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オタク転生令嬢は今日も魔法研究に没頭中~恋愛フラグ?そんなの知りません!~  作者: 真木くるみ


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13/25

13.思わぬ誘いの先で

取り次いでくれた生徒に礼を言い、私は廊下へ出た。


ちょうどそのとき、廊下の奥から甲高い笑い声が響いてきた。


「そんなに集まられると、誰に微笑めばいいか困っちゃうな」


「まぁ、エリック様ったら〜!」


一年生の女子生徒に囲まれ、肩まで流れる金の髪をふわりと揺らした男子が軽口を叩いている。

その余裕のある笑顔に、周囲の女子はさらに盛り上がっていた。


(……すごい人気。どこかで見たような気もするけど……思い出せない)


なるべく視線を合わせないように、そっと横を通り過ぎる。


すると、廊下の奥に赤い花の刺繍――二年生の証――をつけた生徒が一人、こちらに手を振っているのが見えた。


「クレヴェルトさん、こっちこっち!」


この学園では、学年ごとに制服の刺繍の色が違う。

今年の一年生は青、二年生は赤、三年生は白――ひと目で学年が分かる仕組みだ。


呼び出された理由は分からないが、とりあえず駆け寄る。


廊下の少し開けた場所には、すでに一年生らしき数名が集まっていた。

背中しか見えないので誰がいるのかまでは分からないが、どうやら私が最後に到着したらしい。


「お待たせしました」


そう言った瞬間、横から甘い声が降ってきた。


「フローラちゃん、また会ったね」


ビクッと肩が跳ねる。

さっき女子に囲まれていた男子――エリックが、いつの間にかすぐ隣に立っていた。


距離が近い。近い。近い。

息がかかりそうで、思わず半歩下がる。


「驚かせてごめんね? 俺のこと、覚えてない?」


「エリックはクレヴェルト嬢のこと知ってるの?」


もう一人の二年生が首を傾げる。


エリック……エリック……どこかで――


「あっ、先日の舞踏会で……ハワード様ですか?」


「嘘、覚えててくれたんだ。嬉しいな。……そんな目で見つめられたら、期待しちゃっていいのかな?」


軽くウインクまでしてきた。

何を期待するのかは知らないが、名前は合っていたらしい。


その時。


「全員揃ったようだな。要件を聞いても?」


低くよく通る声が廊下に響いた。

空気が一瞬だけ張りつめる。


「で、殿下……?」


「え? 今気づいたのかい?」


王太子殿下が腕を組み、にこやかに立っていた。

笑顔なのに、背後に黒いオーラが見えるのは気のせい……だと思いたい。


「ぷっ。ルイス、お前が存在に気づかれないこともあるんだな」


琥珀色アンバーの瞳を細めて、隣の男性が楽しそうに笑った。

申し訳なさすぎて穴があったら入りたい。


「うるさい。……生徒会長、要件を」


促され、二年生の一人が慌てて前に出た。


「そ、そうですね。では改めて。私はアルバート・ベルディ、生徒会長です。そしてこちらが――」


「同じく生徒会役員を務める、エリック=ハワードです」


エリックが優雅に礼をする。

さっきまで女子に囲まれていた軽薄さが嘘のように、完璧な所作だった。


アルバートは息を整えてから、本題を告げた。


「単刀直入に言います。ルイス殿下、レオンハルト様、サディアス様、そしてフローラ嬢。あなた方を――生徒会へ勧誘しに来ました。ぜひ、生徒会に入っていただきたい」


「へっ?」


生徒会? 私が?

……あ、これ絶対、入学前試験の順位のせいだ。


案の定、他の三人は迷いなく答えた。


「あぁ、承知したよ」

「私も入らせていただきます」

「はい、お受け致します」


え、そんな即答でいいの?

生徒会って、行事運営とか予算管理とか、面倒な仕事の塊じゃないの?

私は学園でも魔法研究を続けたいし、できれば全力で避けたい。


「クレヴェルト嬢、君はどうかな?」


アルバートが私に柔らかな視線を送る。

決して強制しているような雰囲気はない……と思う。


それに、この人なら断ったからといって怒ったりはしなさそうだ。

そんな安心感が、胸の奥でそっと息をつかせる。


私は深呼吸して、はっきりと言った。


「申し訳ございませんが……私は遠慮させていただきたく存じます」


頭を深く下げる。


「顔を上げて、クレヴェルト嬢」


顔を上げると、アルバートは少し残念そうに微笑んだ。


「残念だけど、強制はできないよ。気が変わったらいつでも言ってね。その時は歓迎するよ」


その穏やかな声に、胸の奥がふっと軽くなる。

……本当に、物分かりの良い人で助かった。


「えっ、嘘でしょ!? フローラちゃん断っちゃうの? 一緒に仕事したかったのに!」


「こらエリック、余計なことを言うな」


アルバートがエリックの首根っこを掴んで、ずるずると引き寄せる。

エリックは「えぇ〜」と不満げに唇を尖らせていたが、アルバートの手際の良さからして、どうやら日常茶飯事らしい。


三人はアルバートに連れられ、廊下の奥へ歩いていく。


「フローラちゃーん!」


エリックの名残惜しそうな声が遠ざかる。


その途中、殿下が一度だけ振り返った。

言いかけてやめたような、複雑な目で。


……なんだったんだろう?

まぁいいか。


「そうだ! 図書館に行かなきゃ!」


巨大図書館の存在を思い出した瞬間、胸の奥がぱっと明るくなる。

さっきの疑問なんて一瞬で吹き飛んだ。


私は軽い足取りで、図書館へ向かった。

ここまでお読みくださりありがとうございます。


生徒会勧誘という大きな出来事がありましたが、

フローラは自分の意思で“研究”を選びました。

それぞれのキャラの思惑も少しずつ動き始めています。


次回は物語がさらに広がります。

お楽しみいただけると幸いです。

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