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20話 駒にもなれない無能なトモダチ

 単独行動の決行から次の日。


 気分を損なう雨空の天気。決して濡れまいと奮起する学生達と平行していた弥彦は傘を差しながら読書をする。喧騒を立てる群衆の声を気にもせず、器用に時間を有効活用。他校の女子高生達が小声で話そうが、距離を置くの繰り返しによって、あっという間に正門に辿り着いた。


 いつものように昇降口から階段を上り、廊下を歩いては教室へ。

 流れ作業を遂げる日常。傘立てに仕舞っていると、相変わらず賑やかなクラスメイト達の談笑がより弾んでいる。


 一体何を話しているだろうか。


 興味に惹かれても弥彦にとっては蚊帳の外だ。現在話題としているトレンドには疎く、正直面白くなければそれで終わってしまう。退屈そうな顔をすれば、誰かが迷惑を被るのは間違いない。


 ただの数の集まりで被害者になるのは御免なのだ。

 同じような反応をして、異端に見えないよう努力をした涙頂戴の姿を見た。


 しんどそう。


 心にない感想を浮かべては自分の席に着こうとする弥彦。

 ストーカーやら序列争いとか、物騒な話題が続くとなるといずれに見たくもない物が見えてしまう。見ないフリをすればいいのに、出来ないのは小心者だ。


 むしろ、見て見ぬフリなど、器用な人でも物事には逃れられない。

 逃げようとすれば沼に嵌まる。


 たとえそれがメガネを掛けた転校生やクラスの中心にいる女王であっても。


「なんなのっ、あの態度は!?」


 活気を含んだ空間の温度が唐突とかき混ぜられた。

 苛立ちと不機嫌を抱える香子の激怒。波紋する負のエネルギーが教室にいたクラスメイト達に伝達していく。


 不安が稲妻の如く過る。一部の学生が疑問視した所で、あるグループの女子達は何事もなかったかのように談笑を続ける。無理に伝播して空気を和まそうとする、辛い努力は現実を逃避するためにしか、演じていなかった。


 しかし、嫌な話を聞いてしまう悪い癖を持つ弥彦には敵わない。

 イヤホンを耳に当てて、寝たフリを決行する。


「私には関係ないって何様のつもりなの、勉強が出来るからって!!」


「そうだよね。最近、あの子は協調性が欠けているかも。何があったんだろう」


「分かっていたらハナッから愚痴ってないし」


 クラスの女王の美雨とその愉快な仲間の香子は話す。


 学生にとって最大の試練である受験。

 真剣に取り組む者がいれば真っ向に逆の立場の者もいる。未来を見据えて、勉強に勤しむ香子とは相容れない人物がいるようだ。


 相手は勉強が出来る、美雨と同等のトップカーストか。


「ここ最近ノリが悪いよねー。当たり強いしマウント取ってる感じ?」


「何か問題を抱えているのかな。出来たら相談に乗るんだけど、難しいよね。話は聞いてくれないし、みんなから距離を置いている気がする」


「ちーちゃんそれそれ!」


 やかましさナンバーワンの中島萌佳と恋路部の相澤契。

 美雨のグループに属する彼女。やはりトップカースト同士は引かれ会うのか。話題の矛先となる相手に苦労している様子で、雲行きが怪しい。


 末恐ろしい女子陣の会話。


 もしも対象者が弥彦であったのならと考えると、そわそわして集中できない。

 濡れ衣を着せられている錯覚に襲われる近い部分がある。


「これからテスト期間に入るのに……、問題ないとは思えないけどなぁ」


「余裕なんでしょ。あの子にとっては。みんなと一緒にテスト対策しようと声を掛けただけなのに、あんなに冷たい態度ってある? だったら誘ってくんなし」


「ですよねー。こうなるんだったら、是非絶交して欲しかったですー」


「うーん、そこまで言うことなのかな?」


「絶交でも私は構わないよ。むしろ清々するわ!」


 これが女子力……。

 団結という絆を持った女性陣に敵うハズがない。何が正義かと言うよりも数には勝てない。真後ろに繰り広げる堂々とした陰口は対抗の反論を出さないための見せしめのよう。口を挟む隙を与えない。


 とはいえ、対象者となった人物は相当のエゴイストのようで。


 女王相手に引けを取らない傲慢な性格。

 上位グループでさえ抵抗してしまう、辣腕なカリスマ性。


 副会長の神式杏に類似している。四人が手を焼くほどの強欲の持ち主で、どのような環境下で過ごしたのか気になるところだ。


「ねぇ、どうする? 誰呼んで勉強会開くの?」


「世良くん呼ぶしかないじゃないですかー。妥協点しかないですって」


「でもさ、あの子絶対に来るでしょ? 不味くない?」


「ふふーん、そこは内緒にしちゃうんですよ☆」


 流石はトップカースト。ゲストが桁違いすぎる。

 元々華があるのに加える人物が同学年一位の世良正雪。顔が広いというか人脈に抜かりがない。放課後の時間で過ごす余興の一時。さぞかしそれ相当の価値があるのだろう。実にリア充らしい。


 それ以外の男子はお断りというイケメンに限られた世界。

 なにその優遇。

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