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Beyond of Cosmos =星巡りの物語=リゲル・ラナ編  作者: 詩紡まりん
『光と影の闘い』=聖なる白と闇の黒= リゲル歴4046年

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キースの騎士任命式、ノア、パドラルへ戻る

 オスカー、キース、アンナ、クリストファー、ノアの五人は、シュヴァーネンフリューゲル城から(ゴールド)(スケール)(ドラゴン)に乗ってパドラルのジャンバラン村の砦へ向っていた。

 アランの使徒のルークは、竜よりも早く飛ぶことが出来るので、先にアランの元へ戻っていた。


「そうか、あのふたりとノアも一緒に来るのか」

 と、トゥルリーが言うとアランは

「なぜか彼らも来ることに同意してしまった」

 と、言って自分でもなぜ拒否しなかったのか不思議に思っていた。

 使徒のルークは主人であるアランの意思と同期しているので、ルークの判断は全てアランの意思である。


「アレクサンドル陛下が、アラン様の未来には不変のものがあるとおっしゃっていました。きっと、今回のアラン様のご判断も神のご意志なのでしょう。ここに来て陛下とウィリアム殿下の予知が明瞭になって来られたそうです」

 と、シオンが言った。


「して、その内容は?」

 アランは、叔父であるアレクサンドル皇帝から詳しい予知の内容を知らせてはいなかった。


「陛下は、アラン様とスチュアートリア帝国の未来はひとつだとおっしゃっておられました。アラン様は選ばれし者だとも。そして、それは誰かに指示されるべきことでも、我々が手出しするべきことでもなく、アラン様が自ら考え進むべき道を進むしかない、とのことでした」


「そうか。では俺の判断に間違いは無いと思って良いのかな?」

 と、アランが言うと

「例え、アランの判断に間違いがあったとしても、それを正して行けば良いのではないか?」

 と、トゥルリーが言った。


 トゥルリーは、以前皇帝から直接、その予言について聞いていた。

 それは、アランに対する予言と同時に自分にも関係するものだったが、皇帝はそれを敢えてアランには伝えないと言っていた。

 それは、アランに迷いを与え判断を鈍らせる原因になり得るとし、アラン自身の判断に全てを委ねるとしていた。

 そして、トゥルリーもそのアランの判断に全てを委ね、自分の運命もどこまでもアランと共にする覚悟だった。

「我々には手出しできなくも、助けることはできるのだろ?シオン?」


 トゥルリーがそうシオンに尋ねるとシオンも力強く答えた。

「もちろんです!アラン様がどう判断しようと、必ず付き従うのが我々の使命です!どこまでだってお供する覚悟です」


 そう熱弁するシオンに対して、トゥルリーが言った。

「残念ながら、それは俺の仕事だ。シオンは軍の頭脳、参謀長官として作戦本部に居なければならんだろ?」


 トゥルリーもシオンの気持ちは充分理解していたが、皇帝の予言はアランと自分に対するものだったので、シオンには自分の役目を全うして欲しいと考えていた。

 シオンは紛れもなく帝国の頭脳と呼ばれる男だったからだ。


「確かに、シオンには作戦本部で頭を働かして貰わないとな。でも、シオンの気持ちは俺も充分理解している。いつも感謝しているよ」


 トゥルリーの言葉にちょっとムッとしていたシオンだったが、アランのこの言葉に溜飲(りゅういん)が下がったらしく、大人しく自分の席について今後の作戦について話し始めた。


 アランはシオンの作戦を聞きながら、叔父と従兄の予知について考えていた。

 叔父のアレクサンドル皇帝の予知能力はスチュアートリア帝国一である。

 おそらく、随分前からアランについての未来予知をしていたはずだった。

 だが、それをアラン本人に伝えて来ることはなかった。

 それは、その予知が確定未来であり、変えることの出来ない未来だからだろう。

 その上で、敢えてパドラル統一の大仕事をアランに託したのには何か意味があるに違いない。

 そして、その難題に臨む自分には、トゥルリー、シオン、マリアという子供の頃からの仲間が常に寄り添ってくれている。

 他にも自分を慕い、力を貸してくれる大勢の部下や臣下が居る。

 自分とスチュアートリア帝国の未来はひとつだと言うのなら、迷うことなく前進あるのみ。

 アランは、今一度この作戦の完遂を心に誓った。


 ルークの帰還から遅れること数時間。

 オスカー、キース、アンナ、クリストファー、ノアを乗せた五頭の(ゴールド)(スケール)(ドラゴン)がジャンバラン(フォート)に到着した。


「ようこそジャンバラン(フォート)へ」

 トゥルリーが五人の出迎えに、竜たち用に用意された牧場に迎えに出た。


 そこには、ブルーフォレスト家から派遣されている竜専門の調教師兼飼育係の者も居たので、彼らはすぐにオスカーの姿を見ると嬉しそうに近寄って敬礼をした。


「みんなご苦労、新年祭の時期に異国まで来ての仕事で申し訳ない」

 と、オスカーが彼らに言うとブルーフォレスト家の騎士達は

「ブルーフォレスト家だけでなく帝国のお役に立てて光栄です。オスカー様のお顔も見られて元気100倍です」

 と、パドラルの地で自分たちの主人の顔を見ることが出来て、みな一様に嬉しそうだった。


 ブルーフォレスト家は代々、(ゴールド)(スケール)(ドラゴン)を使徒とし、また竜を飼育訓練して帝国唯一の竜部隊を持っていた。

 それゆえに、竜専属の訓練と飼育をする家臣も多くいた。

 彼らもまた幾世代も続き、そのノウハウを受け継いでいた。

 昨年になり、帝国軍にも空軍部隊を創設することとなり、急にブルーフォレスト家の竜部隊の需要が増えた。

 と同時にその訓練と世話をする者たちにも注目されるようになった。

 ブルーフォレスト家内だけの仕事が帝国軍全体の仕事として注目されるようになり、ブルーフォレスト辺境伯家の名声も上がると、彼らは彼らも遣り甲斐を感じていた。

 特にこれ以上の名声を望んではいないブルーフォレスト辺境伯家ではあったが、忠臣たちの気持ちは嬉しかったし感謝していた。

 もちろん、息子のオスカーも同様に感じていた。

 平時は、帝国近衛騎士団長として帝都で働いているオスカーだったので、ブルーフォレスト城で働いている彼らは、滅多にオスカーに会うことが出来ない。

 それだけに、異国の地で自分の主家の者に会え、労いの言葉をかけられることは、彼にとって何よりも嬉しいことだった。


 オスカーが家臣たちに囲まれている横で、他の四人は恩師であるトゥルリーに迎えられていた。


「みんなよく来たな。こんなところで君たちと会えるとは想像もしていなかったぞ」

 と、トゥルリーは竜から降りたひとりひとりの生徒を出迎えて握手をした。


 最後にキースの手をとり固く握手をしながら

「よく来てくれた。今回は君にとって初の実戦になる。騎士としての任命式はまだだが、このジャンバラン(フォート)でやってしまおう。ちょうど総司令官のアランも、参謀のシオンも居るからな」

 と、言ってキースの肩を叩いた。


「はい!宜しくお願い致します」

 キースは、トゥルリー先生、いやトゥルリー大佐の顔をまっすぐ見て言った。


 その後ろで、クリストファーとアンナ、ノアの三人が、ちょっとバツが悪そうに立っていた。

 クリストファーとアンナの足元には心配そうに主人(マスター)を見上げる使徒(しと)のマエルとノエルが寄り添っていた。

 三人は、勝手にキースに着いて来てしまったので叱られるかもしれないと思っていたのである。


 クリストファーが思い切って口を開いた。

「トゥルリー先生すみません。まだ学生の身分で付いて来てしまって…」

 アンナとノアもクリストファーと一緒に深々と頭を下げた。

 マエルとノエルも主人(マスター)の足元で一緒にお辞儀をしていた。


 トゥルリーは、そんな三人と二匹を見て、笑いそうになるのを必死に堪えて無表情を装って言った。

「これは、私の判断ではない。総司令官であるアランが決めたことだから私には何も言うことは無い。あとは、アラン閣下とシオン参謀の指示に従うように」

 そう言ってトゥルリーは、三人に背を向けて施設の中に向かって歩いて行った。

 なんとか笑わずに乗り切った自分を褒めながら。


 しかし、そうとは知らない三人は、やはりトゥルリー先生は怒っているのだろうと思っていた。

 トゥルリーの後につづいてキースが歩いて行ったので三人もすごすごとその後に続いた。


 久しぶり会ったブルーフォレスト辺境伯家の臣下と話していたオスカーも、連れて来た竜の世話を彼らに頼んで、皆の後を追って施設の中に入って行った。


 ノアは、そこが以前住んでいた『大黒主神教』の教会施設とは思えない変化に驚いていた。

 以前は、なんとなく不衛生で暗い建物だった宿泊施設も教会の建物があった場所にも清潔で綺麗な建物が建っていた。

 建物の周囲にも農場が作られており、清潔な飼育舎や牧場が広がっていた。

 ノアは、建物中をキョロキョロしながら進み、時折り窓の外に見える施設内の風景を見ながら、

「同じ場所とは思えないなぁ。ネオくんにも見せてあげたいな」と、思っていた。


 トゥルリーに案内されて到着した部屋には、大きなテーブルと数人が座れる椅子があり、テーブルの上には沢山の資料と地図が置かれていた。

 その一番奥の席にレッドリオン総司令官、アランが座っていた。

 その後ろに寄り添うようにヴァイオレット・フィールド参謀が立っていた。


「ブルーフォレスト卿、キース・ウェスリー・インディゴ・ラングレー君、突然の招集に駆けつけてくれたことに感謝する」

 出征命令書を出した参謀長官のシオンがふたりを出迎えて言った。


「はい、シオン参謀からブルーフォレスト城で待機するように言われておりましたので、すぐに駆けつけて参りました」

 と、オスカーが言うとキースも

「私のような、また正式な騎士としての任命前の者を呼んで頂けて嬉しく思います」

 と、出征命令を受け取ったことに感謝した。


 ふたりの言葉を受けてスチュアートリア帝国軍総司令官のアランが言った。

「新年早々、ふたりを巻き込んで申し訳ないが、君たちの力を借りたい。オスカー卿、命がけの仕事になると思うが協力して貰えるだろうか?」


「もちろんです。呼んでいただけて光栄です」

 と、オスカーは床に片膝を付け(ひざまず)き騎士の敬礼をして答えた。


「キース・ウェスリー・インディゴ・ラングレー君。父上には、私の父が皇帝時代に世話になったと聞いている。父子(おやこ)でまた力を貸して貰えるだろうか?」


「はい、そう言って頂けて光栄です。帝国神聖魔術士養成大学時代には、私の心の迷いで二の足を踏んでおり、卒業が遅くなりました。今は、その分を取り戻すべく全身全霊で帝国の為に尽くす所存です」

 と、キースも跪き騎士の敬礼をして答えた。


「本来なら、皇帝陛下もご参列頂いて、司祭の祈祷をして貰ってから騎士の任命をするところだが…今回は特別にそれを省略して、我々のみで簡略的に任命式をするが、宜しいか?ラングレー君」

 と、アランが言うと、キースは敬礼をしたまま

「もちろんです。レッドリオン総司令官に任命して頂けて光栄の極みです」

 と、答えた。


「そちらの三名も、キース・ウェスリー・インディゴ・ラングレーの任命式に立ち会ってやってくれ。もちろん、使徒の君たちもね」

 と、アランは、クリストファー、アンナ、ノアの三人と二匹の使徒を見て言った。


 場違いなところへ勢いで付いて来てしまった事を半分後悔していた三人は、アランのその言葉に救われた気分で

「はい!」と、答えた。

 もちろん、ノエルとマエルも同じく可愛らしく敬礼していた。


 そして、別の祭壇のある部屋に移動し、急遽キースの騎士としての任命式が行われた。

 スチュアートリア帝国では、神聖力(Holy Power)を司る神を崇拝しており、その神に感謝する司祭や教会もあったが、それは帝国から独立したものであり、直接帝国に属するものではなかった。

 過去には、Holy(ホーリー) Mage( マギ )の力こそが神の力に準ずるものとして、皇帝崇拝をする者も居たが、今はHoly Mageの存在もHoly Powerも帝国の秘密とされているため、その宗教も微妙なものとなっていた。

 スチュアートリア帝国の皇帝は、自らを神として崇められることを善しとせず、あくまでも神聖力(Holy Power)は神から与えられた自らの魂に宿る力であり、その力も己の魂が汚れれば力を失うことを良く理解していた。

 ゆえに、騎士の任命式は形式的に司祭が列席して行われるものとなっていた。


「今回は、司祭の同席は無いが、皇帝の血筋であらせられるHoly Mageのアラン・クレオ・ハイデルベルト・スチュアートリア・レッドリオン公爵閣下が任命して下さる。よろしいな?」

 と、シオン・ミッシェル・ヴァイオレット・フィールドヴァイオレット・フィールド帝国軍参謀室長官が厳かに言った。


「はい。有難き幸せと存じます」

 と、キースが答え騎士の正装をしたアランの前に進み出て(ひざまず)き、両手を合わせて(こうべ)を垂れた。


 アランは、腰の聖剣を抜き、キースの頭上に(かか)げて言った。

「汝、キース・ウェスリー・インディゴ・ラングレーは、スチュアートリア帝国の騎士として、帝国の為に命を賭して尽くすと神聖力(Holy Power)を司る宇宙の神の前に誓うか?」


「はい。誓います!」

 と、キースが答えると、アランの聖剣が赤く輝きキースを包んだ。

 すると、キースの合わせた両手から青い光が現れてアランの光と交わると、金色の光に変わって消えた。


「宇宙の神に認められたようだ。ここにキース・ウェスリー・インディゴ・ラングレーをスチュアートリア帝国騎士として正式に認める。帝国の為にしっかり働いてくれラングレー卿」


「はい!必ず!!」

 キースは、嬉しそうにアランの顔を見て答え、再び深く頭を垂れた。

 その様子を見ていたクリストファー、アンナ、ノアの三人は、キースが羨ましく思えた。


 キースの任命式が終わると、シオンはオスカーとキースを連れて会議室へと消えた。

 残されたクリストファー、アンナ、ノアの三人は、初めて見た騎士の任命式に感動しつつも、改めて自分たちが置かれた状況を思い出し、アランに叱られるのではないかと思いながら、部屋の隅でシュンとして立ち尽くしていた。


 そんな三人に近づいたアランは、おかしそうに笑いながら言った。

「なんだ?三人とも。いたずらが見つかった子供のような顔をして」


 アランは、若い三人の情けない顔を見て気の毒に思いながら言った。

「君らが来ることをルークは否定しなかっただろ?私が許可したからだ」


 アランの言葉を聞いて三人の顔が明るくなった。

「でも、今ここは砦であり、この国は戦場だ。軍の騎士でもない君らがここに来ても命の保証は無いぞ?帰るなら今だ、今なら、竜を使っブルーフォレスト城に戻れ。そこから、帝国神聖魔術士養成大学へ戻れるように手配する」

 勢いでキースに来た三人に、アランはこの砦に残ることの覚悟を確かめるように言った。


 すると、一番に口を開いたのはノアだった。

 ノアは、この砦に来てから、ほとんど言葉を発することなくずっと考えていた。

 自分が地球から突然飛ばされて来たこの地から逃れてスチュアートリア帝国に行き、再びこの地に戻ることになった今の状況に思いを巡らせていた。

 ノアは、地球で生きていた頃も、ずっと居心地は良くない感じがしていた。

 この星(リゲル・ラナ)に来てからは、パドラルでの生活はもの珍しく、地球で生きていた頃より生きている実感が沸いていたが、『大黒主神教』での暮らしを危ういと感じていた。

 そして、スチュアートリア帝国へ渡り、ついに自分に合った場所を見つけたと思った。

 毎日が新鮮で、人にも恵まれ、人を信じ、学ぶことにも生きることにも前向きになれた。

 そんな自分が、なぜか再びこの地に戻って来てしまった。

 逃げ出したはずのこの地に、自ら戻って来てしまったのだ。


「すみません。レッドリオン総司令官。キースに着いて、ここへ戻って来てしまいました。自ら逃げ出したはずのこの場所へ」

 と、ノアが言うと、アランはノアに近づいて言った。


「言ったじゃないか!君と私は、Key(キー) Person(パーソン)なのかもしれないと。神が我々をここに呼んだのかもしれない」


 ノアは、アランの言葉にハッとして、アランと対面した帝国軍本部でのことを思い出していた。

 初めて面会したあの時、に確かにノアに対してアランは

「ウィリアム皇太子殿下が言っていた通り、君と私が帝国の未来の鍵を握っているKey(キー) Person(パーソン)なのかもしれないな」

 と、言っていた。


 あの時は、ノアも初めて会うレッドリオン総司令官に緊張して聞き流してしまっていた。

 だが、アランが帝国の未来を担うKey(キー) Person(パーソン)であることは納得するが、自分がそうだとはとても思えない。


「でも…僕は、ここに戻って来ても何もできません。お荷物になるだけかと…」

 と、ノアは、我ながら馬鹿なことをしていると反省しながら言った。


「君は、異星から来た者であり、パドリアヌス達が必死でパドラルへ連れ帰ろうとしていた者だというだけで特別な存在だ。きっと、君がここへ来たことにも意味があるのだろう。ただ、やはり彼らに利用される可能性は拭えないから、私が許可するまではこの施設から出ず、常にシオンの指示に従ってくれ」

 と、アランに言われてノアは、なぜか泣きそうになっていた。


 否定されるかと思っていた自分の愚かな行動が肯定された安心感もあったが、アランが変わらずに自分の存在の意義を認めてくれている事が嬉しかったのだ。


 それを聞いていたクリストファーもトゥルリーからノアが異星から来たこともパドラルの黒魔術師の元から逃げて来たことも聞いて知っていたので、アランの言ってる意味がよく分かった。

 ただ、だからと言って自分たちの行動が肯定されるとは思えず、アランからの言葉を待つしかなかった。

 そして、ついにアランの視線がふたりに注がれた。

 ふたりは、レッドリオン総司令官であるアランが、前皇帝の息子であり、レッドリオン公国の公子でどれだれ偉大なHoly Mageか良く知っていたし、心から尊敬していたので、その視線が自分たち注がれたことに冷や汗が出る思いだった。

 ただ、帝国の役に立ちたい一心で衝動的にキースに着いて来てしまったが、自分たちの身の程知らずの行動に心から反省していた。


「す、すみません」

 と、クリストファーは思わずアランに頭を下げて謝ってしまっていた。


「なぜ謝る?君は私に何か悪いことでもしたのかね?」

 アランは、優しくクリストファーに問いかけた。


「はい、呼ばれてもいないのに勝手にラングレー卿に付いて来てしまいました。まだ、学生の身分で僭越(せんえつ)極まり無い行動だと、心から反省しています」


「では、今からスチュアートリア帝国へ戻るかい?」

 と、アランが問いかけると、クリストファーは返答に苦慮して言葉を詰まらせた。


「君たちは、どうしてラングレー卿に着いて来たのかな?」

 アランは、表情を変えることなく静かにふたりに尋ねた。


「はい。Holy Mage騎士が足りないという話を聞いて、私達はまだ学生ですがHoly Mageとして、お役に立てることがあるのではないかと思い、着いて来てしまいました」

 と、クリストファーが言うと、それまで黙っていたアンナも

「はい、私も帝国と閣下のお役に立ちたくて来てしまいました」と、言った。


「そうか、ふたりの気持ちはわかった。君たちは黒魔術の呪いの解呪は出来るか?」

 とアランがふたりに尋ねた。


「はい、実際に呪われた者の解呪経験はありませんが、大学でマリア先生の授業で勉強して、実習で何度かやりました」

 と、アンナが自信を持って答えた。

 その横で、クリストファーも頷いていた。


「そうか、それなら役に立ちそうだ。会議室へ行って作戦会議に加わって貰おう」

 アランは、そう言って会議室へ向った。


「僕もいいのかな?」

 と、言うノアの背を軽く抱いてクリストファーが横を通り過ぎた。

 ノエルとマエルがノアの背を押すようにして主人(マスター)たちの後を追った。



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