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ゆがプリ! 〜目指すしかない、ノーマルエンド!〜  作者: みちはずれ
3.白雪 白詰 編
58/74

1.転校生が登場しました



 3.



 なあんだ、最初からこうすればよかった。


 ひかりは しらない ふり を した !



 ***



「うららちゃんってかわいいよねえ」

「モデルもやってるんでしょ?」

「あんな可愛くて清楚で優しい子と同じ学校なんて、今でも夢みたい〜!」


 ねー! とモブ女子生徒の揃った声が教室中に響く。多分本人に聞こえるように言っているつもりだろうが、生憎そのうららちゃんとやらはタイミング悪く先ほど教室を出ていった。

 ひかりはそんな声を気にも止めず、宙を凝視する。


 【ステータス】


 相良 ひかり


 知性:82 体力:60 容姿:37


 愛嬌:0 ストレス:56


 宙に映るスクリーンにひかりはフンッと鼻息を荒くして、ひたすらに満たされた気持ちを楽しんだ。スクリーンに記載されているのは、夏休みと九月に程よく調整したステータスだ。あの名前の横にあった失礼なキャッチフレーズはういちゃん☆ちぇっくの時にしか見れないようで、それもまたひかりを満たした。あんな失礼な文言、見れない方がよっぽどいい。


「ひかり、嬉しそうな顔してどうしたの?」

「あ、シロちゃん」


 白雪がひかりの席に手をついて、不審げに顔を覗き込む。ひかりが白雪の名を呼べば、不審げな顔はすぐに優しい笑顔に変わった。


「いや、夏休みに勉強いっぱいしたおかげで頭良くなったかなって思って!」

「なあにそれ、次のテストが楽しみってこと?」

「うん、期待しててね!」


 まさかこれが男女の会話だなんて、誰も思うまい。

 白雪は夏休みが終わっても、女子の制服を着て学校に登校してきた。

 ひかりは夏休みが終わるギリギリまで、性別を抜きにしてもあんな事があった白雪との距離感を図りかねたが、結局十月の今になっても仲良しこよしの関係を続けている。だって彼はいつも通りに接してくる。それを掘り起こして、険悪にする必要性はないだろうとひかりは考えた。


「期待してるけど、私に勝てるかな?」

「う゛う゛……まだそれは早いかもしれない」


 ふふふ、と笑う白雪。彼は学校に守られている。だからこそ女子生徒のふりが出来るんだろう。その理由は何故か知らないが、知る必要もひかりにはない。


 単刀直入に言えば、それよりも大変面倒なことが九月に起こったせいで、ひかりは白雪との関係を解決するまで手が回らなかったのだ。


「あ、白詰様っ! 私もおしゃべりの輪にいれてくれませんかっ?」


 飛び跳ねる動作でふわりと優雅に舞う、ウェーブのかかった腰まで伸びた栗色の髪。キラキラと輝く丸い瞳と長い茶の睫毛。つんとした鼻の下にある薄桃色の形良い唇。一つ一つの動作が愛らしく、人の目を惹く彼女は西園(にしぞの)うらら。彼女は九月に1-Aに転校してきた転校生だった。


「……なんで?」

「とても楽しそうにお話されていたから、私も一緒に楽しめたらと……!」


 冷たい白雪の態度に表情一つ崩さず、うららは両手を合わせ、きゃぴきゃぴとハートを飛ばした。すると、うららのきゅるんとした瞳がひかりを捉える。ああ、ターゲットにされてしまった。ひかりは口をへの字に曲げた。


「ね、ひかりちゃん。良ければお昼休み、お弁当ご一緒させていただいてもよろしいですか?」


 別に断る理由はない。けれど、ひかりは彼女が少し苦手だった。……だからといって愛らしい彼女を蔑ろになどできず、精一杯の愛想笑いを浮かべてひかりは頷いた。


「もちろん、いいよ」

「やったあ! では、またお昼休みに!」


 うららはくるりと踵を返して、スキップのような軽い足取りで自分の席へ戻った。残り香はローズの香り。もしかしたら、うららから自然と発せられる香りかもしれない、なんてくだらないことを考えてその背を見送っていると、さっきのモブ女子生徒たちがうららの席に群がった。うららに媚びる姿は滑稽だ。小さく溜息をつけば、白雪が刺々しい態度を隠そうともせず口を開いた。


「断ればいいよ、あんな女と一緒にご飯食べたら疲れちゃう」

「えー、でもシロちゃんと付き合い長いんでしょ? あまり冷たくできないよ」

「付き合い長いも何も、親同士が仲良くて昔から遊びの相手させられてたってだけ。私はアイツ嫌いだし」

 憎々しげに顰めた白雪の顔に影が差す。美人の怒った顔は恐ろしい。ひかりは白雪の手をポンポンと叩いて、励ますように言った。

「シロちゃんの方が綺麗だよ」

「……そんな僻みとかで嫌いなわけじゃないけど、ありがと」


 些細な変化でしかないが、白雪の表情が幾分か和らいだ。白雪の胸元のハートの器がどくんっと跳ねる。彼も大変だなとひかりは他人事のように思った。



 西園うららは転校初日からクラスのマドンナに成り果てた。容姿はもちろん、常に笑顔だったり、誰にでも物腰柔らかく対応していたり。ひかりとは正反対の人間だ。そんな事を考えながら教壇の前で紹介される彼女を見て、ひかりは純粋にもの悲しくなった。


 彼女はすぐに人気者になった。ブランドものを控えめに主張しすぎず身に付け、素晴らしい家柄をひけらかさない。あくまでナチュラルに。

 百合原はうららを見た瞬間に一目惚れをしていた。「シロちゃんはどうしたの?」と問えば、俺はかわいい系が好きだったのかもしれないと恥ずかしげに頭を掻いていた。性別で決めつけなかったところが彼らしいと思う。ただ、少し寂しくもなった。言ってやりはしないが。


 だけど、ひかりはそんな彼女が苦手だ。白雪を抜かせば、彼女に苦手意識を持っている生徒なんてひかりくらいだろう。それくらいみんな転校してきた彼女に夢中だったのだ。


 苦手になった理由はただ一つ。ひかりを見る眼差し。きらきらと光った瞳の奥に見える軽蔑、憎悪、疎ましさ。うららもひかりを嫌っていることは目に見えて明らかだった。面倒なこととはこの女のことだったのだ。



 

 

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