表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Beyond of Cosmos =星巡りの物語=リゲル・ラナ編  作者: 詩紡まりん
『光と影の闘い』=オセロ作戦始動= リゲル歴4045年

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/92

「帝国空軍を担う者たち」と「三人娘とネオの出会い」

 ネオのことやパドラルでのBlack(ブラック) Mage( マギ )の動き、その討伐に向かったレッドリオン公爵ことアランと、トゥルリー先生、マリアの先生のことが心配で落ち着かないノア。

 それとは対照的に、何も知らないリリアーナ、アイラは新年祭の長期休暇を楽しみにしていた。

 ふたりは、アンナに教わりながら、ライナスとロザリーを連れて行くためのスリングを作成したり、持ち物チェックをしたり、ブルーフォレスト城へお泊りの為の準備に余念がなかった。


 ポリアンナも自分の城に、仲の良い友達を招くのは初めてなのでウキウキしていた。

「持ち物なんて何も気にしなくて大丈夫よ?必要なものは城下の町に買い出しに行けばよいし、服も私のものを使ってちょうだ。私よりも、アイラちゃんやリリアちゃんの方が似合う服もあるのよ。ただ、ブルーフォレスト領は、ここよりも寒いのでそれだけは覚悟しておいてね」


 何を持って行けば良いか迷っていたリリアーナは、ポリアンナの言葉に心から感謝して言った。

「ありがとう、ポリーちゃん。本当に楽しみだわ」


「帝都のブルーフォレス辺境伯家のお屋敷も素敵だったけれど、お城なんて、わたし楽しみ過ぎて興奮しちゃうわ」

 平民出身であるアイラとっては、お城というだけで大興奮である。


 レッドリオン公国のグランドリオンパレス内にあるマリオン城で侍女として働いてた経験のあるリリアーナだったが、やはり、城主のお嬢様の友達として招かれるのだから全く別の話である。

 仲良しの三人で竜に乗って移動し、名城と名高いブルーフォレスト城で過ごす日々が今から楽しみで仕方なかった。


 ただ唯一の心配は、空での移動に乗るブルーフォレス辺境伯家の(ゴールド)(スケール)(ドラゴン)のことでぁった。

 こま不安を取り除かなければ、空の移動を断念して数日をかけて馬車で移動することになる。

 リリアーナとアイラは、自分のせいで馬車移動になってはふたりに申し訳ないと思っていた。

 まずは、不安克服ためにポリアンナと共に、彼女の使徒である金鱗竜のクロエに乗って飛ぶ練習を始めた。

 初めは、空を飛ぶという事に怯えていたふたりだったが、三人で同時にクロエの背に乗り低空飛行を体験すると、その楽しさにワクワクしてしまっていた。

 ちょっとしたアクティビティである。

 そうやって、徐々に高度を上げ、竜に乗って空を飛ぶことに慣れていった。

 流石に山を越えるほどの高度に達した時には、リリアーナもアイラも下を見て心臓が飛び出る想いになっていた。

 そんなふたりにポリアンナは、なるべく下を見ないようにとアドバイスをした。

 下さえ見なければ怖く無いと気づいたふたりは、前だけを見るように心がけた。

 だが、時々、うっかり下を見て心臓が凍えるほど血の気が引き、頭がクラクラすることが何度もあった。

 そうして、毎日練習しているうちに二人とも竜に乗って跳ぶことに少しずつ慣れ、うっすら快感を覚えるほどになっていた。

 ブルーフォレス辺境伯家の移動当日は、リリアーナがポリアンナとクロエに乗り、アイラがオスカーとクレイブに乗って移動することになった。


 一方、ノアの方は、世話をしているエディも飛行訓練が出来るようになってはいたが、エディで移動することは出来ない。

 やはり、ブルーフォレス辺境伯家の竜に乗って移動することになるので、アンナやクリストファーと共に騎竜パイロット訓練に参加していた。


 ノアは、誰かとふたりで乗るのでは無く、ひとりで乗竜になる。

 ノア以外の皆はHoly(ホーリー) Mage( マギ )クラスの者たちなので、空での空気の扱いは既に身に付けていた。

 低空での飛行の時は良いが、高度を上げると空気も薄く寒くなり、気圧も低くなる。

 高所に慣れないノアは、飛行中にも頭がクラクラして来ていた。


 その時、キースがノアに並んで飛んでアドバイスを与えた。

「ノア、自分の周りの空気をコントロールしてみろ!」


 ノアは、物体や気体をコントロールする魔法は身に付けていた。

 気圧のコントロールは出来ないが、自分の周囲の空気の濃度を上げることは出来る。

 高所の気圧が低くなるのは、空気の量が少なくなることが原因なので自分の周囲の空気の濃度を上げることで克服可能になる。

 ノアは、地上での騎竜飛行講義の時に教わったことを思い出しながらやってみた。

 すると、みるみるノアの顔の血色が戻った。


 キースは親指を立てて合図をすると、すぐに先頭に戻りV字編隊を維持して旋回し、帰路へと進路をとった。

 その様子を後方からクレイブに乗って見守っていたオスカーは満足げに言った。

「キースも立派なHoly Mage騎士だな。これなら金鱗竜部隊を任せられる」


 大学の騎竜パイロット訓練に使われている竜達は、ブルーフォレス辺境伯家の訓練された金鱗竜たちである。

 オスカーも、自領の金鱗竜達の訓練に携わっているだけに思い入れがある。

 キースは、アランに卒業後も大学にのこり、今度は騎竜パイロット指導者として後輩の育成に励んで欲しいと言われている。

 オスカーも、キースになら任せられるなと思っていた。


 騎竜部隊とオスカーが大学へ戻るとセドリック・ダヴィド・エバー・グリーンフィールド大尉が待っていた。

 オスカーは、セドリック大尉から帝国防衛近衛騎士として訓練を受けたことがあった。


「オスカー卿、久しぶりだな」

 セドリック先生は、あの人好きのする爽やかな笑顔でオスカーに歩み寄った。


「セドリック大尉、お久しぶりです。この度は、帝国神聖魔術士養成大学へ出向命令が出たそうですね。祖父にはもう会いましたか?」


「ああ、ブルーフォレス先生には既にお会いしたよ。相変わらずの気迫をお持ちだが、現役軍人の頃はより丸くなられた印象だった」

 と、セドリックに言われて、オスカーも確かにと思っていた。

 オスカー自身は、祖父の現役時代を知らないが、噂に聞く祖父の伝説はなかなかなものである。

 部下だった者からも、皇帝の忠実な腹心で、厳しく豪快だったが心優しき勇者だったと聞く。

 オスカーにとって自慢の祖父なのである。


「そうですね。祖父もだいぶ丸くはなりましたが、時々噴火しますよ?導火線に火をつけないように気をつけて下さい」

 と、オスカーは冗談交じりに先輩をからかった。


「それは、気をつけないとだな。それはそうと、お前も近衛騎士訓練の時の鼻たれ小僧の面影も無くなって、すっかり立派になったな」

 と、セドリック先生も、オスカーに負けまいと茶化すように言った。


「それは、そうですよ。これでも帝国防衛近衛騎士団を任される団長ですからね」


「そうだったな。君の成長ぶりには驚かされたよ。さすがブルーフォレスト家のサラブレットだ」

 と、セドリック先生もオスカーの成長を素直に認めていた。


「そんな先生だって、マリア先生の後任に抜擢されるんですから優秀な証ですよ。ところで、マリア先生たちのことはお聞きお呼びですか?」

 オスカーは、トーンを落として真面目な顔でセドリック先生に尋ねた。


「おおよその話は聞いている。ここからは軍の者として話になるから場を改めて話した方が良さそうだ。だが、私はここに派遣されたのは、この子たちの世話もあるんだ」

 そう言いながらセドリック先生は、(スティール)(ドラゴン)の一匹を撫でながら言った。


「なるほど、先生は新しく創設される空軍の幹部候補というわけですね」

 と、言うオスカーに向かってセドリック先生はウィンクしながら言った。

「そういうこと!そして君はその部下候補だよ?」


「えっ?」

 オスカーは驚いたように言った。

「でも、私には帝国近衛騎士団長の任があります」


「あれ?まだ聞いてなかった?まあ、まだ先の話だからね。でも、騎竜訓練と言ったらブルーフォレス辺境伯家の右に出る者はいないだろ?当然と言えば当然じゃないか?」

 と、セドリック先生が言った。

 オスカーも言われてみれば確かにと思いつつ、まだ辞令も出ていないのに勝手にその気になってはいけないと自分を律して言った。

「確かにそうかもしれませが、それは正式に辞令が出てからのことですので」


「そうだね。これはマリア達が無事に戻って来てからの話だ。その時は、私の一番の部下として期待しているよ」

 と、セドリック先生は言った。


 真面目なオスカーは、セドリック大尉に対して、相変わらず軽いところのある人だなと思っていた。

 姉のマリアとは全く対照的な性格なのである。

 ただ、セドリックも誰にでも軽いわけではない。

 彼はオスカーの真面目さを尊敬している反面、少し硬すぎる様にも感じていた。

 そんな相反する性格のふたりだったが、帝国への忠誠心はふたりとも負けないものを持っていた。


「まずは、場所をかえて話をしよう」

 と、言ってセドリック大尉はオスカーに重要事項を告げることにした。


 その週末、ノアはネオに会いに宿「アフィニティ」へ向おうとしていた。

 そこへ、ポリアンナ、アイラ、リリアーナの三人娘がやって来た。

「ノア君、外出するの?」

 と、ポリアンナがノアに尋ねた。


「ああ、アフィニティへ戻ろうかと」


「宿のお仕事のお手伝い?相変わらずノア君はえらいわね」

 ノアが宿に戻ると聞いて、三人はノアが宿の仕事を手伝いに戻るものと思っていた。


「私達もマルシェに買い出しに行くところなの。どこの地区に行くか迷っていたけれど、レイマーシャロル地区のマルシェにしようかしら?」

 と、ポリアンナが言うとアイラもリリアーナも賛同して言った。

「レイマーシャロルのマルシェに行くと何かしらの事件に巻き込まれたけれど、もう安全そうだもんね」


「ちょっと怖い思いをしたけれど、みんなと一緒だったから、あれは、あれで良い想い出になってるわ」


『大黒主神教』の脅威が無くなった今、帝都内の街々は、以前と同じように平和で安全な街に戻っている。


「君たちとっては怖いこともあった地区になっちゃったね。でも僕は、あの時、君たちと出会えて良かったと思ってる。最初にヒーリング魔法を見た時の衝撃は忘れられないよ」

 と、ノアも三人娘が初めてマルシェに来た時の事件を思い出していた。


 黒魔術で洗脳された信者たちがスリを働き、人を刺していなければ、ポリアンナとアンナのヒーリング魔法を見ることもなかっただろう。

 当時、魔導士クラスに在籍していたノアは三人娘と同じ大学の生徒だと知らずにいた。


「ほんと、まさかノア君が同じWhite (ホワイト)Mage( マギ )クラスに編入して来るなんてね」

 ポリアンナもしみじみと不思議な縁を振り返っていた。

 が、こんなところで時間を潰していてはもったいない。

 貴重な休日の朝である。


「じゃあ、僕は行くね」

 と、ノアが言うと

「あら、同じところへ行くのですもの一緒に行きましょうよ!護衛の騎士の方たちも分散されるより、お仕事が楽よ?」

 と、ポリアンナが言うので、四人で同じ馬車でレイマーシャロル地区へ向った。


 いつものように四人は、レイマーシャロル地区を囲む城壁の門の前の停車場で馬車を降りた。

 門の中まで馬車を乗り入れることも可能なのだが、週末のマルシェは人も多く、馬車で通り抜けるには困難なほど混雑する。

 だからいつも、大学の馬車は城壁門の前の停車場で生徒たちを降ろし、帰りもそこで待っていた。


 四人は仲良くおしゃべりをしながらマルシェへ向かう大通りへ向って歩いて行く。

 何も気にせず歩けくのは、久しぶりだ。

 三人娘はウキウキしながら歩いていた。

 ノアもポリアンナと共にこの道を歩くのは、まんざらでもない。

 ただ、これからネオに会うことを思うと、浮かれ気分ではいられなかった。


 なぜなら、ネオはパドラルに居るジャンバラン村の人たちのことを心配しながら宿で働いているに違いないからだ。


 自分の気持ちは、ジャンバラン村ではなくこの帝都にある。

 決してジャンバラン村で世話になった人たちのことを忘れたわけではない。

 だが、今の自分の全てはここにある。


 そうだ。

 自分は地球人なのに、すっかり地球のことは忘れている。

 地球の場合は周囲に絶望していたし、周りにも期待していなかったし、感謝の念も薄かった。

 心残りは両親くらいだが、中学に入学以降はノアも自室に閉じこもり気味だったし、、共働きの両親と話すことも少なくなっていた。


 だが、ジャンバラン村の人たちは違う。

 本当にノアが困った時には手を貸してくれたし、何くれとなく世話をやき気遣ってくれていた。

 そんな人たちを、一年足らずですっかり忘れ去ってしまう俺は、自分勝手で身勝手で冷酷な心の持ち主なのだろうか。

 そう思うと、ノアは自己嫌悪に陥りそうになった。


 無口になっているノアの顔を覗き込んで、ポリアンナが声をかけた。

「ノア君、なにを考え込んでいるの?」


「うん…。実は、アフィニティに昔馴染みの友達が来ているんだ」

 ノアは、ポリアンナ達に自分がパドラルから来たこと、『大黒主神教』と関係があったことを話せずにいた。


 出来ればこのまま知られずに居たい気持ちもあった。

 ネオには、彼女たちのことは話していない。

 もし、ネオが彼女たちに会ったなら、パドラルでの俺たちのこと、『大黒主神教』との関わりを話してしまうだろうか?

 だが、いつまでも隠しているのは心苦しい。

 帝国からの『大黒主神教』が一掃された今なら、いっそ知られてしまった方が肩の荷も下りる。

 ただ、パドラルよりも前にどこに居たのかを聞かれて、自分たちが異星人だと打ち明けることが一番怖い。

 キースに打ち明けた時は、信じられない話だけれどノアを信じているから受け入れてくれた。

 彼女たちもすんなり受け入れてくれるのだろうか。


 ポリアンナは、そんなノアの複雑な想いを知らずに

「ノア君の昔馴染みのお友達?それなら会ってみたいわ~」

 と、嬉しそうに言った。


「いや、昔馴染みって言っても付き合いは長くは無いんだ。帝都に来る前に数ヶ月に共に暮らしてたってだけだから」

 と、ノアが言うとアイラとリリアーナも話に加わって言った。


「あら、私達だって出会って一年にも満たないけれど、大親友よ」

「ねぇ~!友情は、付き合った年数じゃないと思うわ。密度と魂の共鳴度合よね?ツインレイ似たようなものなのかも?」

 と、アイラがツインレイというワードを久しぶりに口にした。

 彼女はツインレイに憧れる夢見る少女なのである。


「そうね。きっと前星までの記憶や関係性がお互いの魂に刻まれていたりするのかも?」

 と、ポリアンナもアイラの考えに同意した。


 リリアーナもふたりの意見を聞いて頷きなが言った。

「私も、White (ホワイト)Mage( マギ )の勉強しながら、頑張れば頑張るほど、もっともっとふたりのことが好きになっている気がするわ。きっと、私の魂が磨かれて前星までの記憶が蘇って来てるのかもしれない」

 リリアーナのその言葉を聞いたポリアンナとアイラのふたりが、感激してリリアーナに抱きついて言った。

「きゃー!リリアちゃん、私もよ」

「リリアちゃんのその考え方に大賛成!!」


 三人娘がイチャコラと騒ぎながら歩く様子を見ながらノアは思った。

 そうか、付き合いの長さには関係ないのか。

 そしてここは、地球のように既成概念に凝り固まり、自分の考えを押し付けるような人の少ないリゲル・ラナ星だ。

 人が死んでも、魂はそのレベルに応じて、別の星に生まれ変わると信じている人たちなのだから、俺が地球という別の星から転移して来たことを知っても、受け入れ易いのかもしれない。

 だから、もう悩むのは止めて、自然の流れに任せよう!と、ノアは決意した。


 そうしているうちにノアのレイマーシャロル地区の実家である宿「アフィニティ」の近くまでやって来ていた。


 そこに見覚えのある女の子が居た。

 ノアのファンのパトリシアであった。


 ノアは彼女の姿に気づいたが、いつもの事なので気にしていなかったが、三人娘、特にアイラとポリアンナは前回の彼女のノアへの馴れ馴れしい態度を思い出していた。

「あの子、この前ノア君にしつこく迫っていた娘よね?」

 こういうことには、ちょっと厳しいアイラが言った。


「ああ、きっと宿が仕入れた酒を届けに来たんだと思うよ」

 と、ノアをそっけなく答えた。

 すると、そのパトリシアの後ろからネオが現れた。

 ネオは、パトリシアがロバのような小型の馬に引かせて持ってきたらしい荷車へ、空き瓶を運び入れていた。


「おお、ノアじゃないか!手伝いに来てくれたの?ちょうど良かった。裏に酒の空瓶がまだ数箱残っているんだ」

 ノアの姿に気づいたネオがノアに声をかけた。


 ノアは、女子たちから離れてネオの元に駆け寄った。

「ネオくん、お疲れさま。手伝うよ!」


「あら、ノア君じゃない!お久しぶり」

 と、パトリシアは以前と違いあっさりとノアに挨拶をした。

「ノア君、ネオ君と知り合いだったのね。ネオ君もノア君と同じくすごく優しくて、私ここの宿へのお届けは楽しみなくらいなの」

 そう言うとパトリシアは、ネオの腕に自分の腕を絡ませた。


 ネオは、困った表情を見せたがその腕を振り払うことなく、

「じゃあ裏に回って残りを運んで来るよ」

 と、さりなげなくパトリシアの腕から自分の腕をスルリと抜いて裏口に去っていた。


 その様子を見ていた三人娘は、ちょっとホッとしていた。

 どうやら、パトリシアという娘は、ノアからネオに鞍替えした様子だったからだ。

 ノアも彼女の好みは地球人なんだろうな、と思いつつネオのスマートな対応に感心していた。

 そして、ネオの後を追って店の裏へ行こうとして、三人娘に言った。

「じゃあ、僕は宿の手伝いをするから、三人はマルシェを楽しんで」

 そう言ってノアが宿の裏へ消えて行くと、パトリシアもネオとノアを追って行った。


 残された三人は、顔を見合わせて言った。

「私たちも空瓶運びを手伝いましょう」

 声を合わせてそう言うと、三人もノアたちの後を追いかけた。


「ノア君、私たちも手伝うわ」

 ポリアンナがノアの後ろから言うと

「女の子には無理だから、三人は気にせずショッピングを楽しんでよ」

 とノアが答えた。


「あら、それは失礼よ?私たちを誰だと思っているの?」

 ポリアンナは腕まくりをする仕草をしながらウィンクして言った。


 そうだった。

 彼女たちは、優秀な魔法使いである。

 物体の質量をコントロールする技も身に付けている。

 さらに言えば、ポリアンナはHoly(ホーリー) Mage( マギ )である。


「これは失礼。でも、本当に大丈夫だからショッピングを楽しんでよ。せっかくの休日でしょ?」

 と、ノアが三人を気遣うと

「みんなでやればすぐ終わるわよ。そしたら、私達もショッピングへ行くわ」

 と、答えると三人娘はノアを追い越すように走り出して言った。

 とにかく、早く作業を終わらせて、あの目障りなパトリシアを追い返したいのである。


「手伝いまーす」

 女子たちはネオの元に行くと、すぐに空の酒瓶が詰まった木箱を抱えた。

 ネオは、その素早さに驚き、パトリシアは口をあんぐりと開いて驚いていた。


 彼女たちから一歩遅れて来たノアは、ネオの耳元で囁いた。

「彼女たち僕のクラスメイトのWhite (ホワイト)Mage( マギ )と、Holy(ホーリー) Mage( マギ )なんだ」

 その一言でネオは納得した。

「そうなんだ。女子の力持ちチームを連れて来たか!こりゃ早く終わりそうだな」

 と、ネオはノアの囁きにそう答えると、自分も木箱を二つ抱えて彼女たちの後から、通りの荷車に向かった。


「ノアくん、力持ちの女の子が好みだったの?」

 と、パトリシアが言うとノアは、

「いや、たまたま仲良くなったクラスメイトが力持ち女子たちだったんだよ」

 と、答えて残りの酒の木箱を全部抱えて行った。


 その場に残されたパトリシアはノアがパワーアップしたのを見て

「その学校で、毎日筋トレさせられるのね。私には無理だわ」

 と、言いながらみんなの後を追って自分の荷車の元へ戻って行った。


 無事に全ての空の酒瓶を荷車に乗せると。パトリシアは小型の馬のような動物に荷車を引かせ

「毎度ありがとうござます。みなさんもお手伝いありがとう」

 と、きちんと挨拶をしてパトリシアは自分の店に帰っていた。


 そんな彼女の姿を見た三人娘は、案外悪い娘じゃないのかもしれないなと思った。


 パトリシアを見送ったネオも三人娘に向かって言った。

「お嬢様たちもお手伝いありがとうござます。挨拶が後になっちゃったけれど、俺はネオって言います。みなさんも帝国神聖力術士養成大学の生徒なんでしょ?」


「はい。私は帝国神聖力術士養成大学の一年生、間もなく二年になるポリアンナと言います」

「私は、同じく一年生のリリアーナです」

「私は、二年生のアイラです」

「よろしくおねがいしまーす」

 と、三人娘は声を合わせて挨拶した。


 宿の前の通りは人通りも多く、誰に聞かれているかわからない。

 三人は名前だけを名乗って平民のようにお辞儀をした。

 ネオは、ノアから彼女たちのことを詳しく聞いていたわけでは無いが、帝国神聖力術士養成大学のことは聞いていたので、その生徒である彼女たちが自分より優れた魔法を使う娘たちであることは察して言った。

「こちらこそよろしくお願いします。未来の先輩のみなさん」


「ネオは、来年度から大学に入れることになったんだ。みんなも仲良くしてあげてね」

 と、ノアが言った。

 三人娘は、もちろん!と答えて、マルシェへショッピングに向かった。

 新年祭の休暇中に行くブルーフォレスト城へ行く為の準備である。

 ブルーフォレスト辺境伯領は帝都よりも寒い。

 とりあえず、暖か外套が必要なのである。

 それに、外気温を遮断する魔法をかけて空の旅に備えることにしていた。

 新年祭の休暇まで二週間を切っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ