21話 クライシス・イン・ザ・アンサー
同学年にして頂点、世良正雪。
校内に君臨するイケメンの武勇伝を散々聞かされる静かな苦痛。冴えない高校生達のモチベーションを急速に衰退させる乗り越えられない壁の前では、上位のカーストという劇場に上がるのは厳しいものとなっていた模様。
最初からカーストを脱落している弥彦には無関係のハナシ。
だが、改めて世良正雪という人物に焦点を定める理由が増えた。今回の依頼人がどれほどの影響力を与える人物なのかを十分に示して貰った。
特に、クラスの男子の反応は顕著のようで。
「あー、駄目駄目だぜ。やっぱり世良には敵わねぇよな。主人公補正でも付いてんですかってレベルだ。残念ながら俺達底辺の高校生には、日の当たらない場所に向いてんだわな。誰が陰キャラだゴラァ」
「むしろ世良氏と友好関係を築けばNTRの成功アリなのでは……っ!?」
「何言ってんだ馬鹿野郎。奴は女子全てを刈り取るんだよ」
「つまりロリコンの可能性がッ!」
「……それはお前の性癖。世良はな、明るくて優しい女の子が好きなんだぜ」
なんか変なのを聞いてしまった。
三流パッションムードメーカー番長こと丹羽篤也。
性癖を晒け出す陰キャラオタクこと海寺迅。
彼らが盛大に吹き出した悪ノリは空を切って呆気なく四散してしまう。空砲というか誰も聞いてない。たとえ暫定的な上位カーストに在席しようが、女王の美雨がいる空間では無意味に等しい。
可哀想だ。
もしも正雪が居れば、彼らの高校生活は勝ち組であったのに。
どうしてそうなったのだろう。
外に降り注ぐ雨が代弁して涙を流す。
しかし窓側にいた残念な二人に降るばかりで悪戯にも程があった。多分。
「ふむふむ。では我はか弱い小娘を頂けるのか? 保護欲を捨てるなど……」
「いいや、それは狙い過ぎだぜ海寺。お前のその他人とは違う感性が分かりやすい引っ掛けに騙される訳がねぇ。男はいつだって夢を抱いているものがある! 一体それはなんだ?」
「あああ! 保護欲! 即ちそれは巨乳小学生ッッッ!」
「馬鹿野郎! ロリから目を覚ませ!」
「はあ……、はあ……、お姉さん系というその手があったかァ!」
「残念だがハズレだ。確かに世良は先輩後輩らに絶大な人気を誇るが、クッキリとした欠点があんだよ。それは同級生にしか興味がねぇってこった。かなりお目出度い奴だぜ。もしかして恋人でもいるんじゃねえか?」
知らんがな。
窓側の連中に無慈悲な感想を鼻で笑うだけの弥彦。
背後の席に佇む美雨とその近衛達に行動力を阻害されている。今の現状には些か不便だが、有意義な物(全体的に女性陣のみ)を聞かせて貰った。
(……世良に対して、執着深い人物がいるという事実。怪しくなってきたな)
既に美雨達はテストの話から話題を逸らしていた。
流行に敏感な彼女達。
しかし根は淑やかで華があり、性格がキツい女子高生とは大分違う。言葉使いも流暢で分かりやすく造語に対しては疎い。一部のグループとは違うのは常識を常に兼ね備えているからだろう。
これらを判断する境界線は未だに分からなくとも。
その景色を越えるためのチャンスを、手にするためには何が必要なのか。
即ち情報だ。
ストーカーは既に知っている。
犯人は誰であれ。
世良に被害を加えるストーカーは極悪非道だ。
私生活に支障を来すエゴイズムの塊で、自分に自信を持ち、自分が認められていると勘違いした哀れな狂信者なのだ。
夢と現実の区別が付かないお姫様。
暴走する独占欲は衰えを知らず。着実に夢を叶えようと行使させる。たとえそれが自分自身さえ傷付ける諸刃の剣だろうと関係ない。
―――現実を知れ。
敵を一切残らず排除してしまえば、誰にも邪魔されないのだから。
駆逐だけが彼女の切り札だろう。
(夢から目覚めるまで、果たしていつになるか……)
先に女王が動くのか見物だ。
最強の駒であるクイーン同士、称号を背負わせる使命はいかに。
縦横無尽に動き回るのか、はたまた優雅に振る舞うのか。大舞台で魅せる喜劇の行く末は、どちらにも傾く。
鍵となるキングはどちらを選ぶ。
だがしかし、女王を、王様を動かすのはゲームマスターの新藤弥彦だ。
役者は無意識に集う。




