「オセロ作戦、第一局目」 in パドラル
ここで、改めてリゲル・ラナについておさらいをしておこう。
地球の誕生は約46億年前と言われているが、リゲル・ラナ星の星としての年齢は地球に比べるとずっと若い星でなのある。
一説には、地球の文明は、5回の文明期と絶滅期を経験しており、現在の第6文明期も大量絶滅危機にあるという説がある。
これが事実であるか否かは別として、リゲル・ラナは確実に第一文明期という初期の段階にある。
リゲル・ラナの星の直径は地球の二倍で、転周期も地球より長く450日。
星の軌道上に、二個の衛星(月)を持っている。
このふたつの月の名前をカイとルナと言い、リゲル・ラナ星人達は、双子星と呼んでいる。
地上には、スチュア・トロア大陸と、アモー・ロンド大陸のふたつの大きな大陸が存在し、他に大小様々な島が存在している。
その最大の大陸であるスチュア・トロア大陸のほぼ七割以上を領土とするのが、スチュアートリア帝国である。
帝国成立から4000年、現在のスチュアートリア帝国の皇帝は、第6代アレクサンドル皇帝である。
スチュアートリア帝国の皇帝は、神聖力という魔法を超える力を有しているHoly Mageであり、彼らの寿命は長く、1000年を超える者もいる。
そんな強大な皇帝の一族であるアラン・クレオ・ハイデルベルト・スチュアートリア・レッドリオン公爵は、今、アモー・ロンド大陸からスチュア・トロア大陸への進出・侵略を企てているBlack Mageパドリアヌスの魔の手から隣国パドラルを守る為に隠密裏にパドラルに来ていた。
帝国軍陸海軍総司令官でもあるレッドリオン公爵だが、今回、彼の幼馴染であり腹心の部下でもあるトゥルリー・アンソニー・イエローバレー大佐と、マリア・エバー・グリーンフィールド少佐と共にたった三名でパドラルに乗り込んでいる。
パドラルは、成熟した国という形態を持つ国では無く、常に勢力争い、領土争いを繰り広げている27部族が集まった地域なのである。
戦国時代のようなパドラルを『大黒主神教』という宗教を名乗り、黒魔術を使って現地の人々や部族長を洗脳しようと企んでいるのがパドリアヌスというBlack Mageなのである。
パドリアヌスは当初、スチュアートリア帝国内に『大黒主神教』を使って国民の洗脳を試みていたが、レッドリオン公爵ことアラン達帝国軍の活躍により阻止、一掃されてしまった。
よって、追い詰められたパドリアヌスは標的を帝国からパドラル征服に変更した。
国境を接するパドラルがBlack Mageに制服されることは、未来のスチュアートリア帝国の危機になることは間違いない。
但し、一国家として統一されていないパドラルを守るには、個々の部族に働きかけるしかなかった。
そこで、皇帝の一族でもあり帝国軍の総司令官でもあるアラン自らが働きかけることとなった。
但し、スチュアートリア帝国として動くことで、他の隣国が帝国の侵略遠征と誤解を抱かせる可能性があるので、アラン個人で隠密に動くこととなった。
この戦国時代のパドラルを統一国家としてまとめ、スチュアートリア帝国の友好自治国にするのが理想である。
これは、いくら当代一のHoly Mageと呼ばれているアランにとっても容易なことではない。
Holy Mageとその神聖力は、皇帝一族と帝国の最高機密事項でありHoly Mageの戦いは、密かに、できるだけ短期間で行わなければならない。
ただ、今回の場合は、パドラル内に存在する27部族、いわば27の小さな国を相手にすることになるので、長期戦は避けられなかった。
そんな困難な闘いを可能な限り短期間で終わらせる為に練られた作戦が「オセロ作戦」である。
まずは、好戦的な気の荒い部族をBlack Mageに敢えて占領させ、比較的平和な白い部族を取り込んでいき、最後に一気に帝国側にひっくり返す作戦である。
部族の特徴や立地条件を調べ上げてこの「オセロ作戦」を立てたのは、帝国の頭脳であるシオン・ミッシェル・ヴァイオレット・フィールド参謀長である。
彼もまたアランの学友であり忠実な部下であった。
パドラル国内における帝国側の頼りは、パドラル各地に派遣しているWhite Mage騎士たちである。
彼らは、現地の住人として地域に馴染み情報を収集している。
時には帝国からの指示を受け、White Mageとして白魔術を使い作戦を遂行することもある。
彼らはHoly Mageの「使徒」の代わりに「使い魔」を使い連絡を取り合っている。
使徒は、主人の神聖力と同期されているので、主人の力に応じて同様の力を使うことが可能であるが、使い魔は、独立した存在なので神聖力は使えないが、魔法を使うことができる。
今、使いに出ていたWhite Mageグライデン卿の使い魔が、彼の元に戻って来た。
グライデン卿の使い魔は、リゲル・ラナ特有の魔鳥プラッタだった。
この魔長は、大型の黒い鳥であるが、野生の鳥でも魔力を持っているので魔法を使う時は、青白い炎を発する。
「使い魔」として調教されているプラッタ鳥は、姿を消して移動可能なので密かに連絡を取り合うには適していた。
グライデン卿の使い魔の魔鳥プラッタの名前は、「ハリソン」と言った。
ハリソンは、グライデン卿の使いとして、ジャンバラン村の隣の村のアチト、ディカロン、クスシポ村に居る帝国側の偵察員から報告を持って来てた。
グライデン卿は、二年をかけてこの地域の情報提供をしてくれる現地の諜報員を作っていた。
これもWhite Mage達の優れた能力のひとつである。
文明が発達していないからこそ、正確な情報とその伝達の早さは武器となる。
パドラル南部地図
「レッドリオン公爵。アチト、ディカロン、クスシポ村の部族長は、ジャンバラン村の部族長が黒魔術の洗脳から解かれたことを知って、かなり安心しているようです。パドリアヌスは、この地域の部族は平和主義なので武力よりも『大黒主神教』を使って信者としての洗脳を勧めるように部下に指示していましたが、それは私達で阻止しましたので、この三部族は無傷です」
と、グライデン卿は、現地の諜報員たちが集めた情報をアランに伝えた。
「そうか、感謝するグライデン卿よく頑張ってくれた。その報告はシオンからも受けていたがこれでオセロ作戦も進めやすくなる。その部族長たちに、協力を願うために我々の作戦の説明に回りたいと思うが、段取りを付けて貰えるか?」
アランの感謝の言葉を受け、報われた気持ちでグライデン卿は言った。
「もちろんです。既に段取りはできております。まずは隣のアチト村からご案内いたしましょう」
アランは、帝国軍総司令官という肩書を伏せ、敢えて、前スチュアートリア帝国皇帝ラファエルの息子であり、現帝国内政執務大臣という肩書を名乗った。
これは、アランが帝国の後押し受けて交渉に来ていることを部族長達に理解して貰う狙いがあった。
アチトの部族長はまだ若かった。
「あの大国であるスチュアートリア帝国の皇族、噂のGrate Mageが、自ら出向いて下さるとは思ってもみませんでした」
若いアチトの部族長は、アランの手を握り感謝を述べた。
Holy MageとHoly Powerについては、帝国内の最高機密なので、Black MageとWhite Mageを凌駕する力を持つGrate Mageとして知られているのだ。
アチト族の領土は、ジャンバランより広くエードリア海に近く温暖で土地も肥えている。
作物の実りも悪く無く、スチュアトリア海にも近い。
本来なら、海の物流の拠点ともなる地域なのだが、エードリア海は安全な海では無いのだ。
「これで、安心して陸路でスチュアートリア帝国へ運ぶことができます。村も今より潤うようになるでしょう」
と、アチト部族長が言うと、アランは不思議に思って言った。
「アチトはエードリア海に面していますし、スチュアトリア海にも近いので航路での運搬は考えていないのですか?」
するとアチトの部族長は表情を曇らせて言った。
「実は、、エードリア海には海賊が出るので、船での運搬にはリスクが伴うのです」
「海賊ですか!」
アランはBlack Mageを乗せた合図の旗を見ると海賊はその船を襲わないとノアから聞いたことを思い出していた。
スチュアトリア海は、帝国海軍の船が監視しているが、エードリア海は帝国の管理外になるのである。
「なるほど、海賊問題もパドラルが統一国家となり、帝国との友好条約が締結された暁には、エードリア海の監視も帝国が担いましょう。私の母の母国であるエド・ロアとも連携も可能だと思いますので」
アランの母であるマリエッタ大公后も、叔母のアリーチェ皇帝妃もエド・ロア国出身である。またブロッサン国も帝国の友好国なので、エードリア海の北部は海賊の動きも活発ではない。
その分、狭間のマニ・トバールとパドラルの領海に海賊が頻出することとなっているのが現状だった。
アチトの部族長はアランの言葉を聞いて顔を輝かせて言った。
「ほんとうですか!それは有難い!ディカヤクス山のおかげで、アチトは他の部族からの侵略は受けにくいのですが、海からの侵略だけが脅威でした。交易もスムーズにできるようになれば、村も潤うでしょう」
平和を願うアチト部族長は、代々、今のパドラルの争いが絶えない状況を憂いており、物流が滞り、経済的に不安定な状況を変えたいと思っていた。
何よりも、豊かで、平和なスチュアートリア帝国を羨ましく思っていた。
その帝国の前皇帝の息子であるアランが言った。
「では、我がスチュアート帝国がパドラルを統一し、その後友好国になることを受け入れて貰えますか?」
アチト族側には、パドラル救済に本気で乗り出してくれる帝国の協力と援助の申し出を、拒否する理由は無かった。
「もちろんです。帝国がパドラルを統一してくれるなら感謝しかありません。私個人の意見でしたら、そのままパドラルがスチュアートリア帝国の属国となっても、帝国に吸収されても良いと思っています」
と、アチトの若い部族長が言った。
その言葉を聞いて、周りに居た長老たちが焦りを見せたのをアランは見逃さなかった。
「いえいえ、スチュアートリア帝国は隣国を侵略するような行為は致しません。今回はあくまでもBlack Mageの侵略から帝国を守る一貫としてパドラル侵略を企てているBlack Mageへの対抗措置です。帝国としては、隣国が平和で安全な安定した国家となることを支援させて頂くというスタンスですのでご了承ください」
アランの言葉にアチト部族の長老たちも安堵した様子だった。
何よりもアチトの若い部族長はアランの人柄に魅了された様子だった。
続いて、アチト族の隣のディカロン族である。
ディカロン族の領地は、山と森に囲まれたのどかな場所だった。
部族長は、中年の双子の兄弟だった。
彼らは、老いた父親の跡をついで、ふたりで部族長となったばかりだった。
本来は、兄が部族長、弟がその補佐になるところであったが、二人は仲が良く常にふたり一緒だったので、どちらかがではなく、ふたりで族長になることを選んだ。
ただ、彼らはまだ後継ぎとして部族を率いることに自信がなく、老いた父親に頼ることも多かった。
今回も、双子の部族長達は自分たちだけで判断することに不安が有り、老いた元族長も同席していた。
アランが、ディカロンの双子の部族長と、その父、そして長老たちが集まった部屋に通されると、双子の族長たちはアランの若さに驚いていた。
「お若い!」
挨拶をする前に思わず双子のひとりが叫んでしまっていた。
すると、前族長が弱々しい声で言った。
「ようこそ、はるばるディカロン族の村へお越しくださいました。わしが元族長ですじゃ。こちらが跡を継いだばかりの新しい族長たちです。ほれお前ら挨拶しろ」
「すみません。我々が新しく族長になりました。ディンです」
「カロルです。スチュアートリア帝国のGrate Mage使者様」
と、椅子に座ったまま挨拶をした。
ディカロン族は山と森に囲まれた地域なので、情報が伝わるのが遅い。
また、正確な情報が伝わりにくい地域でもあった。
なので、アランがスチュアートリア帝国の元皇帝の息子で、現帝国軍総司令官であることも、レッドリオン公国の公子であることも理解していなかった。
ただ、Grate MageがBlack MageとWhite Mageが凌ぐ強力な魔法使いであるという認識だけを持っていた。
前もってグライデン卿が、スチュアートリア帝国からGrate MageがBlack Mageからの侵略から村を守るために来ることを伝えていたので、アランを単なる帝国からの使者としか思っていなかった。
ただGrate Mageは長生きであり、今回来る者が200歳を超えているということを確認していたので、アランの姿を見て思わず「若い」という心の声が漏れてしまったのである。
アランは、そんなことは気にせず、アチト部族長と話したと同じことをディカロン族たちに話した。
双子は、きょとんとしていたが、父おやである前族長は喜んで言った。
「わしも、先は長くはないと思っておりますので、パドラルが統一され平和で安心に国になるなら安心して死ねます」
そう、言う前族長の姿を見てアランが言った。
「あの、前族長様?息を吸ったり咳き込んだりすると胸が痛むとか、粘り気のある痰が頻繁に出たりしてませんか?」
ディカロンの前族長はアランの言葉に驚きながらも、身を乗り出して頷いた。
「確かに、咳と痰に難儀しおります」
「ちょっと失礼」
と、言ってアランはその手をとって爪の色を確かめた。
前族長の顔色は悪く、唇や爪が紫色っぽく見えた。
アランは、心の中で思った「肺炎だな」と。
そして、アランは手にとった前族長の手をとり胸に当てさせると
「ご自身の胸の音が、ゼイゼイしているがお分かりになりますか?」
と、言いながらその手の上に自分の片手を当てた。
前部族長は、アランの言葉に頷いた。
アランは、その手を当てたまま
「これでは。夜寝るのもツラいですし、お疲れもとれませんね。軽く目を閉じて頂けますか?」
と、言ってアランも目を閉じた。
すると、その手からアランの赤いオーブが広がり全族長の手を伝って胸の中に入っていった。
そのまま赤い光が胸のあたりで輝いていたが、まもなく黒い霧のようなものが前族長の口の中から出て来て、赤い光に吸い込まれて消えた。
「どうでしょう?胸のセイゼイという音が消えたでしょう」
当てていた手を離したアランが優しくそういうと前族長も目を見開いて言った。
「はい!音が消えましたし、なんだか体のだるさが消えました」
その顔色と唇には赤みがさして何歳か若返ったようにすら見えた。
周囲に居た長老たちも驚いて目を見開き、双子の頼りない族長たちも歓喜の様子で父親に駆け寄った。
「おやじ~!!」
ふたりは、父親に抱き着いていた。
前族長はアランに言った。
「わしも、もう老い先短いかと思って、息子たちに族長の座を譲りましたが、まだまだ頼りなくて不安でした。これで、もう数年、こいつらが一人前の族長になるのを見守れます」
アランも元皇帝の息子、公国の公子として、長の座を受け継ぐ責任の重さは身に染みていた。
「良かったです。おふたりとも立派な部族長となってお父様を安心させて下さいね。今後共、私もスチュアートリア帝国皇帝の甥として、内政執務大臣としてご助力させて頂きます」
双子の頼りなきディカロン族長たちも改めてアランの偉大さを実感したようだった。
そして、頼りになる人物とお近づきになれたことを心から喜んでいた。
アランは内心、パドリアヌスがこの部族から攻略することを考えずに良かったと思っていた。
おそらくパドリアヌスもこの部族の内情を知らずにいたのだろう。
残る山と森の奥地にあるクスシポ族からも難なく協力を取り付けることができた。
こうして、優秀なWhite Mageのグライデン卿の事前の働きにより、アランは恙無くこの三部族を回ることができた。
どの部族長もジャンバラン村の噂からBlack Mageと『大黒主神教』の脅威を感じていたので、スチュアートリア帝国からの使者として来たアラン・クレオ・ハイデルベルト・スチュアートリア・レッドリオン公爵の訪問を快く受け入れた。
これにより、アチト、ディカロン、クスシポの三部族はスチュアートリア帝国側についた。
一方、ジャンバラン村の『大黒主神教』教会へ向ったトゥルリーとマリアは、乗って来た金鱗竜を森に待機させて、『大黒主神教』教会へ向うと、信者のふりをして潜入しているグライデン卿の息のかかった村人の男が手引きをしてくれた。
「イエローバレー大佐、グリーンフィールド少佐ですね。グライデン卿から承っております」
教会に残っているパドリアヌスの配下の者に気取られないように密かにやりとりが行われた。
「それで、教会内の様子はどうだ?」
トゥルリーは、素早くことを終えアランの元に戻ろうと思っていた。
「はい、黒魔術師はひとりもいませんが、黒魔術で洗脳された信者が20数名と、『大黒主神教』を広げるように言われ残った手下が三名ほど残っています」
男の報告を受け、トゥルリーとマリアは突入するための作戦を練った。
同時に捕縛したBlack Mageの手下たちを連行する騎士派遣要請のため、トゥルリーの使徒ビショップをセントキャロル港で待機しているルイスガードナー基地所属の帝国軍船へ送った。
ちょうど昼食ということだったので、全員が食堂に会したところでトゥルリーとマリアで、催眠魔法を使いBlack Mageの手下たちは捕縛した。
続いて、黒魔術で洗脳されていた信者たちの解呪を行った。
全ての作戦を無事終えた頃に、ルイスガードナー基地からの騎士達に手下たちを引き渡した。
「これで任務完了だな。解呪を施した信者たちは、しばらくはまだ混乱していると思うので後のことは頼む」
「何かあったら、グライデン卿の指示を仰いでね」
と、言ってトゥルリーとマリアはアランと合流しようとした。
そこにアランの元へ飛ばしていたマリアの使徒インコのメロディが戻って来た。
「アランが隣の三部族との交渉をまとめ終えて、グライデン卿と共にこちらへ戻って来るらしいわ。しばらくは、この教会を我々の拠点に使うことになりそうね」
「そうか、これで『オセロ作戦』第一局目は成功ってことだな」
と、トェルリーが満足そうに言った。
「それにしても、まさかノアが居たところに来ることになるとはなぁ。彼に無事にジャンバラン村が解放されたと伝えて安心させてやりたいな」
しばらくして、アランがグライデン卿と共にこの元ジャンバラン村の『大黒主神教』教会にやって来てた。
アランは、トゥルリーとマリアの活躍を労ってから言った。
「しばらくは、パドラルの帝国軍基地にすることになりそうだから、軍の建設部隊をここ派遣して建て替えさせよう。我々が撤退後に現地の人に役立つ施設になるようセンスのある建物にしてもらわないとだな」
アランはグライデン卿を見て続けて言った。
「グライデン卿にその管理を頼むことになると思うから、卿のも意見も取り入れて貰ってくれ」
グライデン卿は「お任せ下さい」と、胸に手を当てて頭を下げた。
こうして、アラン、トゥルリー、マリアの三人は、『オセロ作戦』第一局目を終え、一旦ルイスガードナー基地へ戻った。
アラン達三人がルイスガードナー基地へ戻って数日後、帝国神聖魔術士養成大学のミラ・ローズ寮の元に居たノアは、トゥルリー先生からの手紙を受けてっていた。
アランの使徒鷲のルークがトゥルリー先生からの手紙を持って来たのだった。
ルークは、人間の姿にも化身できる使徒である。
ノアは、トゥルリー先生からの手紙を読んで感動していた。
「レッドリオン公爵は、やはり凄いなぁ。ジャンバラン村だけでなく、近隣アチト族、ディカロン族、クスシポ族とまで友好の約束を取り付けたなんて、これで村の人や市場のみんなも安心して暮らせるな」
と、ノアはそう思ってネオにもこの知らせを届けてやりたいと思った。
そいて、ルークに言った。
「あの、公爵様の使徒さん。手紙を書くので待ってて頂けますか?公爵様と先生方への二通と、もう一通帝都のレイマーシャロル地区の僕の友人に届けて欲しいんですが…」
と、ノアはちょっと頼みすぎかなと恐縮しながら言った。
ルークは、全く問題ないというように
「かしこまりました。お待ちいたしますのでご遠慮なく」
と、言うと元の鷲の姿に戻り窓辺に止まった。
ノアは、実質の勉強机に向かって三通の手紙を書いた。
一通は、トゥルリー先生とマリア先生へ。
もう一通は、アランことレッドリオン公爵へ。
最後の一通は、宿アフィニティにいるネオへ、だった。
ノアは、手紙を書き終えると使徒のルークに声をかけた。
「お待たせしました。書き終えましたので宜しくお願い致します」
ルークは、人間の騎士の姿になると三通の手紙を受け取って、それぞれの宛名を確認して懐に手紙を入れて言った。
「お預かりいたします。他に主人に何かご伝言がございましたら承ります」
ノアは、伝えたいことはアランへの手紙に書いたので特に無いなと思ったが、文字では無く言葉で伝えたいことがあったと思い直して言った。
「公爵様に手紙にも書きましたが、心からの感謝をお伝えください。僕とってあの村の人達は恩人なのですが、僕には何もできず逃げ出すことしかできませんでした。公爵様たちが立ち上がってくれてパドラルの人たちも僕とネオも救われました。僕は無力ですが、もし異星人の僕に出来ることがあれば、いつでも呼んで欲しいとお伝えください」
「かしこまりました。必ずお伝えいたします」
ルークは胸に片手を当て、騎士としての礼をして言った。
そして再び鷲の姿に戻って夕暮れの空へと飛び立って行った。
西の空には沈みかけた大きな夕陽が、下からネイビーブルーに染められて行く東の空には、煌めく星々が輝いていた。
◆ ◆ ◆ ◆
用 語 整 理
◆ ◆ ◆ ◆
リゲル・ラナ星は、魔法が生きている星である。
魔法とは、異なる神聖力(Holy Power)が存在する。
【神聖力】
神聖力は、宇宙全ても司る力で宇宙全体に存在する。
【Holy Mage】
神聖力を活用できる者をHoly Mageと呼ぶ。
神聖力は、その者の魂に宿る者で、能力差がある。
【White Mage】
白魔術を使う者を白魔術師と呼び、その力を極めた者をWhite Mageと呼ぶ。
白魔術は、魔法の中でもライトエナジーを活用するものメインである。
特に人を治癒したり、自己治癒力を高めたり、癒したりする力がある。
【Black Mage】
黒魔術を使える黒魔術師と呼び、その力を極めた者をBlack Mageと呼ぶ。
黒魔術は、魔法の中でもダークエナジーを活用するものメインで、攻撃性が高く、呪術と呼ばれる呪いを用いて人を殺めたり、魔物を強化させることが出来る。
【魔導士】
魔法を使える者の総称で、この中に白魔術師も黒魔術師も含まれる。
【Grate Mage】
神聖力を使いこなせるHoly Mageは、それほど数は多くなく、スチュアートリア帝国内にしかいない。
それゆえにHoly Mageの存在は、一般人には知らせておられず、優れた魔法使いという認識でGrate Mageと呼ばれている。
つまり、Grate Mage =Holy Mage として使われている。




