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追放先に悪役令嬢が。不法占拠を見逃す代わりに偽装結婚することにした。  作者: 椎名 富比路
第六章 最終決戦

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第58話 魔王討伐

「ディータ。アタシの背に乗れ!」


 ドラゴン化したリユが、大きな翼を広げた。


「よし、頼むリユ!」


 リユの背中を借りて、僕は大空を飛ぶ。


 魔王、カイムーン・アウゴエイデスの攻撃をかいくぐって、顔を拝む。ここまで、どれだけ時間がかかったか。ドラゴン化したリユも相当大きいが、魔王はソレ以上だ。


「かつて相打ちとなったディートリンデ、その血を受け継ぐ忌々しいディートヘルム・ボニファティウス! 貴様の血を絶やして、ようやく我は完全なる復活を遂げるのだ!」


 長ったらしいご説明、どうも。

 やはり魔王は、僕の先祖と因縁があったのか。


「フォース・エスパーダよ。僕に、力を! くらえ、【電光石火】!」


 魔王に、蛇腹剣を飛ばす。

【フォース・エスパーダ】は、魔法を増幅させる金属で、光の刃をつなげている。折れることも曲がることもない、僕の最強の剣だ。


「小虫の剣など、我が剣のサビにしてくれる!」


 魔王も、大剣で対抗してきた。さっき船を大量に沈めた武器である。


「まだまだ! ディートリンデとの違いを、見せてやる!」


 巨大な敵相手でも、こちらも刃を巨大化させて弾き飛ばす。

 レフィーメが改造した、ヨロイの力を使って、リーチをさらに伸ばすことが可能になった。彼女が考えた作戦は、これだったのだろう。


「なに、それはフォース・エスパーダか!? そんな威力はなかったはず!」


「そうだ! かつてお前を倒した剣で、今度こそ息の根を止める!」


 僕には、リユもついている。リユの故郷を守るためにも、負けるわけにはいかない。


「こざかしい竜め! まずは貴様から殺してくれる!」


 大剣を振り下ろし、魔王はリユの首を狙った。


「こざかしいのは、てめえじゃ!」


 ブレス一発で、リユは魔王の武器を破壊する。


「なんとぉ!?」


 腕ごと武器を吹き飛ばされ、魔王は表情が歪んだ。 


「ごほお!」


「リユ!?」


 だが、リユも無事では済まない。


「腕一本破壊しただけで、パワー切れかいのう? 我ながら情けない!」


「大丈夫なのか、リユ!」


「平気じゃ。おめえは戦闘に集中せい!」


「撤退しろ、リユ。ここから離れるんだ!」


 事実、リユは変身が解けかけている。


 このままじゃ、リユが死んじゃう! 肉体を維持してはいるが、飛行力も落ちていた。


「死ね!」


 魔王が、残った腕から黒い雷撃を飛ばしてきた。


「アタシにそんなの、効くかあ!」


 リユがブレスで、黒雷を霧散する。


「どうしたんじゃ? さっきより、威力が落ちとるぞ!」


 やはり全力を出すには、アウゴエイデス大きすぎるのだ。存在しているだけで、みるみるパワーを使い尽くしている。


「そっちも、もう肉体を維持できまい!」


 残念ながら、そうなのだろう。


 とうとうリユが、飛行能力を失う。


 地面に降りても、リユはまだ戦おうとした。


「逃げるんだ、リユ!」


「ドラゴンに、敵前逃亡などありえんのじゃ!」


 僕が抑え込んでも、リユはそれを振り払う。


「いうことを聞いて!」


「やかましい。死なばもろともじゃ!」


「バカヤロウッ! 僕は、キミの亡骸と結婚したわけじゃない!」


「……ディータ」


 説得がきいたのか、リユがヒザをつく。 


「でも、ディータ一人を置いておけん!」


「僕のほうが大丈夫だ。こんなの、みんなの力でなんとかなる!」


「ほうか。ほったら、これを!」


 リユが、自分のカタナを僕に差し出す。


「これをアタシじゃ思うて、戦ってこい!」


「わかった。ヘニーッ! カガシ!」


 僕が呼ぶと、ヘニーとカガシがすぐにかけつけた。


「リユを回復して! カガシはドラゴン化して、リユとヘニーを守護!」


「はい!」


 ヘニーがリユをイノシシに乗せる。


「がってんしょうち!」


 カガシが大蛇に変身して、ヘニーとリユとイノシシを自分の頭の上に乗せた。


「死ぬな! ディータ!」


 リユは遠ざかる間、ずっと僕の名前を叫んだ。


「フハハ! 伴侶には、骨になった貴様を送ってやろう。その後、貴様の後を追わせてやる!」


「死ぬのはお前だ魔王!」


 リユのカタナを突き出す。


「強がらずともよい! しょせん貴様は、ディートリンデの足者にも及ばぬ!」


「そうかもしれない」


 先祖は、偉大すぎた。こんなアウゴエイデスなんて化け物と戦って、相打ちにまで追い込んだのだから。


「しかし、僕には知恵がある。仲間がいる! ひとりじゃないから、戦える!」


「薄ら寒いセリフをぬけぬけと! ならばその仲間ごとワシが葬ってくれる!」


 ブレスを浴びて黒焦げになった腕で、僕を叩き潰す。


「口ほどにも……なに!?」


 僕は、魔王の腕をバラバラに切り裂いていた。


「言っただろ! 僕はディートリンデとは違うと!」


「貴様、何をした!?」


「教えない」


 最強のヨロイと武器に、さらなる【魔改造】を施しただけなんだが。


 あいにく、僕はいつものように全身を【魔改造】するのはあきらめた。短期決戦で戦えるような相手ではないから。おそらく先代も、それを行ってようやく相打ちにまで持ち込めたのだろう。

 しかし、僕では力不足である。

 だったら、戦闘時間を長く持続すればいい。

 さいわい、僕には先代にはなかった「防御力」がある。


「ぬう、貴様は」


 魔改造の成果が出たのか、僕のヨロイはあるものを形作っていた。


「紹介しよう。腕だけとはいえ、僕の先祖のディートリンデ一族だ」


 幻の腕は、もう幻ではなくなっている。


「始祖から僕の代に至るまでのすべての【魔改造】で、お相手しよう!」


 僕が背負う実体の腕の数、実に一八本で。

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