第54話 リユの新装備
シンクレーグに戻ると、すぐにレフィーメが駆けつける。
「ディータ、防具はまだ完成していない」
昨日の今日だもんな。
「南バリナン攻略には、間に合いそうにない」
「いいさ」
「同時進行でやっていた、リユのドレスアーマーは完成した」
これは、ドラゴンに変身した後も着られる。以前から企画していて、ようやく完成に至ったという。
「一度、広い場所に出て変身してみて」
「わかったわい」
ドレスアーマーを手に、リユが草原で変身をした。
服が破れ、リユがドラゴンへと姿を変える。
すぐに、元の姿に戻った。丸裸で。
「で、ドレスを」
指示通り、ドレスのブレスレット部分にあるボタンを押す。
ガバっとドレスアーマーがパーツごとに分離して、リユを包み込んだ。カチャカチャと、蛇腹のようにリユの身体に装着される。
「おう。変身前に分離するんか。優れもんじゃ」
「ドラゴンに変わるたび、服が破れるからね」
リユのドラゴン変化で心配だったのが、衣装の破損だった。ボニファティウスでも、フェンリル戦の後に姉さんが、自分のお古を用意してくれたっけ。あのリユですら胸に隙間ができていた。
「あのお姉さま、規格外じゃのう? ドラゴンよりナイスバディとか」
「ねーっ。それよりすごいね、これ」
「カガシに、実験台になってもらった。それでようやく完成した」
そうか。カガシもドラゴン族だもんね。
「リユさまーっ。みなさーん!」
トテトテという足音が、坂の向こうから聞こえてくる。
「ヘニーが帰ってきた」
大型のイノシシ精霊に乗って、ヘニーがこちらにやってきた。白い包みを手にしている。
「どうぞ。リユさま。新しい武器です!」
「どこにいっとったんじゃ?」
「テッシムです。わたしもカガシさんに、ついていったんですよ」
シンクレーグに攻め込んでくるモンスターを、冒険者たちは秒殺できるまでになっていた。自分の役割はないと見たヘニーは、周囲の警戒をしつつ、カガシとともにテッシムへ赴いたのである。
「すごいんですよ。カガシさんがエィヒメの鍛冶屋さんをテッシムまで連れてきて、両国がコラボして新しい武器を作ったんです」
ヘニーが、包みを広げた。
波状の刀身が美しい、カタナが出てきた。
「どうぞ。【フランベルジュ】です!」
「おお、太刀じゃのう! これはええわい!」
さっそく、リユが太刀をブンブンと振り回す。マグマのような溶けた魔法石を閉じ込めていて、常時カタナの中で流れ続けている。リユが魔力を注ぎ込む限り、永久に魔法石が溶け続けるという。
「こんなバカアイテムを作るような国なのか、テッシムは」
「いいえ、それは我がエィヒメのアイデアなのです」
いつの間にか背後にいたカガシから、声をかけられる。
「おお、カガシ! 試し打ちじゃ。その辺の魔物を狩るぞ! 手を貸せ!」
「承知!」
「やっちゃれ、ブレスウェーブ!」
さっそくシンクレーグに、モンスターが攻め込んできた。
魔物たちに向かって、新技をさっそく披露する。太刀を振り、剣からオレンジ色の衝撃波を放つ。
大量の魔物が、オレンジ色の衝撃波に飲まれて灰になった。
「おーっ! めちゃ遠くにいた敵に、ブレスウェーブが届いたけん!」
リユは面白がって、さらに多くのモンスターを消し炭にしていく。
「モンスターが逃げていったよ……」
シンクレーグに攻め込んできた魔物たちが、北バリナンの方角へ逃げていった。
決戦の地は、北バリナンになりそうだ。
しかし、今はまず南バリナンを確保しなければ。




