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3 ~首都ラール ようこそ散財どもの集まりへ~


  フェナ―デル皇国 首都ラール城下町にて


 あれから数時間ほど掛けて火力ぶっぱしてたら勝てたアフィリアたちは辺境伯の挨拶もそこそこに帰路に就く。

 首都ラールの全体を覆う外壁の下で門番をする兵士に身分証を提示し三人肩を並べて皇都の中へ入る。

「そんじゃオレちょっと行くわ」

 街に入って早々どこかへ行こうとするカナンをヴィクトリアが言葉で制止させる。

「一応聞いておきますがどこへ?」

「ちょっと金スッてくる」

「はぁー......」

 要は「賭け事をするから討伐報告頼んだ!」って事だ。

 カナンはヴィクトリアの様子を気にすることなくアフィリアたちに背を向け去ってしまった。

「んじゃ俺も―――」

「待ちなさい」

 勢いで俺も行けるかなと思ったんだがどうやら無理なようだ。

 俺の手首の筋から浮き出る血管が完全に押し潰され鬱血の兆候が見られたあたりで「痛い」と訴えるが俺の言葉など気にも留めずヴィクトリアは微笑み(暗黒微笑)を浮かべながら問い掛けて来る。

「苦悩に苛む私を置いてどこへ?」

「苛まれてる様に見えないから本買ってきて良い?」

「仲間に面倒事を押し付けて貴方は楽しくお散歩ですか?良いご身分ですね?捻り潰しますよ?」

 この絶対の勝利さんほんと怖い。

「俺たちのリーダーはとっくに遊びに行ってるが?」

「あの思考力を全て戦闘力に吸われた馬鹿は良いんですよ」

「良いの?」

「貴方は使いようがあるので来なさい」

 あぁお客様困ります。腕を人智の超えた角度にしないで下さい。

 結局、凄みのある笑顔に押し負けたアフィリアは為す術なく皇城へと連行された。



 フェナーデル皇国 城内 第一応接室にて



「はあぁ!?倒したぁ!?あれを!?」

「その様子ではやはりアレについて知っておられたのですね。ハンザ―閣下」

 白い軍服を着た老人、ハンザ―が掠れた声を荒げ疑いの目を向けてくるも全く意に返さずヴィクトリアが話を進める。

「......訳の分からんことを。それでは討伐の証明はあるのかね?」

 失態を誤魔化し「ほれ?さっさと出してみろ?」と言いたげな態度でヴィクトリアに討伐証明の物を要求してくる。

「蒸発しました」

「そら見ろ。嘯くにしてももっとマシな言い訳は思いつかなかったのか?」

「私どものリーダーが仰っていましたよ?『こんな雑魚でいちいちオレを呼ぶな』と」

「.......」

 そんな事カナン(あいつ)は言っていないのだが、煽り返すために嘘っぱちを言ったヴィクトリアの顔が薄くだが愉悦に浸っている笑み浮かべているのを横目で見えた。

 どうやら効果抜群だったらしくハンザ―は顔を伏せて行き場のない怒りを抑えている。

「......は、はは。話にならんな。蒸発?ありえん」

四皇帝(わたしたち)でもない貴方の尺度で話さないでくださいますか?」

 ハンザ―の引き攣った顔が今度こそ憤怒で歪む。

 ハンザ―って確か俺と同じ準四皇帝だったような?ってことは「四皇帝でもないお前の基準で喋るな」ってまぁまぁ地雷じゃね。

「小娘がよくもまぁ言えたものよ......。このゴミが―――」

 ヴィクトリアとハンザ―の間にあった机を薙ぎ払ったハンザ―が拳を作った手をヴィクトリアに向けて振り上げる。

 流石に後方支援じゃ危ないと思ったアフィリアが傍にあった錫杖を二人の間に入れて止める。

「小娘相手にキレてどうするサンザ―」

「腰巾着如きが喋るな!」

「怒りで名前を間違えられてる事に気付いておられない?」

「え?」

 間違えてたか......?

「部外者如きが口を挟むな!何故貴様如きがこの王宮を歩けるのか考えろ!」

 まるでこいつの一言で俺がこの城に出入りできないかのような言い回しだな......。

 ん......? あ、あぁそういや俺こいつの部下じゃん。

 ジャッカー侯爵家現当主ハンザ―・ジャッカー。またはフェナーデル皇国防衛省防衛大臣ハンザ―・ジャッカー。そして俺の職場は防衛省の遊撃部隊というところだ。

 つまりこいつは俺より偉い立場の奴という事になる。

「あぁーなんか忘れかけてたけどお前俺の上司じゃん」

「お前......?貴様私に向かって.......そもそも何故忘れる!」

「あれ?俺なんかやっちゃった?平民上がりで何が何だか」

「煽ってどうするんですか」

 それはもう面白いからに尽きる。

「クソッ!馬鹿馬鹿しい!貴様らに話を持ち込もうと思ったのが間違いだった。証拠もない分際で報酬を寄越せと?図々しい!」

「そう言って部屋から出て行こうとするヘンザ―を呼び止める」

「お待ちをハンザ―閣下」

「ヘンザーではない!」

「私はハンザ―閣下と申しました」

「違う!貴様に言ったのではない!」

 なんて弄りがいにあるジジィなんだ。ヴィクトリア(こいつ)なんて笑いそうになってるのを必死こいて堪えてるぞ。

「俺たちにタダ働きさせられるのは例外を除いて国のトップだけ。つまりお前は対象外だ」

「その例外が貴様らの不手際だろう」

「そういえばハンザ―閣下は今回初めて私たちに依頼をしたのでしたね。でしたらこれまでの無知も納得です」

 ハンザ―は不愉快な言い方に眉を震わせながら「何が言いたい?」と訊く。

「証拠のない事例は今回が初めてではないのですよ。それが毎回のように続く故か貴族間ではそれが当たり前で通っているのです。それはこの国の皇も同じ事」

 ヴィクトリアの最後の言葉にサンz、あ、いや......えっと、**サーは隠す気すら無くなったのか声を荒げて怒鳴り散らした。

「貴様ら......よりにもよって陛下を盾に脅すかッ!?身の程も忘れたか下民がッ!不敬だぞ!」

「事実です。それとも陛下が容認する形式ではご不満ですか?」

 笑みの裏に潜む闇がひょっこりと顔を出す。

 うん。やっぱこいつ怖いわ。

「何か?」

「何も?」

 だからこの絶対の勝利さん怖いって。




 国皇を盾に毟り取った金が提示額どおりか数えるヴィクトリアを部屋に置いて、城下町に向かおうと部屋を後にする。

 ふかふかの絨毯が敷かれた廊下をどさどさと所作もクソもない振る舞いで歩いていると目の前の部屋から出てきた男と目が合った。

「あれ?アフィリアじゃないか。戻っていたんだね」

 その男とは、フェナーデル皇国皇位継承権序列二位 ルーク・ジェラルド・フェナーデル。

 皇子だとか関係なくその立ち居振る舞いやこれまで積み重ねてきた利他的な行いから崇める者さえ出てくるこの国の天才皇子である。

「あぁ。ん?」

 後から出てきたルークの側仕えの......えっと......誰だっけ。

「ラナです」

「よく俺が名前思い出せないって分かったな」

「だって君誰も名前で呼ばないから」

「いまでも失礼極まりない方ですね」

 冷ややかな視線でアフィリアを突き刺すラナを窘めたルークが「そういえば」と何か思い出したように話し出した。

「ハンガー卿から運用資金についての打診があったんだ。何故だか分かるかい?」

 いや俺も知らんと答えようとした時、控えめな様子でラナが発言の許しを請うた。

「あの.......殿下、私めにどうか訂正する権利をお与えください」

「え?良いけど何のだい?」

「ハンガーではなくハンザ―です」

「え?」

 哀れ防衛大臣。皇子にさえ名前を覚えてもらえない国の重要人物。

「えっと......、まぁ知らないな。俺もついさっきまで名前うる覚えだったくらいには関わりがない」

「そうか、ぼんやりとした理由だったし横領しようとしてる典型的な文だったから何でだろうって思ってたんだけど......分かった。取り敢えず保留で処理しておこう」

 公務があるからその場でルークと別れたアフィリア。

 何故か公務という言葉が頭に引っ掛かる事に疑問を抱きつつ歩みを再開する。数歩前へ足を進めそのまま出口に一階に繋がる階段へ向かおうした時だった。

「......................事務仕事残ってたんだったわ」

 何で忘れてたんだと自分の馬鹿さ加減に呆れて額に手を置く。

 ここ数週間溜め込んでいたデスクの上に聳える紙の山を想像し「はぁー......」とため息が零れてしまう。

「あぁー...................しょうがない。金のためだ」

 どうせ今日一日何もやる事ないんだ。わざと遅く終わらせて残業代()ってやる。



 というわけで久々に来た職場。

部下B「ぶっ殺すぞ!」

部下C「こっちのセリフじゃボケ!テメェの散髪代浮かしてやるからこっち来いや!」

部下D「あ、蝶ちょ」

部下E「あぁ綺麗だぁ......!もう一生磨いていた!」

 んーいつ吸ってもこの殺伐とした空気は美味い。

「隊長ぉ~!助けてええぇ!」

「ん?」

 部屋の隅っこから助けを求める声が名指しで聞こえたので声のした方へ振り向くと、書類の山に潰されその中から手だけ出した部下Aの姿があった。

「数週間でよくここまで溜めたな」

「隊長のでしょこれ!こんな地獄みたいな部屋で一人事務作業だけに意識を向けたわたしを褒めてぇ~!」

 書類が重すぎて身動きできてない部下Aをまずは助けようと書類の山からはみ出た手を掴み引きずり出す。

「前髪が!待ってください!服も髪も皺くちゃになっちゃいます!」

「お前に押しつぶされた紙はもう皺だらけだから大丈夫だな」

「わたしのせいじゃないのにぃ~!」

 書類の山から姿を現した部下Aが「髪がぁ~!」と不満を漏らしているがそんなことより。

「なんだこれ?」

 落ちている紙を一枚拾い見てみると、


    『隊長!僕たち、私たちは前に進みます!

 

       打診:筋トレに飽きました。

          誰か殺させてください


                 隊長の部下B』


「あぁそれですか?それだけじゃないですよ」

 マ?

「え、これだけじゃないの?」

「そこの処理済みの方にも......ほら」

 部下Aから見せてもらった紙にもこの内容と同じ物が部下Cから届いていた。

「..................................」

 一応全ての紙に目を通したアフィリア。いつになく真剣な顔で作業をしていると昼過ぎから始めた事務仕事が何故か夕餉(ゆうげ)の時、つまり定時ちょっと過ぎた当たりで終わってしまった。

「お前ら」

 アフィリアが執務室でゴロゴロしてる部下たちに向けて言葉だけ投げ掛ける。

「え?あはい何ですか?隊長」

 椅子から立ち上がり執務室のドアの方へ歩む。ドアノブを掴んだアフィリアが部下たちの方へ振り返る。

「ちょっと山賊でも狩りに行くか」

「「待ってましたー!」」

 急いで身支度し始める部下BからE。あ、おい部下Eお前それ(腰に携えた見覚えのない剣)どっから盗んできた?内務省の物置から?馬鹿かお前。

「隊長。わたしは何をすれば?」

 部下Aよ。手荷物を持ちながら言う事ではない。

「お前は元より書記官だからな。差し支えなければ帰って良い」

「帰ります!」

「おけ」

遊撃部隊所属 部隊長:アフィリア


 剣皇(カナン)たちが冒険者時代所属していたパーティーメンバーに突如現れた少年アフィリア。徐々に頭角を現し始めたアフィリアの存在を早くから知った国皇が次期剣皇のカナンいるしどうしようかと悩んだ結果、遊撃部隊という新しい隊を創りその部隊長の任を任せて国に取り込むことに成功した。


 基本的に何に対しても興味を示さないこの男、たとえ暴言を吐かれようが嫌味を言われようが全てスルー。ただそんな感受性皆無人間にも趣味はあり、読書、フィギュア作りだけはやめられない様子。


 遊撃部隊a.k.aいいからさっさと死んで来い部隊


 元々そんなもの防衛省に存在しなかった部隊である。次代の剣皇が決められてから間もなくに現れたアフィリアを囲い込むために創設されたのが遊撃部隊の始まり。今では元荒くれ者たちの巣窟になっているがそれでもアフィリアという恐怖が傍にいるためか問題行動は起こしていない。


部下B「隊長についてどう思ってるか?何で......何でも良いからって、マジで何でだよ。んー......まぁ、俺らが何してても反応ないからいちいち顔色窺わなくて良いし、あの人結構気安いぞ?」


部下A「え?私ですか?時間ですか?ありますけ、ど......。隊長についてどう思ってるか、ですか?え、何でですか?へぇー内部調査だったんですね。なるほど、じゃあ好き勝手言えますね。


 (質問:不快な言動を取られていませんか?)

「あの人が他人(ひと)を不快にさせない要素が思い付かないんですけど......。良い悪いに関しては人を選びますけどわたしは大丈夫ですよ」


 (質問:アフィリア隊長と部下の間に何か亀裂があったりしますか?)

「多分ないと思いますよ?あるのって部下相手じゃなくて逆に上の人たちの間じゃないですか?ほらあの人感受性皆無人間じゃないですか?あの人とサシ飲みなんてした日には話が嚙み合わなすぎて......え?後ろ?なんで―――え!?隊長!?いつからそk」

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