第18話 本格的、デーモン退治
「危険じゃぞディータ!」
「だからこそ、僕一人で行くんだ。キミなら、国を任せられるから」
あんな凶悪なデーモンどもを、放っておくわけにはいかない。
「ディータ! 嫁を一人にして逝くな! せっかく、ほんとにお前を」
離すまいと、リユが僕の肩を掴む。
「大丈夫。僕は死なないよ。行ってくるね」
僕一人で、ダンジョンの最奥部へ戻った。
グレーターデーモンが、ダンジョンを徘徊している。あの巨体を相手にしては、行く手を遮られてまともに動けない。リーチも長く、こちらは逃げ場を失う。
物陰に身を潜めて、僕は機会を伺った。
分断されたところで、僕は背後に回る
「ムッ、なんなのだ……!?」
救援を呼ばれる前に、仕留めた。核がある心臓に、サーベルを打ち込む。魔族は、ある程度の距離があっても、魔力を送りあって状況を確かめ合える。そろそろ、仲間がやられたことに気づく頃だ。
注意がそれている間に、もう一体の脳天に剣を突き刺す。頭頂から剣を伸ばし、心臓を一突きする。これで二体目を倒した。
一回一回の闇討ちで、全力を出しきらないと仕留められない。それが今の、僕とリユとの差だ。
落とす装備アイテムも、いい感じ。これは大収穫である。刀の素材に使えそうな鉱石と、魔力が込められたアクセだ。アクセの方は、僕のサーベルに付与しよう。
最後の一体は、一対一で。
「お前が仲間を倒したのだな?」
「そうだ。最後は正面から勝負してやろう」
「望むところなのだ」
デーモンが、腕を伸ばして攻撃してきた。
蛇のように動く腕をかわし、蹴りで受け流す。
少しくらいはよろめいてくれると期待したが、ビクともしない。やはり、体幹は向こうのほうが上だ。
「まあいいさ。【電光石火】っ!」
雷魔法をサーベルに付与して、相手の目を狙う。
目はデーモンの急所ではないが、視界は奪い取れる。
「なに!?」
ジグザグに動いていたサーベルの先端を、デーモンは片手の指で摘んでしまった。
正面からは、ムチャだったか。
しかしこんなやつを相手に【奥の手】を使うのは、気が引ける。
「さっき拾ったアクセの力を、解放!」
電光石火のリーチを、さらに伸ばす。グレーターデーモンからのドロップ品だ。威力は申し分ない。
魔法が、デーモンの目にを突き刺した。そのまま心臓へと、浸透していく。
ダランと腕を下げて、デーモンは絶命した。
剣を収めて、ダンジョンの最奥を目指す。
ペカディアは、跡形も残っていない。
「へえ、ノコノコと戻ってくるなんてね」
その代わり、デーモン族のリーダーらしき女が。ペカディアをより凶悪にした見た目である。白を貴重にしたボンテージという、ワイルドな衣装に身を包んでいた。
サキュバスか。デーモンでもかなりの上位種だ。
「ペカディア姫が、サキュバスを取り込んでいたとは」
「そんな下位悪魔と、一緒にしないでちょうだい。ワタシはサキュバス族の中でも上位種。ロードよ」
サキュバスの王族か。そんな奴と、南東は手を組んでいたとは。
「どうだい? 人間族から解放された気分は?」
この女デーモンは、ペカディアを吸収していたのである。それを、僕が解き放ったのだ。
「それが、キミの正体か」
「ええ。わざわざハンデを取り除いてくれるなんて、お人好しなのかしら?」
「ハンデ、か。やはりキミたちは、人間を取り込むと弱体化するんだね」
人間ではないことを周囲に悟られないためと、全力を出すと宿主が崩壊してしまうからだろう。人間を捨てたところで、魔族の力を全力で出せる確率は低いけど。
「さすが元魔族の家系ね。博識だわ。魔族の生態をよく理解しているわね。だから勝てたのかしら?」
「今日の僕は機嫌が悪い。キミが全力を持ってしても僕には勝てないと、思い知らせたいんだ」
「ほざかないでよねガキ!」
純白のムチが飛ぶ。
僕が避けた地点の、空間すら斬り裂く。存在自体を消滅させるスキルか。
ペカディアが振るっていた武器より、数倍も凶悪な攻撃力だ。
「あのドラゴンを帰したのが、あなたの運の尽きよ! 彼女がいれば、ワタシと互角に戦えたものを!」
間髪入れず、二発目が来る。
僕は、相手のムチを切り捨てた。
「な!?」
「いつから僕が、ドラゴンより弱いって錯覚していた?」
肉体を変質させ、僕も自身の能力を開放する。




