表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

4 散財もそうだが・・・

 遊撃部隊の執務室でわちゃわちゃしている頃、第一応接室で金を弄っていたヴィクトリアとその対面に金をスッて来たカナンがソファに寝そべって天井を見上げていた。

「オレは金から嫌われた!」

 また負けたのかとため息を零れてしまう。

 何故金をそう湯水のように使えるのか全く理解が及ばない。

「はぁ......。いくら使ったんですか?」

「五億!」

 この馬鹿......。

 ヴィクトリアが無言で拳を握り締める。

「馬鹿ですね」

「いいや!オレは馬鹿ではない。オレは言ったんだ。悪いところがあれば直すと」

「直すのは貴方の壊滅的な駆け引きの弱さでしょう」

 いいや!いいや違うね!と言い訳を並べるカナンの言葉を聞き流し金がたんまり詰まったアタッシュケースを撫でる。

「よく自費でそこまでお金を使えますね」

「経費を出しくれると言ったか!」

「殺すぞ」

「すまない!」

 こんな奴でも同僚だと自分に言い聞かせ振り上げそうになる腕をもう片方の手で押さえる。

「どうした!右手が疼いたか!......はッ!もしや魔法陣を!」

「貴方でもあるまい。するわけないでしょう」

 そもそも陣くらいいくらでも展開できる。昔のカナン(バカ)のように手の甲にいちいち描く必要はない。

「ゴフッ」

 黒歴史を掘り返され身悶えするカナン。お茶請けにもならない光景を眺めながら入れたばかりの紅茶に手を伸ばす。

「そういえば、また教会が貴方を呼んでいましたよ」

 ここ数年しつこく勧誘まがいな事をする教会はどうやらそこのカナン(バカ)を大衆に見せびらかし新たな人類の勇者として祀り上げたいようだ。今更勇者などでっち上げて何をするのやら。

「むごごご.......え?教会?」

 何か嫌な思い出でもあるのか急に顔を引き攣らせるカナン。

「えぇ」

 床を這いずり回っていたカナンは無言で立ち上がり自分の荷物の方へ足を向けた。

 面識は確か依頼で一度きりだった筈。その一度で相当悪印象持たれるとは......。

「オレちょっと行ってくる」

「どこへ?」

「人には話せない......。これは、オレだけで片付けなきゃならない事なんだ」

「行かないとあちらから尋ねてきますよ」

「Noooooooooooo!!」

 嫌だ!嫌だね!と駄々をこねる国が誇る四皇帝の一人、剣皇(カナン)(齢22)。

 せいぜい大衆の面前で晒し者にされるだけだというのに、大袈裟ですね。

「ほんと私......貴方がたが同僚で恥ずかしいです」

 コツコツ。

「ん?」

 額に手を当てて嘆いているヴィクトリアに向けてなのか窓を小突くような音が部屋に響く。音のする方へ顔を向けたヴィクトリアの視線の先にコツコツとくちばしで窓を叩く小鳥が映る。

「あの女からですか......」

 途端にヴィクトリアは悪感情を隠そうともせず顔を顰めさせる。

「クソ!どう逃げれb......あ?鳥?魔皇(ルーナ)か?」

「えぇ」

 嫌な顔をしながら窓を開けて鳥を指に乗せたヴィクトリアは、鳥の足に括りつけられた小さな小包を解く。

 中に入っていた小さな紙を広げ内容を読む。

『これ最初に見たのヴィクトリアでしょ?私よ私。私だよ覚えてる?―――

「さっさと話せよ」


 ―――なんか怖い声聞こえたから本題話しちゃうね。

 出張先のバラナ島に面白そうな遺跡が埋まってて、掘り起こして踏破するまで結構時間掛かりそうだからみんなに伝えておいてね☆

 それで、ここからがホントに大事なんだけど、遺跡から自立型魔導歩兵が出てきてね現場はもう大パニックだったんだよぉ~。君たちがいなかったからもう大変で大変で。

 建物バサー!って光線みたいなので熱切断されちゃうし、魔力は完全に遮断されちゃったり、私の魔力奪われちゃうし、その上カナンがいないから火力不足で長期確定だし・・・・・


「......結局何が言いたいんですかこれ?」


 ちょこーっと怒っちゃってね?そのぉ~......街とかさ、宿泊先とかさ、壊しちゃって........。ごめんね?

 だから弁償代払わないといけなくなっちゃったから、

       ホントごめんね?180憶くらい。ホントごめんね?』


「......は?.........へ?........」

「何て書いてあるんだ?」

 ヴィクトリアの手から滑り落ちた紙を拾い上げたカナンが手紙の上から下まですらすらと読み「ん?」と声を漏らし首を傾げる。もう一回文を最初から見直し終えると次はわなわなと手紙を持つ指先、そして体全身が震えあがる。

「ひゃ、へ?は、はち?」

 はははは、簡単な算数の問いです。これから七百万(ハンザ―から巻き上げた報酬)単位の依頼を毎日こなしたとして.......数え間違え?....................駄目ですどうしても2571余りの日数こなさなければならない結果に.......ざっと7年.......。

 終わった。終わっちゃいました私。

「あは、あははははは..............」

「ヴィクトリア、泣いて、いるのか........」

 私が?あぁ本当だ。これは冷や汗ですね。

 大粒の汗が頬を伝い床に滴り次第に息が乱れる。

 おかしいですね。何故だか息が苦しい。

「おい大丈夫か!?息切れてるぞ!えぇとこういう時はえぇっと!どうすんだっけ!」

「あはははは!私の人生終わっちゃいました!」

「落ち着け!まだ保証人は親の可能性が―――」

「この文を見て察してください!私ですよ!私たちだよクソが!あのゴミ絶対殺すッ!バラナ島っててどこだよクソが!ぜってぇ見つけて首吊るしてやる!」

「マジで落ち着けって!口調が戻ってるぞ!ア、アフィリアは!アフィリアは居ないのか!一緒にこいつを押さえてくれ!」




   ◇◇◇




「ん?」

「どうしました隊長?」

「え、いや」

 その頃、山賊を惨殺していたアフィリアが遠く離れた皇城の方へ何気なく顔を向ける。

 何か強い魔力が一瞬感じたんだが......。

「もしかしてこれだけって訳じゃないですよね?こんなんじゃ消化不良っすよ?」

「......まぁいいか」

「......?マジで何だったんすか」

 どうせまた無駄遣いしたカナン(あいつ)がキレられてんだろ。

「ちょっと魔物が狩りたくなってな」

「あぁそれもちょっと良いですねぇ。お前らはどう?」

「んあ?なんて?」

 後ろでまた賊の首を刎ね上げた部下Cの耳には賊の断末魔で染められ部下Bの声が聞こえなかったようだ。

「魔物だよ。次は魔物狩ろうぜって話」

「あぁー良いかもな。なんか今日強ェ奴居なかったし」

「ッチ。時化(しけ)てらぁ。何もねぇじゃねぇか」

 賊の根城になっていた洞窟の奥から部下Eが戻ってくる。

「おぉ戻ったかお前はどうだ魔物狩り?」

 平和的な日常から目を逸らし賊の積もり積もった死体の山を見上げる。

 なんかやけに多かったよな。

 俺が狩った数だけでも十数人はある。部下たちもそれぞれ十以上は()っている。賊が徒党を組むと言ってもこの数の食料と統率力はどこから......?

 気に食わねぇな。ヴィクトリアに頼んで反社の動きを調べてもらうか。

「隊長?行くんじゃないんですか?」

「何狩ります?」

 肩に手を置かれ呼ばれる。

「そうだな。それよりこれどうやって燃やす?」

 死体の山を指差しながら言うと部下たちが顔を合わせてニヤリと笑い合う。

「そりゃ派手にでしょ」

「よぉーし(うち)の魔法担当今日も頼むぜ!」

「え?あ、いつもの?」

 木に登って虫を捕まえようとしていた部下Dが足場を探しながら言葉だけ返す。

「あぁ!パァーっと派手にな!」

「あ」

「「あ」」

 ベキッ!と部下Dの足を引っ掛けていたところが突然崩れた。その瞬間を全員が見て反射的に口から言葉が漏れる。

 誰も助ける気がないのか反応はそれだけで部下Dの落ちる姿を黙って見届ける。

「......やっぱ樹液が出てる木って脆いなー」

 今日も遊撃部隊は自由である。




   ◇◇◇




 明朝の時だった。アフィリアが妙に山賊が多かった事でヴィクトリアに頼みごとをしようとヴィクトリアの家に上がりついでと朝ごはんを食べていた時の事。

「ひゃく、はちじゅう..........おく?」

「こんな時にまで勉強できないアピールしないでください。単位くらい分かるでしょう」

 あ......あのクソアマやりやがったな。

「あいつやったな」

「えぇやりやがりましたよ」

 目玉焼きの乗った食パンを齧りついている時に急にヴィクトリアが「ルーナが180憶ほどの借金を抱え込みました」と訳の分からない単語を羅列したのが始まりだった。

 逆にどうやってそんな額を積み上げられるのか疑問に思うのも束の間、「街を半壊させたそうです」と事の顛末を簡潔に伝えられた。

「保証人は?」

「私たちです」

「殺す」

「えぇ殺しましょう」

「ヴィクトリア様、お食事中ですよ」

 使用人に窘められ一旦席に座り直したヴィクトリアの顔には、まだ「許さんぞ」と言わんばかりの表情で壁を睨む続けている。

「カナンは知ってるのか?」

 同じ散財仲間としてどう思っているのやら。

「手紙が届けられた時に一緒に居ましたので知っています。今は恐らく北の方へ行っています。昨日の内に仕事を探して向かわせました。この額の借金です。私たちがパーティーで受ける事は暫く控えた方が良いでしょうね」

「......そうすると今後の仕事量が問題だな。しくじったか、もう少しあのジジィから巻き上げとくべきだった」

「あの純粋魔力(ユア・マギ)をたった700万ぽっちで片づけたのは失敗でしたね」

 何かと面倒事の多いこの国でも流石に賄える額じゃない。この際他国に移住して遺跡でも探索するか......。駄目だな。絶対物欲がいらんところで邪魔をする。一攫千金なんて狙ってできる事じゃない。

「今回は表社会です。いつもどおり揉み消すような事はできませんよ」

 このパーティー、一回の報酬額が多いのにも関わらずこれまで割と破産に追い込まれた事がままあった。それもこれもほぼ全てあの二人のせいなのだがパーティーであるヴィクトリアと俺も巻き込まれ仕事に奔走する時期がある。

 その際よくやっていた手法が借りた団体の殲滅である。借りた相手が反社だし誰も困らんだろうと今までやっていたが、今回は表社会の街から要求された物だ。流石に街を地図から消すのも街の長を脅すのもバレた時が大変だ。ヴィクトリアという常識人がいるのだから尚の事。多分俺とカナンとルーナだけのパーティーだったら普通にやってた。

「ヴィクトリア様、ここは国から借りられては?」

 ヴィクトリアの世話係を務めるメイド長からの提案を当然ヴィクトリアは拒否する。

「却下。金利でどれだけ膨れ上がるか......はぁ......。想像して損しました」

 これは中々きついな。

「どうした......ものか......」

 俺の......俺の金が......。

「どうしましょうねぇ......これ......」

 私の......私の金貨......。

「「はぁー......」」

 二人の夢と希望がため息となって消え失せる。

 他国、移住ねぇ。何の障害もなく出来るとしても俺ぐらいか。

 この国の象徴と言われる〈四皇帝(しこうてい)〉の存在はかなり大きい。 他国にも同じ立場や名前は違えど似たような(くらい)はあるが、総じて国の守護者という意味合いがある。と言っても自国(うち)の四人が別格すぎてパワーバランスで言えば全く均衡が取れてない(脱線)。

 他国の〈四皇帝(しこうてい)〉の内、何人か対面で会った事があるが中々賑やかな集まりだった。......ちょっとあいつらに融通してもらって一時的に俺たちの誰かを送り込ませるか。それだとあっちの仕事を取ることになるし駄目か。

 やっぱただの軍人が旅行と称して行った方が自然だよなぁ。でも家離れると誰が本棚の手入れを......。あぁそういや明後日八咫烏(やたがらす)の新作だったっけか。もうやだ......置く用意だけはできているのによぉ......クッソォ~......。マジ許さねぇあのゴミ。

「ははッ。いかん殺意が」

「貴方がその気ならお供しますよ?」

ルーナ(あいつ)がいなくなったら誰が借金の罪を背負うんだ。もしもの時のためにあいつは生かしておく」

「確かにそうですね」

 もういい。決めた。

「俺ちょっとこの国から離れる」

「逃げるんですか?」

 なんで先にそっちが思い付く?

「分担しようと思う。この国に留まってても稼げそうではあるけどやっぱ仕事が尽きたら俺たちは終わる。だからと言って四皇帝のお前らが他国に行くとなれば国総出で出迎えられて接待と監視で身動きが取りにくい。それに理由がない。お前らがその国に行くもっともらしい理由が」

「借金抱え込んだので出稼ぎにとは......言えませんねぇ」

 その光景を想像してか自虐混じりに笑う。

「だから俺が行こうと思う。身分は公務員だがまぁただの一軍人だ......あ、いやルークに頼んで偽の身分証でも頼むか」

「発行料とかでくすね取られないでくださいね」

ルーク(あいつ)がそんな器量の小さい事するとは思えないんだが......まぁ気を付ける。あ」

 朝食を食べ終え席から立とうしたアフィリアがこの家に来た本来の目的を思い出す。

「ヴィクトリア、ちょっと調べてもらいたいことがあるんだが」

「......また面倒事ですか?」

 やめてくださいよ、と言われてもこっちとしては一応言っておきたい。

「昨日(うち)の隊の奴らで賊を斬ってたんだが妙に数の多い集団があってな。確認してほしかったんだ」

「裏ですか?」

「一応表も頼む」

「妙ですね。貴方がそこまで気を掛けるなんて。何か数以外におかしかった点でも?」

「特になかっと思う。ただルークからハンザ―の動きがきな臭いと言われたばかりだったからか......。いや待て、これは......金の匂いがする」

「詳しく頼みます!」

 要するに、

「貴族の汚職を発見。ジャッカー侯爵家は爵位諸々を剥奪。私たちは謝礼金でうっはうは......完璧では?」

「悪役にすべての罪を着せて俺たちはジャッカー家の保有する総資産を謝礼金として根こそぎ奪う。もしジャッカー家が白だったとしても他の家を社内監査の如く調べれば良いだけの事」

「ふっ、勝った」

 ヴィクトリアが勝ちを確信した笑みを浮かべる。

「アフィリア、行動を開始してください。私の事はおまかせを」

「頼んだ。こっちの事もまかせろ。がっぽり儲けて来る」

「ふ、ふふ」

「ははははは!」

 いざ、金策!

 魔皇(まおう) ルーナ・シルディア・フェナーデル・・・ フェナーデル皇国第一皇女にしてフェナーデル皇国皇位継承権序列一位なこの(カス)。よく皇城を爆破させ再建費用を請求させるわ、実験道具だからと無駄で無価値な物を買い漁るわ、観察だと言いながらわざと魔物に攻撃を促させ街を破壊させるわ......もうこれで何度目だあのルーナ(クソゴミ)......。180憶だぞ?何をどうしたら個人でこれだけの負債を?おかしいだろ。


 同じ話が続いたな。見た目の話をしよう。

 何故かキラキラと光るファンシーな紫髪が特に特徴的と言えよう。日焼けがやだとつばの長いとんがり帽子をかぶり全身も真っ黒なローブで包みとにかく直射日光を避けている。


 趣味は特にないそうだ。だからと言って暇を破壊活動で埋めるな。お前のせいで国皇がどれだけ疲弊してると思ってる。......あぁ後菓子は好きらしい。暇がある度に食っている。......まとめると趣味は破壊活動っと菓子食いだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ