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追放先に悪役令嬢が。不法占拠を見逃す代わりに偽装結婚することにした。  作者: 椎名 富比路
第二章 奥様はドラゴンだった!?

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第19話 デーモンロード撃退

 サキュバス型デーモンロードが、ムチを振る構えを取った。


 攻撃が来る前に、僕は相手の脇腹を蹴り上げる。


「ごほ!?」


 何をされたかわかっていないらしく、サキュバスは困惑していた。


「【レインフォース】のレベルが、尋常じゃないわね。スキルを魔改造した?」


「自分でもできると思っていなかったよ」 


 もっとも時間制限付きで、一定時間が過ぎると強制的に魔力が枯渇するが。


 変化したのは、肉体だけではない。装備も変質している。ミスリルなどの希少金属を採用した、特殊な全身ヨロイをまとっていた。武器のサーベルも、常に紫電を放つ。


「自分の装備を魔改造して、特殊なスキルを持たせているのね?」


「そうだ。これによって、負担が軽くなる」


 自身の肉体強化に加えて、全身を覆う武装も魔改造にて変形させた。


「電光石火!」


 僕は雷そのものとなり、サキュバスデーモンロードを切り刻む。


 もはや電光石火は、自然界の雷と同レベルの速度と威力を誇った。


 それでも倒れないサキュバスも大概だが。さすがデーモンロード、と言ったところか。


「凄まじいわ。それだけの力があれば、民を先導することも。自分が魔王に、取って代わることもできたでしょうに!」


「いや。僕のような異端児は、影に徹するべきだ。どうしてバリナンの王妃が、うちにカレーを食べに来ると思う?」


 カレーの発祥は、バリナン王国の方である。なのに、バリナン王妃たる姉さんは、嫁ぎ先のバリナンではなく我がシンクレーグまで足を運ぶ。カレーを食べるためだけに。


「それはあなたが、弟のディートヘルムだからでしょ? 顔を見せに来ているだけだと思うけど?」


「違う。うちのカレーの味が、子ども向けからだ」


 バリナンのカレーは、辛すぎる。そのため、娘には食べさせにくいのだ。実際、娘は現地でカレーを食べないという。


 対して、シンクレーグのカレーは、子どもが作っている。そのため、誰でも食べやすい。辛味を欲するなら、専用のソースをかけるように指示している。


「いいか。世界を支えるべきは、普通の人たちなんだ。変わり者や異端者は、奥に引っ込んでいればいい。普通の人たちが快適に生きていけるような環境を、作ってやるべきだ」


 カリスマなんて、いらない。そんな奴が頂点に立てば、民がトップに依存する。国を維持するのは、一握りの天才ではない。普通の民衆だ。


「理解できないわね。民は魔王に先導されて、初めて幸福を得るのよ」


「お前たち魔族が、魔王信仰にとらわれて、民衆を食い物にすると言うなら、僕は領主として、全力で排除する」


 こいつらは魔王を言い訳にして、好き勝手暴れたいだけだ。


「やれるものな――」


 デーモンロードが攻撃を仕掛ける前に、勝負はついた。


 僕は紫電となり、サキュバスの心臓を斬り裂く。


 サキュバスの核を破壊して、魔力が僕へと注ぎ込まれていくのがわかった。ここまでくると、とんでもない量の魔力である。それが、僕の力となっていった。


 キレイだったサキュバスの肉体が、ただの砂へと変わる。


「ふうううう」


 大きく息を吐き、僕はヒザをつく。


 肉体も武装も、もとに戻っていた。


 相手に何もさせないで勝ったが、決して楽勝ってわけじゃない。攻撃されたら、こちらが終わっていた。できるだけ、相手になにもさせないことが重要だったのである。


「でも、帰れるかな?」


 ヒザが笑っていた。立つことさえできない。救援でも待つか? しかし、このダンジョンは放棄する予定のはず。魔王の陣営とつながっているなら、塞ぐだろう。


 なんとか自力で脱出を……。


 サーベルを杖代わりにして歩こうとした。しかし、すぐにつまづく。


 みんな、待っていてくれているのに。


「なにをやっとるです。ダンナ様」


 不意に、僕は肩を抱かれた。


「どうして、リユ?」


「アタシは、ダンナ様の帰りを待たん薄情な妻ではありません」

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