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追放先に悪役令嬢が。不法占拠を見逃す代わりに偽装結婚することにした。  作者: 椎名 富比路
第二章 奥様はドラゴンだった!?

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第17話 グレーターデーモン姫の最期

「ん、あほ。あほお。んちゅう……」


 リユも、抵抗しない。彼女の方から、口づけを求めてきた。


「いやいや違う違う! アホかって!」


 ようやく、リユが夢心地から目覚めたようである。頭の角も、すっかり消えていた。


「戦闘中やぞ! なにをあんたは!」


「でも、あのままだったら魔族は倒せても、こっちだって全滅していた」


 せっかく助けたドワーフも、彼らを助けた僕たちも、ドラゴンのブレスに焼かれていただろう。


「なにより、僕は奥さんが正気を失うのは嫌だ。大事な人が、無差別殺人マシーンになるなんて、耐えられない」


「ディータ、お前……ホンマにアホや。でも、んふふ」


 名残惜しそうに、リユが口づけをしてきた。


「そういうとこ好きじゃけん」


 リユが、「さて」と僕の肩に手を置く。


「それはそうと、ディータ。あんなの、ドラゴンのブレスでないと倒せんぞ。どないするんじゃ?」


「いや。やっつけられるよ」


 僕は、ペカディアを睨む。


「ラ、ラブコメは済んだ? こっちは退屈していたんだけど?」


 ペカディアが、落ち着きを取り戻していた。


 さっきまで、ビビり倒していたくせに。


「ドワーフの王女さん、ドワーフの犠牲はどれくらいだ?」


 僕は、ドワーフの王女に声をかける。


 王と王妃は、衰弱が激しい。リユとヘニーに、それぞれおぶってもらっていた。


「兵士の六割ほどが、あのデーモン女のせいで犠牲になった」


「そうか」


 だったら、容赦する必要はないな。


「せっかくの切り札を、その場の感情で抑え込んでしまうなんて。シンクレーグの領主サマって合理的だって聞いたけど、案外ヘタレなのね!」


「言いたいことは、それだけか?」


 横目で、僕はペカディアを睨む。


「なんですってグヘエ!?」


 ペカディアがしゃべっている間に、僕はペカディアの腹へ「幻の腕」を叩き込む。


大きくバウンドして、ペカディアは後ろに吹っ飛んだ。しかし、すぐに体勢を立て直す。


「なによ、今の攻撃は? ちっとも痛くないじゃない! アハハ! シンクレーグの王子様って、特殊能力がある割に、ひ弱なのね!」


 ペカディアが勝ち誇る。


「後ろ」


 僕は、ペカディアの後方を指差す。


「え、なによあなたたち?」


 のっしのっしと巨体を揺らしながら、グレーターデーモンがペカディアに歩み寄る。その評定は、姫をいたわるような感情がない。明らかに、エサを前にした様子である。 


「ニンゲンなのだ」「それもメスなのだ」「おいしそうなのだ」


 あれだけペカディアを慕っていたグレーターデーモンが、今は彼女を人間の女としか見ていない。


「なにがあったの!? 魔族になったあたしの命令は、絶対のはずなのに!?」


「キミから、魔素を取り除いてやったんだ。キミはもう、ただの人間だよ」


 僕はヘニーやドワーフたちを助け出すときに、一体化している魔族から切り離すことができる。


 これを敵に叩き込んだことで、ペカディアは魔族としての力を失ったのだ。


「やめなさい! やめてお願いああああああ!」


 グレーターデーモンの手によって、ペカディアが腕を引きちぎられる。


 魔族たちは、ペカディアンの腕や足をムシャムシャと食いちぎった。


「たすけて」


 動けなくなったペカディアが、助けを求めてくる。


「なぜ?」


 見届けることもせず、僕はその場から離れた。


 ダンジョンにペカディア姫の罵声や悲鳴が聞こえるが、誰も耳を貸さない。




 僕たちは、ダンジョンの入口まで戻ってきた。


「どうもありがとう。私はテッシム王国の第一王女で――」


 テッシムか。魔族のいる領地のさらに北の山岳地帯だな。


「シンクレーグの領主、ディータだ。細かい話は後で。やることがある。皆さんはシンクレーグまで逃げてくれ。このリユが先導する」


「あなたは?」


「僕はダンジョンへ戻る」


 デーモンの脅威が、まだ残っているから。

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