パドラルのジャンバランフォート砦
スチュアートリア帝国からの船便が到着し、作物の苗や種、家畜がパドラルのジャンバラン砦に搬入された。
ノアは、砦内の宿泊施設の自分に与えられた部屋の窓から、以前暮らしていた場所をぼんやり見つめていた。
そこは砦というより、牧場のような農園のような、地球で言えば牧場風のレジャー施設のように見える。
あのちょっと陰気で怪しげで貧しかった『大黒主神教』が、こんな素敵に様変わりするのだから、スチュアートリア帝国の支配下に入れば、パドラルも平和で豊かな国に変わるのだろうと思えた。
だが、トゥルリー先生の話では、レッドリオン閣下はパドラルを帝国の支配下に置くつもりは無いとのことだった。
パドラルを統一した後は、独立した国家として支援するという。
日本も昔はいくつもの小さな国に分かれていて、それを統一するまでに幾世代もかかっている。
戦国武将が群雄割拠し、カリスマ的な織田信長の登場で半ば無理やり支配下に置かれ、その信長も騙し討ちされるようにして表舞台から消えた。
その後、天下統一の彼岸は、秀吉、家康と全く違った個性の武将に受け継がれ、やっと統一国家としての日本が成立した。
それをレッドリオン閣下は短期間で、しかも数名でやってのけるという。
ノアは、地球の近代史をある程度知っているだけに、彼らのやろうとしている事が信じられなかったし、到底不可能なことのように思えた。
だが、シオンが作成したパドラルの地図を改めて見てみると、が和平と友好条約を結んだ部族に付け白い丸印の数の多さにも驚くばかりだった。
既にアランとトゥルリーふたりで制した部族の数々を目の当たりにして、ふたりの凄さを思い知らされていた。
「オセロ作戦」と名付けられた秘密の作戦が開始されたのは年末。
トゥルリー先生とマリア先生が突然、帝国神聖魔術士養成大学から姿を消した時だ。
その後、すぐにノアは、レッドリオン公爵から、ジャンバラン村を解放しもアチト族、ディカロン族、クスシポ族との友好条約を取り付けたと手紙を受け取っていた。
それから数週間で、ここまでの数の部族と友好条約を締結しているのだから、信長以上のカリスマだなぁと思っていた。
やはり、魔法、Holy Powerを使えるHoly Mageだからこそ出来ることなのだろう。
そもそも、ノアはパドラルが27もの部族に分かれていることすら知らなかった。
なんとなく、パドラルの地形は理解していたが、国の中央にケアニスクス山脈があることや、スチュアートリア帝国との境界にシルバーコルティナール山脈が横たわっているということも知らなかった。
ノアが『大黒主神教』教会から逃げ出す時に、デイブスが陸路で帝国へ入るのは難しいと言った意味が
今になって理解できた。
また、ジャンバラン村の周囲の村は穏やかな部族ばかりだったが、北部へ行くと荒々しい気質の部族も居ることを知り、パドラル国内を下手に動き回らずに良かったのかもしれないと思っていた。
そんな自分が、ここに戻って来て何が出来るのだろう?
一体何がしたかったのだろう?
キースが、アラン達にパドラルに呼ばれた時、ノアも一緒に行くことに何の迷いも無かった。
なぜか、自分も行かねばならないと思ってしまった。
しかし、実際にここへ戻って来ても何をしたかったのかもわからないし、何をするべきかもわからなかった。
実際に、自分に出来ることは何もなかった。
キースとオスカーはHoly Mage騎士として、アラン達の足をひっぱること無く、現地で働くことも闘うことも出来る。
クリストファーとアンナは、正式なHoly Mage騎士では無いが、黒魔術で洗脳された者たちの解呪をすることが出来る。
だが、俺はHoly MageどころかWhite Mageとしても半人前で何も出来ない。
ここに居ても無駄飯食らいになるだけで、何の意味があるのだろう。
ノアの部屋から竜たちの放牧場が見えた。
エディはどうしているだろう?
そんなことをぼんやり考えているところへ、クリストファーが呼びに来た。
ノアの部屋をノックして、ドア越しにクリストファーが言った。
「ノア、いいか?閣下が呼んでいる」
「はい、今行きます!」
ノアは、部屋の窓を閉め、すぐに部屋を出てた。
クリストファーのついて来るように言って、ノア達の宿泊棟とは別棟へ向った。
その建物内には会議室や食堂がある棟で、その中にある一室の扉の前でクリストファーが止まって言った。
「ここの部屋だ。俺はここまでで失礼するので頑張れよ、ノア」
そう言ってクリストファーは去って行った。
扉の前に取り残されたノアは、不安にかられていたが、思い切って扉をノックした。
すると、その扉がひとりでにゆっくりと開いた。
扉の中の部屋には、アランとトゥルリーと共に見覚えのある男が椅子に座っていた。
ノアは、その見覚えのある顔を見て驚いた。
ノアが知っているその人とは、服装も雰囲気も違ったからである。
しかし、間違いなくノアの知っている顔だった。
驚いてその場に固まっているノアに、トゥルリーが声をかけた。
「ノア、こっちへ来て座りなさい」
ノアは黙ってトゥルリーに言われるまま席に座った。
男は、穏やかな表情で言った。
「久しぶりだね、ノア。覚えているかい?」
ノアは、戸惑いながらもその男に向かって言った。
「ご無沙汰しています、その節はお世話になりました、おじ…さん?」
「ははは、、、名前も名乗ってなかったね?私はグライデン。スチュアートリア帝国のWhite Mage騎士だ」
と、グライデン卿は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔のノアに向かって言った。
「グライデン卿は、帝国から派遣されたWhite Mage騎士だ。ジャンバラン村に定住して情報収集しているのだ。グライデン卿は、君が普通の人間ではない事を当時から見抜いていたよ」
と、お茶のセットを部下に運ばせながら、音も無く部屋に入って来たシオン参謀が言った。
「まぁ、White Mageを現地に派遣するのは、専ら私の仕事だがね」
スチュアートリア帝国軍所属のWhite Mage騎士を隣国へ派遣し、その諜報部員が現地人に定住して収集した情報を精査し活用することは、参謀室の役割だった。
シオンはその参謀室の長官なのである。
「そうだったんですね。僕は単なる親切なおじさんだと思っていました」
と、ノアが言うと
「それは、私の仕事的には大成功ということだ。引き続き村では、親切なおじさんでお願いするよ」
と、グライデン卿は笑った。
「はい…」
ノアは、スチュアートリア帝国では、隣国に諜報部員を送り込んでいることを聞いてはいたが、こんな身近に居たとは!と、驚いていた。
「あの、グライデン卿?ディアネ達、マッキンリー家族は元気ですか?ネオが心配していたもので…」
と、ノアはネオのことを思い出して尋ねた。
「ああ、元気だよ。ジャンバラン村が『大黒主神教』から解放されて、洗脳された村人たちも家に戻り、村もかなり平和を取り戻している。ここの砦を中心にこれからこの村も豊かになるだろう」
と、グライデン卿も嬉しそうに、かつ誇らしげに言った。
卿も村が平和になった事が嬉しかったし、そのことに自分が役立てたことを誇りに思っていた。
長年の苦労と、努力と忍耐が報われたのである。
確かに、この砦の様子を見れば村の未来に希望が持てる。
ノアも安心してネオに報告できると思った。
部下にみんなのお茶を用意させて退室させたシオンは、自分も席に着いてお茶を飲みながら、ノアとグライデン卿の話を聞いていた。
そして、ふたりの話が落ち着いたところでノアに尋ねた。
「そういえば、トゥルリーとマリアの代わりに私の妹のアメリアと、セドリック・ダヴィド・エバー・グリーンフィールド大尉が大学に赴任しただろ?生徒から見た彼らはどうだい?」
確かに、誰かに似ていると思ったが、アメリア先生とシオン参謀は兄妹なのだった。
「はい、まだ短期間しか教わっていませんが、良くして頂いております」
頼りにしていたトゥルリーが突然居なくなって途方に暮れていたノアに、マリア先生の弟のセドリック先生が寄り添ってくれた事を思い出していた。
そして、
「あの…マリア先生は?」
と、マリアの姿が見えないことが気になっていたノアが尋ねた。
「マリアは、北部のギョンサザ族の村に居るんだ。我々もまもなく、また北部へ出向くことになるが、ノアここに残ってシオン参謀の指示に従ってくれ。何かあればグライデン卿も力になってくれるだろう」
と、アランが言った。
ノアは、自分がお荷物になることは充分に承知していたので、連れて行って欲しいとは言わなかった。
ここで、自分に出来ることをしようと思っていた。
この時のノアは、自分を何も出来ない無能な男にしか思えず落ち込むばかりだった。
まさか自分が、パドラルとスチュアートリア帝国に未来の為に重要な役割果たす者のひとりとなるとは、この時のノアには想像も出来なかった。
そんなノアにトゥルリー先生は言った。
「ノアはいずれ空軍部隊に所属して、鋼竜のパイロットになり竜の訓練もするのだろう?ここの竜の放牧場には一時的にだがブルーフォレスト辺境伯家の竜専属の騎士達が来ている。良い機会だ、一緒に世話を手伝いながらノウハウを教わると良い」
「それは良い考えだな。ノアにはキースと一緒に空軍部隊のエースになって貰いたいからな。頼むぞ!ノア」
と、アランもトゥルリーの提案に満足そうに言った。
ノアも、自分の役割を見つけられてホッとしていた。
「はい、頑張ってお世話させて頂きながら、勉強させていただきます」
確かに、ブルーフォレスト辺境伯家の竜専属騎士達から教われるなんて滅多にないチャンスである。
大学では、ブルーフォレスト辺境伯家の娘であるポリアンナから教わっていたが、彼女も辺境伯家の竜専属騎士達から教わって育っていた。
しかも、自分の竜は使徒のクロエなので、普通の竜とは違う。
半分はクロエに助けられているところもあった。
だが、ブルーフォレスト辺境伯家の騎士達が世話をし、訓練して来たのは野生の金鱗竜である。
しかも、彼らは先祖代々、何代にも渡って竜の訓練をして来ているベテランである。
日本で言えば匠の技なるものもあるかもしれない。
ノアは急に、ここでの滞在が楽しくなって来ていた。
「では、早速オスカー様に頼んで、みなさんに弟子入りさせていただきますので、失礼いたします」
そんなノアの様子を見て大人たちは、愉快そうに笑って言った。
「ゲンキンなやつだな」
「若いってことは素晴らしい」
「あいつが異星人だとは思えないな」
「ああ、彼こそがKey Personだ。みんなで守ってやってくれ」
と、アランが言うと皆が頷いた。
そして、同日、White Mage達を集めて作戦会議が行われた。
アランとトゥルリーは、ジャーアスとケケドラへ、キースとオスカーはシストーラへ行きエイディオス卿と合流してゴザカントへ向う。
その間、クリストファーとアンナはジャンバラン砦で待機。
キースとオスカーが攻略し次第、クリストファーとアンナも合流し、黒魔術によって洗脳された現地の人たちの解呪を行う。
そのまま、タナンバ、ジャーナカン、ササン、ヤクトルと順次南下しながら解呪を行う。
解呪しながら、帝国との和平について族長レベルとの会談が可能なら話し合うが、無理そうな場合はアランとトゥルリーのメメチャンバに飛来して貰う。
ここまでの間にパドリアヌスに気づかれないかが勝負の鍵となる。
そこで、彼らの目先を北に向けるべく、ギョンサザに居るマリアとリ・シリェリー卿に暴れて貰うことになっている。
いよいよ「オセロ作戦」最終局の幕開けである。
「現地に突入の前に君たちには、この資料を読み込んでおいてくれ」
シオンは、会議室の隅の机の上に山積みになっている資料を指さして言った。
ルイスガードナー基地から持ってきたパドラルに関する資料である。
「俺たちも読み込んだ資料だ。お前たちもしっかり読んでおけよ。俺たちがここに戻るまでの宿題だ」
と、トゥルリー先生が冗談のように、笑いながら言った。
しかし、クリストファーとアンナは、トゥルリー先生の目が笑っていないことに気づいていた。
「了解いたしました。タナンバ、ジャーナカン、ササン、ヤクトル、ゴザンカントから順に北に向かって読んでいきます。全部読み終える前に戻って来ないで下さいよ」
と、クリストファーも冗談交じりの返答をしたが、その実焦っていた。
アランとトゥルリーの仕事が早すぎるからである。
「俺たちの帰還が早いか、お前たちが宿題を終えるのが早いか勝負だな」
と、トゥルリー先生は教え子に向かって笑った。
「はい!」
クリストファーとアンナは、これから命がけの戦場へ向うトゥルリー先生に敬礼をして返事をした。
Holy Mageとはいえ戦場に出向くわけなので、笑いごとでは無いのである。
それでも明るく振舞う先生とアランの無事を祈るふたりだった。
まずは、アランとトゥルリーが、竜に乗って北へ旅立って行った。
予めナナサリン村に居る White Mageのカレン・マリナシス卿と、ニードンの White Mage ワッティス卿と連絡をとっていたアランは、ジャーアスを攻略に行くことをそれぞれの村の族長に伝えていた。
アラン達の出現に刺激されたジャーアスが攻撃に出た時に備えて警戒しておいて欲しかったからだ。
なぜなら、ジャーアスは海に面した部族で船も持っているので、海からの攻撃も考えられるからである。
もちろん、スチュアートリア帝国軍も海軍の戦船や戦艦を持っている。
だが、「オセロ作戦」はスチュアートリア帝国軍としてではなく、あくまでもアラン達Holy MageとWhite Mageの個人的な作戦となっているので、アランの中では海軍を動かす選択肢は無い。
また、パドラルが統一された後のことを考えても、他国の干渉で敗北し部族が滅亡したという歴史をパドラル内に残したくはなかった。
戦争の傷は、一度歴史に刻まれると、それは未来永劫に渡り消えることが無い。
禍根を残すことは、未来への負の遺産となる。
それゆえに、帝国としては手を出す事は許されなかった。
アランとトゥルリーは慎重だった。
今までの部族はケチャ教を信仰し、出来る事なら平和を望み、メメチャンバの到来を信じていたので和平交渉に苦戦することはなかったが、今回の二部族は少し違うという話だからだ。
ふたりは、竜を森に隠しトゥルリーの使徒のビショップと待機させ、アランの使徒のルークと三人で、ジャーアスへ乗り込むことにした。
ジャーアスへ足を踏み入れるとすぐに、どこからか矢が飛んで来た。
アランはその矢を手で掴んで、矢尻を見て言った。
「毒矢じゃないか、本当に容赦ないなぁ」
すると、続けて何本もの矢が嵐のように飛んで来た。
アランとトゥルリーは久しぶりに腰の剣を抜いて、矢をことごとく叩き落すした。
しばく矢の雨が止んだかと思うと、木の影と藪の中かから何人もの男たちが剣や斧を持って三人向かって突進して来た。
「ルーク、非難していろ!」
アランがそう言うと、ルークは鷹の姿に戻って空高く飛んで森の影に消えた。
その間にアランとトゥルリーは、襲い掛かって来た敵と剣を交えた。
アランの剣は赤の光、トゥルリーの剣は黄色の光が敵の剣に当たる度に火花ように散った。
するとその光を見た敵は目つぶしを食らったかのように目の前が一瞬にして見えなくなったかと思うと気絶してしまった。
「久しぶりに、人と剣を交えたな。腕が鈍ってないようで良かったよ」
と、アランが言うとトゥルリーも
「凡人との闘いじゃあ、腕が鈍っていても問題なさそうだが人数が多いと面倒だな。これ以上多い時は、一気にHoly Power使ってしまうか?」
と、言って笑った。
彼らにとって、魔法を使わない普通の人間との闘いは、赤子の手を捻るようなものだった。
彼らとの闘いに参加せず様子を伺っていた者が逃げ出して、族長の元へ駈け込んで行った。
その様子を空から見ていたルークが、アランの元に戻って来て報告した。
「そうか、それは手っ取り早いな。ルーク、そこへ案内してくれ」
と、言って三人はジャーアスの部族長の居る村に向かって歩き出した。
途中、通り過ぎた村は荒れ果てており、闘いの場にでもなったのか、田畑が人の足跡で荒されていた。
それを悲しそうに見つめながら、畑を耕し直す村人の女の手は荒れて血がにじんでいた。
アランは、思わずリリアーナと出会った時のことを思い出していた。
そして、その村人に近づいて言った。
「ここで戦があったのですか?」
村の女性は、アラン達が近づいて来た気配に気づいていなかったらしく、驚いて後ろに飛びのいた。
女は、初老というよりは少し若いくらいの年配の女性だった。
「驚かせてしまってすみません。ちょっと手から血が滲んでいるようなので気になったものですから…」
と、アランが優しく言うと
「はい、鍬や鋤も持って行かれてしまって…、木の棒や石を使って土を掻いていたらこんなになりました」
と、アラン達が荒くれ者ではないと、安心した女が答えた。
アランはその手をとって、優しく両手で包むとその荒れて血のにじんだ手の傷が消え、欠けた爪も元に戻っていた。
「えっ?」
女は、驚いて綺麗になった自分の手をまじまじと見ていた。
アランは笑顔で、その村の女性に尋ねた。
「この村では、ケチャ教は信じられていますか?」
すると女は、複雑そうな顔で答えた。
「はい、ケチャ教は村の宗教です。ケチャの神の名の元に闘うようにと、村の若い男たちは族長に集められて闘いに行きます。うちの息子も旦那も連れて行かれました」
村人の話では、ケチャの神様は自分の村を守ることを望んでいるから、村の為に闘い守ることがジャーアスの男の務めだと言っているらしい。
男手が無い家では、女たちが田畑を耕し、力仕事をしなければならないのでいつも貧しいのだという事だった。
また、時折、戦いでせっかく耕した田畑を荒らされたり、闘う道具として鍬や鋤まで持っていかれたりするので困っているそうだった。
アランは、その女に尋ねてみた。
「あなたはメメチャンバを知っていますか?」
すると、彼女は目を丸くしてアランとトゥルリーをまじまじと眺めて腰を抜かし、畑にひれ伏して言った。
「もちろんです。メメチャンバ様とは知らず失礼致しました。私の手を癒して下さってありがとうござます」
「そうか、ジャーアスでもメメチャンバ伝説は根付いているのか!」
と、アランとトゥルリーは精神可能で、お互いに言った。
そして、アランは女に言った。
「必ずパドラルをひとつの平和な国にします。あなたの息子や夫があなたの元に戻るようにしますから、それまで頑張って下さいね」
女は畑にひれ伏したまま顔を上げられずに、ただふたりを拝み倒した。
アランとトゥルリーは、「まいったな」と、顔を見合わせてその場を後にした。
「とりあえず、ジャーアスの族長と話を付けるしかないな。他の村人はなんとかなる気がする」
「そうだな。ここの族長は少してこずりそうだな」
アランとトゥルリーが、族長が居ると思われる部落に辿り着くと、そこは頑丈な城壁に囲まれた要塞のような様相を呈していた。
周りをぐるりと深い堀に囲まれ、入り口は分厚い門で閉ざされていた。
ジャンバラン村もスチュアートリア帝国の砦よりも、ずっと物々しい本格的な要塞だった。
それだけ敵からの攻撃に備えなければならない状況だということなのだろう。
そこには、他の部落では見られなかった緊張感があった。
いよいよ、アランとトゥルリーふたりだけのジャーアス部族攻略戦が始まる。




