↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オタク転生令嬢は今日も魔法研究に没頭中~恋愛フラグ?そんなの知りません!~  作者: 真木くるみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/25

14.思わぬ誘いの先で(ルイス視点)

「クレヴェルトさん、なんで断ったんだろうな?」


生徒会室へ向かう廊下で、レオンハルトが私の顔を覗き込みながら言った。


「さあな。生徒会に興味がなかった……ただそれだけだろう」


そう答えながらも、胸の奥に小さな棘のような違和感が残る。

理由は分からない。ただ、妙に引っかかる。


「それが可笑しいんだろ! 生徒会といえば学園で一番権限がある場所だぞ? 入るだけで箔がつくし、王太子や高位貴族に近づける絶好のチャンスだ。普通の令嬢なら飛びつくだろ」


「私に聞くな。彼女の意思だ」


言い返しながらも、レオンハルトの言葉には一理あった。

――権力にも、婚約者候補にも興味がない。

それどころか、舞踏会の日も私には一切関心を示さなかった。


(……既に婚約者でもいるのか?)


胸の奥がざわつく。

けれど、そのざわつきの理由は自分でも掴めない。

ただ、妙に落ち着かないだけだった。


「フローラ・クレヴェルト、か……」


思い返せば、彼女はどこか掴みどころのない令嬢だった。

男爵子息に扮した私を庇って叩かれたり、舞踏会でドレス姿のまま信じられない速度で走ったり、私に興味がないどころか、同情のような目を向けてきたり。


そして――

お茶会で彼女が口にしたあの言葉。


何気ない一言だったはずなのに、あの時の私には妙に沁みて、気づけば心のどこかをそっと支えてくれていた。


今日、同じクラスだと知ってからは、気づけば自然と視線で追ってしまっていた。


自己紹介であたふたする姿。

隣の男子生徒と楽しそうに話す姿。


その一つ一つが、あの日の言葉と重なって、妙に脳裏に焼き付いて離れない。


「お前、クレヴェルト家の噂を知ってるか?」


レオンハルトが言った。


「噂?」


「幻の令嬢だよ。社交界に滅多に姿を見せない美しい娘がいるって話。有名だぞ。まあ俺たちはお茶会で一度会ってるがな」


「聞いたことはあるが……それがどうした?」


レオンハルトが令嬢の話をここまで続けるのは珍しい。

探るような視線を向けてくるのが、妙に癪に障る。


(まさか……こいつ、彼女に気があるのか?)


胸の奥が、嫌な風にざわついた。


「どうした、じゃない! あの“幻の令嬢”が学園に現れて、しかも噂以上に可愛いときた。男どもは彼女の話題で持ちきりだ」


「……何が言いたい」


自分でも驚くほど冷たい声が出た。


「いや、別に?」


口元だけで形作ったような、わざとらしい笑み。

その含みのある言い方に、無性に腹が立ち、言い返そうとしたその時――


「皆さん、こちらです」


前を歩いていたアルバートとエリックが立ち止まった。

生徒会室に到着したようだ。


レオンハルトを問い詰めるのは、また後でいい。



扉を開けた瞬間――


ドタドタドタッ!


凄まじい勢いで誰かが駆け寄ってきた。


「いらっしゃいませ! 待っていました! ようこそ我が生徒会へ!」


扉の向こうから、爆発するような笑顔を浮かべた上級生の女性が勢いよく飛び出してきた。

私たち一年生三人は、思わず一歩後ずさる。


「私は副会長のヘレナ・ウェストンです。よろしくお願い……って、アルバート。フローラちゃんは?」


ウェストン伯爵家の令嬢――社交界でも有名な才女だ。


「ヘレナ、落ち着いて聞いてくれ。フローラ嬢は……入らないそうだ」


アルバートが恐る恐る告げる。


ヘレナの笑顔が、音を立てて崩れた。


「……は?」


空気が凍りつく。

笑顔が剥がれ落ちる音がした気がした。

廊下の温度が一瞬で数度下がる。


「ごめん。でも、いつでも歓迎するとは言っておいたから。ほら、気が変わるかもしれないし……」


「ア・ル・バ・ー・ト」


地の底から響くような声。

その低さに、背筋をひやりと撫でられた気がした。


アルバートの顔がみるみる青ざめる。

“また始まった”という諦めの色が浮かんでいた。


「一年には女子役員が必ず必要だって言ったわよね?」


「……はい」


「二年の私だけじゃ引き継げないのよ! 女子にしかできない仕事もあるの!」


「す、すみません……」


完全に主従関係が逆転している。


レオンハルトと私は目を合わせた。

サディアスは彼女のあまりの迫力に存在を消し、エリックは慣れた様子で肩を竦めている。


「もういいわ。あなたには頼まない。私がフローラちゃんを説得してみせる」


「他の令嬢を当たるのは……? 彼女、意思が固そうだったし……」


アルバートが弱々しく提案する。


「うるさい! 他の令嬢より彼女が優秀なのは証明されてるの。それに一度会ったけど、とってもいい子で……それに、とにかく可愛かったのよ……!」


ヘレナはうっとりと目を細めた。


「……邪な理由じゃないか?」


アルバートがぽつりと呟く。


「何か言った?」


「いえ、何も……」


「まあ、フローラちゃんのことは私に任せて。どんな手を使ってでも入れてみせるわ!」


どんな手、とは。


鼻息荒くガッツポーズするヘレナに、私たちはまた思わず一歩引いた。


「あ、殿下方。生徒会に入ってくださってありがとうございます」


完全に“ついで”扱いである。


その後、アルバートから生徒会の説明を受け、今日のところは解散となった。


――フローラ・クレヴェルト。


彼女は、私の知らないところで、

また一つ騒動を巻き起こしているらしい。


胸の奥のざわつきは、しばらく消えそうになかった。

14話を読んでくださりありがとうございます。

今回は、生徒会を巡る騒動と、フローラの存在が物語全体を揺らし始める回でした。

ルイスの胸に芽生えた“ざわつき”が、今後どんな形で動き出すのか──

次話ではさらに彼女を巡る人間関係が加速していきます。


続きも楽しんでいただければ嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。