「ノアとネオの決意」と「オセロ作戦開始」
ノアとネオは、マルシェへショッピングに向かう帝国神聖大の三人娘の後姿を見送っていた。
せっかく来たから、俺も仕事を手伝うよ」
と、ふたりで宿泊客たちの部屋を清掃し、昼食をとり、夕方からの夜食の準備まで部屋で休憩していた。
リゲル・ラナは、直径が地球の二倍ほどの大きさがあるので、一日が長い。
だから、この星の人たちは昼食後、午後の仕事前まで昼寝をする習慣がある。
ふたりも自分たちに与えられた(元ノアの部屋であり現ネオの)部屋に戻り、それぞれのベッドの端に座りながら、向かい合って話していた。
「俺もノアが言っていた意味がわかったよ。この世界の学校は、地球とは比べ物にならないほど楽しそうだ」
「うん。比べ物にならないというか、比べてはいけない気がする。この星と地球では根底からして違うからね」
と、ノアが言うと
「そうだな。ここの星の人と地球人は、見た目はそっくりだが、人間性が全く違う。ティム親父も他の宿の従業員の人も、みんな親切で優しいから働くのも楽しいよ」
と、ネオがしみじみ言った。
「地球でのバイトなんて一週間も続ものは無かったのにな。今ではそれすら不思議なくらいだよ」
ネオは、地球での高校は、入学してすぐにやめてしまっていた。
その後はバイトを転々としていたが、すべて3日から一週間以内で辞めていた。
ほとんどの場合、雇い主かバイト仲間や先輩と折が合わないという人的要因が理由だった。
仕事が覚えられないとか出来ないという理由ではなかった。
「うん。地球と比べると不便なことが多いけれど、ここの方が生きやすい」
「俺もだ。地球には帰りたくない」
ふたりは、お互いに全く同じ気持ちでいるのだなと思っていた。
そして、ノアはさっきアイラが言っていた言葉をネオに伝えてみた。
「彼女たちがさっき、友情は付き合った年数じゃなく密度と魂の共鳴度合だと言っていたんだ。前星までの記憶や関係性がお互いの魂に刻まれていたりするのかもしれないって。僕もその考えに賛成だなと思ったんだ」
ネオはノアのその言葉を聞きながら、静かに頷きながら考えていた。
ネオは、大学で魂や前星について教わったノアほど知識はなかったが、なんとなく近い思いはあった。
「前星って地球のこととは違うよね?」
「ああ、僕は大学で教わったことによると、人間は魂と肉体がシレバ―レイヤで繋がれており、死ぬと肉体だけが滅びるらしい。そして、魂だけがそのレベルに応じて、別の星で新たに生まれるのだそうだよ。人の魂は、生きている間の行いで魂が磨かれることにより神聖力が備わって来るらしい。そうやって、人は星を巡るんだそうだよ」
と、ノアはネオに「魂の星巡り」について説明した。
「地球で生きていたら、そんな話は、なかなか信じられなかったかもしれないが、今なら理解できる」
と、ネオが言うとノアも
「僕も地球で生きていたら、そんな荒唐無稽な話だと一蹴していたと思う」
と、元地球人だからこそ、わかり合える気持ちを共有していた。
「でもさ、魂が磨かれるって意味はわかる気がするな。俺、変わったろ?」
ネオは、以前よりもずっと凛々しく精悍になった笑顔をノアに向けた。
「うん、見た目はあんまり変わってないけど、ネオ君チャラ男じゃなくなってる」
と、ノアが言うと、ネオはふくれっ面をしながら言った。
「なんだよ、チャラ男って。でも、確かに地球に居た頃はそんな感じだったかもな。そういうノアも弱々しいヒョロ男じゃなくなって逞しくなったぞ?」
と、笑った。
ふたりは、お互いに自分たちの成長を感じていた。
「俺たち、地球の前の星からの縁があったのかな?」
と、ネオはノアに不思議な縁を感じてた。
ノアもネオの言葉に頷きながら言った。
「でも、なぜリゲル・ラナへ転移させられたんだろう?星の等級はこっちの方がかなり高そうなのに」
ノアもネオとの不思議な縁を感じると共に、自分たちの運命にも不思議なものを感じていた。
「飛び級したな?」
「そうだねぇ。ここでもっと魂を磨いてもっと飛び級しちゃう?」
と、ノアはおどけてみせた。
ノアとネオは改めて自分たちの間にある運命的な絆を感じていた。
それは友情という言葉で表すほど曖昧なものではない。
自分たちの意思では切っても切れない縁としか言いようのない、強い絆では無いかと思っていた。
そしてノアは、ネオに言った。
「ネオくん、僕らはどんなに離れていても、どんな状況になっても、きっと僕たちのこの縁は切れない気がする」
「ああ、俺もそう思う。俺はノアに会うことだけを考えてここ帝都に来た。でも、会えたからって何が変わるわけでも、何をしたかったわけでも無かった。それでも、ノアに会えば何かが変わる。俺の抱えているモヤモヤした気持ちが変わるって思っていた。そして、それは間違ってなかったよ」
ネオは、強い眼差しでノアを見た。
なんだか、その眼差しがあまりにも熱くて、ノアは思わず照れてしまっていた。
まさか俺のツインレイってネオじゃないよな?などと不可解な想いが頭に浮かんで思わず身震いした。
そして、ベッドから起き上がりその変な考えを断ち切ろうと窓を開けてみた。
昼間とはいえ、冬の風は冷たかったがノアには心地よかった。
深呼吸してから、ネオの方を振り返り恐る恐る尋ねた。
「そ、それで、何がわかったの?」
ネオは、ベッドに座ったまま外からの風に髪をなびかせて言った。
「ノアは、俺の一歩先を歩いている道標のような存在かも?って。いつも方向を見失う俺だけど、ノアに着いて行けば間違いない。でも、それはノアの真似をするってことではなく、気持ちの問題だけどね」
ノアは、ネオの言葉にホッとするどころか、別の焦る気持ちに包まれて言った。
そして、ネオの信頼と期待が、ずっしりと自分にのしかかって来るよう思えた。
「僕、そんなたいした人間じゃないよ?そんなに僕に期待しないでよ」
「そんなことはないさ。闇バイトの時だって、パドラルの時だってノアはちゃんと正しい選択をして自分の考えで行動していただろ?俺はただ環境に流されて、そのとき思いつく感情のまま行動することしか出来なかった。だから、ノアはいつも正しかった。少なくとも俺はそう思っている」
そんなネオの自分への絶対的信頼を嬉しく思ったが、その信頼に応える自信がノアには無かった。
ノアは、窓を閉めて再びネオの前のベッドに座って言った。
「ネオくんの気持ちは嬉しいけれど、俺はそんなに良い人間じゃないよ。だって、あんなに世話になったジャンバラン村の人たちより、今はこの帝都の人たちの方が大切に思えている。地球に残した人たちのことすら、すっかり過去の人のように思っている冷血な人間なんだ。そんな自分が情けないし、嫌いだよ」
ノアの心からの本音を聞いたネオは言った。
「お前の気持ちはわかるよ。俺も地球に残した親族のこともすっかり過去のものに思っている。世話になったパドラルの人のことは心配だが、今は自分が前に進むことの方が大切に思えている」
と、言うネオの言葉を聞いてノアは意外に思っていた。
なぜなら、ネオはジャンバラン村の人たちのことが心配で、居ても立ってもいられないのではないかと、ノアは思っていたからだ。
ネオはベッドにゴロンと横になり組んだ手を頭の下に入れ、そのまま天井を見上げて言った。
「なぁ、ノア。俺たちって何か意味があって、この星に召喚されたんじゃないのかな?」
ノアもネオと同じようなことを、何度か考えたことがある。
「ネオ君もそう思うの?僕も時々そう思うことがある」
「でも、俺はノアのオマケのようにも思っているんだ」
そんなネオの言葉にノアは
「そんなことは無いよ!」
と、言いながらネオの顔を覗き込んだ。
ネオはノアの顔を見ずに目を閉じたまま言った。
「いや、そうなんだよ、きっと。でも、オマケはオマケの役目があるだろ?地球にはオマケが欲しくて、本体を捨てる罰当たりな人間だっているくらいだ」
と、愉快そうに言って目を開いた。
そして、再び上半身を起き上がらせて言った。
「きっと、俺にはノアを助ける、もしくはサポートする役目があるんじゃないかと思ってるんだ。だから、今はお前のやることを見守っている。オマケはオマケなりに、本体以上の存在感を示せるかもしれないじゃん?」
ノアは、ネオが先走ってひとりで暴走することを懸念していた自分が恥ずかしかった。
今のネオは、もはやノアが知っていたチャラく本能のまま生きていた昔のネオではないのだ。
彼は彼なりに魂を磨き成長している。
ノアは自分も負けないようにしなければと、思っていた。
「僕たちが、レッドリオン公爵をはじめとするこの星の要人と近づけたのも、きっと意味があるんだろうね。レッドリオン公爵様は元皇帝の息子で帝国軍総司令官だし、さっき会った女の子のひとりはブルーフォレスト辺境伯の孫娘だし、その祖父は僕たちの大学の先生だ」
「そうなのか!俺はBlack Mage側の人間しか知らないぞ?」
と、ネオは笑いながら言った。
「ネオくんも帝国神聖魔術士養成大学に入学すれば、そうした人たちと知り合いになると思うよ。あの大学は、未来の帝国軍騎士を育てる魔術士養成大学だからね」
「単に魔法を勉強するだけの学校じゃないんだな」
「うん。この帝国の歴史も学べるし、ネオ君にも色々なことを学んで欲しいな。それに僕は、今鋼竜という竜の子供を育てるんだ。あと、金鱗竜の騎竜パイロット訓練も受けている」
「竜か!」
ネオは目を輝かせた。
地球での竜は、ゲームやアニメ、小説の中にしか登場しない架空の動物である。
「ネオ君、竜は見たことある?」
「いや、無い。」
「じゃあ、乗って空を飛ぶなんてことは想像もつかないよね?」
「ああ、この星には飛行機もヘリも無いから、空なんて飛べないと思っていたよ。いいなぁ、俺も乗ってみたい」
ノアよりも元々、冒険心が強くサバイバル生活にも適応してたネオなので、それはもう興味津々である。
「ネオ君ならそういうと思っていた」
「入学するのが、益々楽しくなって来たよ」
「地球では、高校も不登校と中退の僕たちが、大学生なのだからね。しかも帝国大学だよ?日本で言えば東大?」
「ほんと笑っちゃうよな?」
ノアとネオはそう言って笑い合った。
しばらくふたり間に無言の時が流れた後に、ネオがぽつりと言った。
「それとさ。俺たち、たぶん俺たちは地球の家族のことを忘れたわけじゃなくて、もう地球へ後戻りできないって心の奥で悟ってるいるから、振り返らないようにしているんじゃないかな?」
ノアは、ネオをじっと見つめて言った。
「やっぱりネオ君は、僕よりひとつ年上のことだけあるね?大人だな」
と言いながら、ノアもそうなんだろと思って納得していた。
もう、地球へは戻れないのだろうと、心のどこかで思っている。
それが日に日に確信に変わり、それにつれて地球に残した家族のことを考えまいとしている自分が居た。
「死んでも魂は別の星に生まれる変わるらしいから、僕らは地球では死んだ存在でリゲル・ラナに生まれ変わった。そう考えた方が良いのかもしれないね」
と、ノアは自分を納得させるように言った。
今はとにかく、ここで自分に出来ることに全力を尽くして前だけを見よう。
ノアも、ネオもそう決意していた。
まもなく、ふたりが地球から転移して来て、リゲル・ラナの暦で数えると、まる二年となろうとしていた。
彼らは心身ともに成長し、魂の輝きも増していた。
ノアは、ネオのことをティム・ランダーに頼み、自分は帝国神聖大へ戻った。
もう、ネオのことは心配ない。
心配しない。
ネオと俺の道は似ているけれど、同じでは無いんだ。
彼は彼の道に向かって、まっすぐ前を見て進もうとしている。
俺も、まっすぐ前だけを見て俺の道を進むのみだ。
じゃないと、俺のことを信じてくれているネオ君に胸を張って言えることが何ひとつ無くなってしまうから。
そうノアは思っていた。
ネオも、宿の仕事をしながら考えていた。
俺は今、少し前にノアの辿った道を歩んでいるのかもしれない。
だが、同じ道を後から歩んでいるだけで、辿り着く先が同じとは限らない。
でも、今は目の前に開けた道を進むのみだ。
歩いて行くうちに景色も変わり、岐路に立たされるのかもしれない。
もしかしたら、ノアとはまた別々の道を進むことになるかもしれない。
それでも、やっぱり前へ進むしかない。
地球に居た時のように同じところに立ち止まったまま、腐った自分には二度と戻りたくないから。
俺は今の俺が好きだから、後戻りせず前に進むのみだ。
地球に居た頃は幼稚園からやり直したいとか、小学生からやり直したいなどと思うこともあった。
だが、ノアとネオは前に戻ってやり直したいとは思わない。
そ地球で生きていた頃の自分には戻りたくは無いからだ。
また、死んでも魂は死なず別の星に生まれ変わるなら、死も怖くはないとは思ったが、いつ死んでも良いとも思わない。
なぜなら、このままの魂で死んだなら、きっとまた地球のような星かそれ以下の星に生まれ変わってしまうかもしれないので、できるだけ魂を磨きたいと思ったからだ。
ノアとネオにとっては、地球はあまり良い星ではなかったらしい。
こうして、地球から意図せず転移して来たふたりの若者は、このリゲル・ラナでしっかりと前を見て生きようと決意していた。
その頃、アランたちは、ルイスガードナー基地で出陣の時を待っていた。
そこへ、ルイスガードナー基地の司令官であるベイリー大佐が、
「レッドリオン公爵、敵はジャンバラン村の教会から、拠点を完全にゴザガントに移したようです」
と、現地のWhite Mageからの最新報告を持ってアラン達の部屋に来た。
「ベイリー大佐、詳しい報告を頼む」
「はい。パドリアヌスと黒魔術師達は、全員ゴザガントに移動した模様ですた。ジャンバラン村の教会には洗脳された信者が数名と、その周辺の部族に信者を増やすように言われた手下達が数に残っているだけのようです。周辺の村も『大黒主神教』の教会を作って信者を増やそうとしていましたが、密かに帝国のWhite Mageが動いて阻止しております」
と、ベイリー大佐は、現地に派遣されているWhite Mageからの報告書を見ながら言った。
「そうか、みんな頑張ってくれているようだな。そろそろ、我々も動き始めなければならない。で、そのジャンバラン村の部族長は大丈夫なのか?」
アランは、まずはジャンバラン村のある地域の部族長に会うことから始めたいと思っていた。
「はい。部族長家族はパドリアヌスに洗脳されかかっておりましたが、パドリアヌスが村を去ってから、ジャンバラン村の村人と混じっているWhite Mageが、シオン参謀からの指示を受けて解呪をしております」
先日の「黒い害虫掃討作戦」の際に『大黒主神教』の信者として洗脳されていた帝国民たちを解呪した経験がパドラルでも役立っていた。
アランもパドラル人の各部族と、深く接触するのは初めてである。
父ラファエルのように異国の長と上手く交渉できるだろうか?
いや、上手くやらねばならん!と意を決していた。
「では、そちらのHoly Mageに連絡をとってくれ、我々三人がそちらに赴くと!」
アラン、トゥルリー、マリアの三人は、リゲル歴4045年もまもなく終わるといという15末月も残り数日に迫った日に、目立たぬように三人だけで、金鱗竜に乗り、ルイスガードナー基地を後にした。
三人を乗せた三匹の竜は、シルバーコルティナール山脈を越えパドラルへ向っていた。
まずは、シオン参謀の作成してくれた非好戦的な部族が住むという地域から攻略する「オセロ作戦」の一石目。
ネオとノアが居たジャンバラン村からである。
パドリアヌスがスチュアートリア帝国攻略のための拠点としていたジャンバランの『大黒主神教』教会だったが、帝国の侵略を諦めた今は無力状態であった。
アラン達がジャンバラン村に到着するとWhite Mageが三人を出迎えた。
「ようこそパドラルへお越し下さいました。レッドリオン公爵さま、イエローバレー大佐、グリーンフィールド少佐」
「苦労かけたな。グライデン卿」
と、アランがその働きを労ったグライデン卿は、皇帝の命を受け数年前からパドラルに潜入していたWhite Mage騎士である。
アレクサンドル皇帝は、数年前にパドラルの未来の異変を予知し、パドラル各地にWhite Mage騎士を送り込んでいた。
なんとグライデン卿は、ノアが市場で野菜や果物を売りに行かされていた時に、ノアの屋台の隣で煮込み料理を作って売っていた、あの優しい店の主人であった。
その時、彼はノアがパドラル国の者じゃないことを見抜き、隣のスチュアートリア帝国へ行き、魔法の心得があるなら帝国魔法大学でWhite Mageを養成する大学で学ぶことを勧めてくれていた。
「グライデン卿。教祖に放棄されたジャンバラン村の教会には、洗脳された信者と手下が数名しか残されていないとの報告を受けたが、そうなのか?」
と、アランさーは早速、グライデン卿に現地の様子を確認した。
アランに尋ねられたグライデン卿は、自らの働きの報告も兼ねて言った。
「はい、その通りです。私は、まず部族長とその周辺の洗脳された者から解呪を行い、部族長との話は通してあります。あとは、あの教会のみというところです」
「そうか、ひとりで良くそこまで頑張ってくれた。感謝するぞ。後の詰めは我々に任せてくれ」
と言って、アランは残った手下の討伐と洗脳された信者数名の解呪の為に、トゥルリーとマリアを『大黒主神教』教会へ向かわせることにした。
「トゥルリーとマリアは教会で一仕事して来てくれ。私はグライデン卿と共にジャンバラン族の部族長の元へ行く」
トゥルリーとマリアは、司令官してのアランの命に従って『大黒主神教』へ向った。
「グライデン卿、ジャンバラン族の部族長の様子はどうなのだ?私が会って話せる状態なのだろうか?」
アランは、長期に渡ってBlack Mage洗脳されていた赤い荒野のライオンの長、アイザックのことを思っていた。
アイザックは、ライオンであったが、やはりかなりダメージを受けていたらしく、解呪後にアランの父ラファエルがアイザックの魂のダメージを浄化したと聞いている。
ゆえに、アランはジャンバラン族の部族長のダメージを心配していたのである。
「はい。部族長この教会に対して最初から不信感を抱いており、ここに居た黒魔術師に抵抗していた為に、早くから呪いを掛けられていたようで、なかなか解呪にてこずりましたが呪いは解けています」
パドリアヌスは、ジャンバランを拠点としてスチュアートリア帝国への侵攻を企てていたので、早くからジャンバラン族の部族長とのその一族を狙い黒魔術で洗脳していたのだった。
「そうか、長期に渡っての洗脳は本人の魂にダメージを与えるらしいが体調の方は大丈夫なのか?その点を含めて会いたいと思う。案内してくれるか?」
グライデン卿に案内され、ジャンバラン族の部族長の元へアラン達が行くと、
白髪交じりの長髪を後ろで縛り、顎髭を伸ばした部族長は、椅子から立ち上がって、快くアランを迎えてくれた。
部族長は、年配者のわりには、程よく筋肉がついた腕に入れ墨が入った右手を差し出して言った。
「お待ちしておりました。ジャンバラン族の部族長のメドゥーと申します。我らの国をお助け下さい」
メドゥー部族長は、スチュアートリア帝国の皇帝とその一族の偉大さは伝え聞いていた。
そして、グライデン卿からスチュアートリア帝国が密かにパドラルを統一国家としてまとまり平和な国になるよう手助けしたと思っていることを聞いて心から喜んでいた。
なぜなら、スチュアートリア帝国も小さな地方国家から今のような広大な帝国となり、もう4000年も平和を維持しているからだ。
しかも、Grate Mageである皇帝の一族が自ら力を化してくれるという、またとない機会だと思っていた。
「パドラルは、長いこと戦国時代で、国民は常に戦争な脅威にさらされてました。わしらジャンバラン族と山のこちら側の四部族は、闘いを好まないのですが山を挟んだゴザガント族や中央地域の部族は常に領土拡大を狙っていて争いが絶えないのです」
メドゥー部族長は、ここまで一気に話すと息切れがしたらしく、後ろに倒れるように座り込んでしまった。
White Mageのグライデン卿により、黒魔術に洗脳されていた村人たちの解呪は済んでいたが、メドゥーは部族長ということで、パドリアヌスに強力な呪いをかけられていたのである。
「だいじょうぶですか?」
アランは、メドゥー部族長の魂の揺らぎを察知して言った。
「メドゥー部族長、長期の洗脳により魂に揺らぎが現れています。お疲れが酷くはありませんか?」
「ああ、そうなんです。どうも、体力が無くなってしまったようで…」
メドゥーは、力なく答えた。
「部族長、ちょっと失礼します。Black Mageの呪いを受けていた期間が長かったので、魂が揺らいでしまっているようなので浄化させて頂きます。きっと楽になると思います。よろしいですか?」
そう言って、アランがメドゥーの額に手を置くと、アランのオーブカラーである赤い光が掌から広がり部族長を包んだ。
そして、彼の体から浮かび上がるように現れた、黒い揺らぎの光がアランの赤い光に吸い取られて蒸発するように消えて行った。
「これで楽だと思います」
と、アランが言うとメドゥーの顔色がみるみる良くなり、少し若返ったように見えた。
その様子を見ていた、メドゥーの側近らしき者たちも歓喜の声をあげてどよめいた。
彼らの多くは、グライデン卿により解呪された者たちだった。
「ありがとうございます」
メドゥーと、その息子と妻らしき者が進み出てきて礼を言った。
こうして、White Mageグライデン卿の活躍とアラン達の登場により、ジャンバラン族の信頼を獲得することができた。
まずは、「オセロ作戦」の第一石目を白に変えることができたのである。




