第55話 南バリナン奪還作戦
南バリナンは、火の海になっていた。美しかった街並みも、今は見る影がない。
魔王の気配は、ないな。拠点に戻ったか。
「ボクたちの街を、メチャクチャにしたんだ。メチャクチャにされる覚悟は、あるんだよなあ!」
バリナン王が率先して、モンスターたちを斬り捨てている。ヘニーたちの薬草が効いたのか、深手を負ったにも関わらず元気である。
「えげつねえのう」
リユでさえ、口を手でおさえていた。
「精神的に、ダメージを負いそうだね」
南バリナン王による、魔物の殺し方がワイルドすぎる。とても説明できない、拷問のような殺し方をしていた。スプラッタという言葉が、料理用語に聞こえてきそうなほど。
「処刑が体に染み付いとる」
殺しが、生活の一部になっているね。あれは。
「ディータさま、もう全部、あの方に任せてもいいんじゃないでしょうか?」
「そうだね。楽しそうで何よりだ」
怒ったバリナン王には、近づかないでおこう。
「城までの安全なルートを、案内しましょう」
「わかった。ヘニー、逃げ遅れた住人に、避難を先導して。負傷した兵士の治療も、してあげて」
ヘニーは「はい」と、その場を離れていった。
「カガシ、ありがとう。ここまででいい」
安全なルートで城に入った後、カガシを離脱させる。
「ディータどの!?」
「レフィーメが到着したら、こちらまで誘導して。その間まで、キミも街で暴れている魔物の数を減らせ」
いくら精霊部隊で数を増やせるとは言え、ヘニーだけに魔物殲滅を任せるのは酷だ。カガシのほうが、戦力になるだろう。
「なるほど。承知!」
カガシが、バリナン奪還に向かった。
僕たちは城の内部へ。
玉座は破壊され、代わりに赤いアイアンゴーレムが立っていた。どの生成様式とも違う、未来型のゴーレムである。首の部分に、人間の男性があぐらをかいている。
「お前は、キルリーズ王じゃないか」
犯罪国家であるキルリーズは、魔王の手によって国ごと破壊されたはず。
「いや。実験が失敗しただけですぞ。科学の粋を集めて作られたこのゴーレムに、あなたは叶いますかな?」
ゴーレムが、手を前に突き出した。
「デストラクション・パンチ!」
前腕部分が、飛んできた。胴体と鎖でつながっているのか。
「うお!?」
避けた先に、さらに追いかけてきた。追尾機能まであるとは。
「しゃらくせえわい!」
リユが、鋼鉄の腕を切り落とす。
ゴーレムの前腕が、大爆発を起こした。
「くう、やりますなあ」
「てめえをやれば、ゴーレムは止まるんじゃ!」
リユが、ブレスウェーブを放つ。刀を振って、衝撃波を飛ばした。
キルリーズ王は魔法障壁を張って、リユの衝撃波を弾き飛ばす。
「我は術式の塊! 生半可な攻撃では、我が術式を破れませぬぞ!」
「ほったら、ドラゴンになって」
リユが、力を集中し始めた。
「待って! いまドラゴンになったら、逃げ遅れた人も死ぬ!」
背後から、レフィーメが駆けつける。
「ディータ。やっと完成した。これを」
レフィーメが、盾を投げつけた。五角形の盾である。
僕は、ヒーターシールドを腕にはめた。
「ななななな!?」
シールドが分離して、ヨロイのパーツに変わる。




