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追放先に悪役令嬢が。不法占拠を見逃す代わりに偽装結婚することにした。  作者: 椎名 富比路
第二章 奥様はドラゴンだった!?

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第16話 ドラゴンのブレスより熱いキス

 リユの頭から、ドラゴンの角が生えてくる。ドレスアーマーから大きく露出した背中からは、翼まで。ここは天井の低いダンジョンだから、飛翔のためではない。ブレス発動の際、龍の翼は外気に浮遊する魔素を取り込むのだ。


 まさか、リユの正体が、ドラゴンだったとは。


 キヴァ家が辺境を守っているのは、ドラゴンの家系だったからかもしれない。普通人としては、生きられないから。


 だとすれば、短時間で東洋から海を渡ってこんな辺境まで来た理由も、納得がいく。ドラゴンの腕力で船を漕いでいたのだろう。空を飛んでは各国から敵とみなされて、攻撃される危険があるからだ。まして寂れたシンクレーグになぞ行こうものなら、そこを巣にして近隣諸国を滅ぼすと思われかねない。彼女は合理的観点から、海路を選んだのだ。


 リユは冷静であれば、そこまで思考を巡らせることができる。


 なのに、このキレっぷり。


 グレーターデーモンでさえ、怯えるほど。


「なになになに!? マジヤバイんだけど!?」


 デーモンサークルの姫であるペカディアでさえ、へたり込んだ。足がすくんで、その場から動けないらしい。


「お前たちなんとかしなさいよ!」


 ペカディアが、配下のデーモンをムチで縛って、引き寄せた。盾にするつもりである。


「ダメなのだ怖いのだ」


「なにをビビってんのよ! あんた上位のデーモンでしょ! 私を守りなさいよ!」


 半狂乱になりながら、ペカディアが身勝手な要求をしている。 


 たしかにヤバイ。これでは、ダンジョンごとふっとばしてしまう。


「ヘニー、助けたドワーフの王族は頼んだ。僕はリユを止めてみる」


「はい、ディータさま!」


 僕の指示で、ヘニーが回復魔法をドワーフたちにかける。


 怒り狂っているリユに、僕は歩み寄った。 


「落ち着くんだリユ、このままだと、ダンジョンに取り残されている人たちまで巻き込みかねねな……」


 ダメだ。完全に我を忘れている。


 考えるんだ。どうすれば、リユを止められる?


 僕は、リユの特徴を考えてみた。


 リユは言動こそ荒っぽいが、子どもたちに慕われている。よくシンクレーグの街で、子どもたちの遊び相手をしているのを見かけた。お嬢様なのに、全然偉そうではない。


 僕は確信した。やはり世界は僕のような合理主義者ではなく、民の視点に立てる人間でなければ。


「リユ、キミは世界に、なくてはならない存在だ」


 思い切って、僕は打ち明けてみた。


「あれ?」


 世界への貢献度が高いことを、全力でアピールしてみたのだが。


 僕にブレスを直撃させかねないくらいだ。


「お言葉ですがディータさま、女の子は『愛されている感』がないとなびかないかと」


 ヘニーが、アドバイスを飛ばしてくる。


 つまり、一人の異性として意識させよと。なるほど。僕たちは夫婦だから、愛情を持てば呼び覚ませるだろう。


「たしかにボクは、リユと夫婦の間柄だ。でも、どうやって証明を?」


「それは……」


 僕とヘニーが、答えを求めているときだった。


「キ……」


 ドワーフの姫様が目を開けて、リユに指をさす。


「キスしろ。ソイツに」


「え!?」


「夫婦なんだろ? キスできるはず」


 ドワーフの意見はもっともだ。が、偽装結婚の身でそんなことをするのか?


「愛しているなら、できる」



……うん。それは問題ない。



 僕は、リユに口づけをした。


「ホントに、ためらいなくいった!」


 ヘニーが、驚いている。


 ドワーフたちも、ビックリした顔に。


 だが、一番驚愕していたのは、リユだった。


「正気に戻ったか?」


 口を離し、語りかける。


「あ、お前、なに、を」


「黙ってろ」


 ダメだ。さらにしたくなってきた。


 ん、んんちゅ、ちゅっ。


 口が触れるだけの軽いキスを数回、ねちっこく舌を絡ませるキスを一回かます。


 相手はドラゴンなのに、キスの味が甘い。ブレスを吐く直前だというのに、熱くなんてなかった。


 身体が熱いのは、ブレスのせいじゃない。

 僕の心が昂ぶっているからだろう。

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