「オセロ作戦」第三局 =パドラル北西部族=
「オセロ作戦」二局目の後半戦、ニードン、ホルスポ、ヒボスの攻略は簡単だった。
なぜなら、この三部族はケチャ教を重んじる部族であった上に、これらの部族の中ではメメチャンバ到来の待望論が根付いていたからだ。
それは隣接するジャーアスとケケドラという好戦的な部族の脅威にさらされているという環境も影響してた。
ニードン族にはWhite Mageのワッティス卿が潜入していた。
ワッティス卿は、族長のクク・ルカナンからの信任も厚く、メメチャンバであるアラン達のことを、歓喜を以って歓迎してくれた。
メメチャンバの到来を待望していたこともあるが、ふたりの容姿が伝説のメメチャンバと一分の差異もなかったからだ。
ワッティス卿によると、ジャーアスと領地境界が隣接するニードンと、ケケドラと領地境界が隣接するヒボスにとっては、ジャーアスとケケドラ同士が常に揉めている方が、自分たちに矛先が向かず都合が良いとのことだった。
アランは、ジャーアスとケケドラの様子を探るためにニードン族長のクク・ルカナンの許可を得て、村に滞在させて貰うことにした。
クク・ルカナンは、メメチャンバとして疑わないアランとトゥルリーを歓迎し自分の家での滞在を望んだ。
アランは、有難くニードン族長の歓待を受けもてなしに預かった。
もちろん、伝説通り食事もたらふく食べた。
そして、族長たちの話を聞いているうちに、ジャーアスとケケドラを挟んだアニゾンス、ナナサリンの二部族は平和を望む部族であり、ニードンと同じく海に面しているナナサリンとは交流があることを知った。
しかも、毎年ニードンからナナサリンへ、ナナサリンからニードンへ友好の証として若い娘を嫁がせる儀式があるという。
これが数十年続いているということで、ジャーアスを挟むニードン族とナナサリン族は血縁的繋がりにより、深く結びついている。
万が一、ジャーアスが、どちらかの部族への侵略を試みたとしても、ニードン族とナナサリン族で挟み撃ちにすることが出来環境となっていた。
これが、ジャーアスとケケドラの関係にも影響していると思えた。
「つまり、ジャーアスとケケドラよりも先にナナサリンと隣のアニソスとシストーラを先に訪問した方が良いということか!」
と、アランはトゥルリーに言った。
「そうだな。族長はどう思われますか?」
と、トゥルリーが向かいに座るニードン族長のクク・ルカナン問いかけた。
クク・ルカナン族長は、白髪と長い髭を蓄えた長老という風貌の男だった。
一見高齢に見えるが、短い袖から伸びる腕は筋肉質であり、服の下から伸びる足も細いがしっかりと筋肉がついている。
毎朝、筋力を鍛える運動を欠かさないらしい。
その動きは、筋トレというよりは太極拳のような動きであった。
その高齢マッチョなクク・ルカナン族長は言った。
「ナナサリンの族長は、私の従姉にあたる者の息子です。他にも私の遠縁にあたる親族も嫁いでおります。私の祖母もナナサリンから嫁いで来た者です。ナナサリンとニードンは、兄弟部族と言っても良い仲ですから、すぐにメメチャンバ様の提案を受け入れると思います」
「そうなのか!それは有難い。やはり、まずはナナサリンとアニソスその隣のシストーラを先に訪問した方が良さそうだな」
と、アランは次の戦略を決めた。
いよいよ「オセロ作戦」も三局目に入ろうとしていた。
その頃、敵のBlack Mageパドリアヌス達は、まさか、スチュアートリア帝国側が、ケチャ教の伝説の救世主であるメメチャンバとして、パドラルの穏健派と中庸派の部族を味方に取り込んでいるとは知らず、ゴザガントの地を拠点として着々と『大黒主神教』を使って近隣の部族を取り込んでいた。
しかし、彼らも現地の宗教であるケチャ教は無視できず、正統な方法で信徒にするのは難しく苦戦していた。
ここでも、スチュアートリア帝国の時のように黒魔術を使って洗脳して行くことしか出来なかった。
パドリアヌス達が、まず攻略しようと狙っていた部族は、パドラル中東部の好戦的な部族ばかりだった。
それらの部族はメメチャンバのような救世主を待つというよりは、自らの力で未来を切り開くことが部族の誇りになっていたので、ケチャの神に対する祈願も敵に対する勝利や味方の無事などが中心となっていた。
パドリアヌス達はパドラルを自分たちの国として征服する溜め、各部族を支配下に置くことを目指していた。
その為にパドラルを武力で統一させ、『大黒主神教』で心を支配し、自分たちの自由になる国として占領しようとしていた。
スチュアートリア帝国側の目標もパドラルを統一させ、成熟した独立国家とすることだった。
どちらも、27の部族に細かく分裂したパドラルをひとつにまとめ統一国家にすることが必須条件となる。
やり方は違えども、どちらも統一国家成立が当面の目標であった。
アラン達スチュアートリア帝国側は、国として成立した後の国家運営のノウハウを熟知していたので、単に統一するだけでなく、ひとつの国として繁栄する為には、個々の部族の利害を一致させ、心もひとつにさせる事が重要だと理解していた。
その為の下調べと、現地での調査をしながら着実に味方に付けていた。
対するBlack Mageのパドリアヌスは、パドラル同様に闘いが絶えないアモー・ロンド大陸からこの地に来ているので、力づくで占領し、洗脳することしか考えていなかった。
ゴザガント族に潜入していたスチュアートリア帝国White Mage エイディオス卿は、パドリアヌス達が、ゴザガントへ拠点を移した際に、帝国軍参謀長であるシオン・ミッシェル・ヴァイオレット・フィールドの指示で、シストーラへ避難していた。
パドリアヌス達の『大黒主神教』を使った侵略が進み、彼らの拠点がハバドに移ったところで、エイディオス卿はゴザガントへ戻るべきか、シオン参謀に問い合わせをしている時にアラン達が、ナナサリンとアニソス、シストーラの三部族の族長との会談に来るという連絡を受けた。
エイディオス卿は、諜報部員として派遣される潜入White Mage騎士としてはまだ若く経験も少なかった。
それでも、帝国への忠誠心は強く使命感に燃えていたので、帝国軍総司令官であるアランに会えることは名誉だと思っていた。
まだ、若きエイディオス卿ではあったが、ゴザガントでしっかりと人脈を築き現地の者からの信頼も得ていた。
それは、ミードスの族長から「娘の婿に」との話が出る程だった。
だが、そのミードス族長もその家族もパドリアヌスの黒魔術により洗脳され、ゴザガントは『大黒主神教』に支配されていた。
エイディオス卿は、何も手出しすることの出来ない自分の立場を嘆き泣く泣くシストーラへ避難したが、必ずアラン達がゴザガントを救ってくれると信じていた。
ゴザガントから逃げて来たという若者をシストーラの人達は、優しく受け入れてくれた。
エイディオス卿は、心の中でシストーラの部族の人たちに感謝しつつ、彼らに混じって村の為に働いた。
彼も立派なWhite Mageだったので、人知れず村人の傷を軽くしたり、病の回復への手助けをしたりしていた。
他国へ潜入しているWhite Mageは、その力を異国の者の為に使うことは制限されている
但し、身分がバレない範囲での魔法の使用は任意であり、それについては充分な訓練を受けていた。
それを知らない人々は、彼と居ると物事が良い方向に進むので、この陽気で明るい好青年はすぐに現地の人に受け入れられていた。
彼の持ち前の明るさと陽気な性格はシストーラの民族性にも合っていた。
エイディオス卿が村の生活に慣れた頃、アランからの使いとして使徒のルークがエイディオス卿の元にやって来た。
エイディオス卿は、ゴザガントでの出来事と現在のシストーラについての報告をルークに伝えた。
ルークは、アランの神聖力と同期されているので、その報告を受けるとアランからの適切な指示を残して飛び去って行った。
「やはり、帝国軍の総司令官ともなると使徒も凄いなぁ」
と、エイディオス卿はつぶやいていた。
「まもなく、レッドリオン閣下にお目にかかることが出来るのか、まさか帝国内ではなく、このパドラルの地でお目にかかれるとは思わなかったな」
若きWhite Mage騎士エイディオス卿は、アランに会えることを心待ちにしていた。
そのゴザガントから拠点をハバドへ移したパドリアヌス達は、ニンダラに『大黒主神教』教会を作り、ジラクス攻略へ駒を進めようとしていた。
ついに「オセロ作戦」第三局の幕開けである。
Black Mageパドリアヌス達は、ジラクス、ゾマサソ、ダイザを、アラン達帝国軍はアニゾンス、ナナサリン、シストーラの攻略を図っていた。
もちろん、それぞれ戦略もやり方も異なっていた。
アランのナナサリン部族とアニソス部族との会談はスムーズだった。
ナナサリンの部族長のナーチュラは、ニードン族長クク・ルカナンの親族だったので、ニードン族から同じく親族である者がアラン達に付き添ってくれた。
ここでは、メメチャンバ伝説を演じる必要も無く、パドラル統一とBlack Mage撃退のための帝国軍への協力を得ることに成功した。
また、その隣のアニゾンスはかなり穏やかな気質の部族でナナサリンとも友好関係があり、民族間での交流も盛んであることから、こちらの部族との交渉も難なく終えることができた。
残るはシストーラ部族であったので、ここでアランはシストーラに一時的に避難しているというエイディオス卿へ使徒のルークを使いに出したのである。
エイディオス卿によるとシストーラ部族もケチャ教のメメチャンバ信仰は、村の中でも語り継がれているとのことだったので、今回もアランとトゥルリーふたりで竜に乗って訪問することにした。
エイディオス卿は、シストーラの部族長とはまだ懇意の仲になることは出来ていなかったが、その側近たちとは飲み友達なることはできていた。
その酒の席で、部族長家の前の広場にメメチヤンバが現れるという話をふれ回り、メメチャンバ到来のお膳立てをしておいた。
シストーラは、それぞれの部落の真ん中に大きな広場があり、事ある毎にそこに集まる習慣がある。
部族長の住む部落の広場は、部族長の家の前にあったので、そこに飛来するようにルークを通してアランに伝えておいたのである。
当日、部族長の家の前の広場に、多くの村人が集まっていた。
エイディオス卿が流した、部族長家の前の広場にメメチヤンバが現れるという噂は、村全体に広まっており、それは部族長ジャグスの耳にも入っていた。
誰かが、遠くに見えるネオホルス山の方を指さして言った。
「あっちから何か飛んで来るぞ」
広場に集まった人々が一斉に、北西の空を見上げた。
間もなく、そのふたつの影は、みるみる大きくなり、その陰影がハッキリわかる程になった。
「竜だ!」「ドラゴンだ!」
人々は、空を指さしながら口々に叫んだ。
群衆の中には、エイディオス卿も部族長ジャグスも居た。
その二匹の竜は、広場の真上に来て、降り立つ場所を下が゛巣様に旋回しながら徐々に降下していた。
人々は、竜が降りて来るのを見て、ドーナツの穴を空けるかのように広場の横へ散って行った。
そうして広場の真ん中に空間が出来たのを待っていたかのように、二頭の竜がその場に降り立った。
竜の背には伝説のメメチャンバが乗っている。
ひとりの老人がメメチャンバの伝説の一文をつぶやいた。
それは以下のようなものだった。
火吹くドラゴンに乗り飛来しメメチャンバ
パドラルに救う悪しき者を退き、国をひとつ成す
ひとりは、光る琥珀色の髪に深い海の色の瞳。
他方は、亜麻色の髪に翡翠の瞳。
彼らの力は、人を癒し、人をまとめ、人に幸をもたらす
いずれの者、彼らを疑うことなかれ。
さすれば、豊かさと安寧がこの国に満ちるであろう
「ひとりは、光る琥珀色の髪に深い海の色の瞳。他方は、亜麻色の髪に翡翠の瞳」
これは、アランとトゥルリーそのものだったので、そこに居合わせた誰もが彼らをメメチャンバでは無いと否定する者はいなかった。
もちろん、部族長ジャグスも疑うことはなかった。
そして、この部族での会談も無事に締結された。
今回のWhite Mage騎士、エイディオス卿はシストーラの部族長ジャグスの信頼を得る程の仲にはなかったので、彼の出番は無かった。
しかし、アランは彼の気持ちは充分にわかっていたので、族長との会談後、ルークに竜を預けトゥルリーとふたりでエイディオス卿の家を訪れた。
「すみません。仮住まいなので…こんな汚いところに閣下にお越し頂くことになり恐縮です」
若いエイディオス卿は雲の上の人であるレッドリオン総司令官を前に慌てていた。
それを見たアランは、笑いながら言った。
「そんなにかしこまらなくて良いよ、エイディオス卿。新年早々に作戦を決行している我々に振り回されてしまい、卿にも迷惑をかけてすまない」
「いえ、パドラルの新年はもっと後ですから問題はありません。ただ、元々私は、ゴザガントに派遣されていたものですから…急遽シストーラへ避難するように指示を受けてこちらに来たので、何もお役に立てず…ただ、ただ、申し訳なく思っております」
と、言って何も役に立てなかった自分の不甲斐なさに凹むエイディオス卿がうなだれていた。
そんな彼を不憫に感じながらトゥルリーが言った。
「エイディオス卿、俺を覚えていないか?トゥルリー・アンソニー・イエローバレーだ。君の時も帝国神聖魔術士養成大学で教えていたはずだ」
エイディオス卿は、トゥルリーにそう言われ、まじまじとその顔を見てハッとしたように言った。
「トゥルリー先生?ですか?」
「そうだよ。久しぶりだなぁ。君がWhite Mage騎士になってからの事は知らなかったが、いつの間にパドラルへ派遣されていたんだ?」
トゥルリーは教え子の成長を嬉しく感じながらも、彼の苦労を慮っていた。
「はい、数年前にこのパドラルへ派遣されました。一昨年までは問題も無く現地の人と仲良く暮らせていたのですが、昨年あたりから不穏な状況に変わって来ました。そして、昨年末Black Mageに狙われた族長一家が彼らの手に落ちました。私は手出しをせずに一旦、シストーラへ避難するように軍参謀から命じられてここにおります」
「そうか、それは辛かっただろうな」
トゥルリーは元教え子の前に歩み寄り、うなだれるその両肩に手を置いて言った。
「諜報部員として現地に派遣されている騎士は、現地の紛争に手出しすることは禁止されているからな。とはいえ、親しいも者の苦難を黙って見ているのはさぞ辛かっただろうな。よく耐えたぞ」
トゥルリーのその言葉に若いエイディオス卿は耐えきれず涙を滲ませて答えた。
「はい、先生」
トゥルリーは彼を抱きしめてやりたいと思ったが、今は彼も立派なWhite Mage騎士。その衝動をぐっと堪えて言った。
「君の苦労や悔しい想いは決して無駄にはならない。いや無駄にはしない!」
かつての恩師であり、現上官であるトゥルリー大佐の言葉にエイディオス卿の涙は止まらなかった。
「エイディオス卿、我々の突然の作戦決行で現地のWhite Mage達を振り回してしまっている事は、私も重々承知の上だ。本当に申し訳ない」
と、言ってアランが、エイディオス卿に向かって頭を下げた。
エイディオス卿は、アランのその姿を見ると、慌てて涙をぬぐいながら言った
「レッドリオン閣下!やめて下さい。これは我々帝国軍騎士の任務です。作戦決行はそれぞれのタイミングありますから閣下が頭を下げられることではありません!」
「そうか。そう言って貰えると少し喉のつかえがとれる気がする。ゴザガントの事は気の毒に思うが必ず救出する。その時は卿の力が必要になるので、それまで耐えて待機しておいてくれ」
と、アランが言うとエイディオス卿は大きく「心得ました!」と返答した。
「君のように若いHoly Mage騎士が他国に潜入するのは勇気が必要だったことだろう。それ以上にそれを続けるためには、孤独や不安とも闘わなければならない。こう見えても我々は200歳を超えているが、それでも同じ任務を与えたら迷うかもしれない。本当に君の働きには敬意を表する」
アランはそう言いながら手を差し伸べて言った。
エイディオス卿はアランの言葉に感動しながらその手を握り締めた。
「ありがとうございます。引き続き任務遂行に全力を尽くします」
アランとトゥルリーはエイディオス卿を激励して彼の家を出た。
帝国の最高機密であるHoly Mageを国外に派遣するわけにはいかないので、その代わりに派遣されるWhite Mageの苦労を思うとアランとトゥルリーも感謝しか無かった。
なかでもエイディオス卿のように若い騎士を見るとついつい自分の若き日を重ねてしまう。
今回パドラルへ来て、多くのWhite Mageと直接接触することが出来たのはアランとトゥルリーにとって貴重な経験だった。
彼らパドラルに潜入しているWhite Mage達のためにも一刻も早くパドラル統一「オセロ作戦」を完遂しなければならない。
そんなふたりの元にシオンから、ジャンバラン村の建設中の砦が、ほぼ仕上がったことを知らせる連絡が届いた。
シオンの使徒のビアンカは白猫だったので空を飛ぶことができないので、人間の女性に化身して金鱗竜に乗ってやって来た。
真っ白い服に、長い銀髪をなびかせたビアンカは、竜の背からひらりと地上に降りた。
その身のこなしは、さすが猫というしなやかさだった。
「なんだ、シオンのやつ、自分は竜に乗って飛ぶのは好みで無いとか言いつつ使徒には乗せるんだな」
と、トゥルリーが言うとシオンの使徒のビアンカは
「シオン様は、口でおっしゃるほど騎竜を嫌ってはおりません。なので、私もこうして乗って参りました」
と、無表情に答えた。
トゥルリーは、なるとほどシオンらしいと思ったが、あえて返答はしなかった。
「せっかく、パドラル国内にスチュアートリア帝国の拠点を作ったが、メメチャンバの伝説のおかげであっという間に攻略が進んでしまったが…残るはそう簡単にいかなそうな部族ばかりだ。シオンもジャンバラン村に来ているなら、我々もそちらへ行こう」
ビアンカは、アランの言葉に敬礼して
「かしこまりました、主人にお伝えします。それでは、私はこれで」
と、言ってひらりと竜に乗って飛び去って行った。
その後姿を見送りながら空を見上げてアランが言った。
「メメチャンバ伝説のおかげで思った以上にスムーズに交渉が成立してしまったから、シオンも驚いているだろうなぁ」
「ああ、砦建設が無駄になりそうでシオンも焦ったのかもしれないな」
と、アランとトゥルリーはシオンの冷静を装った焦るシオンを思い浮かべながら、顔を見合わせて笑った。
「だが、ここまでスムーズに進んだのも、各部族に潜入しているWhite Mage騎士の皆と、その情報をまとめてくれたシオンたち参謀室のおかげだ。感謝せねばな」
と、アランが言うとトゥルリーも「確かに」と頷いた。
「マリアは、ブドレール攻略の為にギョンサザのリ・リシェリー卿の元に残っているが、大丈夫だろうか?一旦、ジャンバランへ呼び戻すか?」
と、トゥルリーがアランに言うとアランは
「いや、マリアの好きにさせてやろう」
と、言った。
「と、言うと何か思惑が?」
「マリア曰く、リ・リシェリー卿には何か背負っているものがあるのでは?とのことだった。マリアなりに彼女の力になれることがあれば…という気持ちらしいのだ」
「アランは、それを上官として許可したわけだな?」
「そうだ。俺も気になるからな」
「ブドレールにもWhite Mage騎士が潜入していたよな?」
「ああ、確かマティウス・スリーロンド卿と言ったはずだ」
「どこかで聞いた記憶があるが…スリーロンド子爵の家系の者だろうか?」
「そこも、シオンに確認だな」
と、アランとトゥルリーが話しているところへ、竜に乗ったルークがもう一頭の竜を連れて、ふたりを迎えに来た。
ルークは、鷹の姿に戻ると竜の背に乗ったアランの肩に止まった。
「ルークご苦労、いつも気が利くな」
竜の背にアランの愛用の騎乗用の手袋が一組置いてあるのを見てアランが言った。
「アラン様がお忘れになっていたので持って参りました」
ルークは、アランに褒められて嬉しそうだった。
アランは、ルークが用意してくれた手袋に手を通して手綱を手に取って言った。
「さて、久しぶりにジャンバラン村へ行くとするか!」
そして、肩に止まっているルークに向かって
「ルーク。悪いが、ルフ・ロイスベリー城のベイリー伯爵の元に行って、しばらく俺たちはジャンバラン村の砦へ行くと伝えてくれ。マリアだけはギョンサザに残っているので、引き続きそちらも拠点として使わせて欲しいと伝えてくれ」
と、言うとルークは、すぐに飛び立と東の空へと飛び立って行った。
ルークは、アランという最強のHoly Mageの神聖力と同期しているので疲れることを知らない使徒だった。
彼もまた信頼できるアランの強い味方だった。




