第58話 魔王討伐
「ディータ。アタシの背に乗れ!」
ドラゴン化したリユが、大きな翼を広げた。
「よし、頼むリユ!」
リユの背中を借りて、僕は大空を飛ぶ。
魔王、カイムーン・アウゴエイデスの攻撃をかいくぐって、顔を拝む。ここまで、どれだけ時間がかかったか。ドラゴン化したリユも相当大きいが、魔王はソレ以上だ。
「かつて相打ちとなったディートリンデ、その血を受け継ぐ忌々しいディートヘルム・ボニファティウス! 貴様の血を絶やして、ようやく我は完全なる復活を遂げるのだ!」
長ったらしいご説明、どうも。
やはり魔王は、僕の先祖と因縁があったのか。
「フォース・エスパーダよ。僕に、力を! くらえ、【電光石火】!」
魔王に、蛇腹剣を飛ばす。
【フォース・エスパーダ】は、魔法を増幅させる金属で、光の刃をつなげている。折れることも曲がることもない、僕の最強の剣だ。
「小虫の剣など、我が剣のサビにしてくれる!」
魔王も、大剣で対抗してきた。さっき船を大量に沈めた武器である。
「まだまだ! ディートリンデとの違いを、見せてやる!」
巨大な敵相手でも、こちらも刃を巨大化させて弾き飛ばす。
レフィーメが改造した、ヨロイの力を使って、リーチをさらに伸ばすことが可能になった。彼女が考えた作戦は、これだったのだろう。
「なに、それはフォース・エスパーダか!? そんな威力はなかったはず!」
「そうだ! かつてお前を倒した剣で、今度こそ息の根を止める!」
僕には、リユもついている。リユの故郷を守るためにも、負けるわけにはいかない。
「こざかしい竜め! まずは貴様から殺してくれる!」
大剣を振り下ろし、魔王はリユの首を狙った。
「こざかしいのは、てめえじゃ!」
ブレス一発で、リユは魔王の武器を破壊する。
「なんとぉ!?」
腕ごと武器を吹き飛ばされ、魔王は表情が歪んだ。
「ごほお!」
「リユ!?」
だが、リユも無事では済まない。
「腕一本破壊しただけで、パワー切れかいのう? 我ながら情けない!」
「大丈夫なのか、リユ!」
「平気じゃ。おめえは戦闘に集中せい!」
「撤退しろ、リユ。ここから離れるんだ!」
事実、リユは変身が解けかけている。
このままじゃ、リユが死んじゃう! 肉体を維持してはいるが、飛行力も落ちていた。
「死ね!」
魔王が、残った腕から黒い雷撃を飛ばしてきた。
「アタシにそんなの、効くかあ!」
リユがブレスで、黒雷を霧散する。
「どうしたんじゃ? さっきより、威力が落ちとるぞ!」
やはり全力を出すには、アウゴエイデス大きすぎるのだ。存在しているだけで、みるみるパワーを使い尽くしている。
「そっちも、もう肉体を維持できまい!」
残念ながら、そうなのだろう。
とうとうリユが、飛行能力を失う。
地面に降りても、リユはまだ戦おうとした。
「逃げるんだ、リユ!」
「ドラゴンに、敵前逃亡などありえんのじゃ!」
僕が抑え込んでも、リユはそれを振り払う。
「いうことを聞いて!」
「やかましい。死なばもろともじゃ!」
「バカヤロウッ! 僕は、キミの亡骸と結婚したわけじゃない!」
「……ディータ」
説得がきいたのか、リユがヒザをつく。
「でも、ディータ一人を置いておけん!」
「僕のほうが大丈夫だ。こんなの、みんなの力でなんとかなる!」
「ほうか。ほったら、これを!」
リユが、自分のカタナを僕に差し出す。
「これをアタシじゃ思うて、戦ってこい!」
「わかった。ヘニーッ! カガシ!」
僕が呼ぶと、ヘニーとカガシがすぐにかけつけた。
「リユを回復して! カガシはドラゴン化して、リユとヘニーを守護!」
「はい!」
ヘニーがリユをイノシシに乗せる。
「がってんしょうち!」
カガシが大蛇に変身して、ヘニーとリユとイノシシを自分の頭の上に乗せた。
「死ぬな! ディータ!」
リユは遠ざかる間、ずっと僕の名前を叫んだ。
「フハハ! 伴侶には、骨になった貴様を送ってやろう。その後、貴様の後を追わせてやる!」
「死ぬのはお前だ魔王!」
リユのカタナを突き出す。
「強がらずともよい! しょせん貴様は、ディートリンデの足者にも及ばぬ!」
「そうかもしれない」
先祖は、偉大すぎた。こんなアウゴエイデスなんて化け物と戦って、相打ちにまで追い込んだのだから。
「しかし、僕には知恵がある。仲間がいる! ひとりじゃないから、戦える!」
「薄ら寒いセリフをぬけぬけと! ならばその仲間ごとワシが葬ってくれる!」
ブレスを浴びて黒焦げになった腕で、僕を叩き潰す。
「口ほどにも……なに!?」
僕は、魔王の腕をバラバラに切り裂いていた。
「言っただろ! 僕はディートリンデとは違うと!」
「貴様、何をした!?」
「教えない」
最強のヨロイと武器に、さらなる【魔改造】を施しただけなんだが。
あいにく、僕はいつものように全身を【魔改造】するのはあきらめた。短期決戦で戦えるような相手ではないから。おそらく先代も、それを行ってようやく相打ちにまで持ち込めたのだろう。
しかし、僕では力不足である。
だったら、戦闘時間を長く持続すればいい。
さいわい、僕には先代にはなかった「防御力」がある。
「ぬう、貴様は」
魔改造の成果が出たのか、僕のヨロイはあるものを形作っていた。
「紹介しよう。腕だけとはいえ、僕の先祖のディートリンデ一族だ」
幻の腕は、もう幻ではなくなっている。
「始祖から僕の代に至るまでのすべての【魔改造】で、お相手しよう!」
僕が背負う実体の腕の数、実に一八本で。




