐに理解出来た。


どこにいるのかと思い、視界を同調させようとしてみたが、頭の中には何も流れてくる様子が無かった。そして、考えるよりも早く、ボクは自分の足で妹の部屋へ駆け出していた。


勢いよくドアを開け、妹の部屋へ飛び込む。が、そこには、ベッドから転げ落ちて目を回している妹の姿だけしかなかった。シャドウの仕業だと分かっている故に、執拗に妹の部屋を探し回るボク。


しばらくして冷静さを取り戻してきた事で、シャドウは光が作り出す影だと言う事に改めて気付く。そして、見てはいけないモノがたくさん詰まったチェストに、シャドウが隠れていない事も気付いた。これは妹が目を回してくれてて助かったと素直に思った。


シャドウの事ばかり考えていたせいか、妹をそのままにしていた事を忘れていたので、起こしあげてベッドに寝かせ、怪我がない事を確認した。それでも心配になったボクは、改めて妹を見ていたのだが、小学生とは思えない程の胸に目がいってしまう。


《い、いかんいかん。いくら血が繋がってなくても兄妹だ…。いや、その前にまだ子供だった…。で、でも…、なんだか設楽先生が気の毒に思えてきた…。》


そう、決して本人の意思では無いのだろうが、年齢と胸のサイズは比例しないのだと思うと、設楽先生が気の毒に思えて居た堪れなくなってきたのだ。


《むぅ…、綺麗だけど貧しい…。子供だけど豊か…。なんて理不尽な…。》


「きゃ!ちょっとお兄ちゃん!!どこ見てるのよ!!…、へ、変な事…、してないでしょうね?」


「わわっ!な、な、そんな事しないよ!頑張ってベッドに寝かせたのはボクだからね!」


「ちょ、それどういう意味よ!!私が重たいみたいに言わないでよ!お兄ちゃんがヘタレだからでしょーが!!もう、出てけーー!!」


しまった!と思ったが後の祭りだ。色々飛んでくる中を掻い潜り、何とか妹の部屋からの脱出に成功した。「ふぅ〜」と、ため息をつき、そのまま自室へと入る。幸いな事に、カーテンは閉じたままだった。あんな事があったというのに、ボクは緊張感が薄いと自分でそう感じた。


それだけでは無く、向井君への罪悪感さえ薄れている様な気がしてならなかった。そのままベッドに横になり、あれから向井君はどうなったのか?などと考え始めるが、先程も言った様に、罪悪感がまるで湧いてこないのである。


 どれくらいそうしていたのだろうか?気が付いたら、リビングにある電話が鳴っていた。悪い予感が頭を過る。あの時の様子を誰かが見ていて、警察に通報したのかもしれない。もしくは学校に遅くまで残っていた事を知る誰かが知らせた。などという浅はかな考えが浮かび上がってくる。


その電話に躊躇っていたが、コール音が鳴り止みホットしたのも束の間だった。相手が切って鳴り止んだのではなく、妹が電話を取ったようだった。ハッキリとは聞こえないが、少し甲高い声が妹だと知らしめてくれる。電話に出ると、皆んな声のトーンが上がるよね?


しばらくして、リビングから大声でボクを呼ぶ妹の声が聞こえてきた。どうやら悪い予感は敵中したようだ。気乗りはしないが、ここで出なかったらボクが犯人ですと言っている様な気もしたので、というか犯人なのだが、あの後の事を知りたい事もあり、ボクは応対する事にした。リビングまで行くと、妹が腰に手を当てて、少しイライラした様子で受話器を差し出してくる。


「直ぐに来なさいよ…。はい、なんか今日きた女の先生からだよ。要件は本人に伝えるって言って、私に何も話してくれないのよ。早く、ほら。」


半ば強引に受話器をボクに預けて、不機嫌な様子で自室に戻る妹を横目に、恐る恐る受話器を耳にあて応対すると、まだ記憶に新しい声が、ボクの耳に飛び込んで来た。


「お前の事を見誤っていたよ。最低な奴だなお前。向井は私が助けたから心配は要らないが、カゲクリとしてのお前は、未熟という以前に、人としての資質に欠けている。先ずはそこから鍛え直す必要があるみたいだな。今後の事は私の方で段取りするから、お前は逃げずにその家で待ってろ。」


「あ、あの設楽先生…、向井君が無事生きてるって事で……。」


そう、電話の相手は、今日学校に赴任したての設楽先生だった。その先生が言うには、シャドウが投げ捨てた向井君が無事だと言うのだ。信じられなくて聞き直してみたのだが聞き間違えではない。


が、先生からの応答は無く、受話器からは通話が切れた事を意味する話中音ビジートーンが聞こえてくるだけだった。


《向井君が無事なのは良かったけど…、なぜ先生がその事を?いや、それより鍛え直すって?今後の段取りって何だろう?ま、まぁ…、家で待ってろと言っていたから、ここに来るんだろうな…。はぁ。》


結局今の先生の会話の内容は、向井君が無事だと言う事以外、ボクには何も理解できなかった。しかし、ここに来る様な事を言っていたので、その時に色々と聞けたらいい。と、以前のボクであれば、ずっと気になりソワソワしているはずなのだが、今のボクにはその動揺すら感じられない。


そして、リビングにはまだ夕日が射し込んでいたので、受話器を廊下にそのまま残して自室へと戻った。


自分の怒りや、苛立ち、不愉快さ、そういった感情は存分に感じれるのだが、心が温かくなる様な、そんな穏やかな感情は一切自分で感じられなくなってしまった。そんな自己分析をしながら、ベッドでゴロゴロと無駄に時間を過ごした。特にやりたい事なども思いつかなかったからだ。


そして、そのまま夜になり、夜勤前の食事に母が戻って来た。その母は誰かと話している様子にも思えたが、ピアノ教室が休みの妹がいるので、それほど気にする事もなかった。


 コンコン 「お兄ちゃん?入るよ?」


そう言いながらも既に部屋に入って来ている妹が、コソコソとした様子でボクの方へと近付いてくる。


「ね、お兄ちゃん、お母さんが誰かと話してるみたいだけど、アレって今日赴任して来た先生じゃなかったっけ?確か、さっき電話してきた人。…、お兄ちゃん、何かやらかしたの?」


「え?あ、あれ?ボクはみぃちゃんが話しの相手だと思ってたよ。あー、なんか電話で来るみたいな事言ってたからね…。」


「ね?お兄ちゃんどうしたの?…、いつもと感じが違うんだけど…、具合でも悪いとか?」


ボクの返答で、いつものボクとの違いが分かったのだろうか?と思ってしまう妹の鋭い質問に、なぜかボクは答えるのも面倒な程にダルさを感じてしまっていた。身体だけではなく、精神的にもだ。その様子を見た妹が、更に不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。とその時、開いたままのドアの方から声が飛び込んできた。


「よう、平塚!私が来たからにはもう大丈夫だ!今のお前には私が必要だ。感謝しろ!私が一つ屋根の下でお前を鍛え直してやるからな!」


そう言って部屋にズカズカと入ってきたのは、あの設楽先生だった。そして、背負っていた荷物を下ろすと、手際よく何かの作業をし始めた。


「ジャジャーーん!!」


どうだ!と言わんばかりの効果音と態度を見せる設楽先生。


《なんで部屋の中でテントなんか張るんだ?…、一つ屋根の下って…、この部屋で一緒に過ごすって事か?うわぁぁ…。無いわぁ…、これって…、先生の胸より無いわぁ…》


この日からボクと美影さんの辛く厳しい共同生活が始まったのである。


いよいよ?とうとう?美影の居候生活がスタート!!この貧乳暴言教師に何が出来るというのか!?そして美影の正体とは!?

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